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法医学問題「想定問答」(記者会見後:平成15年  月  日)

前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

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上原記念生命科学財団研究報告集, 28 (2014)

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今後の展開現在でも 自己免疫疾患の発症機構については不明な点が多くあります 今回の発見により 今後自己免疫疾患の発症機構の理解が大きく前進すると共に 今まで見過ごされてきたイントロン残存の重要性が 生体反応の様々な局面で明らかにされることが期待されます 図 1 Jmjd6 欠損型の胸腺をヌードマウス

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上原記念生命科学財団研究報告集, 30 (2016)

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するものであり 分子標的治療薬の 標的 とする分子です 表 : 日本で承認されている分子標的治療薬 薬剤名 ( 商品の名称 ) 一般名 ( 国際的に用いられる名称 ) 分類 主な標的分子 対象となるがん イレッサ ゲフィニチブ 低分子 EGFR 非小細胞肺がん タルセバ エルロチニブ 低分子 EGF

特別寄稿2018 紀初めごろに, 細菌由来の成分で免疫を活性化するという試みをおこなった しかし, 標準治療になるほどの効果はなかった 1960 年代後半にT 細胞とB 細胞が,1970 年代初めにナチュラルキラー (Natural Killer: NK) 細胞が発見された S. TLRRLRNLR

能性を示した < 方法 > M-CSF RANKL VEGF-C Ds-Red それぞれの全長 cdnaを レトロウイルスを用いてHeLa 細胞に遺伝子導入した これによりM-CSFとDs-Redを発現するHeLa 細胞 (HeLa-M) RANKLと Ds-Redを発現するHeLa 細胞 (HeL

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結果 この CRE サイトには転写因子 c-jun, ATF2 が結合することが明らかになった また これら の転写因子は炎症性サイトカイン TNFα で刺激したヒト正常肝細胞でも活性化し YTHDC2 の転写 に寄与していることが示唆された ( 参考論文 (A), 1; Tanabe et al.

免疫Ⅱ

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従来のペプチド免疫療法の問題点 樹状細胞 CTL CTL CTL CTL CTL CTL CTL CTL 腫瘍組織 腫瘍細胞を殺す 細胞傷害性 T 細胞 (CTL) の大半は 腫瘍の存在に気づかず 血管内を通り過ぎている! 腫瘍抗原の提示を考えると それは当然! 2

上原記念生命科学財団研究報告集, 30 (2016)

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るが AML 細胞における Notch シグナルの正確な役割はまだわかっていない mtor シグナル伝達系も白血病細胞の増殖に関与しており Palomero らのグループが Notch と mtor のクロストークについて報告している その報告によると 活性型 Notch が HES1 の発現を誘導

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手術 抗がん剤 放射線に次ぐ第 4の治療法として期待されるがん免疫療法 いくつかの免疫チェックポイント阻害薬の効果が認められ承認されたことで がん治療におけるがん免疫療法の位置づけは大きく変わりました 今特集では がん治療の新時代の扉を開いたといわれる がん免疫療法について そのしくみや効果に関する

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DOI: 10.7875/leading.author.4.e005 2015 年 4 月 21 日公開 がん免疫療法 : 基礎研究から臨床応用にむけて Cancer immunology: bench to bedside 杉山大介 西川博嘉 Koji Ohashi & Noriyuki Ouchi 国立がん研究センター先端医療開発センター免疫 TR 分野 要約近年, がんの新たな治療法としてがん免疫療法が脚光をあびている. その契機となったのは, 抗 CTLA-4 抗体および抗 PD-1 抗体ががんの治療薬として承認されたことである. いずれの医薬品も, からだに備わる免疫系を操作し, がんを排除する免疫力を強化することによりがんを治療する. この 免疫によりがんを排除する という概念が医薬品になったことは, これまでのがん治療に新たな選択肢をもたらした. このレビューでは, これまでのがん免疫学における基礎研究を紹介しつつ, 基礎研究から臨床応用への橋渡し研究の成功例を示し, 今後のがん免疫療法の進展について考察する. はじめに現在では,2 人に 1 人ががんを発症し,3 人に 1 人ががんにより死亡するとの統計が算出されている. がんの治療法は日々進歩しており, 治癒率および生存率は向上している. しかしながら, 依然としてがんによる死亡率は上昇しつづけており, 新たな治療法の開発がもとめられている. そのなかで, がん免疫療法ががんの新たな治療法として注目されている. ヒトにおいては 1 日に数千個ものがん細胞が発生しているといわれているが, 必ずしもそれらすべてががんの発症には直結しない. その理由のひとつは, からだに備わる免疫機構がこれらのがん細胞を排除しているからである. われわれのからだにおいては, がんを排除する免疫機構とがんが生き延びる機構とがつねに拮抗しており, バランスが後者にかたむくことによりがんが発症する. このレビューでは, がんの排除にかかわる免疫機構およびがんの生存を手助けする免疫機構に着目しつつ, 免疫チェックポイントタンパク質を中心に解説する. 1. がん免疫療法の歴史ここ十数年のうちに, がん免疫療法の存在が世に広く知られ, 急速に発展し, その研究も多くなされるようになった. 過剰な免疫応答によりがんが排除されるという現象は, 丹毒に感染した悪性腫瘍の患者において腫瘍の退縮が確認されたという 1868 年の報告が起源とされている 1). そののち 1893 年には, 丹毒の原因である連鎖球菌の注入による激しい免疫応答を利用した, 切除不能の悪性腫瘍に対する治療が実施された 2). これらの事象から, 免疫系ががんの発生を抑制するという説が 1909 年にはじめて提唱された. そののち 1950 年から 1970 年にかけ, 免疫系ががん細胞を排除することによりがんの発生を抑制しているという cancer immunosurveillance という考えが提唱されたが,1974 年に, ヌードマウス ( 免疫不全マウス ) を用いた実験において免疫系の有無により発がんに差異はみられないことが報告され, がん免疫の研究は後退した. しかしのちに, ヌードマウスは完全な免疫不全を示しておらず, より免疫不全を示す RAG ノックアウトマウスを用いた実験において免疫による発がんの遅延が実証されるとともに, ヒトのがん抗原の発見によりがん免疫の研究はふたたび進展することになった 3). 現在では,CTLA-4 や PD-1 といった免疫チェックポイントタンパク質の研究, 腫瘍の局所における免疫細胞の機能に関する研究など, 広く応用が進められている. 2. がん免疫に関与する免疫細胞がん免疫にはさまざまな免疫細胞が関与しており, がん細胞の駆逐を担う細胞とがん細胞の生存および増殖を助ける細胞とが存在する. 前者にはキラー T 細胞 (CD8 陽性 T 細胞 ), ナチュラルキラー細胞, 樹状細胞, マクロファージが含まれ, 後者には制御性 T 細胞, 骨髄由来抑制細胞が含まれる. 1

がんの発生初期にはナチュラルキラー細胞によりがん細胞が破壊され, その細胞片を樹状細胞やマクロファージが取り込み, がん細胞片に含まれるがん抗原を分解しがん抗原ペプチドを生成する. これらの細胞は抗原提示細胞とよばれ,MHC(major histocompatibility complex, 主要組織適合遺伝子複合体 ) のクラス I 分子あるいはクラス II 分子においてがん抗原ペプチドを提示する ( 図 1). ヒトの場合,MHC は HLA(human leukocyte antigen, ヒト白血球型抗原 ) ともよばれている. キラー T 細胞は MHC クラス I 分子に提示されたがん抗原ペプチドを T 細胞受容体により認識しシグナルを伝達するとともに, 抗原提示細胞の表面に存在する共刺激タンパク質と相互作用することにより, がん細胞を攻撃する活性化キラー T 細胞になる. がん細胞はさまざまな免疫逃避機構をもち, そのなかには制御性 T 細胞や骨髄由来抑制細胞といった免疫抑制細胞のリクルートもふくまれる. 制御性 T 細胞は抗原提示細胞の共刺激タンパク質の機能を低下させキラー T 細胞を不活性化させる. 骨髄由来抑制細胞はサイトカインあるいは細胞傷害タンパク質を産生しキラー T 細胞の機能および生存を低下させる. 抗がん免疫応答を担う免疫細胞とその抑制を担う免疫細胞の機能についてはまだ不明な点が多く, それらを解明することでより効果的ながん免疫療法の開発が可能になると思われる. 3. 免疫チェックポイントタンパク質 CTLA-4 CTLA-4(cytotoxic T-lymphocyte-associated antigen 4) は 1987 年にマウスに由来するキラー T 細胞クローンの cdna ライブラリーから遺伝子がクローニングされた, リンパ球に特有の免疫グロブリンスーパーファミリーに属する糖タンパク質である 4).1988 年にはヒトにおいて も同定され 5),1991 年および 1992 年に CTLA-4- 免疫グロブリン融合タンパク質を用いた実験により CTLA-4 を介する分子機構が T 細胞の免疫応答を抑制することが示された 6,7). 同じ時期に,CTLA-4 と同じく免疫グロブリンスーパーファミリーに属する糖タンパク質である CD28 が同定され,CTLA-4 とは対称的に T 細胞を活性化する機能をもつことが報告された.CTLA-4 および CD28 の機能を考慮し,CTLA-4 の機能を抑制させ CD28 シグナルによる T 細胞の活性化を促進させることががんの退縮につながると報告されはじめ,1996 年には担がんマウスへの抗 CTLA-4 抗体の投与により腫瘍の退縮効果が観察されたことが報告された 8). この報告が, 生体において抗 CTLA-4 抗体の投与による免疫応答の活性化が腫瘍の退縮を促進することを示した, はじめての例である. CTLA-4 を介した免疫細胞の不活性化は CD28 シグナルとの競合に依存する.CTLA-4 および CD28 はともに, 抗原提示細胞あるいはがん細胞の表面に存在する CD80 (B7-1) あるいは CD86(B7-2) と相互作用することにより機能する.CD28 は恒常的に T 細胞の表面に発現しているが,CTLA-4 は T 細胞が活性化していないときには細胞の内部に存在し活性化されると細胞の表面へと移行する.CD28 シグナルによる T 細胞の活性化ののち,CTLA-4 が機能することにより T 細胞の活性化は抑制されるが, CTLA-4 と CD80 あるいは CD86 との親和性は CD28 と CD80 あるいは CD86 との親和性よりも 10~100 倍も高く,T 細胞の活性化ののちには CTLA-4 が優先的に機能する 9). このフィードバック機構により, 活性化した T 細胞の過剰な応答は抑制されている ( 図 2). CTLA-4 は CD28 と CD80 あるいは CD86 との相互作用を阻害すること, または,CD80 あるいは CD86 を細胞 図 1 がん細胞の排除と発生にかかわる免疫機構正常な細胞の遺伝子が傷つくことによりがん細胞が発生する. がん細胞が発生すると, はじめに自然免疫系が機能し, ナチュラルキラー細胞などによりがん細胞が破壊される. マクロファージあるいは樹状細胞は破壊されたがん細胞の細胞片を取り込み, がん抗原を分解しがん抗原ペプチドとして提示する. このがん抗原ペプチドにより不活性型のヘルパー T 細胞あるいはキラー T 細胞が活性化し, 獲得免疫系によるがん細胞の排除が機能する. 2

から奪うことにより免疫抑制機構を担うと考えられている. 後者の場合, のちに述べる制御性 T 細胞 (CTLA-4 が恒常的に細胞の表面に発現している ) が深く関与しており,CD80 あるいは CD86 を失った細胞は T 細胞を活性化することができなくなる. そのほかの抑制機構としては, 相互作用による CTLA-4 の下流のシグナルによる直接的な抑制がある. これまでの研究により,CTLA-4 の細胞内ドメインに作用するいくつかのタンパク質が報告されているが, 抑制機構を直接に担うタンパク質は確定されておらず, 現在もその解明にむけた研究がなされている 10). 1996 年の報告につづき, マウスにおいて抗 CTLA-4 抗体の投与による腫瘍の退縮効果がさまざまながん腫において確認されている 11) ( 図 3). これらの実験結果をふまえ,2000 年にはじめて, ヒトにおいて抗 CTLA-4 抗体の有効性の評価が試みられ, 悪性がんの患者および転移性がんの患者への投与により, 悪性黒色腫および卵巣がんにおいて一定の抗腫瘍免疫応答の増強効果が確認された 12). この第 I 相臨床試験では重篤な有害事象が確認されなかったため, ひきつづき, 第 II 相臨床試験および第 III 相臨床試験が実施された. 第 III 相臨床試験は切除不能かつ化学療法抵抗性の悪性黒色腫の患者 676 人を対象とし, 抗ヒト CTLA-4 モノクローナル抗体 ( イピリムマブ ) 単独, イピリムマブと gp100 ペプチドワクチンとの併用,gp100 ペプチドワクチン単独, の 3 グループで実施された 13). gp100 は悪性黒色腫に特異的な腫瘍抗原であり, 使用されたペプチドはキラー T 細胞が gp100 を認識するエピトープ配列から作製された. 臨床試験の結果, イピリムマブ単独, イピリムマブと gp100 ペプチドワクチンとの併用, gp100 ペプチドワクチン単独のそれぞれの治療による 12 カ月生存率は 45.6%,43.6%,25.3%,24 カ月生存率は 23.5%,21.6%,13.7% であり, イピリムマブの投与によ る延命効果が確認された. この臨床試験の結果にもとづき, 2011 年にイピリムマブは米国 Food and Drug Administration(FDA, 食品医薬品局 ) から世界初の免疫活性化抗体医薬として承認された.2012 年には, 初発悪性黒色腫の患者を対象としたイピリムマブとダカルバジン ( 悪性黒色腫に対する抗悪性腫瘍剤 ) の併用投与を実施した第 III 相臨床試験の結果が報告され, ダカルバジン単独よりイピリムマブとの併用において延命効果が認められた 14). 現在, イピリムマブはほかの悪性腫瘍への効果あるいはほかの標準化学療法との併用が試みられ, 悪性黒色腫への承認からの適応の拡大が進められている 15). イピリムマブの投与により抗腫瘍免疫応答は増強されるが, 一方で, 免疫活性を総体的に増強するために自己免疫疾患を発症することが報告されている. ある臨床試験においてはイピリムマブを投与した患者の 60% に有害事象がみられ, その多くが皮膚あるいは消化管に関する自己免疫疾患であった 13). ほかの臨床試験においてもイピリムマブを投与した患者のうち約半数が同様の自己免疫疾患を発症したと報告されている 14). このような副作用を抑えるため, イピリムマブを投与した患者へは免疫抑制剤が投与されているが, 副作用を抑えつつ抗腫瘍免疫応答を維持するのに今後の検討が必要と考えられる. 4. 免疫チェックポイントタンパク質 PD-1 PD-1(programmed death 1) は 1992 年に細胞死を誘導したマウスの T 細胞株に由来する cdna ライブラリーから遺伝子がクローニングされた, 免疫グロブリンスーパーファミリーに属する膜タンパク質であり 16),1994 年にはヒトにおいても同定された 17). 当初,PD-1 はプログラム細胞死をひき起こすと考えられていたが, リガンドである PD-L1(B7-H1) あるいは PD-L2(B7-H2) と相互作 図 2 CTLA-4 の機能 (a)t 細胞の活性化.T 細胞はマクロファージや樹状細胞の MHC 分子に提示された抗原ペプチドを T 細胞受容体により認識しシグナルを伝達する. 同時に,CD80 あるいは CD86 と CD28 との相互作用により CD28 シグナルが伝達され,T 細胞は活性化される. (b) 活性化 T 細胞の抑制. 活性化した T 細胞の表面には CTLA-4 が発現し,CD80 あるいは CD86 と相互作用する.CD80 あるいは CD86 との親和性は CD28 よりも CTLA-4 のほうが高いため,CTLA-4 は優先的に CD80 あるいは CD86 と相互作用し, 活性化 T 細胞は CTLA-4 シグナルにより抑制される. 3

用することにより T 細胞の活性化を抑制することが明らかにされた 18).PD-1 は T 細胞だけでなく,B 細胞, ナチュラルキラー細胞, ナチュラルキラー T 細胞, 骨髄系細胞にも発現している 18). また,PD-L1 は抗原提示細胞だけでなく, がん細胞あるいは感染細胞といったさまざまな細胞において恒常的に発現しているが,PD-L2 は抗原提示細胞あるいは一部の B 細胞でのみ恒常的に発現し, 腫瘍の局所において種々のサイトカインにより発現が誘導される 19).PD-1 シグナルによる T 細胞の活性化の抑制機構は PD-1 と PD-L1 あるいは PD-L2 との相互作用にともない促進される. すなわち, 相互作用ののちに PD-1 の細胞質ドメインにチロシン脱リン酸化酵素の一種である SHP-2 がリクルートされ,T 細胞受容体シグナル伝達タンパク質である ZAP70 を不活性化させることにより T 細胞の機能を抑制する 18). また,PD-L1 は CD80 との相互作用することが可能であり, その結果,T 細胞の活性化が抑制されることも報告されている 20). 腫瘍の局所ではキラー T 細胞およびナチュラルキラー細胞が PD-1 を高く発現しており, 抗腫瘍免疫応答の減弱の原因とされている. この PD-1 シグナルを抗 PD-1 抗体あるいは抗 PD-L1 抗体を使用して阻害し抗腫瘍免疫応答の減弱を抑制することによりその増強効果が得られることが推察され, 抗 PD-1 抗体あるいは抗 PD-L1 抗体を用い PD-1 と PD-L1 との相互作用を阻害することによりがん免疫応答を増強できることが報告されている 21,22). また, 抗 PD-1 抗体は担がんに存在する PD-1 陽性 CD8 陽性 T 細胞を再活性化することが報告されている ( 図 4). 動物実験の結果, 抗 PD-1 抗体あるいは抗 PD-L1 抗体の投与による抗腫瘍免疫応答の増強が確認されたことから, これらの抗体を用いたがん患者を対象とする臨床試験が開始され, 一定の臨床効果が認められたとの報告がなされている 23). 完全ヒト化抗体である抗 PD-1 抗体 ( ニボル マブ ) の第 I 相臨床試験では, 悪性黒色腫の患者に対し 28%, 非小細胞肺がんの患者に対し 18%, 腎細胞がんの患者に対し 27% の奏効率を示した. のちの臨床試験の結果から,2014 年にニボルマブは悪性黒色腫の患者を対象とした治療薬として日本で承認された. ニボルマブの効果をより高めるためイピリムマブとの併用療法も試みられており, 悪性黒色腫の患者において, イピリムマブ単独の投与が 11%, ニボルマブ単独の投与が 31% の臨床的な効果であったのに対し, 併用投与では 65% の効果を示したことが報告されている 24). 現在, ニボルマブは悪性黒色腫のほかのがん腫を対象とした臨床試験が多く実施され, 化学療法との併用治療も試みられており, いずれも臨床的な効果が期待されている. 抗 PD-1 抗体の投与は全身の免疫応答を増強させるため, 抗 CTLA-4 を投与した患者と同様に自己免疫疾患を発症する患者が確認されており, 対応策を考える必要がある 24). 抗 PD-L1 抗体を投与した臨床試験の結果は 2012 年にはじめて報告され, 固形がんの患者を対象とした臨床試験の結果では, 悪性黒色腫の患者に対し 17%, 腎細胞がんの患者に対し 12%, 非小細胞肺がんの患者に対し 10%, 卵巣がんの患者に対し 5% の奏功率を示した 25). この結果は抗 PD-1 抗体の単独での投与の効果より低いものであったが, この臨床試験において使用された抗体とは異なる抗 PD-L1 抗体を用いた臨床試験では, 悪性黒色腫の患者に対し 29% の奏功率, あるいは, 非小細胞肺がんの患者に対し 22%, 腎細胞がんの患者に対し 13% の奏功率を示したことが報告されている 23). 5. がん免疫療法において期待されるほかの免疫チェックポイントタンパク質これまで述べた CTLA-4 および PD-1 のほかにも免疫チェックポイントタンパク質が見い出されており, 今後の臨 図 3 抗 CTLA-4 抗体による抗腫瘍免疫応答の増強 (a) 活性化 T 細胞に発現する CTLA-4 に対する抗 CTLA-4 抗体の作用. 活性化した T 細胞に発現する CTLA-4 と抗 CTLA-4 抗体とが結合することにより,CTLA-4 と CD80 あるいは CD86 との相互作用は阻害され, 活性化 T 細胞の抑制が解除される. (b) 制御性 T 細胞に対する抗 CTLA-4 抗体の作用. 制御性 T 細胞は恒常的に CTLA-4 を発現しており, その CTLA-4 と結合した抗 CTLA-4 抗体を介した抗体に依存性の細胞傷害活性により制御性 T 細胞が除去され, 制御性 T 細胞による免疫抑制が解除される. 4

床への応用が期待されている. TIM-3(T-cell immunoglobulin and mucin containing protein-3) は 2002 年に CD4 陽性 Th1 細胞あるいは CD8 陽性 T 細胞に発現していることが見い出された, 免疫グロブリンスーパーファミリーに属する膜タンパク質である 26).TIM-3 はガレクチン 9 をリガンドとし, その相互作用によりエフェクター T 細胞の活性化を抑制する. 腫瘍の局所では TIM-3 のみあるいは TIM-3 および PD-1 を共発現する CD8 陽性 T 細胞の抗腫瘍免疫活性の弱いことがヒトおよびマウスにおいて確認されている. この TIM-3 シグナルを抗 TIM-3 抗体により阻害することにより抗腫瘍免疫応答を増強できることがマウスにおいて実証されており, 現在, ヒトへの応用が試みられている 11). LAG-3(lymphocyte activation gene-3) は 1990 年に CD4 陽性 T 細胞において発現が確認された, 免疫グロブリンスーパーファミリーに属する膜タンパク質である 27). のちの研究により, ナチュラルキラー細胞,B 細胞, リンパ球系樹状細胞にも発現していることが見い出され, LAG-3 は MHC クラス II 分子との相互作用により活性化 T 細胞を抑制する機能を担う. 抗 LAG-3 抗体を使用した LAG-3 シグナルの阻害, および, 抗 PD-1 抗体との併用投与により抗腫瘍免疫応答が増強されることがマウスにおいて証明されている. この実験結果から抗 LAG-3 抗体はヒトに対し応用されており, 第 I 相臨床試験において悪性黒色腫の患者に対する投与が試みられている 11). B7-H3,B7-H4,B7-H5(VISTA) は B7 ファミリーに属する膜タンパク質であり, それぞれ,2001 年,2003 年, 2011 年に見い出された 28-30).B7-H3 はさまざまながん腫および抗原提示細胞に発現しており,T 細胞受容体と相互作用することにより T 細胞に対し活性化あるいは抑制の両方のシグナルを伝達する. しかし, がん細胞における B7-H3 の発現が患者の予後不良と相関することから, 腫瘍の局所において B7-H3 シグナルは抗腫瘍免疫応答を抑制する機能を担うと考えられている.B7-H4 は B7-H3 と同様にがん細胞および抗原提示細胞において発現しており, 相互作用により活性化 T 細胞を抑制する機能を担う. とりわけ, 腫瘍の局所では腫瘍関連マクロファージにおける発現が腫瘍の増悪に関与している. がん患者において B7-H4 の高い発現が予後不良と相関することも報告されている.B7-H5 は T 細胞に抑制性のシグナルを伝達する機能を担い, マウスでは腫瘍の局所における CD11b の発現と正の相関のあることが報告されている. また,B7-H5 シグナルを阻害することにより抗腫瘍免疫応答の増強を促進させることがマウスにおいては確認されている. これら 3 つのタンパク質と相互作用する受容体は同定されていないが,B7-H3 に対するヒト化抗体が開発されており, 第 I 相臨床試験において再発性のがん患者に投与されている 11). TIGIT(T cell immunoreceptor with Ig and ITIM domain) は 2009 年に見い出された免疫グロブリンスーパーファミリーに属する膜タンパク質であり, 活性化された T 細胞およびナチュラルキラー細胞に発現していることが報告されている 31). そのリガンドは抗原提示細胞に発現している CD112 および CD155 であり, これらは CD226 とよばれる受容体とも相互作用する. これら TIGIT あるいは CD226 と CD112 あるいは CD155 との相互作用は, CTLA-4 あるいは CD28 と CD80 あるいは CD86 との相互作用と類似しており,TIGIT シグナルは免疫抑制機能を担い CD226 シグナルは免疫活性機能を担う.TIGIT シグナルは CTLA-4 シグナルよりも弱い免疫抑制機能をもつが,TIGIT シグナルを阻害することにより免疫応答を活性化できることが確認されている 11). 図 4 PD-1 の機能および抗 PD-1 抗体の作用 (a)pd-1 の機能. 活性化 T 細胞の表面に発現する PD-1 とがん細胞に発現する PD-L1 あるいは PD-L2 との相互作用により, 活性化 T 細胞は PD-1 シグナルを介し抑制される. (b) 抗 PD-1 抗体の作用. 活性化 T 細胞に発現する PD-1 と抗 PD-1 抗体とが結合することにより,PD-1 と PD-L1 あるいは PD-L2 との相互作用は阻害され,PD-1 シグナルによる T 細胞の抑制が解除される. 5

6. がん免疫と制御性 T 細胞 1970 年代に一部の T 細胞が免疫抑制機能をもつとの報告がなされ,1995 年に制御性 T 細胞が同定されてから世界中で注目され多くの研究が進められている 32). すなわち,CD4 陽性 T 細胞のうち CD25 陽性細胞を除去した T 細胞を免疫不全マウス ( ヌードマウス ) に移入することにより自己免疫疾患が発症し,CD4 陽性 CD25 陽性 T 細胞の再移入によりその発症が抑制されることが見い出され, 制御性 T 細胞として CD4 陽性 CD25 陽性 T 細胞が同定された 32).2001 年にはヒトにおいても同様の制御性 T 細胞が同定され,2003 年には制御性 T 細胞のマスター遺伝子として知られる Foxp3 遺伝子が同定されたことにより, より厳密に制御性 T 細胞を定義することが可能になった 33) ( 制御性 T 細胞については, 濱口真英 坂口志文, 領域融合レビュー, 2, e005, 2013 も参照されたい ). 転写因子である Foxp3 はさまざまな免疫応答関連遺伝子の発現を制御しており, 制御性 T 細胞において恒常的に発現している CTLA-4 の発現制御に関与していることが明らかにされている. この CTLA-4 が制御性 T 細胞による免疫抑制機能に重要であることはさきに述べたが, そのほかの免疫抑制機能としては, 抑制性サイトカインの産生による活性化細胞の抑制, 活性化細胞へのアポトーシスの誘導などが示唆されている 34). 腫瘍免疫において制御性 T 細胞は抗腫瘍免疫応答を抑制しており, 制御性 T 細胞の除去による腫瘍の退縮効果が検討されている. 初期の研究では, 抗 CD25 抗体の投与による制御性 T 細胞の除去が腫瘍の退縮につながることが実証され 35), のちのジフテリア毒素の投与による Foxp3 陽性制御性 T 細胞の特異的な除去も同様の結果を示している 36).CTLA-4 と同様に,PD-1 および LAG-3 も制御性 T 細胞に発現していることが報告されており, これらの免疫チェックポイントタンパク質を介した免疫抑制機能の解明が進められている 11). とりわけ, 抗 CTLA-4 抗体による抗体に依存性の細胞傷害活性により制御性 T 細胞が排除されることで抗腫瘍免疫応答が増強することが重要視されている. 最近の研究では, 制御性 T 細胞のホーミングおよび細胞内シグナルが注目され,CCR10 に依存的な腫瘍の局所へのホーミングの阻害, あるいは, アセチルトランスフェラーゼ p300 あるいは PI3 キナーゼの阻害により, 制御性 T 細胞の抑制機能を解除することで抗腫瘍免疫応答が増強されることが報告されている 37-39). ヒトでは, 胃がん, 肺がん, 肝臓がん, 膵臓がん, 頭頸部がんなど, 多くのがん腫において制御性 T 細胞が増加していることが明らかにされており 40), 制御性 T 細胞の腫瘍の局所への浸潤ががん患者の予後不良因子であることが多く報告されている. これらの臨床データから, 制御性 T 細胞の除去による抗腫瘍免疫応答の増強を目的とした臨床試験がなされており, ヒト化抗 CD25 抗体 ( ダクリズマブ ) やジフテリア毒素融合 IL-2 製剤などが開発され使 用されている. しかし,CD25 は活性化 T 細胞における発現もみられるため, 抗 CD25 抗体の投与による制御性 T 細胞の特異的な除去はかぎられており, 臨床試験においても一定の結果は得られていない 41). 現在では, 制御性 T 細胞により特異的に発現するタンパク質を標的とした方法が模索されており, そのひとつとして, 腫瘍の局所への制御性 T 細胞の浸潤の機構に着目した試みがなされている. 筆者らは, そのアプローチとしてケモカイン受容体のひとつ CCR4 を介した制御性 T 細胞の腫瘍への浸潤に着目した.CCR4 は CCL17 および CCL22 をリガンドとし, それらがさまざまな細胞により腫瘍の局所において放出されると CCR4 陽性制御性 T 細胞が腫瘍の局所にリクルートされる. この CCR4 強陽性制御性 T 細胞が悪性黒色腫の局所に多く浸潤しており, 抗 CCR4 抗体を用いることによりこれらの制御性 T 細胞の除去が可能であり, それにともない抗腫瘍免疫応答が増強されることを見い出した 42). 現在, この研究をもとに, 固形がんの患者への抗 CCR4 抗体の投与が試みられており, 腫瘍の局所において制御性 T 細胞が減少するかどうか検討がなされている. 7. がん抗原を用いたワクチン療法免疫チェックポイントタンパク質の阻害によるがん免疫療法は, 全身の免疫細胞を非特異的に増強させることで腫瘍の退縮につなげているが, その反面, さきにも述べたように, 免疫細胞の活性化にともなう自己免疫疾患を発症してしまう. そこで, がん細胞を特異的に攻撃する免疫細胞のみを活性化させるがんワクチン療法の開発が進められている. がんワクチン療法では特定の免疫細胞のみが活性化されるため, 自己免疫疾患の発症を抑えることができる. ワクチンに使用されるがん抗原としては, がん抗原ペプチド, 全長のがん抗原, がん抗原ペプチドを提示した樹状細胞が使用されている 43). これまで, 多数のがん抗原図 5 キメラ抗原受容体を発現させた T 細胞の構造がん細胞を認識する抗体の 2 つの抗原認識部位をつないだ受容体様ドメインに,CD3 の細胞外ドメイン, 細胞膜貫通ドメイン, 細胞内ドメインを順に結合させ, このキメラ抗原受容体を T 細胞において発現させる. 6

が見い出されており, そのなかからがんワクチン療法に適しているがん抗原がピックアップされている 44). この報告では, 治療効果, 免疫原性, 特異性などの項目から考察し, おのおののがん抗原がランクづけされている. それによると,WT-1 が最上位に位置しており, つづいて MUC-1 が位置するが, さきに述べたイピリムマブの臨床試験において使用された gp100 は 16 番目に位置している. よって, 今後は免疫チェックポイントタンパク質の阻害剤と WT-1 あるいは MUC-1 といったがん抗原をワクチンとして併用することが, 効果的ながん免疫療法になる可能性がある. 8. 細胞移入療法 1972 年に腫瘍の局所にリンパ球が多く浸潤している患者は予後良好であることが示され, この報告をもとに, 腫瘍浸潤リンパ球あるいは遺伝子改変リンパ球を用いた細胞移入療法の開発が進められている 45). いずれの場合も, がん抗原に特異的な T 細胞を特殊な方法で培養して増幅し, がん患者の体内へそれらを移入することによりがん細胞を強力に排除することを目的としている. 腫瘍浸潤リンパ球の移入療法においては, がん患者に由来する腫瘍浸潤リンパ球からがん抗原に特異的なキラー T 細胞を取り出し, インターロイキン 2 の存在のもとで大量培養したのち, それらを患者へ移入している. そのほかのアプローチとしては, がん患者から採取した末梢血単核細胞にがん抗原に特異的な T 細胞受容体の遺伝子を導入し, 人工的にがん抗原に特異的なキラー T 細胞を作製したのち, これらを患者へ移入する方法が実施されている. 近年, 遺伝子改変リンパ球を作製する方法のなかで発展してきたものが, キメラ抗原受容体を発現させた T 細胞を用いた治療法である. このキメラ抗原受容体はがん抗原を認識する抗体をもとに作製されており, すなわち, 抗体の 2 つの抗原認識領域をつないだ受容体様ドメインに CD3 あるいは共刺激タンパク質の細胞膜貫通ドメインおよび細胞質内ドメインを結合させた構造になっている ( 図 5). キメラ抗原受容体のすぐれている点は, 抗原への結合力が T 細胞受容体よりも非常に強いこと,MHC 分子を介さずに抗原を直接的に認識できることである. また, 細胞膜貫通ドメインあるいは細胞質内ドメインの組合せを変えることにより, キメラ抗原受容体を発現させた T 細胞の生存力や殺傷力を向上させることができる. これらの細胞移入療法はさまざまながん腫に対する臨床試験が行なわれており, その効果が期待されている 45). おわりにがん免疫療法はこれまでのがん治療を大きく変える有効な治療法となりつつある. 現在, もっとも注目されているのが免疫チェックポイントタンパク質阻害薬であり, さまざまな候補タンパク質を標的とした薬剤の開発が急速 に進められている. 一方で, 克服すべき課題は多く, そのひとつが副作用である. 免疫チェックポイントタンパク質阻害薬に関しては免疫抑制の解除により自己免疫疾患を発症することが確認されており, 細胞移入療法においては過剰の T 細胞を移入することにより炎症性サイトカインが多く産生されるサイトカインストームを生じ, 自己の細胞の傷害につながっている. 今後のがん免疫療法ではこれらの副作用を考慮するのはもちろんのこと, 患者にあったがん免疫療法を選択する必要がある. すでに, 抗 CTLA-4 抗体あるいは抗 PD-1 抗体の投与により腫瘍の退縮効果があった患者は, 新規あるいは変異した多くのがん抗原をもっていたことが報告されている. がん免疫療法は急速に発展してきており, さまざまな治療法が開発されている. その治療法を併用していくことが, よりよいがん免疫療法の開発につながっていくと確信している. 文献 1) Busch, W.: Aus der Sitzung der medicinischen Section vom 13 November 1867. Berl. Klin. Wochenschr., 5, 137 (1867) 2) Coley, W. B.: Late results of the treatment of inoperable sarcoma by the mixed toxins of Erysipelas and Bacillus prodigosus. Am. J. Med. Sci., 131, 375-430 (1906) 3) Dunn, G P., Bruce, A. T., Ikeda, H. et al.: Cancer immunoediting: from immunosurveillance to tumor escape. Nat. Immunol., 3, 991-998 (2002) 4) Brunet, J. F., Denizot, F., Luciani, M. F. et al.: A new member of the immunoglobulin superfamily: CTLA-4. Nature, 328, 267-270 (1987) 5) Dariavach, P., Mattei, M. G., Golstein, P. et al.: Human Ig superfamily CTLA-4 gene: chromosomal localization and identity of protein sequence between murine and human CTLA-4 cytoplasmic domains. Eur. J. Immunol., 18, 1901-1905 (1988) 6) Linsley, P. S., Brady, W., Umes, M. et al.: CTLA-4 is a second receptor for the B cell activation antigen B7. J. Exp. Med., 174, 561-569 (1991) 7) Linsley, P. S., Wallace, P. M., Johnson, J. et al.: Immunosuppression in vivo by a soluble form of the CTLA-4 T cell activation molecule. Science, 257, 792-795 (1992) 8) Leach, D. R., Krummel, M. F. & Allison, J. P.: Enhancement of antitumor immunity by CTLA-4 blockade. Science, 271, 1734-1736 (1996) 9) Collins, A. V., Brodie, D. W., Gilbert, R. J. et al.: The interaction properties of costimulatory molecules revisited. Immunity, 17, 201-210 (2002) 7

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