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<4D F736F F D20834E E815B82CC8DEC90BB B835A838B838D815B835882F08E E646F6378>

別紙 < 研究の背景と経緯 > 自閉症は 全人口の約 2% が罹患する非常に頻度の高い神経発達障害です 近年 クロマチンリモデ リング因子 ( 5) である CHD8 が自閉症の原因遺伝子として同定され 大変注目を集めています ( 図 1) 本研究グループは これまでに CHD8 遺伝子変異を持つ

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八村敏志 TCR が発現しない. 抗原の経口投与 DO11.1 TCR トランスジェニックマウスに経口免疫寛容を誘導するために 粗精製 OVA を mg/ml の濃度で溶解した水溶液を作製し 7 日間自由摂取させた また Foxp3 の発現を検討する実験では RAG / OVA3 3 マウスおよび

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共同研究報告書 京都大学再生医科学研究所長殿 研究代表者 ( 申請者 ) 所属 : 独立行政法人物質 材料研究機構生体材料センター職名 : グループリーダー氏名 : 小林尚俊 下記のとおり共同研究課題の実施結果について報告します 記 1. 研究課題 :3 次元ナノファイバー足場内における幹細胞分化に

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資料 WG3-4 眼部への電波ばく露の定量的調査に関する研究 研究実施期間 :H23-26 年度 京都大学 生存圏研究所宮越順二 小山眞 成田英二郎 金沢医科大学佐々木洋 ( 研究代表 ) 小島正美 佐々木一之 首都大学東京 大学院理工学研究科多氣昌生 鈴木敬久 笠井陽子

生活環境における電磁波 送電性 <ELF> 携帯電話 <Radio waves> <IF> <Visible light> <Ionizing Radiation> 0 Hz 10 4 10 8 10 4 10 12 10 16 10 20 10 24 10 4 10 4 リニアモーターカー 電化製品 ラジオ <Ultraviolet light> <Infrared light> <X-rays> < γ-rays> IHクッキングヒーター太陽光 Ⅹ-, γ- 線撮影装置電子レンジ MRI

細胞研究における研究目的 ミリ波の低レベルばく露については これまでに確立された生体作用は知られていない しかし ミリ波帯電波についての研究例が少ないことから その可能性の探索が必要である 動物実験では実験条件や実験個体数が限られるため 細胞レベルの実験により ミリ波帯電波が非熱的な作用を有するかどうかについて その可能性を探索する そこで 60, 40GHz ミリ波帯電波ばく露による細胞影響を評価するため 京都大学に設置された 首都大学東京作製による 60, 40GHz ミリ波帯電波細胞ばく露装置を用いて アーチファクトのない正常培養環境を保持しているかについて 細胞基本動態試験による確認を行い 遺伝毒性に関して細胞実験を行う 具体的には 細胞を用いた電波ばく露の発がん性影響評価研究として 小核形成および DNA 切断に関する細胞遺伝毒性について検討を行う さらに 生理的影響評価として 電波の影響で注目されているストレスタンパクを中心として遺伝子発現への影響を検索する

ミリ波ばく露による生体への影響 ( 陽性論文 ) 1 2 3 4 5 論文タイトル雑誌名発行年号 ページ概要ばく露条件細胞株 動物種実験方法国名 In vivo analysis of THz wave irradiation induced acute inflammatory response in skin by laser-scanning confocal microscopy Terahertz Radiation Induces Spindle Disturbances in Human-Hamster Hybrid Cells Non-thermal effects of terahertz radiation on gene expression in mouse stem cells Effects of 100 GHz Radiation on Alkaline Phosphatase Activity and Antigen Antibody Interaction Terahertz Radiation Increases Genomic Instability in Human Lymphocytes Optics Express 2014 Radiation Research 2011 Biomedical Optics Express 2011 Bioelectromagnetics 2009 Radiation Research 2008 Frequency and irradiation time-dependent antiprolifirative effect of lowpower millimetre waves on 6 RPMI 7932 human melanoma cell line Anticancer Research 2005 Plant sensitivity to low 7 intensity 105 GHz Bioelectromagnetics 2004 electromagnetic radiation 22, (10) 11465-11475 DOI:10.1364/O E.22.011465 175, 569 574 2, (9), 2679-2689 30, 167-175 170, 224 234 25, 1023 1028 25, 403-407 マウス耳皮膚で急性炎症反応が見られた ( 大量の好中球の移動が見られた ) 赤外線カメラではばく露による温度上昇は見られなかった 細胞分裂の後期 終期において 核が分離するときに機能する器官である紡錘体の異常が観察された 糖取り込み促進 脂肪酸燃焼等の様々な機能を持つアディポネクチン グルコースの輸送体 GLUT4 や脂肪細胞の分化に関わる転写因子 PPARG の遺伝子発現の変化 ( 増加 ) が見られた ばく露により酵素活性の低下 抗原抗体反応の低下が見られた パルス波 (2.7THz 4µs パルス幅 61.4µJ/ パルス 3Hz repetition) 260mW/cm 2 30 分 連続波 (106GHz 0.043 0.43 4.3mW/cm 2 ) 30 分 マウス ( 耳の皮膚 ) 共焦点レーザー顕微鏡による観察 エタノール固定ヒト-ハムスターハ後 酢酸オルセイブリッド ( 雑種 ) 細インで染色し 分裂後期 終期胞 (A L cell) の紡錘体を観察 パルス波 ( ブロードバンド 10THz)9 時間 マウス ( 間葉系幹連続波 (CWレーザー 2.52THz) 細胞 ) 2 時間 100GHz 0.08W/cm 2 15 分 ~ 2 時間 ヒトリンパ球の染色体数変化を調べたところ 細胞分裂の際 染色体の同等な分配が連続波 (100GHz されず 動原体 ( 染色体と紡錘体が接続す 0.031mW/cm 2 ) 1,2,24 時間る部位 ) の複製が同時に起こらず 遺伝的不安定性が見られた 細胞増殖に影響あり 細胞形態の変化が見られた アマ植物の成長分裂組織の数が増加した 53.57-78.33 GHz(wide band) 51.05 GHz 65.00 GHz 3 時間 105GHz 2 時間 qrt-pcr Calf alkaline phosphatase マウ ELISA スモノクローナル抗体と抗原 韓国 ドイツ USA イスラエル ヒト ( リンパ球 ) FISH イスラエル メラノーマ RPMI 7932 植物アマ (Linum usitatissimum) 光学顕微鏡観察組織染色 顕微鏡観察 イタリア UK 陽性報告の論文は限られているが 上記に加え 陰性報告の論文が多数存在する

< 小核形成試験 > 細胞分裂の際 細胞質分裂を阻害し 核分裂のみを起こした細胞内で 核に組み込まれなかった小核 (Micronucleus: MN) を観察することにより 細胞への障害を判断する手法. 正常な分裂 DNA や染色体の切断を起こす障害 サイトカラシン処理 核分裂後に 分裂後期で停止する 小核 (MN) 形成

< コメットアッセイ原理 > 変異原性試験の一種で 電気泳動の原理を利用し 細胞または細胞核における DNA の切断を検出する方法を観察することにより 細胞への障害を判断する手法. DNA 断片化 DNA や染色体の切断を起こす障害 電気泳動 DNAが-に帯電しているため 断片化したDNAが陽極に移動し 彗星 ( コメット ) のように見える.

HSP 発現 < 熱ショックタンパク質発現実験 > 熱ショックタンパク質 (Heat shock protein: HSP) は ストレスタンパク質とも呼ばれ 細胞が熱等のストレス条件下にさらされた際に発現が上昇して細胞を保護するタンパク質の一群で このタンパク質の発現量を比較することで 細胞がダメージを受けたかどうかを判定する 熱や化学物質によるストレス障害 細胞を融解し タンパク質精製後 電気泳動 (SDS-PAGE) 一次抗体 二次抗体を結合させ HRP 試薬で発色 ブロッティング ( ゲルからニトロセルロース膜に転写 ) β-actin バンドの面積 強度比較により タンパク質量を測定 Hsp Hsp/β-actin( 内部標準 ) で計算

細胞 角膜 ヒト角膜上皮細胞 Human corneal epithelial cell line (HCE-T) : 首都大学東京 レンズ ヒト水晶体上皮細胞 Human lens epithelial cell line (SRA01/04) : 金沢医科大学 http://www.fotosearch.jp/illustration/ 眼球.html HCE-T 細胞 SRA 細胞

ばく露装置 ばく露装置 ばく露条件 周波数 :60 GHz 電力密度 :1 mw/cm 2 ばく露条件 Sham 部 周波数 :40 GHz 電力密度 :1 mw/cm 2 60 GHz ばく露部 インキュベータ (37ºC, 5% CO 2, 湿度 100%) データロガー Sham 部 40 GHz ばく露部 ばく露装置 インキュベータ (37ºC, 5% CO 2, 湿度 100%)

ばく露装置インキュベータの細胞動態 HCE-T ( ヒト角膜上皮細胞 ) もしくは SRA01/04 ( ヒト水晶体上皮細胞 ) 播種 60GHz 用インキュベータ 40GHz 用インキュベータ 24 時間 ばく露用インキュベータ 通常インキュベータ 24 時間 24 時間 48 時間 細胞増殖 コロニー形成能 細胞周期分布 5 10 4 (HCE-T) もしくは 1 10 5 (SRA) cells/plate で播種した細胞を 24 時間ばく露用インキュベータで培養後 7 日間にわたりコールターカウンターで計測 (Particle counter Z1: BECKMAN COULTER) 500~1000 個 /plate で播種し 7~10 日間放置. エタノール固定後 ギムザ染色を行い コロニー数をカウント フローサイトメータで細胞周期を計測 (FACSCalibur: BECTON DICKINSON)

ミリ波ばく露装置内環境の評価 ( 細胞増殖 ) HCE-T( ヒト角膜由来上皮細胞 ) および SRA01/04( ヒト水晶体由来上皮細胞 ) 播種 (HCE-T:5 10 4 個 /plate SRA:1 10 5 個 /plate: n=3 7 日分 ) ミリ波ばく露装置 通常インキュベータ およそ 24 時間毎に細胞を回収し 細胞数をカウント ( コールターカウンター :BECKMAN COULTER)

ミリ波ばく露装置内環境の評価 ( コロニー形成能 ) HCE-T( ヒト角膜由来上皮細胞 ) および SRA01/04( ヒト水晶体由来上皮細胞 ) 播種 (5 10 5 個 /plate) 24 時間インキュベータ内で培養 再播種 (HCE-T:5 10 2 個 /plate SRA:1 10 3 個 /plate 各 n=10) ミリ波ばく露装置 通常インキュベータ 7~10 日間各インキュベータ内で培養 エタノール固定後 ギムザ染色を行い コロニー数を計測

ミリ波ばく露装置内環境の評価 ( 細胞周期分布 ) HCE-T( ヒト角膜由来上皮細胞 ) および SRA01/04( ヒト水晶体由来上皮細胞 ) 播種 (1 10 5 個 /plate) ミリ波ばく露装置 通常インキュベータ 48 時間後に細胞を回収し フローサイトメーターにて細胞周期を測定 (FACSCalibur:BECTON DICKINSON)

細胞増殖結果

コロニー形成能結果

細胞周期分布結果 The number of the cells 60GHz Control 40GHz Control FL2-Height FL2-Height The number of the cells The number of the cells The number of the cells 60GHz Control FL2-Height 40GHz Control FL2-Height

ミリ波ばく露による細胞への影響評価 ( 小核形成試験 ) HCE-T( ヒト角膜由来上皮細胞 ) および SRA01/04( ヒト水晶体由来上皮細胞 ) 23 時間 播種 (1 10 6 個 /plate: ばく露 24 時間前 ) 1 時間 培地洗浄 培地交換 Bleomycin 処理 (10 µg/ml 濃度 1 時間 ) ミリ波ばく露 (1 mw/cm 2 ) Sham ばく露 インキュベータコントロール Bleomycin ポジティブコントロール 24 時間後 細胞回収 小核試験による解析 ( 二核細胞 300~1000 個中の小核を持った細胞の個数 ) 6 回の実験を行い ANOVA で検定後 ボンフェローニ多重比較により p <0.05 0.01 で有意差検定を行った

< 小核形成試験実験方法 > 1. 回収した細胞を 3 µg /ml 濃度のサイトカラシン B 入り培地で 24 時間培養した 2. 37 インキュベータで 24 時間培養した 3. 細胞を回収し 270 100 cell/ml に調節した 4. サイトスピン (900 rpm 5 min) にて細胞をスライドグラスに展開した 5. 冷 80% エタノールで 30 分細胞固定を行った 6. PBS で 3 回洗浄を行った 7. プロピジウムイオダイド (PI:0.2 μg/ml)20 μl で染色し カバーガラスで封入した 8. 蛍光顕微鏡観察を行った 9. 二核細胞を 300~1000 個カウントし MN が 1 個および 2 個以上の細胞をカウントし 統計処理で有意差を検討した

ミリ波ばく露による細胞への影響評価 ( コメットアッセイ ) HCE-T( ヒト角膜由来上皮細胞 ) および SRA01/04( ヒト水晶体由来上皮細胞 ) 23 時間 播種 (1 10 6 個 /plate: ばく露 24 時間前 ) 1 時間 培地洗浄 培地交換 Bleomycin 処理 (10 µg/ml 濃度 1 時間 ) ミリ波ばく露 (1 mw/cm 2 ) Sham ばく露 インキュベータコントロール Bleomycin ポジティブコントロール 24 時間後 細胞回収 コメットアッセイによる解析 (100 個以上の細胞をカウント ) 3 回の実験を行い ANOVA で検定後 ボンフェローニ多重比較により p <0.05 0.01 で有意差検定を行った

コメットアッセイ実験方法 (CometAssay regent kit for Single Cell Gel Electrophoresis Assay: TREVIGEN 社 ) 1. 回収した細胞を 1 10 5 cell/ml に希釈. 2. 溶かしたアガロースゲルと混合し スライドガラス上に固定化. 3. 細胞溶解液につけた後 アルカリ溶液に浸潤. 4. 0.8V/cm( 電源 20V 設定 ) 350mA 条件で 30 分間電気泳動を行う. 5. 70% エタノールで固定. 6. 乾燥後 SYBR green 溶液で染色. 7. 蒸留水で洗浄後 蛍光顕微鏡観察. 8. 解析ソフト Comet assay Ⅳ(perceptive 社 ) にて解析. 先端 (A) 中央 (B) 尾部終点 (C) を決定し 尾の部分がどれくらい長いか どれくらいの領域があるかを分析し Tail Length Tail%DNA を計算する. この値をもとに DNA の損傷具合である Tail Moment を算出する. Tail Moment (TM) = Tail length Tail%DNA/100

ミリ波ばく露による細胞への影響評価 ( ストレスタンパク ) HCE-T( ヒト角膜由来上皮細胞 ) およびSRA01/04( ヒト水晶体由来上皮細胞 ) 播種 (1 10 6 個 /plate: ばく露 24 時間前 ) 23 時間培地洗浄 培地交換 1 時間 ミリ波ばく露 (1 mw/cm 2 ) Sham ばく露 24 時間後 細胞回収 インキュベータコントロール 熱ショック処理 (43 :0.5~3 時間 37 :1~24 時間 ) SDS-PAGE ウエスタンブロッティングによる HSP の定量 3 回の実験を行い ANOVA で検定後 ボンフェローニ多重比較により p <0.05 0.01 で有意差検定を行った

<HSP 実験方法 > ( タンパク質抽出および濃度測定 ) 1.CelLytic 溶液で細胞を回収し タンパク質濃度を測定. (SDS-PAGE) 2.1 もしくは 2mg/ml に調製したサンプルとサンフ ルハ ッファー (2ME+) を 1:1 で混合し 100 で 1min 加熱. 3. 氷で急冷し アクリルアミドゲルで電気泳動 (20mA, 35V). ( ブロッティング ) 4. 電気泳動で分離したタンパク質を iblot によりニトロセルロースメンブレンに転写する. ( 免疫染色 ) 5. 各 HSP に対応する一次 二次抗体を結合させる. 6.HRP 発色にてタンパク量を定量する.

小核形成試験結果 (HCE-T: 60GHz) No MN formation One MN in a binucleated cell Two MN in a binucleated cell Eight MN in a binucleated cell 小核形成試験結果 (SRA: 60GHz) No MN formation One MN in a binucleated cell Two MN in a binucleated cell Six MN in a binucleated cell

HCE-T および SRA 細胞における 60 40GHz ミリ波ばく露による小核形成試験結果 60GHz 40GHz (*p<0.05, **p<0.01) HCE-T cells * ** ** ** SRA cells

コメットアッセイ結果 (HCE-T: 60GHz) Incubator control Sham 60 GHz exposure コメットアッセイ結果 (SRA: 60GHz) Bleomycin treatment Incubator 60 GHz Bleomycin Sham control exposure treatment

HCE-T および SRA 細胞における 60 40GHz ミリ波ばく露によるコメットアッセイ結果 60GHz 40GHz (*p<0.05, **p<0.01) HCE-T cells ** * SRA cells ** **

HCE-T 細胞における 60 40GHz ミリ波ばく露によるストレスタンパク結果 (**p<0.01) Hsp70 ** ** Hsp90 ** Hsp27 **

SRA 細胞における 60 40GHz ミリ波ばく露によるストレスタンパク結果 (*p<0.05, **p<0.01) ** ** Hsp70 Hsp90 * Hsp27 **

結論 60 もしくは 40GHz ミリ波ばく露により コントロール Sham ばく露に比べ 小核形成頻度の上昇は見られなかった ポジティブコントロールであるブレオマイシン処理で有意に小核形成頻度は上昇した 60 もしくは 40GHz ミリ波ばく露により コントロール Sham ばく露に比べ DNA 切断の増加は見られなかった ポジティブコントロールであるブレオマイシン処理で有意に DNA 切断の増加が見られた 60 もしくは 40GHz ミリ波ばく露により コントロール Sham ばく露に比べ Hsp ストレスタンパク (Hsp70, Hsp90α, Hsp27) の増加は見られなかった ポジティブコントロールである温熱処理により すべての種類で有意に Hsp の増加が見られた

まとめ ヒトの目から確立した二種類の上皮細胞 ( 角膜上皮由来 :HCE-T および水晶体上皮由来 :SRA) に 60 40GHz のミリ波 ( 電力密度 : 1mW/cm 2 (ICNIRP 一般公衆ばく露ガイドライン ) を 24 時間ばく露した 遺伝毒性への影響を検索するための小核形成試験および DNA 切断検出試験 ( コメットアッセイ ) において コントロール Sham ばく露と比較して ミリ波をばく露した細胞で それぞれ上昇は見られなかった また 生理学的影響を検索するためのストレスタンパク実験において コントロール Sham ばく露と比較して ミリ波をばく露した細胞で Hsp の上昇は見られなかった 以上の結果から 60 40GHz のミリ波 ( 電力密度 : 1mW/cm 2 ) ばく露による ヒトの角膜および水晶体上皮への遺伝毒性 ストレスタンパクへの影響はほとんどないと考えられる

細胞実験研究まとめと考察 60 40GHz ミリ波細胞ばく露装置用インキュベータの基本動態を調べた 60 40GHz ミリ波細胞ばく露装置において 細胞増殖 コロニー形成能 細胞周期分布評価のいずれにおいても コントロールのインキュベータと比較して有意な差はなかった このことから 60 40GHz ミリ波ばく露用ばく露装置は 細胞生物学的にアーチファクトのない正常培養環境を保持していると考えられる 60 40GHz ミリ波ばく露による遺伝毒性の有無および生理的影響の有無を検索するため ヒト角膜由来上皮細胞 (HCE-T) およびヒト水晶体上皮細胞 ( SAR) における小核形成 コメットアッセイならびに ストレスタンパクの発現を検索した 全ての実験において コントロール Sham ばく露 60 40GHz ミリ波ばく露において 有意な差は観察されなかった このことから 1mW/cm 2 24 時間の条件では 60 40GHz ミリ波ばく露により細胞に遺伝毒性は誘発されなかった また 生理的影響の指標であるストレスタンパクの発現 (3 種類 : Hsp70,Hsp90α,Hsp27) も増加しなかった 従って 60 40GHz ミリ波ばく露の非熱的長期ばく露は細胞の小核形成 コメットアッセイおよびストレスタンパクの発現に影響を及ぼさないと考えられる

発表論文