問察(1) 教師によるゴールマップの作成まずは, 教師が教科内容の知識の構造を明らかにし, それらを概念地図で示す これが, 児童が授業を通して作成する概念地図のゴールとなる このマップを ゴールマップ とよぶ 太陽の動き の実践の場合には, 教師が右に示すようなゴールマップを作製した なお, これ

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けて考察し, 自分の考えを表現している 3 電磁石の極の変化と電流の向きとを関係付けて考え, 自分の考えを表現している 指導計画 ( 全 10 時間 ) 第 1 次 電磁石のはたらき (2 時間 ) 知 1, 思 1 第 2 次 電磁石の強さが変わる条件 (4 時間 ) 思 2, 技 1, 知 2

ICTを軸にした小中連携

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問題解決的な学習スタイルを充実させるために 3 つのステップを積み上げましょう 課 題 板書を充実させる道具を用意している ( マグ ネット名札 学習の流れカード ) 黒板に日付を書き 単元の流れ 本時の流れを 掲示している ノートに日付 単元の流れ 本時の流れを書かせている 前時の振り返りをノート

主語と述語に気を付けながら場面に合ったことばを使おう 学年 小学校 2 年生 教科 ( 授業内容 ) 国語 ( 主語と述語 ) 情報提供者 品川区立台場小学校 学習活動の分類 B. 学習指導要領に例示されてはいないが 学習指導要領に示される各教科 等の内容を指導する中で実施するもの 教材タイプ ビジ

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2、協同的探究学習について

Taro-小学校第5学年国語科「ゆる

解答類型

実践 報告書テンプレート

平成 30 年度 品川区学力定着度調査 の結果から明らかになった課題と学力向上に向けた取組 ( 国語 ) 1. 国語の定着状況についての概要 どの学年もほとんどすべての項目において 目標値を上回った 昨年度から取り組んできた 文章を書き表す際の 言葉の正しい使い方の指導 が 言葉についての知識 理解

教育 学びのイノベーション事業 ( 平成 23~25 年度 ) 総務省と連携し 一人一台の情報端末や電子黒板 無線 LAN 等が整備された環境の下で 教科指導や特別支援教育において ICT を効果的に活用して 子供たちが主体的に学習する 新たな学び を創造する実証研究を実施 小学校 (10 校 )


○数学科 2年 連立方程式

平成 年度佐賀県教育センタープロジェクト研究小 中学校校内研究の在り方研究委員会 2 研究の実際 (4) 校内研究の推進 充実のための方策の実施 実践 3 教科の枠を越えた協議を目指した授業研究会 C 中学校における実践 C 中学校は 昨年度までの付箋を用いた協議の場においては 意見を出

第 2 学年 理科学習指導案 平成 29 年 1 月 1 7 日 ( 火 ) 場所理科室 1 単元名電流とその利用 イ電流と磁界 ( イ ) 磁界中の電流が受ける力 2 単元について ( 1 ) 生徒観略 ( 2 ) 単元観生徒は 小学校第 3 学年で 磁石の性質 第 4 学年で 電気の働き 第 5

平成23年度全国学力・学習状況調査問題を活用した結果の分析   資料

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(2) 国語科 国語 A 国語 A においては 平均正答率が平均を上回っている 国語 A の正答数の分布では 平均に比べ 中位層が薄く 上位層 下位層が厚い傾向が見られる 漢字を読む 漢字を書く 設問において 平均正答率が平均を下回っている 国語 B 国語 B においては 平均正答率が平均を上回って

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4. タブレット端末の利用状況 ( 利用機材の内容と利用のねらい ) ハードウェア機材名 :ipad ねらい : 水が流れる様子や地形が変化した様子を確認できるよう 動画で撮影し記録する 上流 中流 下流それぞれの様子が撮影できるよう ipadは3 台準備する 機材名 :ENVY110( 複合印刷機

第 2 学年 5 組理科学習指導案 日時平成 26 年 12 月 12 日 ( 金 ) 場所城北中学校授業者酒井佑太 1 単元名電気の世界 2 単元について (1) 教材観今日の私たちの日常生活において 電気製品はなくてはならないものであり 電気についての基礎的な知識は必要不可欠である しかし 実際

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(2) 国語 B 算数数学 B 知識 技能等を実生活の様々な場面に活用する力や 様々な課題解決のための構想を立て実践し 評価 改善する力などに関わる主として 活用 に関する問題です (3) 児童生徒質問紙児童生徒の生活習慣や意識等に関する調査です 3 平成 20 年度全国学力 学習状況調査の結果 (

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実践 報告書テンプレート

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実践 報告書テンプレート

2 教科に関する調査の結果 ( 各教科での % ) (1) 小学校 国語 4 年生 5 年生 6 年生 狭山市埼玉県狭山市埼玉県狭山市埼玉県 平領均域正等答別率 話すこと 聞くこと 書くこと

3 調査結果 1 平成 30 年度大分県学力定着状況調査 学年 小学校 5 年生 教科 国語 算数 理科 項目 知識 活用 知識 活用 知識 活用 大分県平均正答率 大分県偏差値

2 教科に関する調査の結果 (1) 平均正答率 % 小学校 中学校 4 年生 5 年生 6 年生 1 年生 2 年生 3 年生 国語算数 数学英語 狭山市 埼玉県 狭山市 61.4

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指導方法等の改善計画について

第5学年  算数科学習指導案

第 2 章 知 徳 体 のバランスのとれた基礎 基本の徹底 基礎 基本 の定着 教育基本法 学校教育法の改正により, 教育の目標 義務教育の目標が定められるとともに, 学力の重要な三つの要素が規定された 本県では, 基礎 基本 定着状況調査や高等学校学力調査を実施することにより, 児童生徒の学力や学

第4学年1組 理科学習指導案

平成 28 年度全国学力 学習状況調査の結果伊達市教育委員会〇平成 28 年 4 月 19 日 ( 火 ) に実施した平成 28 年度全国学力 学習状況調査の北海道における参加状況は 下記のとおりである 北海道 伊達市 ( 星の丘小 中学校を除く ) 学校数 児童生徒数 学校数 児童生徒数 小学校

(6) 調査結果の取扱いに関する配慮事項調査結果については 調査の目的を達成するため 自らの教育及び教育施策の改善 各児童生徒の全般的な学習状況の改善等につなげることが重要であることに留意し 適切に取り扱うものとする 調査結果の公表に関しては 教育委員会や学校が 保護者や地域住民に対して説明責任を果

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作品の情景をよりわかりやすく伝える手だてともなる 指導にあたって 1 では まず 俳句は17 音で作ることや季語を入れることと言ったきまりをおさえる そして 教科書の例を読み 想像した情景や作者の思いを想像し 良いと思うところ 工夫されていると思うところを発表できるようにする 2 の俳句を作る場面で

瑞浪市調査結果概略(平成19年度全国学力・学習状況調査)

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平成19年度全国学力・学習状況調査の結果をふまえた指導改善策

平成 27 年度 ICT とくしま創造戦略 重点戦略の推進に向けた調査 研究事業 アクティブラーニングを支援する ユーザインターフェースシステムの開発 ( 報告書 ) 平成 28 年 1 月 国立高等専門学校機構阿南工業高等専門学校

①H28公表資料p.1~2

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(2) 児童観児童は1 年生 1 月に おはなしをつくろう で 昔話をもとにして 人物と出来事を考えて簡単に物語を書く学習を行っている また 2 年生の1 学期には じゅんじょよく書こう の学習で はじめ 中 おわり の構成を考え 自分の経験を伝える文章を書く学習をしてきている この学習を通して 順

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国際数学・理科教育動向調査(TIMSS2015)のポイント

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彩の国埼玉県 埼玉県のマスコット コバトン 科学的な見方や考え方を養う理科の授業 小学校理科の観察 実験で大切なことは? 県立総合教育センターでの 学校間の接続に関する調査研究 の意識調査では 埼玉県内の児童生徒の多くは 理科が好きな理由として 観察 実験などの活動があること を一番にあげています

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1. 研究主題 学び方を身につけ, 見通しをもって意欲的に学ぶ子どもの育成 ~ 複式学級における算数科授業づくりを通して ~ 2. 主題設定の理由 本校では, 平成 22 年度から平成 24 年度までの3 年間, 生き生きと学ぶ子どもの育成 ~ 複式学級における授業づくり通して~ を研究主題に意欲的

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課題研究の進め方 これは,10 年経験者研修講座の各教科の課題研究の研修で使っている資料をまとめたものです 課題研究の進め方 と 課題研究報告書の書き方 について, 教科を限定せずに一般的に紹介してありますので, 校内研修などにご活用ください

7 本時の指導構想 (1) 本時のねらい本時は, 前時までの活動を受けて, 単元テーマ なぜ働くのだろう について, さらに考えを深めるための自己課題を設定させる () 論理の意識化を図る学習活動 に関わって 考えがいのある課題設定 学習課題を 職業調べの自己課題を設定する と設定する ( 学習課題

での生活では, 理科の学習という意識が薄くなっている 理科の学習が自分の生活に役に立っていると 感じている児童は多いが, 便利にしてくれると感じている児童は少ない このことから理科で学習した 内容が, 生活の中で生かされていることを実感できるような指導を行っていきたい ( 学習活動への意識に関するこ

(1) 児童観本学級の児童は, 理科の学習に興味をもって取り組んでいる 特に, 観察や実験に意欲的である 昨年度は, 変える条件, 変えない条件を考えながら実験に取り組んできたことにより, 条件に目を向けて調べようとする力は育ってきている 本単元にかかわる児童の実態を把握するために, 発電, 蓄電,

p.1~2◇◇Ⅰ調査の概要、Ⅱ公表について、Ⅲ_1教科に対する調査の結果_0821_2改訂

3 特別支援学級における学習指導案 特別支援学級においても 学習指導案は授業の設計図としての働きに変わりはありません しかし 特別支援学級では 児童生徒の実態から指導の内容や計画を考えることに大きな意味があります 通常の学級の学習指導案では 例えば 単元について は学習指導要領に沿った指導計画に基づ

H26研究レポート一覧(6年研)変更2017.3.22

国語 B 柏原 埼玉県 全国 話すこと 聞くこと 書くこと 読むこと 算数 A 柏原 埼玉県 全国 数と計算 量と測定 図形 数量関係 算数 B 柏原 埼玉県 全国

実践研究助成 一般

「標準的な研修プログラム《

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平成 28 年度山梨県学力把握調査 結果分析資料の見方 調査結果概況 正答数分布グラフ 分布の形状から児童生徒の解答状況が分かります 各学校の集計支援ツールでは, 形状だけでなく, 県のデータとの比較もできます 設問別正答率 無解答率グラフ 設問ごとの, 正答率や無解答率が分かります 正答率の低い設

Taro-① 平成30年度全国学力・学習状況調査の結果の概要について

今年度は 創立 125 周年 です 平成 29 年度 12 月号杉並区立杉並第三小学校 杉並区高円寺南 TEL FAX 杉三小の子

3 単元の目標 (1) 電流と電圧との関係及び電流の働きに関する事物 現象に進んでかかわり それらを科学的に探究するとともに 事象を日常生活とのかかわりでみようとする 自然事象への関心 意欲 態度 (2) 電流と電圧との関係及び電流の働きに関する事物 現象の中に問題を見いだし 目的意識をもって観察

第 4 学年算数科指導案 平成 28 年 11 月 2 日 ( 水 ) 第 5 校時場所 4 年 2 組男子 22 名女子 10 名指導者垣見遥 ともなって変わる量 思考力 判断力 表現力の育成 ~ 児童の考えを引きだす算数的活動の工夫 ~ 1 単元名 ともなって変わる量 2 単元の目標 ともなって

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調査の概要 1 目的義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から 全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握 分析し 教育施策の成果と課題を検証し その改善を図るとともに そのような取組を通じて 教育に関する継続的な検証改善サイクルを確立する また 学校における児童生徒への教育指導の充実や学習状況の

4 単元構想図 ( 全 14 時間 ) 生徒の意識の流れ 表を使って解く 縦 (m) 0 8 横 (m) x= 右辺の形に式を変形して 二次方程式を解こう1 ax = b (x + m) = nは平方根の考えで解くことができる x= 右辺の形に式を変形して 二次方程式を解こう2 x +

第6学年2組 理科学習指導案

○学部 ○○科 学習指導案

1. 単元名 運動とエネルギー 3 章エネルギーと仕事 南中学校第 3 学年理科学習指導案 平成 26 年 10 月 16 日 ( 木 ) 第 5 校時 3 年生徒数 3 名場所理科室授業者 2. 単元について (1) 単元観本単元は 運動の規則性やエネルギーの基礎を 身のまわりの物体の運動などの観

平成 21 年度全国学力 学習状況調査結果の概要と分析及び改善計画 調査実施期日 平成 21 年 10 月 2 日 ( 金 ) 教務部 平成 21 年 4 月 21 日 ( 火 )AM8:50~11:50 調査実施学級数等 三次市立十日市小学校第 6 学年い ろ は に組 (95 名 ) 教科に関す

の間で動いています 今年度は特に中学校の数学 A 区分 ( 知識 に関する問題 ) の平均正答率が全 国の平均正答率より 2.4 ポイント上回り 高い正答率となっています <H9 年度からの平均正答率の経年変化を表すグラフ > * 平成 22 年度は抽出調査のためデータがありません 平

とで児童に活動の見通しを持たせ, 自分で課題を立て情報を集め整理し, 発表する等に取り組めるようにしていきたい 調査計画の場面では, 目的に照らしてどのような調査をしていくことがよいのか児童にしっかりと考えさせたい 例えば, データはどう集めたらよいのか, アンケートを実施する場合には, 誰にアンケ

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PowerPoint プレゼンテーション

2 調査結果 (1) 教科に関する調査結果 全体の平均正答率では, 小 5, 中 2の全ての教科で 全国的期待値 ( 参考値 ) ( 以下 全国値 という ) との5ポイント以上の有意差は見られなかった 基礎 基本 については,5ポイント以上の有意差は見られなかったものの, 小 5 中 2ともに,

平成 29 年度 全国学力 学習状況調査結果と対策 1 全国学力調査の結果 ( 校種 検査項目ごとの平均正答率の比較から ) (1) 小学校の結果 会津若松市 国語 A は 全国平均を上回る 国語 B はやや上回る 算数は A B ともに全国平均を上回る 昨年度の国語 A はほぼ同じ 他科目はやや下


平成 26 年度 高知県学力定着状況調査結果の概要 速報版 平成 27 年 2 月 高知県教育委員会

5 指導について (1) 単元について 3 年磁石の性質 4 年電気の働き 5 年電流の働き ( 本単元 ) 磁石に引きつけら 乾電池の数とつな 鉄心の磁化 極の変化 れる物 ぎ方 電磁石の強さ 異極と同極 光電池の働き 電気の通り道 電気を通すつなぎ方 電気を通す物 6 年電気の利用 中学 2 年

平成 25 年度学力定着状況確認問題の結果について 概要版 山口県教育庁義務教育課 平成 2 6 年 1 月 1 実施概要 (1) 目 的 児童生徒の客観的な学力状況の経年的な把握と分析を通して 課題解決に向けた 指導の工夫改善等の取組の充実を図る全県的な検証改善サイクルを確立し 県内す べての児童

Transcription:

研究課題 副題 デジタル読解力 育成に資するタブレット PC を活用した教材開発に関する実証研究 ~ 概念地図作成 即時評価ソフトのコンテンツ開発を通して ~ 学校名 所在地 ホームページアドレス 広島大学附属小学校 734-0005 広島県広島市南区翠 1-1-1 http://home.hiroshima-u.ac.jp/fushou/ 1. 研究の背景今日の知識基盤社会において,PISA 調査の示す 読解力 が必要なことついては贅言を要しない さらに,ICT 機器による情報量の増大を踏まえると, デジタルなテキストを対象にした 読解力 の育成が重要になってくる PISA2009 では, 将来的に筆記型調査から, コンピュータ使用調査型に移行する予定であることを受けて, デジタルなテキストによって 読解力 を測る デジタル読解力調査 を実施している 本調査において, 日本の デジタル読解力 は, 参加 19 か国中 4 位で, 国語科 算数科 理科において 1 週間に生徒がコンピュータを使う割合が参加国中, 最も低いという調査結果が出ている この デジタル読解力の育成 のために, 授業における ICT メディアの活用 はデジタルなテキストを取り扱うという点から有効な手段の 1 つとなろう そこで, 申請者は授業での ICT メディアの活用 のために, 広島大学の平嶋宗教授考案の概念地図作成 即時評価ソフト KB マップシステム を用いて, 理科の教材開発を行ってきた 概念地図の作成と即時評価はノートを記録媒体の中心とした従来の授業では取り入れることは難しかったが, 申請者らの研究 (1) と, これまで理科で行った KB マップシステム を用いた授業から,ICT 機器の活用によりそれが可能であり, 且つ概念地図の作成は, 国立教育政策研究所が示す デジタル読解力調査の習熟度レベル 1~2 に相当する デジタル読解力 の育成に資すると考えている しかし, KB マップシステム のコンテンツは小学校理科の中の数単元分となっており, 系統性を考慮しておらず, 量的にも質的にも十分ではない 2. 研究の目的上述の背景を踏まえ, 本研究では, デジタル読解力育成を目指し, 概念地図作成 即時評価ソフト KB マップシステム のコンテンツ開発を, 系統性を絞り, デジタルなテキストを 読む 学習と 作る 学習を組み込んで開発し, その実践の効果について検証していくことを目的とする 3. 研究の方法理科授業において概念地図を用いて指導していくことの有効性については, 福岡 (1992) らによって, その有効性については明らかにされている (2) ところが, これまで概念地図の作成とその評価は従来のノートや黒板を記録媒体の中心とした授業では実践が困難であった 今回用いる概念地図作成 評価ソフト KB マップシステム は, タブレット PC を用いることにより, 授業において, 児童が概念地図を作成し, それらを評価することが可能となっている そこで, 本研究の方法については, 太陽の動き の実践を例にして, 本研究で用いたソフト KB マップシステム の使い方と合わせて説明をしていく

問察(1) 教師によるゴールマップの作成まずは, 教師が教科内容の知識の構造を明らかにし, それらを概念地図で示す これが, 児童が授業を通して作成する概念地図のゴールとなる このマップを ゴールマップ とよぶ 太陽の動き の実践の場合には, 教師が右に示すようなゴールマップを作製した なお, これは教師が授業前の教材研究の段階で行う (2) 理科の授業において, KB マップシステム を用いて, 児童が概念地図を作成する 次に, 理科の授業の中で, 子どもたちが概念地図を作成する 上のようなゴールマップは, 児童が科学的な知識を獲得した後に, タブレット PC を 1 人 1 台配付し, 概念地図を作成させた (3) 児童が作成したマップを評価し, 修正させる 最後に, 児童が作成したマップをアップロードさせ, 教師側の PC により集約され, 評価が行われる 上に示すのが, 教師用の評価の画面である なお, この画面は, 児童が作成したマップと, 教師が作成したゴールマップを比較して, 集約されたものが表示されるようになっている 見方について簡単に 説明をすると, 太よう という言葉と, 南の空 という言葉を 通る という言葉の横に 31 という数字がある これは, 太よう と 題予想実験結果考いう言葉と 南の空 という言葉を 通る と いう言葉でつなげている児童はその授業 の時には,31 人いたということを表している このように, 児童が概念地図を作成す KB ることができることももちろんであるが, そ

の場ですぐに作成した概念地図を評価できるシステムというのは,ICT 機器を活用することでしか実現できない この点に本ソフトの児童への教育効果が期待できると考える なお, 理科の授業の流れとその中での概念地図の作成 評価を図示すると, 前頁の図のようになる 以上のような手順で, 教材研究を行い, 授業を実践してきた そして, 実践の前後には, 児童の科学的知識の定着度を測定するためにプレ ポストテストを行った また, デジタル読解力 の定着度測定のために, それを測定するための評価問題を広島大学大学院教育学研究科の高瀬裕人先生に開発を依頼し, 実践した 4. 研究の内容 経過 (1) 第 3 学年 電気の通り道 の実践で用いたゴールマップについて 1 本単元について本単元ではまず, 豆電球と電池とソケットと導線とで単純な回路を作り, 豆電球に明かりがつくときには, 輪のようになって回路がつながっていることを学習する それから, 電気を通すものと通さないものについて学習をする その際, 金属は電気を通すが, その他は電気を通さないということを実験を通して学習をしていく 2 教師によるゴールマップの作成本単元では, 上に述べたように, 大きく回路に関する学習と, 金属の導電性に関する学習という 2 つの点から学習が構成されている また, 両者は関連しあっている内容であると考える そこで, その関連を含めて, 本単元でゴールマップを作成する際には, それぞれの視点からの学習をバラバラに取り扱うのではなく, 一つのマップにしていくことで, 電気の学習としての単元の科学的知識の構造を明らかにすることを目指した そこで, 右上の写真のような概念地図の作成を目指した このゴールマップは, 豆電球が光っている, 豆電球が光っていない という実験の結果と, 電気が流れるときの わになっている, わになっていない という 回路 に関する知識の関連から考えたものである 実験の結果とそこから得られる考察という, 理科の問題解決の過程に沿って, ゴールマップを作成した こうすることで, より理科の授業の流れに沿うのではないかと考えたためである そして, このゴールマップを作成して学習した後には, 電気を通すものと通さないものについて学習をする その際には, ここまで作成した概念地図に, 下のような 7 つの図を足していくことを指導の中で行っていった この点が, 前回の かげと太陽 の学習との大きな相違点である つまり, かげと太陽 で児童が作成したゴールマップは, 単元の中の一場面であったのに対し, 今回の 電気の通り道 で作成するゴールマップは, 単元の初めから終わりまで, 単元の学習全体を貫く構造をとっており, 本単元全体を通して得られる科学的知識の構造を児童が組み立てていくことで学習が進んでいくという点にその特徴があると考える

なお, 最初に作成したゴールマップに付け足すこととなる 7 つの図は, 次のようなことを表している図となっている わになっている につながっている図( 左から順に ) 豆電球, 電池, ソケット, 導線で回路が切れることなくつながっている図 豆電球, 電球, ソケット, 導線で回路を作り, 切れているところに釘がある図 わになっていない につながっている図( 左から順に ) 導線が切れている図 豆電球がソケットにはまっていない図 導線が切れており, 間に三角定規 ( プラスチック ) が入っている図 導線を電池のプラス極とマイナス極に正しくつなげていない図 フィラメントが切れている図理科の学習では, 文字だけを用いて学習をするのではなく, 図もまた, 表現する際にとても必要な道具である たとえば, イメージ図などは, 見えないものを粒で表し, 科学的な事象を説明しやすくなるものであると考える これらの図をよく見て, 学習内容を参考にしながら, 電気の通り道 で学習する先述の 2 つの大きな内容について, その関連を図るとともに, 学習者である児童自身が概念地図を作ることを通してそれらの内容が児童に関連を含めて定着することを目指している (2) 第 3 学年 電気の通り道 の実践についてまずは図を付け足す前の概念地図作成の授業について概要を述べていくこととする 本時ではまず, 子どもたちに乾電池と豆電球とソケットと導線を配り, 様々なつなぎ方をさせて, 乾電池のプラス極とマイナス極を導線でつなぐと, 電気が流れて明かりがつくことを導き出していった このような授業の流れは多くの教科書で見られる流れである そして, 豆電球の明かりがついている時, 電気が流れているのであり, そのときの輪のようにつながっている電気の通り道のことを回路という と確認をして, 概念地図の作成に取組ませた この実践においては, ほとんどの児童がスムーズに学習内容を概念地図に表すことができた それが本時の中だけで, 評価できたということは,ICT 機器を活用したことで分かったことであるといえる 次に, 先述のマップに図を付け足していく授業について述べていくこととする 本実践では, 最初に, 先述のマップを作成しながら, 前時の振り返りを行った このようにすることで, 学習内容を振り返るという点において, 有効な手立てであると感じた これは今後の実践に活用できる授業展開であると考える そして, 黒板の写真に示すように,10 円玉とハサミを題材とし, 予想をさせて実験を行った その結果, 金属は電気を通すという考察を行った後で, 児童に概念地図の作成を行わせた

児童に概念地図を作成させ,1 回目のアップロードを行わせ, 教師用画面で評価を行った すると, 図をよく見ていない児童がやはり間違った図を関連づけていることが分かったので, 図をよく見てごらん と支援をし, 再度概念地図を作成させた このように, その授業時間内に評価と支援を行えるのは, このシステムの大きな特徴であると考える そして,2 回目のアップロードをさせ, 評価を行うと, ほとんどの児童が正しい概念地図を作成していた (3) 実践の前後における児童の科学的知識の理解度および, デジタル読解力の定着度について本実践の前後に, 電気の通り道 のプレ ポストテストを行っている 本稿で紹介している学級を実験群とし, タブレット PC を用いずに, 従来からのよく見られる授業を行う学級を統制群とした 森 (2015) らの分析によれば, 両者のプレ ポストテストについて比較を行うと, 実験群と統制群の間に, プレテストにおける有意な差はなかったが, ポストテストの結果については, 両者に有意な差が見られた また, プレテストとポストテストについては, 実験群と統制群とともに有意な差が見られた (3) このような結果から, 授業前後において, 両軍の理解度が向上し, 実験群の方がより理解度が高かったということが明らかになり, 今回の実践においては,ICT 機器と新しいソフトウェアを活用することで, 教育効果があったことを示すものである しかし, その一方で, デジタル読解力については, 有意な差は見られなかった 5. 研究の成果以上の取組から, 次のようなことが成果として挙げることができる まずは, これまで,ICT 機器を活用した授業実践については, 活用事例を紹介することにとどまっているものが多かったが, 本研究では, 教育効果の測定に踏み込み,KB マップシステムの活用を含め, タブレット PC を授業で導入することが, 教育効果を高めるということを数値化して示すことができた 次に, 本システムのように概念地図を導入する際には, これまでの研究では授業のまとめ部分においてのみ使用していたが, 単元を通じて使用する際には, 前時で作成したマップを再び作成するという活動を通して, 概念地図を読むということを新たに取り入れることができた 図示すれば右のようになる 問最後に, 今後私たちの生活には, インタ題予想実験結果考察ーネットをはじめとした, デジタルなテキストの増加が考えられる そのような大きな変化の中で, デジタル読解力 というのは重要性を増し, その能力を評価するための KB マップシステムで概念地 KB マップシステムで概念地図を作成と読み取りを行い, 問題が必要になってくる 本研究では, 広図を作成 評価する場面振り返る場面島大学大学院教育学研究科の高瀬裕人

先生の協力の元で, そのような問題を作成できたことは成果ととらえることができる 6. 今後の課題 展望これまでの研究で, KB マップシステム を用いることは, デジタル読解力 については, 定着があまり見られなかったが, 従来の指導方法に比べて, 理科の学習内容の定着について教育効果が高まることが明らかになった 今後については, コンテンツ数を増やし, 小学校理科の学習内容に対応できるようにするとともに, 教師用画面に改良を加え, ICT 機器に苦手意識を感じている先生でも利用できるようにしていくことが必要であると考える 7. おわりに授業における ICT 機器の活用は今後ますます重要になってくると考える しかし, それが本当に教育効果の高まるものでないと, 価値はないと考える 本研究で示したように, 教育効果が高まるような ICT 機器の利用方法について, 今後も研究を続けていきたい < 参考文献 > (1) 志田正訓, 長田卓哉, 杉原康太, 仁野由彬, 森山将悟, 石田耕平, 水田曜平, 平嶋宗, 概念地図の即時個人 集団評価を可能にする KB マップシステムを用いた小学校理科の植物単元の指導に関する研究 日本科学教育学会年会論文集, 第 36 号,pp.414-415,2012 (2) 日本理科教育学会編, 理科教育学講座第 7 巻,pp.77-82, 東洋館,1992 (3) 森智彦, 山中彰, 前田啓輔, 吉田完, 志田正訓, 林雄介, 平嶋宗, キットビルド概念マップを用いた具象化活動による知識精緻化の試み, 教育システム情報学会学生研究発表会,2015