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Table 1 プラントにおける主な振動問題 機器名 主な振動原因 配管 ブランチ配管 ドレイン ベントなど 内部流体 音響 回転機械からの振動 回転機械 ポンプ 圧縮機 ブロワーなど 回転子の重心ずれ 回転軸ずれなど 火熱機器 加熱炉 ボイラー スタックなど 不安定燃焼 気柱共鳴など 静機器 タワー 熱交換器 攪拌槽など 内部流体 風などによる渦など 配管振動は プラントにおいて最も解決が困難な問題である 回転機械から伝わってくる振動問題は設計段階で比較的容易に対応可能である しかし 内部流体や音響に起因する振動は複雑であり 定性的に分かっていても 実際に配管を揺らす力 ( 加振力 ) を定量的に評価することは難しい場合が多い 振動の原因となる内部流体の主なものは 往復動圧縮機によって発生する脈動 二相流 ( 液体と気体が混合した流れ ) フレアラインなどの高速流などである 後述するように 脈動については設計段階で定量的に検討されているが 他のケースについては 経験的にサポート間隔を調整するなどの配慮はされているものの 設計段階で加振力を定量的に評価することは困難である 回転機械における代表的な振動問題は ポンプや圧縮機の振動が基礎に伝わって全体が大きく振動する ( 共振 ) ことである そのため 大型圧縮機の基礎であるテーブルトップは シビル部門において 共振が生じないように設計されている 火熱機器については 設計時において 高温ガスの流れによってチューブバンドルが振動しないよう検討されている また スタックは風によって一定の周期で発生する渦 ( カルマン渦など ) と共振して大きく振動することがないような構造となっている 熱交換器では 内部流体の流れによって発生する渦 ( カルマン渦 ) とチューブバンドルが共振しないようにバッフルプレート間隔が決められている タワーについては スタックと同様に カルマン渦との共振が生じないように配慮されている 攪拌器は 攪拌装置自体の振動が生じないようにすると共に 容器も攪拌装置と共振しないように設計されている 以上のように それぞれの装置毎に設計段階で防振対策が取られている しかし すべてにわたって定量評価されている訳ではなく 実際の運転に入った後で生じた振動に対応せざるを得ない場合もある このような振動問題に迅速に対応することが求められる 2.2 振動による障害プラントで発生する振動は さまざまな障害を引き起こす その主な障害を以下に示す 振動による障害はプラント全体のシャットダウンに繋がる場合もあるので 振動を抑制することはプラントを正常に運転するために非常に重要である - 配管や配管サポートの変形や破損 - 回転機械のトリップ - 弁, 計器などの作動不良 - フランジ継手の緩みによる流体の漏洩 - 振動による騒音 - 作業者に与える心理的圧迫感と不安感 2

3. 当グループにおける設計段階での振動検討 当グループにおける設計段階での主な振動関連業務としては 往復動圧縮機の脈動解析と回 転機械支持構造の共振検討がある 3.1 往復動圧縮機の脈動解析往復動型圧縮機の場合は 圧縮性流体 ( ガス ) を間欠的に吸込み 吐出しを行うことから 圧力及び流速が不均一となり 脈動となる ( 脈動の身近な例としては 心臓が一種の圧縮機であり 血管に伝播するいわゆる脈拍がある ) この脈動がある程度大きくなると 配管やそれに繋がる構造物が振動し 破損の原因となる したがって 設計段階では 脈動を小さくする ように検討しなければならない 往復動圧縮機廻りの脈動に関しては API Standard 618 (2007 5 th Edition) に具体的要求がある 当グループは 自社開発の脈動解析プログラム L720 ( API 618 に対応 ) を用いて脈動問題に対応している 当グループは これまでに設計段階で 19 件の脈動解析を実施し いずれのケースにおいても運転中に振動問題は起きていない また 5 件の運転中の振動問題について脈動解析を実施し 解決した 3.2 回転機械支持構造の共振検討ポンプ ブロワーなどの回転機械や攪拌槽の攪拌器では 回転体重心が回転軸からわずかにずれることにより不均等力が発生し その周波数 ( 通常回転周波数 ) が支持構造の固有振動数と一致し 共振する場合がある このような共振を回避するために 設計段階では支持構造の固有振動数が上述の周波数と一致しないようにしている 当グループでは 汎用有限要素解析プログラム Abaqus を用いて 複雑な支持構造の固有振動数を正確に求めることにより 共振検討を行なっている Fig.1 に Abaqus による固有値解析の例を示す Fig. 1 Abaqus による攪拌槽の固有値解析例 3

4. 当グループにおける運転時の振動検討前述のように設計段階ですべての振動問題を定量的に解決することはできない 実際に運転に入ってから発生した振動問題に対しては速やかに対応している 運転時の振動問題への標準的な対応手順を Fig.2 に示す それぞれの手順について以下に概説する 評価 検討 実施 Fig.2 運転時の振動問題への対応手順 4.1 現場調査振動問題を解決する上で最も重要なことは 現場で実際にどのような振動が発生しているかを正確に把握することである そのために 現場の状況をヒアリングし 振動状況を調査する 当グループでは 振動状況を調査するために振動分析計 データレコーダなどの測定器を所有しており 独自に振動測定を行なっている 当グループの振動分析計はハンディタイプであり 問題が生じている箇所の振動を即座に測定し その結果を分析して振動の特性を明らかにする能力を持っている 具体的には 時刻歴振動波形 ( 実際に振動している様子を時刻歴で表示 ) 固有周波数( 測定対象物が持っている振動特性 ) 卓越周波数( 主にどのような周波数で振動しているか ) などを現場で瞬時に把握することができる 4.2 振動評価上述のように 振動分析計を使用することによって 振動特性は現場で大まかに把握することができるが 詳細な原因究明を行ない 対策案を策定するためには 測定結果をデータレコーダに記録し 詳細なデータ分析を行なう必要がある 特に 振動が時間的に変動する場合や運転条件によって変化する場合は この分析が重要となる Fig. 3 はブロワーの振動測定の例である 測定項目は速度であり それぞれの測定箇所における東西 南北 上下それぞれの方向の振動の大きさ ( 速度 ) の最大値を数値で示した これらの測定結果からブロワーは南北に大きく振動していることが分かる Fig. 4 は代表的なポイントの測定結果を示したものである (1) は振動が時間とともにどのように変動しているかを示している (2) はこのデータを周波数分析した結果であり どの周波数で大きく振動しているかが明らかとなる このケースでは 約 10, 16, 20 Hz の振動が卓 4

越していることが分かる このように分析された結果は 回転機械振動判定基準 に基づいて判定される 配管振動の判定については 当社は独自の 配管振動判定基準 を持っている この基準は 当社の実績を整理し 振動理論をベースに分析して制定したものであり 40 年以上の運用実績を持っている 南北方向 Fig. 3 ブロワーの振動測定例 速度 時間 周波数 (1) 振動時刻歴 (2) 周波数分析結果 Fig. 4 振動測定データ分析の例 4.3 振動解析 : 振動原因を究明し 対策案を策定するために有効なもう一つのツールが 有限要素法 (FEM) による数値シミュレーションである Fig.5(1) は 実際に大きな振動が発生したブランチ配管の写真である Fig.5(2) は このブランチ配管に母管から振動が伝わってきた場合の振動状況を数値シミュレーションした例である このようなシミュレーション結果と現場測定データの分析結果を比較検討することによって 信頼性の高い振動原因の究明が可能となる 4.4 対策検討上述のような検討によって振動原因が特定できれば 有効な対策案の策定が可能となる 複雑な現象の場合は 必ずしも原因を特定し切れないこともある その場合は 可能性の高いと思われる原因から優先的に対策案を策定することとなる 5

Fig.5 は対策前についてのシミュレーションであるが 同様のシミュレーションは対策を施 したものについても可能であり 複数の対策案についてシミュレーションすることによりどの対策が最も有効であるか定量的に評価することができる 4.5 対策の実施及び効果の確認一般には最も有効な対策案を実施する ただし それが現場状況やコスト面などから現実的でない場合は 次善の策を複数実施する場合もある 実際に施工された後 4.1で述べたものと同様の現場測定を行なうことによって対策の有効性を検証できる (1) 振動が発生したブランチ配管 (2) ブランチ配管の振動様子 Fig.5 FEM を用いた振動シミュレーションの例 5. おわりに本稿では 振動問題に対する当グループの取り組みについて紹介した これまでに数多くの問題を解決してきたが 近年はプラントの大型化や経済設計の追及などにより 新たに対応すべき問題も発生している 当グループとしては更なる技術の向上を図り プラントが直面する振動問題の迅速な解決に貢献していきたい 6