納税猶予打切りリスクの緩和 利子税率の引き下げ 承継 5 年超で 5 年分の利子税の免除 債務控除方式の変更 債務控除を株式以外の財産から行うことで 納税猶予の効果を高める < 平成 27 年度税制改正 > 贈与税の納税猶予 免除制度の拡充 1 代目が存命中に 2 代目が 3 代目に納税猶予 免除制

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(1) 改正の内容 内容 現行制度 特例制度 納税猶予対象株式 納税猶予税額 発行済議決権株式総数の 3 分の 2 に達するまでの株式 贈与の場合 : 納税猶予対象株式に係る贈与税の全額 相続の場合 : 納税猶予対象株式に係る相続税の 80% 取得した全ての株式 贈与の場合 : 納税猶予対象株式に係

(1) 相続税の納税猶予制度の概要 項目 納税猶予対象資産 ( 特定事業用資産 ) 納税猶予額 被相続人の要件 内容 被相続人の事業 ( 不動産貸付事業等を除く ) の用に供されていた次の資産 1 土地 ( 面積 400 m2までの部分に限る ) 2 建物 ( 床面積 800 m2までの部分に限る

事業承継税制の概要 事業承継税制は である受贈者 相続人等が 円滑化法の認定を受けている非上場会社の株式等を贈与又は相続等により取得した場合において その非上場株式等に係る贈与税 相続税について 一定の要件のもと その納税を猶予し の死亡等により 納税が猶予されている贈与税 相続税の納付が免除される

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参考. 改正前の制度概要 ( 改正対象は太字 ) (1) 税の納税猶予の全体像 ( 概要 ) の要件 会社の代表者であったこと 時には代表権を有していないこと と同族関係者で決議数の 50% 超の株式を保有かつを除いた同族内で筆頭株主であったこと 認定対象会社の要件 の要件 会社の代表者であること

法人会の税制改正に関する提言の主な実現事項 ( 速報版 ) 本年 1 月 29 日に 平成 25 年度税制改正大綱 が閣議決定されました 平成 25 年度税制改正では 成長と富の創出 の実現に向けた税制上の措置が講じられるともに 社会保障と税の一体改革 を着実に実施するため 所得税 資産税についても

事業承継税制の全体像は ( 図表 1) の通りである ( 図表 1) 事業承継税制の全体像 経営者 1 代目 経営者 2 代目 一括贈与 大臣認定 贈与税の課税 贈与税の納税猶予の適用 相続税の納税猶予制度と同様 雇用確保を含む 5 年間の事業継続を行い その後も株式を継続保有 生前贈与により株式の

平成 25 年度税制改正解説相続税 ~ 基礎控除の引き下げ 税率構造の見直し等 法定相続人の数と基礎控除法定相続人の数と基礎控除 法定相続人の数 1 人 2 人 3 人 4 人 5 人 60,000 千円 70,000 千円 80,000 千円 90,000 千円 100,000 千円 36,000

2. 制度の概要 この制度は 非上場株式等の相続税 贈与税の納税猶予制度 とは異なり 自社株式に相当する出資持分の承継の取り扱いではなく 医療法人の出資者等が出資持分を放棄した場合に係る税負担を最終的に免除することにより 持分なし医療法人 に移行を促進する制度です 具体的には 持分なし医療法人 への

事業承継関連税制について 関東経済産業局 平成 30 年 6 月 中小企業金融課

平成19年12月○日

2. 改正の趣旨 背景 中小企業経営者の高齢化が進んでいるが その半数以上が事業承継の準備を終えていない このような現状を放置すると中小企業の廃業の増加により地域経済に深刻な打撃を与える恐れがある 事業承継の円滑な実施は 事業が継続されることによる雇用の維持に加え 休廃業企業のうち一定数は経常利益が

1. はじめに 中小企業経営者の高齢化が進展する中 事業承継の円滑化は喫緊の課題です 平成 30 年度税制改正において 事業承継の際に生ずる相続税 贈与税の負担を軽減する 非上場株式等についての相続税及び贈与税の納税猶予及び免除の特例 ( 以下 事業承継税制 ) が抜本的に改正されました 本改正では

[2] 株式の場合 (1) 発行会社以外に譲渡した場合株式の譲渡による譲渡所得は 上記の 不動産の場合 と同様に 譲渡収入から取得費および譲渡費用を控除した金額とされます (2) 発行会社に譲渡した場合株式を発行会社に譲渡した場合は 一定の場合を除いて 売却価格を 資本金等の払戻し と 留保利益の分

相続税・贈与税の基礎と近年の改正点

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1 検査の背景 (1) 租税特別措置の趣旨及び租税特別措置を取り巻く状況租税特別措置 ( 以下 特別措置 という ) は 租税特別措置法 ( 昭和 32 年法律第 26 号 ) に基づき 特定の個人や企業の税負担を軽減することなどにより 国による特定の政策目的を実現するための特別な政策手段であるとさ

土地の譲渡に対する課税 農地に限らず 土地を売却し 譲渡益が発生すると その譲渡益に対して所得税又は法人税などが課税される 個人 ( 所得税 ) 税額 = 譲渡所得金額 15%( ) 譲渡所得金額 = 譲渡収入金額 - ( 取得費 + 譲渡費用 ) 取得後 5 年以内に土地を売却した場合の税率は30

1 贈与税の納税猶予制度の認定要件 ( 施 規則第 6 条第 1 項第 11 号 ) 贈与税の納税猶予制度の適 を受けるには 以下の要件等を満たすことが必要です 対象会社要件 中 企業者であること 上場会社等 俗営業会社に該当しないこと 資産保有型会社 は資産運 型会社 ( 以下 資産保有型会社等

未成年者控除 障害者控除の見直し 未成年者控除 障害者控除 6 万円 20 歳に達するまでの年数 6 万円 ( 特別障害者 :12 万円 ) 85 歳に達するまでの年数 10 万円 20 歳に達するまでの年数 10 万円 ( 特別障害者 :20 万円 ) 85 歳に達するまでの年数 小規模宅地等につ

株式の贈与 相続税を ゼロ に! 中小企業の事業承継税制と金融支援 - 中小企業経営承継円滑化法事業者向け手引き - 神奈川県

[2] 税率構造の見直し 相続税の税率構造が現行の6 段階から8 段階に変更されるとともに 最高税率が 50% から 55% に引き上げられることとなりました ただし 各法定相続人の取得金額が2 億円以下の場合の税率は と変わりありません この改正は 平成 27 年 1 月 1 日以後に相続または遺

贈与税の納税猶予制度の認定要件 ( 施 規則第 6 条第 1 項第 13 号 ) 贈与税の納税猶予制度の適 を受けるには 以下の要件等を満たすことが必要です 3 ( 贈与者 ) 先代経営者以外の株主等の要件 先代経営者からの贈与 は相続以後に 贈与を った者であること ( 先代経営者からの贈与 は相

速報!  平成27年度税制改正セミナー

2018年度税制改正大綱 - 資産税関連の主な改正点

目次 特例措置の概要等... 5 ( 問 1) 非上場株式等についての相続税 贈与税の納税猶予及び免除に係る一般措置と特例措置との違い... 5 ( 問 2) 相続開始後の特例承継計画の提出... 8 ( 問 3) 特例措置の対象となる株式等の種類... 9 ( 問 4) 特例措置における雇用確保要

第 5 章 N

1 第 2 章都道府県知事の認定について 第 1 節第一種特例贈与認定中小企業者 贈与税の納税猶予制度の認定要件 ( 施行規則第 6 条第 1 項第 11 号 ) 贈与税の納税猶予制度の適用を受けるには 以下の要件等を満たすことが必要です 1 対象会社要件 中小企業者であること 上場会社等 風俗営業

××税制(所得税・法人税・法人住民税・事業税)

Microsoft Word - 36号事業承継.doc

( 相続時精算課税適用者の死亡後に特定贈与者が死亡した場合 ) (6) 相続時精算課税適用者 ( 相続税法第 21 条の9 第 5 項に規定する 相続時精算課税適用者 をいう 以下 (6) において同じ ) の死亡後に当該相続時精算課税適用者に係る特定贈与者 ( 同条第 5 項に規定する 特定贈与者

相続税の節税対策としての生前贈与 相続税 贈与税はともに相手に渡る財産の金額に対して累進的な税率により税金がかかりま す そこで 相続税の税率よりも低い税率で贈与をすれば 相続税の節税になります 下の 図で相続税と贈与税税率を確認して下さい 贈与税は 相続税に比べ 基礎控除額が低く さらに税率が高く

改正された事項 ( 平成 23 年 12 月 2 日公布 施行 ) 増税 減税 1. 復興増税 企業関係 法人税額の 10% を 3 年間上乗せ 法人税の臨時増税 復興特別法人税の創設 1 復興特別法人税の内容 a. 納税義務者は? 法人 ( 収益事業を行うなどの人格のない社団等及び法人課税信託の引

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給与所得控除額の改正前後の比較 改正前 改正後 給与等の収入金額給与所得控除額給与等の収入金額給与所得控除額 180 万円以下 収入金額 40% 65 万円に満たない場合は 65 万円 180 万円以下 収入金額 40%-10 万円 55 万円に満たない場合は 55 万円 180 万円超 360 万

『事業承継の際の相続税・贈与税          の納税猶予制度』

Microsoft Word 役立つ情報_税知識_.doc

1 非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例 ( 租税特別措置法第条の 7 の 5) 特例措置 ⑴ 制度のあらまし ( 注 1 円滑化法の認定 ) を都道府県知事から受ける非上場会社の後継者である受贈者 ( 特例経営承継受贈者 といいます ) が 贈与者から非上場会社の株式又は出資 (

Microsoft Word - 第67号 来年からの贈与税改正と相続時精算課税を選択する際の注意点

土地建物等の譲渡損失は 同じ年の他の土地建物等の譲渡益から差し引くことができます 差し引き後に残った譲渡益については 下記の < 計算式 2> の計算を行います なお 譲渡益から引ききれずに残ってしまった譲渡損失は 原則として 土地建物等の譲渡所得以外のその年の所得から差し引くこと ( 損益通算 )

平成16年版 真島のわかる社労士

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住宅取得等資金の贈与に係る贈与税の非課税制度の改正

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5 配偶者控除等 配偶者控除 配偶者特別控除 扶養控除及び勤労学生控除の合計所得金額の要件 について 一律 10 万円ずつ引き上げられます 6 青色申告特別控除正規の簿記の原則により記帳している者に係る控除額が 55 万円に引き下げられ 正規の簿記の原則により記帳し かつ e5tax 等により確定申

経 ViewPoint 営相談 相続時における小規模宅地等の特例の改正 谷口敬三相談部東京相談室 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例 ( 以下 小規模宅地等の特例 ) は 一定の要件を満たす宅地等 ( 特定事業用等宅地等 特定居住用宅地等 貸付事業用宅地等 ) につ

(2) 青色申告書を提出する中小企業者等 ( 平成 3 年 4 月 日以後開始する事業年度については 適用除外事業者 ( 注 4) を除く ) が 平成 30 年 4 月 日から平成 33 年 3 月 3 日までの間に開始する各事業年度において 国内雇用者に対して給与等を支給する場合に継続雇用者給与

2011年度税制改正大綱(相続・贈与税)

Microsoft Word - 【jigyou_syoukei_02】事業承継対策・経営承継円滑化法_ _.doc

所令要綱

注 1 認定住宅とは 認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅をいう 注 2 平成 26 年 4 月から平成 29 年 12 月までの欄の金額は 認定住宅の対価の額又は費用の額に含まれる消費税等の税率が 8% 又は 10% である場合の金額であり それ以外の場合における借入限度額は 3,000 万円とする

野村資本市場研究所|顕著に現れた相続税制改正の影響-課税対象者は8割増、課税割合は過去最高の8%へ-(PDF)

時価で譲渡したものとみなされ所得税が課税され かつ その所得税は相続税の課税価格の計算上被相続人の債務として控除されていることにより 所得税と相続税の負担の調整は済んでいますので この特例の適用は受けられません 2 取得費に加算される金額平成 26 年度の改正前は 相続財産である土地等の一部を譲渡し

スライド 1

13. 平成 29 年 4 月に中古住宅とその敷地を取得した場合 当該敷地の取得に係る不動産取得税の税額から 1/2 に相当する額が減額される 14. 家屋の改築により家屋の取得とみなされた場合 当該改築により増加した価格を課税標準として不動産 取得税が課税される 15. 不動産取得税は 相続 贈与

事業承継税制の拡充・資産税逃れ対策等

用語の意義 この FAQ において使用している用語の意義は 次のとおりです 用語 意義 所得税法 ( 所法 ) 所得税法 ( 昭和 40 年法律第 33 号 ) をいいます 所得税法施行令 ( 所令 ) 所得税法施行令 ( 昭和 40 年政令第 96 号 ) をいいます 改正所令 所得税法施行令の一

個人版事業承継税制の創設について 現行税制上の事業承継支援特例を踏まえた検討

平成23年度税制改正の主要項目

事業承継支援について

平成20年2月

N 譲渡所得は 売却した土地や借地権 建物などの所有期間によって 長期譲渡所得 と 短期譲渡所得 に分けられ それぞれに定められた税率を乗じて税額を計算します この長期と短期の区分は 土地や借地権 建物などの場合は 売却した資産が 譲渡した年の1 月 1 日における所有期間が5 年以下のとき 短期譲

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金庫株を活用した事業承継対策 1. 概要 非上場株式を相続して相続税が発生する場合は 相続で取得した自社株を相続税の申告期限後 3 年以内に金 庫株すればみなし配当課税しない (= 譲渡所得とする ) 特例があります ( 措置法 9 条の 7) 所得税の特例の内容 ( 自己株式をみなし配当課税しない

相続税計算 例 不動産等の評価財産の課税評価額が 4 億 8 千万円 生命保険金の受取額が 2 千万円 現金 預金等が 4 千万円 ローン等の債務及び葬式費用等が 3 千万円である場合の相続税を計算します 相続人は妻と 2 人の子供の 3 人です ( 評価額を計算するには専門知識を要します 必ず概算

2. 改正の趣旨 背景 (1) 問題となっていたケース < 親族図 > 前提条件 1. 父 母 ( 死亡 ) 父の財産 :50 億円 ( すべて現金 ) 財産は 父 子 孫の順に相続する ( 各相続時の法定相続人は 1 名 ) 2. 子 子の妻 ( 死亡 ) 父及び子の相続における相次相続控除は考慮

Microsoft Word - 東日本大震災により被害を受けた場合の相続税・贈与税の取扱い

日税研メールマガジン vol.143 ( 平成 31 年 2 月 15 日発行 ) 公益財団法人日本税務研究センター Article 平成 31 年度税制改正大綱の解説 ( 2) 税理士金井恵美子 * 本稿では 前号 ( vol.142) に引き続き 平成 31 年度税制改正の大綱 に示された改正事

東京太郎様 Inheritance Report 相続診断書 弁護士法人 税理士法人リーガル東京 平成 30 年 8 月 20 日作成

申請マニュアル P25~37 参照 贈与報告基準日における当該中小企業者の定款の写し 会社に保存している贈与報告基準日において有効な定款の写しに 年次報告日付けで原本証明をして提出 原本証明の記載例 この写しは 贈与報告請基準日 ( 平成 25 年 3 月 5 日 ) における当社定款の原本と相違な

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き一 修正申告 1 から同 ( 四 ) まで又は同 2 から同 ( 四 ) までの事由が生じた場合には 当該居住者 ( その相続人を含む ) は それぞれ次の 及び に定める日から4 月以内に 当該譲渡の日の属する年分の所得税についての修正申告書を提出し かつ 当該期限内に当該申告書の提出により納付

(2) 父母 ( 祖父母 ) から子 ( 孫 ) への住宅取得等資金の贈不 父母 ( 祖父母 ) など直系尊属から その子 ( 孫 ) へ居住用の家屋の新築 取得または増改築のための金銭 ( 住宅取得等資金 ) を贈不した場合 表の通りの金額について贈不税が非課税となります また 贈不税の基礎控除

このうち 申告納税額がある方 ( 納税人員 ) は640 万 8 千人で は41 兆 4,298 億円 申告納税額は3 兆 2,037 億円となっており 平成 28 年分と比較すると 人数 (+0.6%) (+ 3.4%) 及び申告納税額 (+4.6%) はいずれも増加しました 所得者区分別の状況イ

暦年課税の贈与を毎年する人のデータ 暦年課税の贈与は 現金を贈与するのか不動産を贈与するのかで違ってきます 土地は路線価方式または倍率方式で評価し建物は固定資産税評価額で評価しますので 現金での贈与の場合よりも税率は低くなります ただし不動産の贈与では 土地や建物の贈与または共有持分の贈与になります

1. 相続税 (1) 基礎控除額の引き下げ 1) 改正の趣旨現在 ( ) の相続税の仕組みは 下図の通りです すなわち 合計課税価格から 基礎控除額を除いた課税遺産総額が相続税の計算の対象となるため 合計課税価格が基礎控除額の範囲内である場合には 相続税が課税されません その結果として 現状の相続税

障財源化分とする経過措置を講ずる (4) その他所要の措置を講ずる 2 消費税率の引上げ時期の変更に伴う措置 ( 国税 ) (1) 消費税の軽減税率制度の導入時期を平成 31 年 10 月 1 日とする (2) 適格請求書等保存方式が導入されるまでの間の措置について 次の措置を講ずる 1 売上げを税

(2) みなし相続財産ものか13 第1 章12 2 課税される 相続財産 の範囲 海外にある財産も課税対象となる 贈与税の暦年課税適用財産も 3 年以内は課税対象となる 葬式費用 墓地や墓碑 仏壇 仏具等は非課税 相続税の課税対象となる相続財産は (1) 被相続人が亡くなったときに所有していた財産

また 国外財産調書制度は 2013 年 12 月末の国外財産から調書の提出義務が始まりましたので 5,000 万円超の国外財産を保有の方はご留意ください これに関連して 国税庁より 2013 年 11 月 15 日に FAQ が発表されており FAQ は国税庁のホームページで閲覧等できます 資産税ニ

N 譲渡所得は 売却した土地や借地権 建物などの所有期間によって 長期譲渡所得 と 短期譲渡所得 に分けられ それぞれに定められた税率を乗じて税額を計算します この長期と短期の区分は 土地や借地権 建物などの場合は 売却した資産が 譲渡した年の1 月 1 日における所有期間が5 年以下のとき 短期譲

新・NPO法人申請マニュアル.pwd

間の初日以後 3 年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間 6 高額特定資産を取得した場合の納税義務の免除の特例事業者 ( 免税事業者を除く ) が簡易課税制度の適用を受けない課税期間中に国内における高額特定資産の課税仕入れ又は高額特定資産に該当する課税貨物の保税地域からの引取り ( 以下 高

6 贈与認定申請基準事業年度の貸借対照表 損益計算書など会社法第 435 条第 2 項又は第 67 条第 2 項に規定する書類 貸借対照表 損益計算表 株主 ( 社員 ) 資本等変動計算書 個別注記表 事業報告書 附属明細書 ( 勘定科目内訳書 ) 7 当該贈与の時から当該贈与に係る贈与認定申請基準

2 b. 廃業 3) 事業承継計画 1 現状の把握 a. 事業承継に係る関係者の状況 中小家の親族関係 その他の関係者 氏名 年齢続柄 備考 氏名年齢 備考 中小太郎 60 歳 本人 T 社の創始者 ( 代表取締役社長 ) A 63 歳 T 社の専務取締役 ( 太郎の右腕 最近病気がち ) 中小花子

目 次 最近における相続税の課税割合 負担割合及び税収の推移 1 地価公示価格指数と基礎控除(58 年 =100) の推移 2 最近における相続税の税率構造の推移 3 小規模宅地等の課税の特例の推移 4 相続税負担の推移( 東京都区部のケース ) 5 ( 補足資料 ) 相続税の概要 6 相続税の仕組

テキスト編 第 1 章相続税 贈与税とはなにか 目次 1 相続税が課税される理由 1 2 どれくらいの遺産がある場合 相続税は課税されるか 2 3 贈与税が課税される理由 3 4 相続税と贈与税の関係 4 第 2 章相続人と相続分 1 相続人と相続順位 5 2 相続の承認と放棄 14 3 相続人の相

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2. 控除の適用時期 Q. 12 月に取得した自宅の所在地に 年末までに住民票を移しましたが 都合で引っ越しが翌年になってしまった場合 住宅ローン控除はいつから受けることになりますか A. 住宅ローン控除の適用を受けるためには 実際に居住を開始することが必要です したがって 住民票を移した年ではなく

<TAC> 無断複写 複製を禁じます ( 税 18) 相上 (8)C10-1 相続税法 上級 演習 8 テキスト 2 第 8 回 - 解答 点 - 第一問 問 1 持分の定めのない法人に対し財産の贈与又は遺贈があった場合において 税負担の不当減少を防 止

5 適用手続 ⑴ 相続時精算課税の適用を受けようとする受贈者は 贈与を受けた財産に係る贈与税の申告期間内に 相続時精算課税選択届出書 ( 贈与者ごとに作成が必要 ) を贈与税の申告書に添付して 納税地の所轄税務署長に提出する ( 相法 21の92) なお 提出された当該届出書は撤回することができない

申請に当たって 提出が必要な添付書類は下記のとおりです 1. 認定申請書 ( 原本 1 部 写し 1 部 ) 2. 贈与認定申請基準 時点で有効な申請会社の定款の写し 第 種特例贈与認定申請基準 において有効な定款の写しを添付してください この写しに 原本証明をしてください 原本証明の例 この写しは

Microsoft Word - 第53号 相続税、贈与税に関する税制改正大綱の内容

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7 相続の開始の日から相続に係る相続認定申請基準日において中小企業者が上場会社等又は風俗営業会社に該当しない旨の誓約書 様式自由 法人実を押すこと 申請マニュアル P2~25 参照 4 8 特別子会社に関する以下の誓約書 相続の開始の時において特別子会社が外国会社に該当する場合であって 申請者又はそ

投資法人の資本の払戻 し直前の税務上の資本 金等の額 投資法人の資本の払戻し 直前の発行済投資口総数 投資法人の資本の払戻し総額 * 一定割合 = 投資法人の税務上の前期末純資産価額 ( 注 3) ( 小数第 3 位未満を切上げ ) ( 注 2) 譲渡収入の金額 = 資本の払戻し額 -みなし配当金額

102 第 4 章 農業 農地の承継時の特例 資価格は 国税庁 HPの路線価ページから確認できます なお 平成 30 年度税制改正において 対象となる農地の範囲等が改正されました 詳細は 後記 6を参照してください 3 適用要件 (1) 被相続人この特例の対象となる被相続人は 次のいずれかに該当する

1 繰越控除適用事業年度の申告書提出の時点で判定して 連続して 提出していることが要件である その時点で提出されていない事業年度があれば事後的に提出しても要件は満たさない 2 確定申告書を提出 とは白色申告でも可 4. 欠損金の繰越控除期間に誤りはないか青色欠損金の繰越期間は 最近でも図表 1 のよ

海外財産の相続 : 事例研究 ~ 米国の財産の相続手続き ( 第 4 回 ) 三輪壮一氏三菱 UFJ 信託銀行株式会社リテール受託業務部海外相続相談グループ米国税理士 これまで 海外に財産を保有する場合の 海外相続リスク の存在 特にプロベイト手続き等の相続手続きの煩雑さについて 米国の例を基に説明

個人事業者向けの事業承継税制が創設

スポンサー企業 増減資により 再生会社をスポンサー企業の子会社としたうえで 継続事業を新設分割により切り分ける 100% 新株発行 承継会社 ( 新設会社 ) 整理予定の事業 (A 事業 ) 継続事業 会社分割 移転事業 以下 分社型分割により事業再生を行う場合の具体的な仕組みを解説する の株主 整

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Article 事業承継税制について ( 平成 30 年度税制改正を中心に ) 税理士宮本雄司 平成 30 年度税制改正において 事業承継税制の分野では従来から更に踏み込んだ改正が行われた 日本の中小企業の経営者の高齢化が叫ばれ 事業を継続していくためには 社長の代替わりを円滑に進めるための一層の改革が不可欠と思われていたが 今回の改正において それに一定の道筋がつけられたように感じられる 本稿では 平成 30 年度税制改正における事業承継税制の概要 これまでとの相違点や 今後の手続について留意すべき点にも触れながら 解説していくこととしたい これまでの事業承継税制の改正の経緯 平成 30 年度税制改正の内容 実際に適用を受けるために留意すべき点 手続について留意すべき点 -------------------------------------------------------------- 1. これまでの改正の経緯 ここ 20~30 年の間に日本の中小企業の経営者の年齢分布を見ると その一番多い年齢層が 40 歳台後半から 60 歳台後半へとシフトし 会社を継承する人が見つからずに廃業してしまう中小企業が急増しており 日本経済を底辺で支える中小企業の技術やノウハウが途絶えてしまう危険性が指摘されている これまでに 税制の面から事業承継を使いやすいものにすべく 改正が重ねられてきた その概要を以下に示す < 平成 25 年度税制改正 > 親族外承継 親族に限定されていた後継者を親族外でも適用可能に 雇用 8 割維持要件の緩和 5 年間毎年維持とされていた雇用 8 割維持要件を 5 年間平均 に緩和 役員退任要件の緩和 贈与時に 役員を退任すること とされていた要件を 代表者退任 に緩和 事前確認の廃止 経済産業大臣の 事前確認 を受けていなくとも制度の利用が可能に 1

納税猶予打切りリスクの緩和 利子税率の引き下げ 承継 5 年超で 5 年分の利子税の免除 債務控除方式の変更 債務控除を株式以外の財産から行うことで 納税猶予の効果を高める < 平成 27 年度税制改正 > 贈与税の納税猶予 免除制度の拡充 1 代目が存命中に 2 代目が 3 代目に納税猶予 免除制度を活用して贈与した場合は 2 代目が猶予されていた贈与税の納税義務を免除する < 平成 29 年度税制改正 > 小規模企業を中心とした雇用確保要件の緩和 雇用確保要件 8 割基準の従業員の端数切捨て ( 従業員数 5 人未満の企業で従業員が 1 人減った場合でも適用を受けられる ) 相続時精算課税制度との併用解禁 贈与税の納税猶予が取消となった場合の贈与税負担額を 相続時精算課税制度適用により計算された税額までとする ( 事業承継税制における贈与税の納税猶予制度と相続時精算課税制度との併用が可能となった ) 相続税の納税猶予制度における要件の緩和 非上場株式の贈与者が死亡した場合の当該制度における認定相続承継会社の要件について その株式が非上場株式に該当するという要件を撤廃する セーフティネット規定の創設 災害や経営環境の激変時における雇用維持の困難化に対応するためのセーフティネットの創設 このように ここ数年にわたり改正が進められてきたが 平成 30 年度において は 緊急性を要するものとして更に踏み込んだ改正が行われることとなった 次 にその内容について解説したい 2. 平成 30 年度税制改正の内容 平成 30 年度税制改正の中の事業承継税制における改正は 従来の制度に対する特例制度という位置付けである ( 以下 特例制度 と呼ぶ ) したがって この特例制度を利用する側にとっては 現行の制度と今回の特例制度の選択適用が可能ということになるが その内容から明らかに特例制度を選択した方が有利にな 2

るというものである 但し この特例制度には適用期限があり 適用を受けるた めにはこの制度を理解し 早めの対応をする必要がある (1) 対象となる株式現行制度では 相続税 贈与税ともに 事業承継税制の対象となる株式は その法人の発行済株式総数の 3 分の 2 までであったが 特例制度においては その全部が対象となった (2) 相続税の猶予対象となる相続税額現行制度では 相続税の納税猶予の適用対象となる株式は その評価額 ( 課税価格 ) の 80% 相当の金額に対応する相続税額となっていた これが 特例制度にあっては その 100% つまり評価額の全部について その対応する相続税額が納税猶予の対象となった これにより (1) と合わせると 相続税の納税猶予の対象となる株式は 発行済株式総数の 3 分の 2 の更に 80% すなわち約 53% 相当までであったのが 特例制度では 100% が対象とされることになった (3) 雇用確保要件の実質撤廃贈与又は相続が発生してから 5 年間は事業継続期間とされており ( 詳細は後述する ) 一定の要件を満たさなければ 認定が取り消され 猶予されていた税額の納税が必要となる その要件のひとつに雇用確保要件がある その 5 年間の平均従業員数が 80% を下回らないようにしなければならないとする要件が存在していた これが特例制度では実質上撤廃される これは雇用減少の原因が経営状況の悪化などである場合に そうした理由を記載した書類を都道府県に提出すれば 認定が取り消されることはないというものである 但し その理由を記載した書類は 認定経営革新等支援機関からの指導 助言を受け その内容を記載する必要があることに留意が必要である (4) 複数の株主から複数の代表権のある後継者への承継が可能に現行制度では 相続又は贈与による経営権の承継は 一人の先代経営者から一人の後継者へというパターンしか認められていなかった これが 特例制度においては 親族外を含めた複数の株主から 代表権を有することとなる複数の後継者 ( 最大 3 人 ) への承継が可能になった 中小企業の経営の実情に合わせて 多様なで柔軟な事業承継を支援していこうという考え方が色濃く出たものと考えられる 但し 後継者が 2 名もしくは 3 名となる場合は その上位 2 名もしくは 3 名がそれぞれ 発行済株式総数の 10% 以上を有している必要がある 3

(5) 相続時精算課税制度の適用範囲の拡大現行制度では 相続時精算課税制度が想定していたのは その適用対象者をその贈与をした者の推定相続人又は孫であった 平成 29 年度の税制改正で 事業承継税制と相続時精算課税制度との併用が可能となったが 今回の特例制度では更に踏み込んで 後継者が推定相続人や孫でない場合でも 相続時精算課税制度を使えるようにするというものである 但し 相続時精算課税制度そのものがもつ贈与者と受贈者の年齢要件 ( 贈与者はその贈与の年 1 月 1 日において 60 歳以上 受贈者は同日において 20 歳以上 ) はそのままである (6) 特例承継期間経過後の減免現行制度では 民事再生 会社更生時にその時点の評価額で相続税を再計算し 相続があった時の相続税額との差額となる猶予税額を免除する規定がある これが特例制度では 譲渡時や合併による消滅時及び清算時にも同様の制度が導入され 一部相続税が減免される 但し 譲渡や合併による消滅の場合は相続税評価額の 50% を下限として計算されることとなる 3. 実際に適用をうけるために留意すべき点 まず 前提として 今回の特例制度の対象とするのは 平成 30 年 1 月 1 日から 平成 39 年 12 月 31 日までの間に贈与等により取得する財産に係る贈与税又は相続 税である (1) 特例承継計画の提出今回の特例制度は 中小企業の事業承継について緊急に対応すべきであるものとの位置付けから 適用期間を区切った制度となっている まず この特例制度の認定を受けたい場合は 平成 30 年 4 月 1 日から平成 35 年 3 月 31 日までの間に特例承継計画を都道府県に提出し 中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律第 12 条第 1 項の認定を受ける必要がある この認定を受けた会社のことを 特例認定承継会社 と呼ぶ またここにいう 特例承継計画 とは 認定経営革新等支援機関の指導及び助言を受けた特例認定承継会社が作成した計画であり その会社の後継者 ( 特例後継者 ) や承継時までの経営見通し等が記載されるものを指す (2) 後継者 ( 特例後継者 ) の要件特例後継者は その当該特例認定承継会社を承継する ( 最大 3 人の ) 後継者のことであり その会社の代表権を有し 同族関係者と合わせてその会社の総議決権数の過半数を有する者であって 当該同族関係者のうち その会社の議決権を 4

最も多く有する者 ( 後継者が 2 名 3 名の場合はその議決権数において上位 2 名 3 名に該当し その会社の総議決権数の 10% 以上を有する者に限る ) のことをいう また 贈与税の場合は年齢が 20 歳以上であること 贈与の日まで継続して 3 年以上役員であるという要件がある この 継続して というのが大事で 一旦退任している場合は その時点で就任期間が一旦リセットされることに注意が必要である 相続税については 継続して 3 年以上役員 という要件はない 相続はいつ起こるかわからないからこうした要件を設定すると 相続が起こったときに間に合わないケースが続出してしまう可能性があるためである しかし 相続開始時に役員に就任していなければならないことには注意が必要である つまり 相続が起こってから慌てて後継者を取締役登記をしても特例制度を受けることはできないことになる 但し 亡くなった先代 ( 被相続人 ) が 60 歳未満であった場合はこれらの要件はない また 相続開始後 5 か月以内にその会社の代表者となっている必要があり 更に相続開始後 8 か月以内に認定申請書を提出する必要がある (3) 従業員の要件まず 基本的な要件として 相続開始時又は贈与時において 常時雇用している従業員が一人以上いる必要がある ここにいう従業員とは 役員ではないこと ( 使用人兼務役員を除く ) 社会保険に加入していること というものがある (4) 制度が使える中小企業の要件企業規模としては 中小企業基本法上の中小企業ということになるが 具体的には資本金額又は従業員数で上限が設けられており ここでその詳細は割愛するが ただ 我々税理士が顧問先となる中小企業はほとんどが該当することとなると思われる むしろここで注意したのは 資産管理型会社 と認められた場合に適用の対象外となってしまうことである (5) 資産管理型会社今回の特例制度では 資産管理型会社を認定の対象外としている ここにいう資産管理型会社とは 総資産に占める 特定資産 の割合が 70% 以上の会社 ( 資産保有型会社 ) や 特定資産 の運用収入の総収入金額に占める割合が 75% 以上である会社 ( 資産運用型会社 ) が対象外となる 但し こうした会社であっても常時雇用従業員数が 5 名以上であり 事務所や店舗 工場を所有又は賃借して 贈与又は相続開始の日まで引き続き 3 年以上にわたり 商品販売や貸付 サービスの提供といった業務を対価を得て行っている会社であれば 事業実態がある会 5

社 として認定の対象となる なお ここにいう 特定資産 とは 有価証券 遊休不動産 販売用及び賃貸用不動産 ゴルフ会員権 絵画や貴金属 現預金 後継者とその親族等に対する貸付金等を指す (6) 納税猶予の取消事由贈与税及び相続税の納税猶予が取り消されると その猶予されていた税額及び利子税を納付すべきこととなる 5 年間の事業承継期間中における主な取消事由を以下に列挙する 後継者と同族関係者の有する議決権数が総議決権数の 50% 以下となること 後継者以外の同族関係者の議決権数が後継者の議決権数を超えること 都道府県への報告を怠った 或いは税務署への書類の提出を怠ったこと その会社が非上場会社に該当しないこととなったこと その会社が風俗営業会社に該当したこと また 5 年間の事業承継期間が経過した後でも 納税猶予が取消となるケース としては以下のものがある その会社が資産保有型会社 又は資産運用型会社となったこと ( 但し 事業実態要件を満たしていれば 取消とはならない ) 主たる事業活動から生じる収入金額が零となった場合 その会社が資本金の額又は準備金の額を減少した場合 ( 無償減資や欠損填補のための減資を除く ) その他 会社が一定の会社分割 組織変更を行った場合 4. 手続について留意すべき点 (1) 認定を受けるための手続この特例制度の認定を受けたい場合は 先述したとおり 平成 30 年 4 月 1 日から平成 35 年 3 月 31 日までの間に 特例承継計画を記載した書類及び認定申請書を都道府県に提出し その認定を受けなければならない この特例承継計画の提出こそが制度の適用を受けるための出発点となる そして この特例承継計画は 認定経営革新等支援機関の指導 助言を受けたものでなければ提出できないということもまた先述したとおりである 6

(2) 納税猶予の適用を受けるための手続ここからは 実際に株式の贈与があった場合 或いは相続が発生した場合の手続について説明する 先述した特例承継計画を平成 30 年 4 月 1 日から平成 35 年 3 月 31 日までに提出したことを前提として説明する 1 贈与税の場合後継者へ株式の贈与を行った場合 その贈与があった年の翌年 1 月 15 日までに都道府県に対して認定申請を行う必要がある そして その申請を行うことにより 都道府県から認定書が交付され その後の 3 月 15 日を提出期限とする贈与税の申告書に添付する必要がある これらの提出により その 3 月 15 日の翌日から 5 年間がいわゆる 事業継続期間 とされ この事業継続期間中 毎年決められた時期に都道府県と税務署に対し 事業継続に関する報告書を提出し 事業が継続していることの確認を受けることになる また 事業承継期間が経過した以降は 3 年に 1 度事業継続に関する継続届出書を税務署に提出していくことになるが 都道府県への提出の必要はなくなる 2 相続税の場合会社の代表者に相続が発生した場合 その会社は早急に後継者を決定して その相続開始後 8 か月以内に都道府県に対して認定申請を行う必要がある そして その申請により都道府県から交付を受けた認定書を その後に提出する相続税の申告書に添付する必要がある これらの提出により その相続税申告書の提出期限から 5 年間が 事業継続期間 とされ その事業継続期間中の毎年決められた時期に都道府県 税務署に対する報告義務があること そして事業継続期間経過後に 3 年に 1 度の税務署に対する継続届出書を提出する必要があることは贈与税の場合と同様である また相続税の場合に注意すべき点として 贈与とは違い 相続はいつ発生するかわからない 特例承継計画 は必ず平成 35 年 3 月 31 日までに提出しなければならないが その予定していた提出を行う前に相続が発生してしまう場合がある ただ このような場合でも 期限までに 特例承継計画 を提出することにより この特例制度の適用を受けることは可能であるため この点には留意が必要である 7

5. まとめ 以上のように 平成 30 年度税制改正における事業承継税制は 中小企業の経営者の高齢化が進む中 その代替わりがなかなか進んでおらず 日本の産業を支える中小企業の事業継続を支援するための改正として踏み込んだ内容となっている 我々税理士は この特例制度を十分に理解し 関与先の企業の状況をよく把握した上で その事業継続のための的確なアドバイスをすることが求められよう 今回の特例制度が 10 年間の時限立法であること 中でも この特例制度の適用を受けるための大前提である 特例承継計画の提出期限は平成 35 年 3 月 31 日であり 時間の猶予はあまり多くないと考えられる 早め早めの対応が必要となろう 最後に 今回の事業承継税制における改正について 中小企業庁から公表されたものがあるので 参考にしていただきたい 関連ホームページ 平成 30 年度中小企業 小規模事業者関係税制改正について ( 中小企業庁 ) http://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/2017/171225zeiritu.pdf 8