そこで、X男は、八年前にY女が出した離婚届は民法742条に該当し、無効だと裁判を起こした

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民法 ( 債権関係 ) の改正における経過措置に関して 現段階で検討中の基本的な方針 及び経過措置案の骨子は 概ね以下のとおりである ( 定型約款に関するものを除く ) 第 1 民法総則 ( 時効を除く ) の規定の改正に関する経過措置 民法総則 ( 時効を除く ) における改正後の規定 ( 部会資

1 A 所有の土地について A が B に B が C に売り渡し A から B へ B から C へそれぞれ所有権移転登記がなされた C が移転登記を受ける際に AB 間の売買契約が B の詐欺に基づくものであることを知らなかった場合で 当該登記の後に A により AB 間の売買契約が取り消された

Unit1 権利能力等, 制限行為能力者 ( 未成年 ) 1 未成年者が婚姻をしたときは, その未成年者は, 婚姻後にした法律行為を未成年であることを理由として取り消すことはできない (H エ ) 2 未成年者が法定代理人の同意を得ないで贈与を受けた場合において, その贈与契約が負担付の

〔問 1〕 A所有の土地が,AからB,BからCへと売り渡され,移転登記も完了している

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第 1 民法第 536 条第 1 項の削除の是非民法第 536 条第 1 項については 同項を削除するという案が示されているが ( 中間試案第 12 1) 同項を維持すべきであるという考え方もある ( 中間試案第 12 1 の ( 注 ) 参照 ) 同項の削除の是非について どのように考えるか 中間

第 2 章契約の成立と有効性 1 契約の成立 赤字は講座紹介コメントです 1, 契約の成立 (1) 契約の成立要件 契約は, 申し込みの意思表示と承諾の意思表示の合致によって成立する (2) 合致の程度実は論文でも重要だったりする論点を再確認できます 内心において合致していれば, 外形において合致し

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の実現が認められているもの意思表示を重要な要素とし 意思に基づいて 意思どおり法律効果が発生するもの 2 法律行為の種類 () 契約対立する 2 個以上の意思表示が合致して成立する法律行為 ex 売買契約など (2) 単独行為ひとつの意思表示だけの法律行為 相手方のある単独行為 ex 取消し 追認

平成  年(オ)第  号

12

控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し

民事訴訟法

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を設けるべきか 民法第 772 条第 2 項は, 同条第 1 項を前提に, 懐胎から分娩までの医学上の最長期を元に, 婚姻の解消の日から300 日以内に出生した子は婚姻中に懐胎したものと推定するものである これに対しては, 経験則上, 夫婦関係の破綻から離婚届の提出までは一定の期間を要することが多く

7 平成 28 年 10 月 3 日 処分庁は 法第 73 条の2 第 1 項及び条例第 43 条第 1 項の規定により 本件不動産の取得について審査請求人に対し 本件処分を行った 8 平成 28 年 11 月 25 日 審査請求人は 審査庁に対し 本件処分の取消しを求める審査請求を行った 第 4


養子縁組届 血縁関係による親子関係がない者や嫡出の親子関係がない者の間に 嫡出親子と同等の関係を創る法律行為です 要件として家庭裁判所の許可や同意者を必要とする場合もあります 根拠法令戸籍法第 66 条 第 68 条 民法第 792 条 ~ 第 798 条届出期間届出をした日から法律上の効力が発生届

〔問 1〕 Aは自己所有の建物をBに賃貸した

2. 家事審判法 9 条 1 項乙類 1 号 ( 家事審判の分類 ) 1 項 家庭裁判所は 次に掲げる事項について審判を行う 乙類 1 号 民法 752 条の規定による夫婦の同居その他の夫婦間の協力扶助に関する処分 (1) 家事審判の流れ配偶者に同居を求める請求については 家事審判法によって家庭裁判

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制限行為能力者 1 マンションの管理組合法人Aが マンション管理業者Bとの間で管理委託契約締結の前に Bが管 理業務主任者をして 重要事項の説明をさせ その後 本件契約を締結した 本件契約を締結した Aを代表する理事Cが本件契約締結後に行為能力を喪失したときは その後 C以外のAの理事に よって本件

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指針に関する Q&A 1 指針の内容について 2 その他 1( 特許を受ける権利の帰属について ) 3 その他 2( 相当の利益を受ける権利について ) <1 指針の内容について> ( 主体 ) Q1 公的研究機関や病院については 指針のどの項目を参照すればよいですか A1 公的研究機関や病院に限ら

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(イ係)

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離婚を経験することは、喜ばしい事ではありませんが、どうしても夫婦の間で問題を解決できずに離婚を決意することが必要な場合もあります

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2 譲渡禁止特約の効力改正前は 譲渡禁止特約を付した場合は債権の譲渡はできない ( ただし 特約の存在を知らない第三者等には対抗できない ) とされていましたが 改正法では このような特約があっても債権の譲渡は効力を妨げられないことを明記しました ( 466Ⅱ 1) ただし 3に記載するとおり 債務

13 条,14 条 1 項に違反するものとはいえない このように解すべきことは, 当裁判所の判例 ( 最高裁昭和 28 年 ( オ ) 第 389 号同 30 年 7 月 20 日大法廷判決 民集 9 巻 9 号 1122 頁, 最高裁昭和 37 年 ( オ ) 第 1472 号同 39 年 5 月

ウ譲渡人について倒産手続の開始決定があった場合エ債務者の債務不履行の場合 (3) 譲渡禁止特約付債権の差押え 転付命令による債権の移転 2 債権譲渡の対抗要件 ( 民法第 467 条 ) (1) 総論及び第三者対抗要件の見直し (2) 債務者対抗要件 ( 権利行使要件 ) の見直し (3) 対抗要件

強制加入被保険者(法7) ケース1

事実 ) ⑴ 当事者原告は, 昭和 9 年 4 月から昭和 63 年 6 月までの間, 被告に雇用されていた ⑵ 本件特許 被告は, 次の内容により特定される本件特許の出願人であり, 特許権者であった ( 甲 1ないし4, 弁論の全趣旨 ) 特許番号特許第 号登録日平成 11 年 1

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それでは この意思表示に瑕疵がある というのはどういうことでしょうか 瑕疵 というのは 普通の用語で言えば 疵 ( キズ ) がある ということですが 意思表示の構造についてご説明したとおり 意思表示は効果意思と表示意思からなりますから 意思表示の瑕疵も理論的には 効果意思に瑕疵がある場合と 表示意

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離婚したら・・・・

未成年の子が婚姻する場合 原則として父母双方の同意を要するが 父母の一方が同意しない場合 父母の一方が知れない場合や死亡した場合 又はその意思を表示できない場合は 他の一方の同意で足りる (737ⅠⅡ) 結局 父母のどちらか一方の同意で足りる 父母がいない場合でも 未成年後見人の同意を得ることを要し

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上陸不許可処分取消し請求事件 平成21年7月24日 事件番号:平成21(行ウ)123 東京地方裁判所 民事第38部

き一 修正申告 1 から同 ( 四 ) まで又は同 2 から同 ( 四 ) までの事由が生じた場合には 当該居住者 ( その相続人を含む ) は それぞれ次の 及び に定める日から4 月以内に 当該譲渡の日の属する年分の所得税についての修正申告書を提出し かつ 当該期限内に当該申告書の提出により納付

達したときに消滅する旨を定めている ( 附則 10 条 ) (3) ア法 43 条 1 項は, 老齢厚生年金の額は, 被保険者であった全期間の平均標準報酬額の所定の割合に相当する額に被保険者期間の月数を乗じて算出された額とする旨を定めているところ, 男子であって昭和 16 年 4 月 2 日から同

年 10 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 3 被控訴人 Y1 は, 控訴人に対し,100 万円及びこれに対する平成 24 年 1 0 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 4 被控訴人有限会社シーエムシー リサーチ ( 以下 被控訴人リサーチ

求めるなどしている事案である 2 原審の確定した事実関係の概要等は, 次のとおりである (1) 上告人は, 不動産賃貸業等を目的とする株式会社であり, 被上告会社は, 総合コンサルティング業等を目的とする会社である 被上告人 Y 3 は, 平成 19 年当時, パソコンの解体業務の受託等を目的とする

た損害賠償金 2 0 万円及びこれに対する遅延損害金 6 3 万 9 円の合計 3 3 万 9 6 円 ( 以下 本件損害賠償金 J という ) を支払 った エなお, 明和地所は, 平成 2 0 年 5 月 1 6 日, 国立市に対し, 本件損害賠償 金と同額の 3 3 万 9 6 円の寄附 (

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微弱な場合 ( 最判昭 ) などがある 判例最判昭 事案 : 密輸資金の準備のためとして 15 万円の貸与を強く要請され やむを得ず融資したという事情のもとで 15 万円の貸金返還を請求した 判旨 : 上告人が本件貸金を為すに至った経路において多少の不法的分子があったと

したがって, 本件売却は,362 条 4 項 1 号に基づき取締役会決議が必要である 2) 利益相反取引に該当するか (356 条 1 項 2 号,3 号 ) 甲社は取締役会設置会社であるから, 本件売却が甲社において直接取引または間接取引に該当するときも,356 条 1 項 2 号または3 号,3

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平成  年(オ)第  号

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遺者であったが 事情があって遺贈の放棄をした 民法 986 条の規定によれば 受遺者は 遺言者の死亡後 いつでも 遺贈の放棄をすることができ 遺贈の放棄は 遺言者死亡のときに遡ってその効力を生じるとされているから 前所有者から請求人に対する本件各不動産の所有権移転の事実は無かったものであり 請求人は

平成  年(行ツ)第  号

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2,606 円 B2,703 万 2,606 円 C2,641 万 4,735.5 円 D2,637 万 5,221.5 円であると主張した そこで共同相続人等は平成 12 年 5 月 30 日 争いのある部分につき引き続き協議を行い 協議が調わない場合共同口座をいったん解約し Y が解約金を預かり

次のように補正するほかは, 原判決の事実及び理由中の第 2に記載のとおりであるから, これを引用する 1 原判決 3 頁 20 行目の次に行を改めて次のように加える 原審は, 控訴人の請求をいずれも理由がないとして棄却した これに対し, 控訴人が控訴をした 2 原判決 11 頁 5 行目から6 行目

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五有価証券 ( 証券取引法第二条第一項に規定する有価証券又は同条第二項の規定により有価証券とみなされる権利をいう ) を取得させる行為 ( 代理又は媒介に該当するもの並びに同条第十七項に規定する有価証券先物取引 ( 第十号において 有価証券先物取引 という ) 及び同条第二十一項に規定する有価証券先

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( 図表 2) 民法と相続税法における取り扱いの差異 民法 相続税法 法定相続人に含める養子の数 何人でも相続人になれる 実子がいる場合 :1 名まで 実子がない場合 :2 名まで 相続の放棄 相続人の数に入れない 相続税の総額の計算上は法定相続人の数に含める 贈与財産 特別受益として持戻し ( 財

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不在者財産管理人:

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いても使用者責任が認められることがあります 他方 交通事故の原因が相手方の一方的な過失によるものであるなど 被用者に不法行為責任が発生しない場合には 使用者責任も発生しません イ 2 使用関係被用者との使用関係については 実質的な指揮監督関係があれば足りるとして広く解されており 正社員 アルバイト

2 履行命令 ( 人訴法 39 条 ) 11 第 2 部 人事訴訟類型 関連手続と書式 第 1 章 婚姻関係事件 第 1 節婚姻無効の訴え 14 1 意義および性質 14 2 要件事実 14 3 婚姻意思 14 4 当事者等 15 ⑴ 原告適格 15 ⑵ 被告適格 15 表 1-1 原告適格 被告適

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〔問 1〕 抵当権に関する次の記述のうち,民法の規定によれば,誤っているものはどれか

O-27567

取得に対しては 分割前の当該共有物に係る持分割合を超える部分の取得を除いて 不動産取得税を課することができないとするだけであって 分割の方法に制約を設けているものではないから 共有する土地が隣接している場合と隣接していない場合を区別し 隣接していない土地を一体として分割する場合に非課税が適用されない

提出時期が経過した後に氏を変更する場合は 家庭裁判の許可が必要です 関連の届出 氏の変更届の不受理処分がされたとき 戸籍法 121 条により家庭裁判に 氏の変更届 ( 外国人との離婚 ) 外国人と婚姻し氏を変更した人が婚姻を解消した場合に 変更前の氏に戻すための 届です 根拠法令戸籍法 107 条

 

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その他資本剰余金の処分による配当を受けた株主の

ii 目次 第 42 問 取締役の報酬 4( 平成 25 年第 2 問 ) 189 第 43 問 取締役の監視義務等 193 第 44 問 取締役の行為の差止 197 第 45 問 代表訴訟 ( 利益供与も含む )1 201 第 46 問 代表訴訟 ( 利益供与も含む )2( 平成 22 年第 2

平成 25 年 3 月 25 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 2 月 25 日 判 決 原 告 株式会社ノバレーゼ 訴訟代理人弁理士 橘 和 之 被 告 常磐興産株式会社 訴訟代理人弁護士 工 藤 舜 達 同 前 川 紀 光

平成 21 年 4 月 19 日 おいじたくあんしんネットレジュメ 不動産登記と相続 司法書士石川亮 1. 不動産登記法改正 1. オンライン申請の導入 ( 不登法 18 条 ) ( ア ) 不動産登記法が改正され 条文上原則オンライン申請となった ( イ ) オンライン申請促進のため登録免許税が軽


競走馬の馬名に「パブリシティ権」を認めた事例

Transcription:

7 届出意思を欠く無効な婚姻の追認 最高裁昭和 47 年 7 月 25 日第三小法廷判決 ( 昭和 45 年 ( オ ) 第 238 号婚姻無効確認請求事件 ) 民集 26 巻 6 号 1263 頁 判時 677 号 53 頁 2010 年 4 月 21 日報告分 婚姻の無効 = 成り立つと婚姻の成立要件 1 当事者間に婚姻をする意思がないとき 742 条 1 号 婚姻は当事者の自由な意思の合致によって成立するので 当事者間に婚姻をする意思が ないときは 無効となる 2 当事者が届出をしないときも 婚姻は無効だとしている 742 条 2 号婚姻は届け出ることによって成立するから 届出をしないときは 無効 ( 不成立無効 ) である ただし その届出が民法 739 条 2 号に掲げる条件を欠くだけであるときは 無効にはならない すなわち 成年の証人の署名を欠く婚姻届書や他人が代筆した婚姻届は受理されれば有効となる 事例 X 女は X 男と婚姻し 3 人の子を設けたが 夫の母親と性格が合わず それが原因で協議離婚をした ところが その二ヶ月後に X 男の母親が急死し 子供たちの教育もあって Y 女は X 男のもとにもどった その後 Y 女は X 男に無断で婚姻の届出をだした X 男は二年後にその事実を知ったが そのまま共同生活を続けていた Y 女が届出をだしてから 8 年後 X 男に愛人ができ Y 女と別居した X 男は Y 女に離婚を申し入れたが Y 女が拒否 そこで X 男は 八年前に Y 女が出した離婚届は民法 742 条に該当し 無効だと裁判を起こした 最高裁は 次のように判示してこの離婚を有効とした ( 最判昭和 47 年 25 日民集 26 巻 6 号 1263 項 ) 争点 届出意思を書く無効な婚姻の追認することができるか 事実上の夫婦である妻が夫に無断で出した婚姻届を本人が追認した場合はどうなるか 1

判旨 事実上の夫婦の一方が他方の意思に基づかないで婚姻届を作成し提出した場合においても 当時右両名に夫婦としての実際的生活関係が存在しており 後に右他方の配偶者が右届出の事実を知ってこれを追認したときは 右婚姻は追認によりその届出の当初にさかのぼって有効となると解するのを相当とする ところで 民法 119 条は 無効な行為は追認によっても効力を生じないと規定しているが 判決は 無効な養子縁組につき追認によって届出の当初に遡り有効とした判例 ( 最判昭和 27 年 10 月 3 日民集 6 巻 9 号 753 項 ) を引用し 民法 116 条 ( 無権代理行為の追認 ) を類推適応できるとした 判決の結果には賛成はできるが 理論的には身分行為に代理の規定を類推適用してよいかなど検討すべき点もある 判例では 無効な婚姻について追認により法的効果を認めることが可能か ということが争われた 身分行為に対して 財産行為についての規定である追認を認めることは妥当か というテーマがある つまり 財産行為についての規定とされる民法総則を 性質の異なる身分行為に適用してよいか 適用するなら どのような理論構成で適用するのか ということが問題となっている 身分行為と財産行為の違いや 身分行為に追認を認めることついて考える 身分行為 婚姻 離婚 縁組 離縁 認知など人の家族関係に関する法律行為 725 条 ~ 1044 条の規定 ( 親族法 相続法 ) 財産行為 財産の支配及び取引に関する行為 1 条 ~724 条の規定 ( 総則 物権法 債権 法 ) が財産法とされている 身分行為論家族法は親族法と相続法に分かれる 相続法は 身分法と財産法の両者にまたがるが 一般に身分法の一部として取り扱われている 1 身分法と財産法ではその 意思 の性質が違う 財産法における意思は 合理的な打算的な選択的な意思 であるのに対し 身分法における意思は 非合理的な性情的な決定的な意思 である 身分法においては個人の意思が非常に重視される そのため財産法の意思に関する規定と違った取り扱いがなされるべきものがある 行為能力 身分行為能力としては 本人がその行為の意味内容を理解し得る意思能力を有すれば足りることになる 2

意思表示 いわゆる意思主義が採用され 本人の意思 ( 真意 ) に基づかないような行為は無 効であるとされる すなわち 財産的法律行為におけるような外形尊重の要請は働かないから 心裡留保 虚偽表示 錯誤に基づく身分行為はすべて無効である 2 身分行為には事実の先行性と要式性という特殊な性質がある 身分行為では 具体的な事実がまず存在し その後法律がこれを確認 宣言するにとどまる 例えば 認知は非嫡の父子関係の存在を前提とし 婚姻ですら 事実上の婚姻関係が法律上のそれを宣言されるにすぎない さらに 身分行為には 届出や家庭裁判所の許可を得て成立し あるいは効果を生ずるなど 法定の形式を履践しなければならない場合が少なくない これは 身分関係が当事者に重大な影響を及ぼすのみならず 社会秩序にも関係があり 第三者にも影響を及ぼすことから 当事者に慎重に考慮させ 第三者に公示させるためである 追認民法でいう追認は いろいろな意味で用いられるが 大きく以下の3つに分類できる 1 効行為の追認 119 条 ( 無効な行為の追認 ) 無効な行為は 追認によっても その効力を生じない ただし 当事者がその行為の無効であることを知って追認したときは 新たな法律行為をしたものとみなす 無効 な法律行為の効果はだれの意思によっても動かされないのが原則である しかし 当事者が無効であることを知った上で追認したときは そのときに新たな行為をしたものとみなされる したがって ここでいう追認とは 当事者が無効であることを知っている当該法律行為と同じ内容の法律行為をすることを意味する この場合の追認は新たな法律行為をしたものとみなされるため もともとの行為時に効果が遡るわけではないということである 無効な行為 追認 ( 法律行為の効果 ) 2 無権代理行為の追認 116 条 ( 無権代理行為の追認 ) 追認は 別段の意思表示がないときは 契約の時にさかのぼってその効力を生ずる ただし 第三者の権利を害することはできない この理論では 矛盾が生まれる場合がある ( 第三者が届出を出しても良いのか ) 総則の規定を全て排除してしまうのは極端だ など 無権代理 による法律行為は本人に効果が帰属しない しかし 本人がその法律行為を自己に帰属させてもよいと認めるなら 有効な代理行為があったものとし その法律効果を本人に帰属させるというもの 本来の追認は119 条のように遡及効をもたないものである 3

が 無権代理行為の追認においては 相手方保護との均衡 本人の意思を無視してまで無 効にする実益がない という点から遡及効が認められる 無効な行為 追認 ( 無効な行為時 法律行為の効果 ) 3 取り消すことができる行為の追認 122 条 ( 取り消すことができる行為の追認 ) 取り消すことができる行為は 第 120 条に規定する者が追認したときは 以後取り消すことができない ただし 追認によって第三者の権利を害することはできない 取り消すことのできる効果を確定的に有効なものとする一方的な意思表示で取消権の放棄を意味する 無効な身分行為については 裁判例では116 条の類推適用が認められることが多かったが 学説においては119 条を ( 類推 ) 適用すべきではないか という主張もある 116 条では遡及効が認められ 119 条では認められないという差異がある 婚姻であれば 日常家事債務の連帯がいつから認められるかが異なったりするので 遡及効果の有無は重要な問題となる 民法 120 条 1 行為能力の制限によって取り消すことができる行為は 制限行為能力者又はその代理人 承継人もしくは同意をすることができる者に限り 取り消すことができる 2 瑕疵又は強迫によって取り消すことができる行為は 瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り 取り消すことができる 裁判例裁判所は無効な身分行為の追認についてどのような立場をとってきたのだろうか? 大審院においては 無効な身分行為の追認は認められていなかった しかし 最高裁においてはこれまで 代諾養子縁組と協議離婚につき116 条による追認を認めてきた 結論 事実上の夫婦が一方の意思に基づかないで婚姻の届出をした場合 届出の当時に夫婦としての実質的生活関係が存在し 後に他方の配偶者が届出の事実を知って追認したときは 婚姻は届出の当初に遡って有効となる 届出時に実質的夫婦関係の存在し 届出を知ってなおその関係を続けていたことから 婚姻の追認があったものとされた 無効な身分行為に116 条の追認を適用することは 当初は認められなかったが 無効な養子縁組 無効な協議離婚 無効な婚姻 と徐々に適用の範囲を広げ 今回の判決に至った 4

参考文献判例家族法久々湊晴夫落合福司編親族法 相続法柳澤秀吉緒方直人編やさしい家族法久々湊晴夫落合福司編親族法 相続法久々湊晴夫落合福司編 5