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どのような便益があり得るか? より重要な ( ハイリスクの ) プロセス及びそれらのアウトプットに焦点が当たる 相互に依存するプロセスについての理解 定義及び統合が改善される プロセス及びマネジメントシステム全体の計画策定 実施 確認及び改善の体系的なマネジメント 資源の有効利用及び説明責任の強化

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本日の内容 1. 未承認対照薬等の取り扱い別添の 4.(3) ウ.( ア ) 2. 対象疾患の悪化等を評価項目にする試験別添の 7.(3) イ.( ア ) 3. 承認取得者以外の治験国内管理人が治験 依頼者となる場合別添の7.(3) オ. 4. 医師主導治験との情報共有別添の7.(3) カ. 5.

CONTENTS

3 医療安全管理委員会病院長のもと 国府台病院における医療事故防止対策 発生した医療事故について速やかに適切な対応を図るための審議は 医療安全管理委員会において行うものとする リスクの把握 分析 改善 評価にあたっては 個人ではなく システムの問題としてとらえ 医療安全管理委員会を中心として 国府台

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1 1,200m ,482,620m 1 323,825m 1 205,988m 114,988m 60,000m 31,000m ,837m ,158,795m ,340m 1 48,006m 1 33,016m 1,125m

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Risk Based Monitoring(RBM) オーバービュー 日本製薬工業協会 医薬品評価委員会データサイエンス部会 高橋寛明 1

本日の内容 RBMの動向 治験データの品質管理 リスクアセスメント セントラルモニタリング サイトモニタリング モニタリングプラン 2

本日の内容 RBMの動向 治験データの品質管理 リスクアセスメント セントラルモニタリング サイトモニタリング モニタリングプラン 3

Risk Based Monitoring(RBM) の動向 2010 年 10 月 CTTI エキスパート MTG の開催 2011 年 8 月 2013 年 7 月 FDA EMA が相次いでガイダンス案を公開 FDA:Guidancec for Industry Oversight of Clinical Investigations A Risk Based Approach to Monitoring EMA:Reflection paper on risk based quality management in clinical trials 厚生労働省医薬食品局審査管理課から事務連絡の発出 リスクに基づくモニタリングに関する基本的な考え方について 2013 年 8 月 FDA がガイダンスを確定 2013 年 11 月 EMA がリフレクションペーパーの最終版を公表 2015 年 6 月 ~ 現在 ICH-E6 Step2 ガイドライン 外資 国内企業を問わず 各社が RBM の実装を検討 4

本日の内容 RBMの動向 治験データの品質管理 リスクアセスメント セントラルモニタリング サイトモニタリング モニタリングプラン 5

これまでの治験データの品質管理 発生した問題をオンサイトモニタリングで発見し 是正措置 (CA) を行い これを繰り返す いわゆる出口管理のアプローチ 6

RBM における治験データの品質管理 事前にリスクを評価し そもそも問題を発生しにくくする 発生してしまった場合は 是正措置 (CA) だけではなく予防措置 (PA) を施すことで再発を防ぐ プロセス管理のアプローチ 7

質の高いデータとは? エラーや不備を全く含まない完璧なものではなく たとえ意思決定の後にエラーや不備が発見されたとしても 既に行われた意思決定を変更する必要がないデータ じゃあエラーはどの程度まで許容されるの? 一概には決められない! エラー率 0.1% でもそのエラーが結論に影響を及ぼすものであれば許されない! 結論に影響しない軽微なものであれば ある程度のエラーも許されるかもしれない 既往歴前治療薬 どの程度のエラー率まで許容できるかは リスクアセスメントの段階で考慮すべき >> 重篤な有害事象主要評価項目 8

なぜ確認しなくてもよいデータがあるのか? たとえ誤りがあっても結論に影響しない と言えるからです 欧米や日本の規制当局が 全部のデータを確認しなくてもいい と言っているのではない RBM が目指すところは プロセスによる質の作り込みであり 究極的には質を担保できるプロセスが機能していれば CRF のエラーが許容レベル以下で収まる状態が継続している SDV をしなくても CRF が一定の品質を保持している 9

本日の内容 RBMの動向 治験データの品質管理 リスクアセスメント セントラルモニタリング サイトモニタリング モニタリングプラン 10

リスクアセスメント リスクアセスメントとは? 品質リスクマネジメントに関するガイドライン (ICH-Q9) では リスクを特定 分析 評価するプロセス 全体を指す言葉 いつ 誰がやる? リスクマネジメントプロセスの開始時に実施されるもの 治験開始の初期 ( 準備 ) 段階に実施 治験に携わる様々なメンバーがかかわる モニタリング担当者 ライティング担当者 DM 担当者 薬事担当者 統計担当者など 11

ステップ 1 リスクの特定 リスクを発見し それを認識して 記述する 何がうまくいかないかもしれないのか? の答えとして浮かんできたものをすべて書き出す その答えを影響範囲によって分類する ( プログラムレベル ) その治験薬のすべての臨床試験にかかわるもの ( 治験実施計画書レベル ) その臨床試験全体にかかわるもの ( 施設レベル ) 特定の実施施設のみにかかわるもの 12

ステップ 2 リスクの分析 リスクの特性を理解し 定性的又は定量的にレベルを決定する 特定したリスクに対して うまくいかない可能性はどれくらいか? 発生頻度 うまくいかなかった場合 どんな結果 ( 重大性 ) となるのか? 重要度を考え そこにリスクの見つけにくさ ( 検出困難度 ) も加えて それぞれのリスクの高さを定性的又は定量的に決定する 13

ステップ 3 リスクの評価 特定 分析されたリスクを所定のリスク基準に従って比較する リスクの重大性を評価するための目安 ( リスク基準 ) と分析したリスクを比較して そのリスクは許容できるものかを決定する リスクの分析と評価を一緒に行うことが一般的 許容できないリスクについては 回避するための措置や回避できない場合のリスク軽減策をデータを生み出すプロセスに反映させる 治験においては治験実施計画書 モニタリングプラン 解析計画書などの様々な計画書や手順書に加え 症例報告書のデザインも対象になる 14

リスクのまとめ方の一例 分類特定されたリスク評価アクション先 安全性ヒトに初めて投与する薬剤高治験実施計画書 開発相第 3 相試験である低モニタリングプラン 対象集団重篤度の高い被験者を対象としている高モニタリングプラン 評価 CT の撮影条件が規定されている中 治験実施計画書測定手順書 IT 患者日誌を使用する中トレーニング計画書 EDC クエリ回答までの時間が長い中モニタリングプラン 施設中止症例が特定の施設に集中する中モニタリングプラン 施設常駐の CRC がいない中モニタリングプラン 15

リスクの見直し 治験開始前 ( 準備段階 ) に実施すればリスクアセスメントが終わるということではない 治験開始前に十分な検討をして リスクアセスメントを実施しても 事前に特定できなかったリスクあるいは想定以上の頻度やインパクトのあるリスクが検出されることがある その際は何度でもリスクを再評価し 予防措置を講じてリスクマネジメントの Plan PDCAサイクルを回していく必要がある Action Do Check 16

本日の内容 RBMの動向 治験データの品質管理 リスクアセスメント セントラルモニタリング サイトモニタリング モニタリングプラン 17

モニタリング手法 サイトモニタリングは, スポンサーやその代理の担当者が 実地又は遠隔で各実施施設毎に個別症例やプロセスに焦点を当てた評価 セントラル ( 中央 ) モニタリングは, 実施施設以外の場所で スポンサーやその代理の担当者 ( データマネジメント, 統計家, 臨床モニターなど ) によって行われる参加施設間の比較などを用いた評価 18

セントラルモニタリング 施設 / 試験横断的なレビュー 症例報告書で報告された臨床試験データ EDC 監査証跡 その他利用可能なあらゆる情報を用いて 治験参加国間や施設間の比較を行うことにより 様々なリスクを定期的に評価して リスクマネジメント / コントロールする 治験では様々なリスクが考えられるが RBM では 被験者の安全性確保 臨床試験の信頼性 GCP や治験実施計画書の遵守の観点から 特定されるリスクにフォーカスする 19

セントラルモニタリング 効果的かつ効率的に実施するための考慮事項 早い段階でリスクを把握することが不可欠 特定されたリスクとその重みに応じて リスク評価指標と閾値を設定 評価するリスクは施設外でアクセス可能なデータや情報で検出可能なものが対象 リスク評価指標及び閾値の設定 検出可能性の評価に基づき セントラルモニタリングで使用するレポートを作成する リスクマネジメント / コントロールを実施するのに適切な実施時期を考慮し セントラルモニタリングの実施時期を決定する 20

リスク評価指標と閾値 ( 事例 ) 有害事象の過剰な報告や報告漏れは 被験者の安全性確保や安全性評価に影響を及ぼす可能性がある このリスクを管理するために 有害事象の発現件数をリスク評価指標とし 以下のような閾値とアクションプランを設定する 発現件数が平均の ±30% 未満 平均の ±30% 以上 50% 以下 平均の ±50% 超過 対応不要 対応不要 ( 場合により原因の特定 ) 医療機関の訪問 原因の特定医療機関の訪問 他には 中止症例の割合と中止理由 クエリ対応に要した日数など 21

本日の内容 RBMの動向 治験データの品質管理 リスクアセスメント セントラルモニタリング サイトモニタリング モニタリングプラン 22

サイトモニタリング 個々の施設に対するレビュー 治験スタッフ間のコミュニケーションや施設におけるプロセス 手順 記録の確認がモニタリング活動に含まれる データの正確性確認のための SDV だけが CRA の役割ではない! 23

サイトモニタリング 個々の施設レベルでモニタリングするよりも 施設横断的に確認するほうがリスク発生を察知しやすい場合には セントラルモニタリングに移行するべき オンサイトでなくても確認できる内容 例えばEDCの入力内容の確認や治験スタッフの変更有無の確認などは 電話 / メールなどによるオフサイトモニタリングで実施するべき RBM は 単に施設訪問を減らすことを意味していない RBM を導入した場合 オンサイトモニタリングでの活動は 現在実施しているものよりも さらに重要性を増す!! 24

サイトモニタリング オンサイトモニタリングは 治験の準備 開始段階で重点的に行われるべき 特に施設調査や選定 立ち上げの段階で 依頼者と施設スタッフは十分にコミュニケーションを取り 治験実施計画書レベルのリスク及び施設におけるリスクの特定とそのリスクに対する軽減 / 防止策を作り 治験開始に備える スタートアップミーティングでは その施設における準備が整っているか確認することが一番の目的である 治験実施計画書の理解度やその施設におけるプロセスが周知されているかを確認 治験開始直後 なるべく早い段階でオンサイトモニタリングを実施し 施設レベル及び試験レベルで予測したリスク及びそれに対するアクションがうまく機能しているかを確認 25

サイトモニタリング 例えば 有害事象発生率で他施設と違う傾向を示した!! 原因は??? AEの定義に誤解がないか? 報告手順に間違いがないか? 適切な被験者が登録されているのか? etc 根本原因によって 取るべきアクションが変わってくる サイトモニタリングでは 施設で実施された CAPA が適切だったかを評価し 適切でなかった場合は現行プロセスや考え方を軌道修正する必要がある 26

本日の内容 RBMの動向 治験データの品質管理 リスクアセスメント セントラルモニタリング サイトモニタリング モニタリングプラン 27

モニタリングプラン 各試験毎にモニタリングの方法 責任 試験特有の要件を記載したモニタリングプランを試験開始前までに作成 どういう時にどのタイプのモニタリングを実施するか? 頻度 タイミング 程度はどうするか? モニタリングに関わるスタディチーム全員で内容を検討し作成 リスクアセスメントで特定されたクリティカルなデータやプロセスに対するリスクを予防 軽減することに焦点を当てるべき 28

モニタリングプランに含める事項 FDA ガイダンスでは 以下の項目がモニタリングプランに含める内容として記載されている モニタリング方法の記述 モニタリングの方法 ( セントラル オンサイト / オフサイト ) とその用い方 計画されたモニタリングのタイミング 頻度 程度を決定する基準 インディケーターの一例 被験者組み入れのスピード 有害事象の発現件数 治験実施計画書逸脱の件数 EDC へのデータ入力日数 クエリの発行数 クエリへの対応日数など FDA Guidance for Industry Oversight of Clinical Investigations A Risk-Based Approach to Monitoring 29

モニタリングプランに含める事項 モニタリング結果の情報伝達 モニタリング活動の報告や他の文書の様式 内容 タイミング 保管の用件 適切な情報伝達のためのプロセス 通常のモニタリング結果の上位責任者や他の関係者 (CRO DMなど ) への情報伝達 重要なモニタリング上の問題の適切な担当者への迅速な報告 DM 担当者や他の関係者からモニターへの情報伝達 30

モニタリングプランに含める事項 不遵守の管理 モニタリングで見つかった未解決又は重大な問題に対処するためのプロセス 以下のことを確認するプロセス 重大な逸脱が発見された場合に 根本原因分析が行われたこと モニタリングによって発見された問題に対処するために 適切な是正 予防措置が講じられたこと 質の高いモニタリングの確保 モニタリング担当者に必要かつ具体的なトレーニングの記述 担当者がモニタリングプラン 規制 手順などに従ってモニタリングを行っていることを確認するために計画された監査 31

モニタリングプランに含める事項 モニタリングプランの改訂 以下のようなことが起こった場合には 改訂につながることがあるため タイムリーに改訂できるプロセスを確立しておく必要がある 治験実施計画書の改訂 重要な治験実施計画書逸脱の定義の変更 試験の信頼性に関わる新たなリスクの発覚 モニタリング計画は 一度作成したら変更しない文書ではなく 治験を実施しながら必要に応じて改訂されるものです!! 32

リスクに基づいた SDV RBM において治験中は常に PDCA サイクルが回っている! Plan ハイリスクなデータ項目なので 100%SDV 対象とした Action SDV の割合を 20% に変更する Do 試験が開始され 100%SDV を実施 Check SDV の結果からエラーが発生しないことを確認 その時点のリスクに応じてモニタリングプランで規定された頻度に変更する 最初に設定した割合を最後まで変更しないというものではない 33

おわりに リスクアセスメント 治験実施計画書 CRF デザイン モニタリングプラン トレーニング サイトモニタリング オンサイト オフサイト セントラルモニタリング リスクに基づいて何をするか計画する 計画に従ってモニタリングする リスクの再評価 34