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デジタル観測手法を統合した里山の GIS 解析 空間情報科学研究センターシンポジウム デジタル図化機による DEM の作成方法と精度 佐野滋樹 ( 玉野総合コンサルタント株式会社 ) 里山 の過去から現在に至る森林成長量を 3 次元的に分析するために, デジタル図化機を用いた写真測量によって, 時系列の航空写真から複数年次の 5m メッシュ DEM を作成した. 本論文では, 作成された DEM の精度検証のために, ブレイクラインの計測密度および写真解像度が精度に及ぼす影響について定量的に評価するとともに, ステレオマッチングの精度が低下する山間部における効率的な高精度 DEM の計測手法を開発することを目的とする. 1.. はじめに数値標高モデル ( 以下 DEM) は, リモートセンシングによる地理情報画像の解析に必要不可欠な輝度補正などに用いられるほか, 時系列の地形改変の定量的な解析に利用されることから, 高精度化の要望が高まっている. しかしながら,DEM 取得における目的別の調査密度や精度などについては, 適正な品質基準が定められていないのが現状である. 本研究では, 里山の森林成長シミュレーションを目的としたデジタル図化機で計測された DEM について, 地形特性と補備計測点の密度および写真解像度の影響を,GIS を用いて定量的に評価するとともに, ステレオマッチングの精度が低下する山間部における効率的な高精度 DEM の計測手法を開発することを目的とする. また, 各時期の計測精度を検証し, 森林成長シミュレーションシステム構築に与える影響についても分析する. 2.. デジタル写真測量技術の進展 1) オルソフォト (1) オルソフォトとは中心投影である航空写真は, 図 1 に示すように地形地物の標高差により像が偏移して投影されるため, 地図情報と一致しない. そこで標高情報から偏移した画像の幾何補正を行い, 図 2 のような正射投影に修正する. このような写真をオルソフォトと言う. (2) デジタルオルソフォト航空写真測量においても, 計算機のハードウェア, ソフトウェアの発達により自動化が進んでいる. すなわち, 高精度のスキャナーにより写真をデータ化し, 自動パタ -ンマッチングで標高を自動計測するシステムとして, 図 3 に示すようなデジタルステレオ図化機 ( 以下 DPW) が登場し, オルソフォト作成の多くの工程が自動化された. 偏移修正とモザイク処理が行われた画像データは, 図 1 中心投影 ( 航空写真 ) 図 2 正射投影 ( 地図 オルソフォト ) 図 3 デジタル図化機 - 6 -

デジタルオルソフォトデータと呼ばれ, 地図と同様に位置座標, 延長, 面積などの計測が可能なことから, 安価で更新が容易な GIS のベースマップとしての期待が高まっている. 2) デジタル標高モデルについて DEM は, 地形表面の標高を一定間隔のメッシュ状に計測し, 形状をあらわしたモデルである. 航空写真から自動計測される DEM は, 写真に写っている像をステレオマッチングして作成されるため, 地図に表される地形を示す等高線情報とは異なり, 市街地においては構造物を含めた標高が, 山地の森林部では, 樹上の標高が計測される. したがって, 地形を表現するためには, 人為的に画像を判読して標高の計測を行い, 地図と同様の DEM を作成する必要がある. その結果, 地表面の DEM データと写真被写体表面の DEM データの二種類を取得することになる. 図 4 はオルソフォトとディジタルマッピングデータを重ねたものを示し, 図 5 に自動計測で作成した DEM から作成した等高線をオルソフォトと重ねたものを示す. 3) 森林成長シミュレーションへのデータの提供 (1) 樹高の把握 前述の2 種類の DEM データを写真測量から得ることによって, 樹高を計算により求めることができた.( 図 6 樹高ランク図参照 ) (2) 経年の変化量を把握現況の植生量を把握できたならば, 過去の航空写真を用いて, 地表面の三次元的な推移を 2 時期以上の DEM データから解析することが可能である.( 図 7 DEM 増減図参照 ) それでは, 写真測量は, どの程度の信頼性で, 樹高および経年変化量を把握できるのであろうか. 次に, 写真測量の計測精度について検討してみる. 3.DEM の計測方法 1) 調査範囲と資料 (1) 調査対象地区瀬戸市 海上の森 周辺地区, 東大演習林地区の 2 地区 : 約 7k m2 (2) 資料一覧本調査範囲の航空写真の縮尺は表 1に示すとおり,1/8,000 ~1/14,000 であり, 古い資料ほど小さい. 調査精度の均一性については, 一対の写真で広範囲が映し出される 1949 年の航空写真が有利であるが, 計測精度では写真縮尺およびカメラの性能から, 新しい航空写真の方が圧倒的に信頼性が高い. 図 4 オルソフォトと地図の重ね合わせ - 7 -

- 図 5 被写体表面の等高線とオルソフォト -5m 0m 5m 10m 20m 30m -5m 0m 2m 5m 10m 15m 図 6 樹高ランク図図 6 樹高ランク図 図 7 DEM 増減図図 7 DEM 増減図 - 8 -

2) 基準点の求め方一般的な写真測量と同様に,DPW による航空写真の標定においても, 写真と地表を結びつけるための標定点 (X.Y.Z を持った基準点 ) が必要である.1 モデル ( 一対のステレオ写真で造られる立体像 ) の標定には, 確認点も含め, 最低 4 点の標高基準点と 3 点の平面基準点を設置する. 本研究では, 都市計画基本図 (1/ 2,500) を用い, 図面に描かれた地形地物と写真の対応を技術者が選点し, 図面から読みとった平面座標と標高値を基準点として用いた. 但し, 各時期の計測モデルに適切な基準点を配置 ( 増 1) 設 ) するために, 写真測量の工程である空中三角測量の技術を利用した. 航空写真標定用の基準点設定の流れを図 8, 図 9 に示す. 表 1 資料一覧 資料名 摘要 備考 1949 年撮影の航空写真 撮影縮尺 1 / 14,000 米軍撮影 :( 財 ) 日本地図センターから購入 1977 年撮影の航空写真 撮影縮尺 1 / 10,000 地理院撮影 :( 財 ) 日本地図センターから購入 1995 年撮影の航空写真 撮影縮尺 1 / 8,000 瀬戸市より借用 瀬戸市都市計画基本図 1995 年作成 1 / 2,500 瀬戸市より借用 植生現況図 1995 年航空写真より作成 瀬戸市より借用 1977 年航空写真 (1 / 10,000) 都市計画基本図 (1 / 2,500) 地形地物の選点 パスポイントの点刻 ステコメータによる観測 地形地物の座標計測 計算処理による空三成果 1977 年写真の P3 による標定 1949 年航空写真 (1 / 16,000) 1949 年写真の基準点の選点と座標計測 図 8 1977 年 1949 年の基準点設定フロー図 - 9 -

1995 年航空写真 (1 / 8,000) 都市計画基本図 (1 / 2,500) 地形地物の選点 パスポントの点刻 ステコメータによる観測 地形地物の座標計測 計算処理による空三成果 図 9 1995 年の基準点設定フロー図 最大の課題は,1949 年の航空写真を標定するための基準点を, 既存の資料から適切に設定することである. ここでは図 8 に示すとおり,1977 年の航空写真と 1/2,500 の都市計画基本図で一致すると判断された建物や道路部の標高点を基準点として, 空中三角測量を実施した. またその際,1949 年航空写真の図根点として, 予め 1949 年航空写真と 1977 年航空写真が一致すると思われる地形地物を選点しておき, パスポイントと同等の精度で 1949 年航空写真の標定用図根点 ( 基準点 ) を計測した. すなわち,1977 年の航空写真と 1949 年の航空写真は, ほぼ共通の精度の基準点を用いて標定されている. 同様に 1995 年の航空写真についても図 9 に示すとおり, 都市計画基本図から基準点を選点し, 空中三角測量を実施した. したがって,3 時期の航空写真は, 都市計画基本図を基準とする, ほぼ同レベルの基準点精度を有していると考えることができる. えることができる. したがって, ここでは基準点残差を用いて精度評価を行うこととする. また, 以下では写真測量の一般論に基づき, それぞれの航空写真による写真測量の計測精度について考察する. 1) 基準点の精度本研究では, 都市計画基本図 (1/2,500) の図柄を一次基準点とする考え方から, 都市計画基本図を各時期の航空写真のベースマップと位置づけており, 空中三角測量の基準点残差は, 一次基準点の精度と考えることもできる. 都市計画基本図 1/2,500 の精度は, 国土基本図作業規定を遵守していることから, 平面位置で標準偏差は図上 ±0.7mm, 実長では ±1.75mとなり, 標高点については, 主曲間隔の 1/3 以内との定義から ±0.66m(=2m /3) となる. 4.. 写真測量の精度評価の考え方写真測量の測定に影響を与える誤差要因は, 以下に示すものが挙げられる. 座標の測定に使用した測定装置に起因する誤差 カメラの内部機構に起因する誤差 撮影時から測定時に至るまでに, フィルム面に生じる誤差 撮影時のカメラの位置および傾きの求め方 ( 幾何補正の計算式の差 ) 写真に写されている被写体の 3 次元座標の観測精度 ( 人為誤差 ) ただし, すべての要素が累積されるものではなく, これらは絶対 ( 対地 ) 標定における基準点残差に影響を与える各種要因と考 2) 相互標定の評価本研究においては特に論じないが,1949 年撮影の航空写真はフィルムの状態が悪く, 公共測量作業規程内の残存縦視差などの制限に収まらない. 残存縦視差の量はその計測に大きな影響を与える. 撮影時にフィルムの平面性を保てたか否か ( 内部定位への影響は不規則で大きいことが想定される ) は, 不定誤差の大きな要因となる. 3) 撮影縮尺との関連写真測量で精度に最も影響するものの一つに, 写真の撮影縮尺が上げられる. 使用した写真縮尺に基づき, 各年度の計測精度を一般論から推定し, 表 2 に整理した. - 10 -

5.. 基準点残差による精度評価 1) 基準点の配置基準点残差の影響範囲は, 基準点の配置にも依存することから, 各年度の標定図を図 10~12に示す. 各図の赤線が調査範囲, が写真主点を示している. 1995 年 1977 年の調査範囲は, 図 10,11 に示すとおり 3 コースにまたがり, 東大演習林地区南部 (1995 年の C6 9 10 11, 1977 年の C3 6 7) に平面位置をコントロールする基準点が選点されておらず, 不安定な状況が存在する. 1949 年の航空写真は, 図 12 に示すとおり 4コースで調査範囲を被い, 撮影方向および撮影間隔が不規則である. また, 海上の森地区の東部 (R2749-15 16,-28 29 30) に平面位置をコントロールする基準点が配置されていない. さらに, 写真モデル数が多いことも精度の劣化に影響する可能性がある. 表 2 各年度の写真測量の精度 撮影年度 焦点距離 写真縮尺 平面位置 標高 備考 一般論 150mm 1 / 10,000 20~30cm 30~45cm 摘要は, 公共測量作業規程解説と運用より 1949 151.90mm 1 / 14,000 28~42cm 48~72cm 1977 152.22mm 1 / 10,000 20~30cm 30~45cm 1995 151.00mm 1 / 8,000 16~24cm 24~36cm 表 3 空中三角測量の結果 1995 1977 備考 平面 高さ 平面 高さ 点数 43 47 68 87 標定図参照 最大残差 (m) 1.02 0.85 1.66-1.46 標準偏差 (m) ±0.51 ±0.40 ±0.69 ±0.60 図 10 1995 年標定図 - 11 -

図 11 1977 年標定図 図 12 1949 年標定図 - 12 -

表 4 図化時の基準点残差 ( パスポイントおよび図根点 ) 2) 高さと平面の合成値 備考 1995 1977 1949 点数 20 標定図参照 最大残差 (m) 0.89 1.69 3.50 標準偏差 (m) ±0.42 ±0.37 ±0.87 摘要 パスポイント パスポイント 図根点 2) 基準点残差図 6,7 に示した 1995 年および 1977 年の空中三角測量結果を用いて, 基準点残差表を表 3 にまとめた. 表 3 に示すとおり,1995 年の平面および高さの最大残差, 標準偏差はともに 1977 年よりも小さい. これは, 写真縮尺が 1995 年の方が大きいためであり, 当然の結果とも考えられる. また, 双方の標準偏差は, 前述の都市計画基本図の精度よりも小さくなっている. DPWによるDEM 計測時の各年次の標定残差を, 表 4に示す. 標準偏差では,1977 年が最も良い値を示したが, 最大残差は撮影縮尺に比例する結果となっている. 表 4 の基準点残差の標準偏差値を, 各時期の DEM の精度を比較する際の影響量と考えて, 単純に誤差伝播式 ( x 2 +y 2 ) に当てはめると,1949 年との比較では,1995 年 1977 年はともに ± 0.95m 程度の信頼性があり,1995 年と 1977 年の比較では,±0.56 m 程度の信頼性があると考えることもできる. しかしながら, この数値は合成ベクトル量であり, 山間部の高さ計測は, 地形の険しさと傾斜の影響をより強く受ける. したがって, 今後は傾斜角の大きさによる計測精度の検証も必要であろう. 6.. 今後の課題基準点残差からだけでは, 森林成長量を算出する上での信頼度を充分に評価できたとは言い難い. 今後は,DPW のステレオマッチングシステムを効率的に運用して, 作業効率を高めるために, 自動計測の誤差が生じる要因を明らかにするとともに, それを如何に排除するかを検討していく. 具体的には, 以下に示す項目について誤差の状況を定量的に捉え, 人為的な補測の効果的な手法も含めて, 研究を進めることとする. 1) DEM データの精度の評価方法を確立する基準点以外の計測に関わる要因について,DPW の自動計測に対する計測方法および精度評価について考察する. a. 最確 ( 真 ) 値の設定 3) 1 解析図化機を用いて通常の等高線図化を行い, スキャンニングによる解像度の劣化がない状態から, 地形形状の最確 ( 真 ) 値を計測する. また,DPW の成果と的確な比較を行うためには, 同一基準点を利用することによって標定誤差を軽減する配慮も重要である. 2 真値を求めることは, たとえ熟練の技術者が解析図化機により計測したとしても困難であり, 人的な誤差は排除されない. そこで, 画像処理により幾何図形のステレオモデルを作成すれば, 真値の課題は解決するはずである. b.dpw の自動計測結果の評価 1 DPW には, 地形条件によってステレオマッチング処理と DEM 作成のための補間プログラムが数十種類用意されている. 均一な地形条件は現況には存在しないことから, 推奨プログラムの補間処理の状況を最確値 DEM と比較することで定量的に把握する. 2 誤差の大きくなる可能性の高い箇所は, 人為的にブレイクラインの計測を実施し,DPW による DEM 作成において自動計測結果を補間するためのブレイクラインの役割を分析する. これにより, 効果的な人為計測によるブレイクラインの密度, ブレイクラインの計測個所について, 等高線データと比較して補間方法を検討する. 3 幾何図形のステレオモデルを用いれば, 解像度, 輝度, コントラストを段階的に変化させることにより, その影響量を定量的に分析することが可能である. 2) 計測精度の地形による影響を把握する DPW による自動計測で算出されたメッシュ点の標高値には, 地形的な影響から生じる誤差が含まれると考えられる. そこで, 計測点における傾斜度, 傾斜方向および傾斜変化量を正解値より求め, その較差より誤差を求め, 計測精度との間の相関について定量的に把握し,GIS による補間を最適化する. また, 計測密度の違いにより計測値が異なる値となることから, 計測点密度と地形解析における効果の関連を研究する. 3) 計測精度の写真の状態による影響を把握する画像の状態により自動計測値が異なることは容易に想定することができる. しかしながら, その影響を定量的に把握することは - 13 -

困難で, 画像処理においても大きな課題となっている. そこで, 本研究においても画像データを GIS に取り込み, 画像データの階調 輝度などのファクターと, 前述の傾斜度および傾斜方向の影響とを合わせて, 自動計測誤差との相関を調べ, 画像の状態が自動計測値に与える影響を定量的に把握する. また, 階調 輝度などを画像処理により変化させて, 計測誤差の変化と傾向を分析し, 自動計測を実施する際の前処理として画像処理を行うことによる誤差軽減の効果を検証することも重要であろう. 4) DPW の計測間隔の違いによる計測精度を評価する計測間隔が異なる自動計測値を比較し, 計測間隔の違いによりその観測値に差が生じるかを検証する. また, 計測間隔を変えて, より多くのサンプルの自動計測を行い, 計測間隔の違いによる誤差について状況を把握し, それを利用した誤差除去手法 ( 合成による補間 ) について研究する. 5) DEM データの作成手法を検討する地形, 写真の影響以外にも, 自動計測の誤差発生要素があると考えられる. ところが,DPW の自動計測においては, 精度を劣化させるような誤差を生じる個所が特定されていないのが現状である. また, 精度の高い DEM を作成するためには, 人為計測をおこなって, 自動計測結果を補間する処理を実施することが現実的な方法である. 今後は, いかに効率的で高精度の DEM を作成できるかが, 最大の課題となる. そこで, 前述の研究課題 2),3),4) より把握される誤差発生パターンをもとに, 画像データおよび自動観測値から誤差が発生する個所を予測して抽出する手法を検討し, 人為的および自動的にその箇所のデータを補間する方法について, 効率性 信頼度 ( 精度 ) の検証を実施することが重要である. 3) 写真計測の機器は, アナログ図化機 ( 一般論的測定精度 =20 μ 程度 ) から解析図化 ( 一般論的測定精度 =5~10μ) に進歩してきたが, フィルムを計測することに変わりはなく, フィルムの解像度 1~3μ を計測する上でどちらも不十分な機械精度と考えることができる. そこで,DPW は, 画像データを計測するために様々なキャリブレーションの機能を有しているが, 画像解像度は最高でも 10μで, フィルムからの解像度の劣化が写真観測時にどのような影響を及ぼすかが未知数である. よって, 少なくとも人間が判読して計測するシステムと言う点では, 現状では解析図化機の方が信頼性は高いと判断する. また,DEM と等高線描画を比較した場合でも地形表現では, 等高線の方が情報量は多い. 文献 建設大臣官房技術調査室監修 (1996): 建設省公共測量作業規程解説と運用. 社団法人日本測量協会. 注 1) 空中三角測量とは, 解析図化機又はコンパレータなどによりパスポイント, タイポイントおよび基準点などの写真座標を測定し, 調整計算を行った上で, パスポイント, タイポイントなどの水平位置および標高を定める作業をいう. 調整計算の方法には, 多項式法, 独立モデル法, バンドル法がある.( 建設省公共測量作業規程, 解説と運用より ) 2) 図化時の残差は, 参考図のとおり基準点に対するズレ ( 太い矢印 ) の合成ベクトルの長さを表す. 0 Z X Y - 14 -