(2) マッハ 1.6 機の検討 ( ア ) 市場要求 巡航マッハ 1.2 から 1.8 程度までのいずれの速度が市場的に有用かいくつかの路線につき比 較してみた 東京から米国西海岸ロサンゼルス 米国東海岸ニューヨーク そして欧州パリまでの 3 路線につき各巡航マッハによる往復運航をチェックしたが 東京 -ロス間と東京-パリ間は超高速 機のマッハ 0.98 で1 日 1 往復が可能となる 東京 -ニューヨーク間はマッハ 1.2 で1 日 1 往復が可能 となる それ以上の巡航速度アップはマッハ 1.8 位になれば 東京 -ロス間と東京-パリ間で多少の 運航生産性向上が見込まれるが 東京 -ニューヨーク間についてはスケジュール上時間的余裕が 増すが 1 日 1 往復である 現在最も旅客数が多い北大西洋横断路線 例えばニューヨーク-パ リ間での往復運航でみると マッハ 1.2 で1 日おきに1 日 2 往復が可能となり マッハ 1.6 になれば 毎日 2 往復が可能となりそうである 以上の検討結果から 市場からは巡航マッハ 1.6 の超音速機の検討を提案した ただし 速度 が遅くなりエンジン負荷が小さくなるので航続距離を東京 -ニューヨークを迂回ルートで直航可能 な 6,500nm とした これらはあくまでも市場要求であり これを元に機体仕様の検討を行って 現 実的な目標機体の仕様を決定する ( 結果として現状目標機体仕様では乗客数 航続距離とも市 場要求より少ない値を採用している ) 要求値 条 件 設計レンジ 6,500 nm Typical mission rules ペイロード ( 標準仕様 ) 300 席 3 class seating at 210 lbs/ 席 巡航速度 マッハ1.60 陸上は0.95 亜音速巡航 離陸距離 11,000 ft. 以下 at 最大離陸重量, SL, ISA + 20 アプローチ速度 145 kt 以下 at 最大着陸重量, SL 初期巡航高度 40,000~59,000 ft at ステップ巡航高度 騒音値 Stage-4 以下 ( 今後の規制動向を見て修正する ) エミッション CAEP-4 以下 ( 今後の規制動向を見て修正する ) 経済性 747-400 運賃の+30% 以下 ( 図 3-1-2-7) 飛行速度と所要時間 3-A-23
( 図 3-1-2-8)TYO-LAX TYO-NYC TYO-PAR スケジュール ( 図 3-1-2-9)NYC-PAR 往復運航スケジューリング ( イ ) 巡航速度の選定巡航速度としてマッハ 1.6 を選定した その理由は これまでのマッハ 2.2 ではエンジン騒音低 減の為の重量ペナルティが大きいこと および空力加熱に対処するため耐熱材料の使用により 重量 コストペナルティがやはり大きくなることを解決するためである コンコルドの問題点は環境性と経済性であり それを解決しない限り次世代超音速機が日の目 を見ることはない 環境性の最大の課題は離着陸時の騒音を亜音速機並みにすることであり 現 在の亜音速エンジンはバイパス比を大きくして排気速度を下げることにより低騒音化を図ってき た 騒音は排気速度の 8 乗に比例するため非常に効果的である しかし超音速機では 2 倍以上 の速度で飛ぶためあまり大きなバイパス比を採用できない マッハ 1.6 程度であれば ある程度の 大きさのバイパス比が可能と考えた それだけでは騒音規制値を満足できないので エジェクタ 等の消音装置が必要であるが その寸法 重量を抑えることができる この高バイパス化はエンジ ンの燃費を向上させることにもなるので経済性の向上につながり一挙両得である ( ただしエンジン 3-A-24
重量は増加する ) 一方 飛行速度の減少により空力加熱が減少する マッハ 2.2 の旧 SST では空力加熱が最高 150 度にもなりアルミはもちろん通常の複合材は使えない そのため耐熱複合材の研究を行ってきたが熱劣化の問題があり 強度的にもかなりのデメリットがあった 金属の場合はチタンを使うことになるが これも重量と価格の点でアルミより不利となる コンコルドでは 100~120 度程度であり 耐熱アルミを使用していた ( 複合材はなかった ) マッハ 1.6 程度であれば 空力加熱は 60 度程度であり 通常の高強度複合材の設計要求であるホット条件 (80 度 ) より低くなる 高強度で低価格のエポキシ系複合材や通常の高強度アルミ合金系が使用できることになり 軽量化 低コスト化が期待できる 軽量であればエンジン推力を落とすことができ 騒音低減にもつながる 20 200 M2.2 騒音 10 増減量 M1.6 EPNdB 0 Stage 3 レベル Stage4 レベル以下へ低減必要 -10 200 300 400 500 600 700 800 排気速度 (m/s) 機体表面温度 ( ) 150 100 50 0 M2.2 M1.6 アルミ エポキシ使用可能 1.4 1.6 1.8 2.0 2.2 2.4 巡航速度 ( マッハ数 ) ( 図 3-1-2-10) 飛行速度マッハ 1.6 による騒音と空力加熱の低減 マッハ 2.2 の旧 SST(300 席 5,500NM) 機体をマッハ 1.6 で飛ばした場合を計算すると 最大離陸重量 : 885,383 LB(401 トン ) 856,057 LB(388 トン ) -3% Block Fuel: 1,811 LBS/ 席 1,715 LBS/ 席 -5% エンジン燃費 : 1.31 LB/hr/LB 1.15 LB/hr/LB -12% となる 巡航マッハ数の低下により重量軽減 燃費向上が期待できることが分かる 前述のように マッハ 1.6 であれば大西洋横断ルートで 1 日 2 往復が可能であり 超音速機と しての高速性を保って なおかつ経済性と環境性を満足し得ると考える その後の欧米の超音速 機計画でもマッハ 1.6~1.8 程度になってきたのを見ても妥当な選択であろう ( ウ ) 陸上超音速巡航の検討目標機体では 設計レンジ 6,000NM の約 30% を陸上飛行と想定し この区間はソニックブームが発生しないよう M0.95 の亜音速で巡航するとしている しかしながら 将来 陸上超音速飛行が許可されることが期待される その場合 M1.15~1.2 程度の速度ならばソニックブームは陸上へは 3-A-25
到達しない ( カットオフ ) と考えられる M1.2 で陸上を巡航した場合 東京 - ニューヨークで約 1 時間の短縮になる 超高速機と亜音速機の飛行時間 TYO - NYC PAR - SIN TYO - CHI TYO - PAR 1RT/day Route TYO - LAX PAR - LAX TYO - SYD TYO - YVR TYO - HNL 1.5RT/day PAR - NYC TYO - SIN TYO - BKK TYO - MNL 3RT/day 2RT/day HSTP M1.6 (M1.2 overland) HSTP M1.6 (M0.95 overland) Subsonic (M0.85 ) TYO - HKG 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 Flight Hour ( 図 3-1-2-11) 超高速機と亜音速機の飛行時間比較 ( マッハ 1.6 と 1.2) ( エ ) 目標機体仕様検討 当初の市場要求 650 の 300 席 6,500nm 600 で機体を設計すると重量が 600 トンに達し 現実的でないことが判明した そこで航続距離を 6,000nm まで下げて旧 SST レベルの 400 トン以下となる 250 席を0 次目標機仕様 Max Take-off Weight [ton]. 550 500 450 400 350 300 250 200 M2.2 SST New HSTP 300 280 260 240 No. of Seats 220 6,000 200 5,500 ( 図 3-1-2-12) 機体規模検討 6,500 Range [nm] とし 以下の要求を 満たす機体仕様を検討した 設計レンジ : 6,000 NM 座席数 : 250 席 (3 クラス ) 巡航速度 : マッハ 1.6/ マッハ 0.95( 設計レンジの 30%) 3-A-26
巡航高度 : 40,000-60,000 ft (M 1.6 ) 35,000 ft (M 0.95) 離陸距離 : 11,000 ft 以下 @ 海面上 /ISA+20 アプローチ速度 : 145 knot 以下 上昇率 : 300 ft/min 以上 ( 巡航開始点 ) 離陸重量 : 400 ton 以下 まず機体重量が最も軽くなる主翼平面形を選定するため 主翼の抗力係数が小さくなり かつ 主翼構造重量が軽くなる主翼平面形 ( 面積一定 ) を検討した 0 次ではマッハ 2.2 の SST と相似形の主翼平面形から出発し 一時は超音速前縁の台形翼も検討したが やはり超音速での造波抵抗が非常に大きく不向きであったため 亜音速前縁を基本とするクランクドアロー翼に戻した アスペクト比は 2.1~2.5 テーパー比は 5%~10% の範囲とした 前縁後退角は内舷で 60 度 ~80 度 中間部は 55 度 ~ 内舷前縁後退角 -5 度の亜音速前縁であり 外舷で超音速前縁となる 45.4 度とした その結果 以下のような主翼形状を第一次案として設定した アスペクト比 : 2.12 テーパー比 : 6.5% 前縁後退角後縁後退角内舷キンク位置外舷キンク位置 : 70 度 60 度 45.4 度 : 4 度 : 35% セミスパン : 75% セミスパン ( 図 3-1-2-13) 飛行ミッションプロファイル 旧 SST と異なり 外翼の後退角が小さく 機体重量軽減に効果的と考えた この平面形を用いてさらに主翼面積 エンジン推力を変化させ 最大離陸重量が最も軽くなる機体規模を検討した なお 飛行ミッションプロファイルは下図のように設定した 6,000nm の飛行であるが 途中に亜音速巡航部分を含むこととした 超音速巡航は 40,000ft から開始する 諸元策定プログラムによる性能計算結果を基に描いた T-S 線図を用いて 目標機体の主翼面積及びエンジン推力 ( 静止最大推力 ) を設定した 3-A-27
目標機体の機体規模策定においては抵抗や重量の推算式に 将来技術を想定した軽減 係数 技術改善係数と呼ぶ を織り込んでいる この軽減係数はコンコルド当時の技術レベルを 1.0 として どの位の割合で軽減できるかと いう値を推定したものであり 各抵抗 重量部位毎に 0.85 0.6 程度の値を設定している 複合材による軽量化等かなり実現性が高い項目があるものの 大部分は依然として厳しい 90000 目標値となっていて 現状の技術では達成で きない これらの将来技術レベルに到達する 係数を用いて設定した機体を目標機体と呼 んでいる 1200 148 エンジン推力 ための研究が必要であり そのためこの軽減 780000 87500 900 10500 147 / B L 基 旧 SST では機首を抵抗の少ない細長い形 状にする為 前方風防を無くし SVS ディスプ レで前方視界を得るとの仕様であった しかし これで本当に安全上問題ないか不安である 144 145 0 146 775000 85000 770000 82500 オ 機首形状検討 10000 785000 790000 143 1000 142 11000 600 11500 300 765000 12000 80000 8500 8750 780000 9000 主翼面積 9250 9500 ft2 図 3 1 2 14 T-S 推力-面積 線図 ため 今回は巡航時ではある程度の水平視界を得られるような風防を設け 離着陸時の下方視 界のみ SVS で表示する方式を選定した 前方風防ガラスの角度をコンコルドのバイザーとほぼ同じ 15 度に設定した 上方視界は一般 的な 20 度とし 下方視界を5度に設定した 前面ガラスで極端な不連続にならぬよう 前胴を若 干ドループさせた また これでは前方風防ガラスが大きすぎるので 内側に耐圧風防を通常の 位置に設け 前面ガラスは単なる固定式バイザーとすることで重量軽減を図る A パイロットからの上方視界 正面方向 20度 B パイロットからの下方視界 正面方向 5度 複座機の後席 と同程度 図 3 1 2 15 3-A-28 風防および機首形状の設定
( カ ) 室内配置 1 初度設定案 SST にはエコノミークラスは不要との意見もあるが 他機との機体規模の比較がし易い従来機並みの3クラス制を当初の標準座席配置とした 座席幅や通路幅は他機例を参考に将来機としての居住性もある程度アピールできるような数値とした 具体的にはビジネスクラスで他機平均値となるように座席幅 通路幅を決定すると胴体径は 4.16m となり A320 より約 20cm 大きくなった その結果 エコノミークラスでは他機より広く ファーストは同等となった ピッチは近年エアラインではフラットシートが導入され 広くなる傾向にあるが SST は飛行時間が短くなることもあり 機体メーカーの提示する標準仕様としては従来並みの 36~40 インチとした トイレ ギャレー アテンダント数については旧 SST 研究での国内エアライン要求等を参考に決定した 上部胴体は旧 SST のようなエリアルールでくびれた形状ではなく一定断面として客室配置のフレキシビリティを確保する方針をとった 座席数は胴体前後の絞りが大きく 客席配置には適さないため要求の 250 席を確保できず 226 席になった 胴体長を延長して客室を大きくすると重量増を招くため ひとまず 226 席を3クラスの標準配置とした これとは別に プレミアム料金を取りやすい配置として全ビジネスクラス配置を検討したが 40 インチピッチで 147 席となった 本機はいわゆる狭胴機であるが ワイドボディールックの居住性を与えるため2 通路で 1-2-1 配置とした 座席数は減少するが高運賃に見合う ゆったり感 は差別化のための価値があると考えた 2 通路の場合問題となるのはオーバーヘッド ストウェージ ビンで 頭上スペースが少ないため 通路からのアクセスを考えると外側座席上には設けられない そのため 中央に大きめのビンを設置することにした 高さを高くしてバッグを立てて ( または上下に2 個重ねて ) 収納できるようにした ビンは電動で上下する ( ドアは連動して開閉 ) ようにして重いビンを苦労して開け閉めしないでも済むようにする しかし このストウェージビン配置は1 通路の場合は不可能なので エコノミークラスとの組合せはできない 全ビジネスまたはファースト+ビジネス配置のみ可能な方式である 扉口サイズと個数を決めるため 最も高密度なツアークラス配置 ( 全エコノミークラス ) も検討した その結果は 282 席であり TYPE A が2カ所 TYPE III が2カ所 ( 最大 290 席が可能 ) 必要となった 3-A-29
( 図 3-1-2-16) 客室配置図 3-A-30
2 改定案初度設定の座席配置案を国内外のエアラインに提示して意見を聞いたところ やはり現状の長距離路線でのビジネスクラスに使用されているレイ フラット シートの 60 インチピッチと比べると 40 インチではいかにも狭いという意見が大多数であった SST では時間が短いので眠る必要はないという意見もあったが 5 時間以上の路線では 60 インチが必要とのことである それ以下であれば 50 インチでも良いとなった また エコノミーではなくプレミアム エコノミー (PE) とすること ファースト必要 不要の両意見があり また 現状ではあまりビジネスクラスが多くとも 1 機でそれだけのビジネス客は取れないとの意見が多く 全ビジネス機はオプションとする これらから標準座席配置はビジネス /PE の2クラスとすることにした 座席ピッチを広げていくと当然座席数が少なくなり 経済性が悪化する これまで平均運賃の 1.3 倍の運賃倍率を目標としてきたが 出来るだけその倍率に近い運航費を達成できるようなクラス配列を検討し ビジネス 60 インチを使用する長距離路線ではビジネス 60 席 PE88 席の 148 席となった 扉配置等を詳細に検討すれば少し変わり得るので標準座席配置としては機体性能計算では 150 席クラスとしてビジネス 60 席 PE90 席で計算する 一方 5 時間以下の飛行時間路線ではビジネスクラスを 50 インチとして より多くの座席数が可能とした その結果 2 クラスでは 170 席が可能となった 最大座席数を検討するため PE の 1 クラスで 36 インチピッチを設定したところ 220 席となった この座席数であれば Type A 扉は必要ないので Type B に変更することにした Type B は A の 110 人に対し 75 人まで許可され Type III 翼上脱出口の 35 人と共に合計 220 人までとなる Type B は幅が小さいため軽量化に繋がる TYO - NYC PAR - SIN TYO - CHI TYO - PAR 1 往復 / 日 Route TYO - LAX PAR - LAX TYO - SYD TYO - YVR TYO - HNL PAR - NYC TYO - SIN TYO - BKK 1.5 往復 / 日 2 往復 / 日 HSTP M1.6 (M0.95 overland) Subsonic (M0.85) 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 Flight Hour 5 時間以下の飛行なら 50 インチピッチのビジネス席で十分 5 時間以上の飛行には 60 インチピッチのビジネス席が必要 ( 図 3-1-2-17) 飛行時間とビジネス席の必要ピッチ 3-A-31
5 時間以上 5 時間以下 ( 図 3-1-2-18) 飛行時間と座席配置案 3-A-32
( キ ) 超音速機用エンジン仕様の検討マッハ 1.6 では機体抵抗の増大に伴い必要なエンジン推力が増大し 且つ 高速飛行に伴うラム温度上昇により燃料消費率が悪化し これらの積として燃料消費量が増大する 従って 巡航速度に対応したエンジン最適化が課題である 最新の亜音速機と較べてバイパス比の低いターボファンエンジンとなるため 排気ジェット速度が速く そのままでは騒音規定を満足できない 離着陸時の排気ジェット騒音を Stage-4 以下にする最適エンジン仕様の検討を行った 排気ジェット騒音低減方式として エジェクタ方式 シュート方式 ミキサ方式及び排気速度制御方式について比較検討を実施し 重量に若干デメリットがあるが 騒音低減の効果が最も高いと予想されるエジェクタ+シュート方式とした なお高周波帯の騒音低減のため吸音ライナを装着する ( 表 3-1-2-2) 排気ジェット騒音低減方式の検討 形式 エジェクタ方式 シュート方式 排気速度制御方式 (P&W 方式 ) エジェクタ + シュート方式 騒音低減効果 (-5dB 程度 ) (-5dB? 程度 ) (-6dB 程度 ) (~-10dB 程度 ) 重量 離陸時のエンジ ン推力への影響 開発リスク 総合評価 ミキサ方式は 基本原理がシュート方式と同じであるため 省略する 1エジェクタ方式排気ジェットのエジェクタ効果を利用して外部空気を排気ノズル内に引き込み 質量流量を増加させることにより排気出口径を大きくし 排気速度の低減を図る方式 2シュート方式排気ジェットを花びら型ノズル内に流すことにより多数の小さなジェットに分散し 排気ジェット全体の表面積を拡大させる これにより花びら型の機器の外側を流れる周囲流との混合を早め 排気ジェット速度の減衰を促進する方式 3ミキサ方式排気ジェット内にミキサを挿入し 排気ジェットを多数の小さなジェットに分散し 排気ジェット全体の表面積を大きくすることにより周囲流との混合を早め 排気ジェット速度の減衰を促進する方式で 基本原理はシュート式と同じであり これらの方式は現状の亜音速用エンジンの騒音低減手法としてよく用いられる方式 3-A-33
4 排気速度制御方式 外側に速度の速い排気ジェットの流れ 内側に速度の遅い排気ジェットの流れを作ることに より コアニュラ効果と呼ばれる現象により 騒音低減効果を生み出す (a) エジェクタ方式 (b) シュート方式 (c) ミキサ式 (d) 排気速度制御方式 ( 図 3-1-2-19) 各種の排気ジェット騒音低減方式 H16 年度まではバイパス比 2.0 のエンジンをベースに検討を行ったが H17 年度より HYPR/ESPR 研究によるデータを参考として用い更にバイパス比を高め燃費の改善を図っている まず エンジン径を出来るだけ小さくして重量増を抑え 燃費 騒音低減 排出ガス低減等を考慮して 2 段ファン 全体圧力比 OPR30 タービン入口温度 TIT1550 のサイクルを候補エンジン形態として選択した ファン段数およびOPRは比推力やエンジン重量の観点から TITは騒音低減量やNOx 排出の観点からによる まず 各種パラメータを振って最適値を検討した 1 全体圧力比 (OPR:Overall Pressure Ratio)=20 30 40 50 2 ファン圧力比 ( ファン段数 )=1 段 2 段として チップ周速を変えて 圧力比を変化 3 TIT=1,550 1,600 1,650 1,700 1,750 ( 地上静止時 ) 4 設計点を地上静止 (SLS:Sea Level Static) とし 離陸推力要求に見合うエンジンサイズ ( ファン直径 ) を設定して検討を行った 5 バイパス比は ファン圧力比 OPR TITから バイパス側とコア側の出口圧力のバランスがとれる設定とした 飛行プロファイル上での推力を満足させると 1 段ファンではTITが最大状態となりタービンの寿命という点では厳しい 2 段ファンではTITが離陸時で最大となり 超音速巡航時には低くなるので亜音速用エンジンと同じとなる 2 段ファンがチップ周速を低減でき SFC 比推力などの点で望ま 3-A-34
しいエンジン形態となる またエンジン性能による機体の最大離陸重量への影響感度係数を設定し 評価を行った その結果 SFCが最も影響が大きいことが判明した しかしながら エンジン直径は大きすぎると搭載が出来なくなるため 重量感度は低くとも現実的なサイズにしなくてはいけない SFCに対する感度: 2.19 (%/%) (M2.2では1.95) エンジン推重比に対する感度: 0.45 (%/%) (M2.2では0.52) エンジン直径に対する感度: 0.25 (%/%) (M2.2では0.30) ( 図 3-1-2-20) エンジンおよびナセルの寸法図 エンジンの規模は母機の機体規模により変化するが 第 1 次の検討のベース用のエンジンとしてファンチップ周速 427m/s OPR=30 TIT=1550 でMTOWの減少が大きく 最終諸元を ファン径 =2.5m BP 比 =3.41 エジェクタL/D=0.73( 長さ1.83m) とした エンジン重量は エジェクタ込みで8トン /1 基 このエンジンサイズは機体と組み合わせての最適化の中で変化し 最終的なサイズが決まる 大きな変化があるときにはエンジン内部の空力的な条件が変わるため再度サイクル計算が必要となる 現在は 要求仕様のエアラインコメントに基づく見直し 飛行ミッションプロファイルの最適化等により機体規模が減少し エンジン諸元は ファン径 =2.1m BP 比 =3.41 エジェクタL/D=0.73( 長さ 1.5m) エンジン重量はエジェクタ込みで5.5トン/ 基となっている 3-A-35
( ク ) 目標機体仕様のアップデートこれらの室内配置や空力特性最適化やエンジン仕様検討の成果を取り入れて機体仕様をアップデートした 新目標機体を設定するに当たって以下のように設定を変更した ペイロード:250 席 (F22 B76 E152) 150 席 (B60 PE90) 着陸時残燃料:33.3% 25% 上昇プロファイル: 離陸終了時から巡航開始までを Specific range 最大のパスに設定 リザーブ区間:Alternate 距離 :260 200nm Holding 高度 :10,000 1,500ft これらのパラメータを入力して機体諸元検討を行い目標機体を設定した E / G 機体諸元 機体性能 静止最大推力 (ISA, SL, 1 基当り ) kn/eg 257 ( 57,883lbf/EG) エンシ ン重量 ( エシ ェクタ込 1 基当り ) kg/eg 5,531 ( 12,194 lb/eg) 主翼面積 m2 567.7 ( 6,110 ft^2) 水平尾翼面積 m2 79.9 ( 860 ft^2) 垂直尾翼面積 m2 49.3 ( 531 ft^2) スハ ン m 35.65 ( 117.0 ft) MTOW ( 最大離陸重量 ) kg 224,736 ( 495,453 lb) MLW ( 最大着陸重量 ) kg 126,075 ( 277,945 lb) MZFW ( 最大ゼロ燃料重量 ) kg 101,517 ( 223,804 lb) OEW ( 運航空虚重量 ) kg 77,921 ( 171,785 lb) 燃料重量 @Design Mission kg 131,547 ( 290,009 lb) ヘ イロート @Design Mission kg 15,268 ( 33,660 lb) Max Payload (=MZFW-OEW) kg 23,596 ( 52,020 lb) T/W @MTOW - 0.467 W/S @MTOW kg/ m2 395.9 ( 81.1 lb/ft^2) W/S @MLW kg/ m2 222.1 ( 45.5 lb/ft^2) 燃料タンク容量外翼タンク ( ルート~チッフ ) little 103,837 ( 27,431 USG) 胴体タンク ( 中央翼 トリムタンク ) little 66,266 ( 17,506 USG) 離陸滑走路長 ( 要求 11,000ft 以下 ) m 2,120 ( 6,956 ft) 巡航開始時上昇率 ( 要求 300ft/min 以上 ) m/min 137 ( 448 ft/min) アフ ローチ速度 ( 要求 145kt 以下 ) kt 145.0 ( 269 km/h) 燃料タンク余裕 ( 要求 0 以上 ) USGal 14,269 ( 3,769 USG) 250 80 SOI 70 装備 200 60 重量 (ton) 150 100 50 燃料 ヘ イロート SOI 装備 ( 発動機を含む ) 構造 燃料ヘ イロート SOI 装備構造 重量 (ton) 50 40 30 20 10 発動機脚胴体尾翼主翼 SOI 装備発動機脚胴体尾翼主翼 0 0 H21 目標機体 ( 図 3-1-2-21) 機体重量内訳グラフ 3-A-36 H21 目標機体
第 1 超音速巡航は 40,000ft から開始し 燃料減少と共に高度を上げていく その後一旦亜音 速巡航のために 39,000ft まで降下して一定高度で飛行する その後また第 2 超音速巡航のため 速度 高度を上げる エンジン出力は超音速巡航中はほぼ 100% 出力である 高度 ( 100ft) 600 550 500 450 400 超音速巡航 亜音速巡航 超音速巡航 350 300 0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 7,000 飛行距離 (nm) エンジンレーティング (%) 120% 100% 80% 60% 40% 20% 超音速巡航 亜音速巡航 超音速巡航 0% 0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 7,000 飛行距離 (nm) ( 図 3-1-2-22) 飛行高度とエンジンレーティング 超音速では L/D 最大値よりわずかに下で飛行する 16 14 12 H21 M0.95 巡航 10 L/D 8 6 4 2 H21 M1.6 巡航 H21(M1.6, 40000ft) H21(M0.95, 39000ft) 0 0.000 0.050 0.100 CL 0.150 0.200 0.250 ( 図 3-1-2-23)CL-L/D 3-A-37
この機体のペイロード レンジ チャートを示す 標準の 150 席では 6,000nm であるが 最大座 席数の 220 席では 5,500nm まで低下する 一方 全ビジネス 104 座席であれば 6,300nm が可 能となる 25,000 20,000 Optional 220 seats(all Premium Economy) H21 HST(HST2112) F: First B: Business PE: Premium Economy Payload Weight (kg) 15,000 10,000 5,000 0 Standard 150 seats (B:60, PE:90) Optional 118 seats (F:6, B:62, PE:50) Optional 104 seats (ALL Business) Standard 150 seats :6,000nm Optional 118 seats :6,200nm Optional 104 seats :6,300nm Optional 220 seats :5,450nm ISA+5C/NO WIND 5% TRIP FUEL ALLOWANCE, 30min HOLDING 200nm DIVERSION PAYLOAD (First 242lb, Business 231lb, Economy 220lb) 0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 7,000 8,000 Range (NM) ( 図 3-1-2-24) ペイロード レンジ チャート 次にこの新目標機体の三面図を作成するため 各コンポーネントの配置を検討した 胴体形状は 座席数は減ったが座席配置を変えただけであり 形状はこれまでと変更はない 主翼も平面形は H18 年度に設定した形状を踏襲しており ( 翼断面は改訂 ) それを相似形で伸縮している 問題はエンジンナセルの位置である ナセルが主翼に比較して非常に大きく 主脚より外側に付ける必要があるため 主翼に対して取り付け位置の調整代がほとんど無い 主翼面積エンジンナセル位置は主翼前縁フラップと主脚からクリアランスを保ってぎりぎりまで近づけることにより主翼後縁からのノズル突き出しをできるだけ小さくするようにした それでもエンジン位置は主翼桁間に対してかなり後ろにきてしまい エンジン支持ストラットの設計が非常に難しい エンジン取り付け構造は今後検討が必要であ る エンジン取り付け部の主翼地上高 ( 図 3-1-2-25) 脚位置と主翼上半角 はエンジンノズルと地面とのクリアランス余裕を保つように上下位置を決定する この位置で主 3-A-38
脚の長さが決まり 横方向の脚位置を調整する エンジン位置はそれにまた影響される 現在 の第 1 キンク部は翼根から少し上反角が付いている 外翼は水平としたのでいわゆるガル翼と なっている ( 図 3-1-2-26) 脚位置と主翼上半角 ( ケ ) 脚方式と配置本機は重量こそ広胴機並みであるが胴体は狭胴機であるため広胴機並みの主脚を用いることは出来ない 旧 SST ではウイングギアとボディギアの4 本脚であったがそのため脚室部による主翼と胴体の切り欠きが大きくなり 主翼桁間が小さく 重量が増大するという欠点があった そのため8 輪ボギー方式で車輪サイズを小さく抑えて (737 サイズのタイヤ ) 胴体に格納できるサイズとし 2 本脚のみで成立させる方式とした 最大 RAMP 重量は FAR25 に従って MTOW の 1.07 倍とした ( 25 図 主脚車輪数と最大離陸重量の関係 1 20 主脚車輪数 ( 輪 ). 2-3 ) 15 10 5 737 サイズ H44.5x16.5-21 767 サイズ H46x18.0-20 777 サイズ 52x21.0R-22 最 大 離 0 0 100 200 300 400 500 600 700 最大離陸重量 (MTOW) (ton) ( 図 3-1-2-27) 最大離陸重量と主車輪のサイズと数 MTOW が減少したのでこれまでの 737-800 用タイヤ (H44.5x16.5-21) の8 輪から 767-200ER 用 (H46x18.0-20) の 6 輪ボギー化が可能となった 脚引き込みメカニズムのシンプルさと 車輪間隔を狭く出来ることから これまでの縦置き格納 3-A-39
方式を改め 通常の機体と同様な横置き格納方式とした 脚格納部の長さが縦置き方式より約 400mm 短くなるので燃料タンク容量が約 10m 3 増加する これは全燃料タンクの約 5% に相当する この分 胴体燃料タンクを削減できる なお 脚柱長さからすると さらに後方に格納することが可能で 脚の斜め引き込み角度を小さくできるが これ以 上桁間を小さくしたくないため 後方隔 壁位置を不変とした ( 図 3-1-2-28) 主脚方式の検討 一方 車輪は胴体内には納まりきらないので機外に張り出してしまう 超音速機としては付けたくないが 脚フェアリングがどうしても必要になる 車輪縦置きの方がフェアリングは小さくなるのだが 主翼内への脚柱の納まりを考慮すると車輪位置を下げねばならずフェアリングも大きくなるので横置きでも大差ないと考える CFD により縦置き脚フェアリングの抵抗増分を解析したところ 1.4 カウント程度であっ た ( 図 3-1-2-29) 主脚格納方式 ( コ ) 燃料タンク容量 配置の検討燃料タンクは主翼の最外部を除いて桁間全てとするが エンジン上部はドライエリアとする 胴体下部は当初は主翼前端から後桁位置までを燃料タンクと考えていたが 機体検討の進捗により燃料量が減少してきたので 脚室後方の桁間上部と後方のトリムタンク部以外は必要なさそうである 主翼桁間貫通部は主翼上面外板を与圧面とするため その上を燃料タンクとする場合はバグタンクになる 後方トリムタンクも床を耐圧壁にするのは重量増加となるので現状長距離機のような別の胴体内燃料タンクを設置することになろう 燃料タンク容量 ( 前方トリム+メイン ) は 210.3m 3 ( メインタンクが 155.5m3 前方トリムタンクが 54.8m3) となり 標準ミッション必要燃料容量である 209.6m 3 を満たしている 3-A-40
( 図 3-1-2-30) 燃料タンク分布 飛行中の重心調整は燃料の移送によって行われる そのため主翼の前方は前方トリムタンクとし 胴体の耐圧隔壁の前後に後方トリムタンクを設ける 離陸時はトリム用の燃料は前方トリムタンクにあり 速度上昇に伴って後方トリムタンクに移送される 大量の燃料を高速に移送する技術も必要となる ( 図 3-1-2-31) 燃料移送による重心調整 3-A-41
( サ ) 構造配置次に三面図を元に構造配置を検討した 重量軽減の為 主要構造は基本的に複合材構造とする マッハ 1.6 では耐熱性の問題が無いため エポキシ系複合材が使用できる 但し エンジンや APU 近傍等の高温部では耐熱複合材の使用が必要になる可能性もある その他の脚取付部等の大荷重部や扉口 結合金具等はチタン合金等の金属構造となる 胴体構造はスキン ストリンガ構造で フレームピッチを 23 インチに設定した 扉口は非常脱出要求から当初は Type A を前後に二カ所 Type III を翼上に二カ所設けた 最前方の Type A 扉 ( 幅 42 インチ ) は乗降口としての機能性から高さを 74 インチ ( 規定は 72 インチ ) とする 後に最大乗客数を 220 席に減少したため 前後の乗降口は一回り小さい Type B( 幅 32 インチ ) に変更した 胴体後方の耐圧隔壁は平板タイプとし その後はトリム用の燃料タンクとする 主翼はマルチスパー構造とし ストリンガとリブ間隔は出来るだけ広くする 上反角の無い主翼であるため コンコルドの様に前後方向を分割して 左右翼の一体成形を可能にする 但し外翼先端部は翼厚も薄く 燃料タンクとしないためフルデプス ハニカム構造となる可能性が高いので 別構造としてスプライスすることになろう 水平尾翼はオールフライングテールとし 構造は垂直尾翼とも通常の二本桁とスキン ストリンガ構造で 前後縁はハニカムサンドイッチ構造である 構造分野の要素研究として主翼構造の検討に取組んでおり 構造配置の最適化により重量の最小化を図る また 主翼厚みを増加させて重量軽減を図ることも空力抵抗解析とタイアップして検討している 今後その成果を取り入れてさらに構造様式を改善していく予定である 3-A-42
3-A-43 ( 図 3-1-2-32) 目標機体の三面図
3-A-44 ( 図 3-1-2-33) 目標機体の構造線図
線1 1.5 往復 / 日路( シ ) 運航生産性現在の法律ではソニックブームを発生する陸上超音速飛行は許されていないため 海上のみマッハ 1.6 で飛び 陸上は音速以下のマッハ 0.95 で飛ぶ設定になっている 従って ルートによって時間短縮率が変わってくる ほとんど海上を飛ぶことが可能なニューヨーク-パリ線や東京 -ロス線等ではマッハ 0.85 亜音速機に対し 時間短縮が 40~45% となり その分 年間運航回数は増加するので 亜速機に対し約 25% 前後の運航生産性向上となる 一方 東京 -ニューヨークや東京 -パリのような陸上の多い路線等では 時間短縮が 30% 程度にしかならず運航生産性は亜速機に対し 10% 程度のアップに留まる 対象路線全体では運航生産性は平均 17% 程度の向上となるであろう 0.5 1 往復 / 日 1.5 2 往復 / 日 飛行時間 ( 図 3-1-2-34) 超高速機による飛行時間短縮と運航効率向上 ニューヨーク-ロンドン パリ等の大西洋横断路線は最も需要の多い路線である ほとんどが海上であるため超音速機の利点が最も活かされ コンコルドも最後はこの路線だけを飛んでいた 7 時間の距離が 4 時間強で飛行できるため 1 日 2 往復が可能となり 亜音速機 2 機分の働きをすることになる 機体価格は高くなるが その半分で賄えるということになる 東京 -ニューヨーク等の長距離路線でも1 日 1 往復が可能となり 機体を到着地にステイさせる必要がない また 飛行時間短縮により 交代乗員を乗せる必要が無く 人件費の軽減とともに 機体にクルーレスト ( 乗員休憩室 ) を設ける必要もない また 2 都市間だけでなく 3 都市 4 都市を結んで運航することにより 機材を効率的に使える 3-A-45
ようになる 長い区間と短い区間を組み合わせば 機体の開いている時間を出来るだけ少なくすることが出来る 現在は 多国間を1 社が自由に路線設定することは出来ないが オープンスカイが広まれば 将来そのような運航も可能となるであろう ( 図 3-1-2-35) 多都市間運航の検討 ( ス ) 市場性評価需要予測にあたって超高速機の潜在旅客数の増加予測を行った 超高速機に適した路線を選定するため 1,100nm 以上の世界の路線から交通量の多い 545 路線を抽出した さらに 予測の簡便化のため 1,000km 以内の都市を1つの都市で代表 ( パリにはフランクフルトやアムステルダムを含む 日本は東京のみ ) させて 86 路線を選定した ( 代表 86 路線と呼ぶ ) 2025 年時点でのこの路線の潜在旅客数は約 4 億 5 千万人であり 大西洋横断路線とアジア域内路線の伸びが大きいことが判る また 有償旅客距離 RPK( 旅客数と路線距離 km を掛けたもの ) でいうと 2025 年で約 2 兆 9 千 3 百億人 km となり全世界の有償旅客距離の約 28% に相当する このように 長距離路線のみの対象機といえども 市場規模は充分に大きいと言える 3-A-46
( 図 3-1-2-36) 代表 86 路線の旅客伸びの予測 超高速機では亜音速機に較べて燃費の悪さや重量増から運航費が増大するのは避けられない しかし 高速性による利便性から運賃が上昇しても利用する旅客は存在し それは短縮時間に対する運賃上昇の許容値 すなわち時間価値で決まってくる これは個人個人で変わってくるので幅があるが 平均運賃の 1.3 倍程度であれば成立すると考えられる この時の平均運賃とは 乗客が支払っている実際の運賃の全平均 ( ファーストからエコノミまで含めた ) のことであり いわゆる正規運賃のことではない 従って かなり低い運賃である つまり 乗客一人当たりの運航費が競合する亜音速機の 1.3 倍以内なら良いことになる 亜音速機も年々経済性が向上するので 常に厳しい競争にさらされるだろう 比較対象機として 座席数のほぼ同等な亜音速機ボーイング 787 を選定し 運賃比較を行った 路線によって差があるが 代表 86 路線網全体では運賃比は約 1.33 倍となった また 需要機数は約 1,650 機となった これは座席数を以前の目標機体の 250 席クラスとした場合であるので 座席数を減少させていくと当然座席数当たりの機体価格が上昇していくので運航費 / 席は増加し シェアと需要機数は減少する 現在はエアライン調査結果を基に座席数を減少させて 客席幅 ピッチを増大させた居住性の良い客室配置を持った機体へ目標機体を改善した そのため座席数当たりの運航費は増加してしまうが 運賃単価の高いビジネスクラスの比率を上げ またエコノミークラスを止めてプレミアム エコノミークラスにすることにより充分カバー可能と考えている 3-A-47
1.5 2,000 1.4 1,750 運賃倍率 1.3 1.2 需要機数 1,500 1.1 1,250 1 0 1 2 3 4 5 燃料費 ($/ ガロン ) 1,000 0 1 2 3 4 5 燃料費 ($/ ガロン ) ( 図 3-1-2-37) 超高速機の燃料価格による運賃倍率と需要機数予測 これらの市場性検討と機体仕様等に対するエアラインの評価を探るため内外の代表エアラインへの訪問調査を行った 結果は巡航速度をマッハ 1.6 に設定したことに対してはほとんどのエアラインが賛意を示した しかし 座席数や航続距離についてはエアラインの持つ路線によって様々な希望があり 仕様決定の難しさを伺わせる 運賃については 1.3 倍以内なら許容できるとする意見が多かった また 客室配置については身近であるため最も多くの意見が寄せられ 超音速機といえども現状長距離機並の居住性が要求された 座席ピッチはビジネスクラスでレイフラットに必要な 60 インチが必要であるが 5 時間以下なら狭くとも良いとのこと エコノミー客は高い料金を払わないのでビジネス客を対象とすべきこと プレミアム エコノミークラスを作るべきとの助言を得た ファーストクラスは不要という意見と やはりステータスのためにも必要との 2 つの意見に別れたので オプションとして 3 クラス案も用意することが必要であろう 全ビジネスクラスについては座席数が多いため 1 機でそれだけのビジネス客を集められないという意見がある しかし これは現状の需要からの意見であり 将来は増加する可能性があると考える 現に大型機を全ビジネスクラスで運航するエアラインも現れてきている 全ビジネス配置もオプションとして用意すべきである 今後も前記の運航性検討とともに さらに運賃実態調査や運航費推算 エアラインとの意見交 換を重ね 市場性調査を進めていく予定である 3-A-48
( 表 3-1-2-3) マッハ 1.6 機に対する国内外エアラインの意見概要 SST 全般 : 速度 : 航続距離 : 座席数 : 運賃 : 環境性 : 居住性 : 経済性さえ良ければ利便性から将来性がある マッハ1.6で良い 1 機で亜音速機の2 機分の運航ができ効率的 6,000nm(11,120km) 程度を直行便可能な航続距離が必要 100~300 席が適当 平均運賃の30% アップ程度以内なら乗客は速度向上を選択するだろう 騒音 排ガス等の規制値を満足すること ビジネスクラスを中心とするべき エコノミークラスは不要 プレミアムエコノミーなら有り得る 5 時間程度以上の飛行ではビジネスクラスにフラットシートが必要 3-A-49