第 119 回緩和ケアチーム抄読会 2012 年 11 月 21 日緩和ケア外来木村理恵子 (REVIEW) Methadone for Cancer Pain Eric E. Prommer Palliative Care ;Research and Treatment 2010:4 1-10 レビュー がん疼痛に対するメサドン 導入 メサドンは 3 つのレベルで鎮痛作用を示す 第一は μ 受容体に強く作用する 第二は NMDA(N-methyl-D-aspartic acid) 受容体に拮抗し 慢性痛に効果を示し オピオイド耐性をリバースする 第三は 神経伝達物質 ; ノルエピネフリン セロトニンに作用して 下行鎮痛調節に作用する この研究では がん疼痛マネジメント ; 最近のメサドン使用の薬効や薬効動態と臨床での使用をレビューする 方法 MEDLINE 1966-2009,PubMed 2009 で Keyword ;methadone, methadone and pharmacology, methadone and metabolism, methadone and drug interaction で検索加えて メサドンをがん疼痛と神経障害性疼痛に使用したランダム化臨床試験も同様にレビューした メサドンとは? 1.μ 受容体に強い親和力を持つオピオイドである その作用は モルヒネより強い δとκ 受容体には弱く結合する 2. 慢性疼痛状態で作用する NMDA 受容体拮抗薬である NMDA 受容体 κ1に強く結合し ケタミンよりも高い親和性を持つ 3. セロトニンとノルエピネフリンの再取り込み阻害により 脊髄内の下行疼痛抑制系で役割を発揮する 投与経路 塩酸メサドンは 脂溶性オピオイドで 経口錠剤 液剤 静脈投与 経腸投与ができる 経口半減期が長く ばらつく 5~30 分後には血漿から検出される 最高血中濃度に達するのは 2.5 時間から 4.4 時間で 生物学的利用能はモルヒネよりも高い メサドンの半減期は さらにゆっくりで 8.5 から 1
47 時間である 別の推測では 半減期は 65 時間とより長くなっている 舌下レスキューメサドンは 舌下からもよく吸収される この経路からの生物学的利用能は 34% で他の第 3 段階オピオイドより高い ; フェンタニルを除き 舌下投与では 5 分で効果を発現 静脈静脈投与は 各ドーズ 大体 23% 高い濃度となる この効果は肝臓と腸の first-pass effect を避けることができることによる 半減時間は 23 時間である 皮下皮下と静脈は相互に交換可能である 薬物学的な詳細は 皮下投与の場合にはない 経鼻レスキュー経鼻で投与された時 メサドンはすぐに吸収され 7 分で最高吸収濃度になる 生物学的利用能は 85% 脊髄内 使えない脳脊髄液内に投与された場合 脂溶性のため ただちに排泄され 脊髄外の脂肪エリアに移動する 加えて 脊髄液内のドーズはフォローされていないため フェンタニルのように脊髄内投与に使用することを難しくしている 直腸早く効くが 半減期長く ばらつく生物学的利用能は90% と高く 30 分以内に吸収される 直腸から投与されたメサドンは 経口よりも早く効果を発現する 薬物動態は 経口ドーズに似ている 代謝と排泄 メサドンは 肝臓で CYP3A4 と CYP2B6 に変わる これらの CYP 酵素は 小腸にもみられ メサドンが飲まれた場合の生体内変化に寄与する 代謝的変換は 不活性代謝物質である 2 エチル 1,5 ジメチル3などが主要なものである 排泄物が主なメサドンの排泄ルートで腎不全患者に適切なオピオイドといえる 尿 PH の変化は メサドンの排泄を促進するかもしれない P-glycoproteins は メサドンの新陳代謝に役割を果たしているが 顕著なものではない メサドンは グルクロン酸抱合ではない 薬物相互作用 CYP3A4 のようなシトクロムオキシダーゼ酵素は 薬剤の相互作用で役割を果たす そしてメサドンと相互作用のある薬剤は CYP3A4 の促進または抑制を含む 一般的な薬剤でメサドンと相互作用のあるもの ; 抗うつ剤 抗菌剤 抗真菌剤 抗けいれん剤 抗生剤 神経弛緩薬および 店頭取引の薬剤 ( テーブル1) 致命的な相互作用報告 ; フルコナゾール ( ジフルカン ) である 薬剤相互作用でシトクロムオキシダーゼシステムの促進 抑制は 催眠鎮静薬とアルコールのオピオイドとの相互作用が 鎮静 呼吸抑制 低血圧 昏睡を増加させる 有害事象; 一般的な事象 2
オピオイドの一般的な有害事象 鎮静 吐き気 呼吸抑制はメサドンでも起こる メサドンは 活性代謝がないにもかかわらず 幻覚 ミオクローヌスの原因となる メサドン処方時は便秘と吐き気に対する予防が必要 QT 延長と心室頻拍 高用量のメサドン静脈投与は QT 延長と心室頻拍 (TDP) にリンクしている 近年の後ろ向き研究では 経口メサドンでもまた 16% の患者に QT 延長がみられた メサドン内のクロロブタノールによって 心臓のカリウムがブロックされ 不整脈をもたらすのではと仮定される ブロックされたカリウムは 再分極時間延長と QT 間隔延長をもたらす QT 延長をもたらすリスク因子は メサドンのレベルを上昇させる CYP3A4 を含む薬剤相互作用を含む 電解質異常 ( 低カリウム 低マグネシウム ) 心筋虚血 低駆出率) その他まれな QT 延長 その他の QT 延長を招くような状態 シンコピーの既往 家族の突然死 けいれん マグネシウム カリウム異常 腎機能低下 除脈 糖尿病 高齢 心血管障害 女性 心不全 低血圧 低体温 心虚血 下垂体機能不全 もし ベースの QT が 450ms( 男性 )460ms( 女性 ) より長く 心室内伝導異常がない場合は すべての可能性のある薬剤は避けるべきである QT 延長は メサドンで患者が良い疼痛マネジメントができている場合 大きな問題となる もし ベースラインの QT 間隔が正常より 10% 以上伸びているなら 心室頻拍の可能性がある ECG モニタリングが上記のようなリスクがある場合は必要となる リスクのある患者は スクリーニング ECG をメサドン投与前と投与後 24 時間後に施行すべきである それから安定する 4 日間までは繰り返す必要がある ECG モニタリングは 多くの増量が必要な場合や不整脈のリスクが新たに加わりそうな時にも行う 最近の前向き試験では 経口 100mg 以下でメサドンを開始した 100 人に対し 2,4,8 週で QT 延長とその他の効果を追ったものがあります ベースライン QT と QT 延長の因子となる薬剤 心血管疾患 電解質異常を記録した 臨床的に明らかに QT 延長が見られたのは2w;64 人のうち 1 名 (1.6%) で4.8wではなかった この研究では 進行がん患者にメサドンは安全に疼痛コントロールで使用できるとまとめられている 皮膚障害 メサドンは 皮下投与時に局所のかゆみが報告されている 勧められるマネジメントは 注射部位を頻繁に変える ( 毎日 ); ベース投与からボーラス投与に変更する ; 注射液にデキサメサゾンを加えるか 単独にデキサメサゾンを注射する テーブル1 メサドンの薬剤相互作用 ; 薬剤 効果 メカニズム 重要事項 どのような時にメサドンを使用するか? がん疼痛マネジメントでのメサドンは 他のオピオイドに対して反応が悪い痛みの緩和に 3
使用される 鎮痛の達成程度は 耐えられる副作用と受け入れられる鎮痛レベルをエン ドポイントとして 量の調整が行われる メサドンが他のオピオイドの代わりに用いられた場合 吐き気 嘔吐 鎮静 幻覚の改善が期待できる メサドンを使用する場合 モルヒネとメサドンを比較 Ventafridda らは 中程度から強いがん疼痛に対して 事前にステップ 2 オピオイドを使用していた 54 名をランダムにメサドンまたは モルヒネを投与し 14 日から 1 ヶ月間 調査した 双方とも 疼痛の強さは減少 メサゾンよりもモルヒネのほうが 疼痛緩和に必要な量の調整が必要だった モルヒネ投与群では 口渇が多かったが その他の毒性や疼痛緩和達成までの差はなかった Mercandante らは 進行がんで疼痛マネジメントに強オピオイドを必要とした 40 名の患者に前向きランダム試験を行った 患者は 在宅ホスピスケアを受けていた 患者は モルヒネ徐放錠または メサドンを 2 3 回 / 日ニーズに合わせてタイトレーションしていた 結果 メサドンは より早く鎮痛到達でき メサドンはより安定して 効果があった Bruera らは メサドンとモルヒネで 効果と副作用をがん疼痛緩和のファーストラインとして 比較した この国際 多職種研究は 103 名の強オピオイド投与が必要ながん疼痛患者と ランダムにメサドンモルヒネに振り分け 4w 行った 患者は 両グループ 20% 以上ペインスコアが減少した 両グループとも 治療には満足と答えた 大きな一つの違いは メサドンではモルヒネよりもドロップアウトが多かった 突発痛 Hagen らは がん疼痛の突発痛に対し 経口メサドンを評価した この研究は 非盲検 非ランダム化 クロスオーバーで行われた 患者は 通常オピオイドを服用している メサドンの突発痛ドーズは 5~15mg の範囲でよく疼痛コントロールされていた 鎮痛薬の効果はすべての患者ですぐに現れ 投与後 10 分で疼痛緩和が見られた 副作用は突発痛にオピオイドを使用したかどうかでは変わらなかった Hagen らは メサドン舌下投与についても非盲検でがん疼痛に関連する突発痛の評価をした この研究では突発痛に適切なドーズが使用されたことが明らかな場合は 増量の調整を行う 事前に想定した突発痛のドーズで約 5 分で疼痛が緩和されていた メサドンは 突発痛に対するオピオイドとして十分使用でき 特別な毒性は認められなかった 神経障害性疼痛 Morley らは プラセボ VS10mg または 20mg のメサドンで神経障害性疼痛の調査を行った これらの患者は 通常量のアミトリプチン ガバペンチン カルマゼピンやその他の薬に抵抗性を示していた 5 名トラマドール 1 名コデインも含まれている 20mg で良好な疼痛緩和が得られ 48 時間以上鎮痛効果が得られた 10mg の投与では プラセボと 4
比較して 良い効果は得られなかった オピオイド耐性への効果と他のオピオイドからのスイッチ メサドンをモルヒネの代わりに使用する時 オピオイド耐性形成のリバースが起こることが良く知られている そのことは オピオイド等価換算表の量よりも少ない量で疼痛緩和が達成できることを意味している トータルモルヒネ量とメサドン開始量には 逆相関がみられる メサドンの 100mg から 500mg までの増量はモルヒネトータル量の 10 倍の効力がある モルヒネからメサドンへのローテーションの第一歩は MEDD モルヒネの等価一日量の計算をし MEDD に基づいてメサドン服用量を決定する いくつかのグループは 開始時のモルヒネ / メサドン比率を耐性のリバースをベースに考え それがスイッチする際に起こると確認している 推奨されるテクニックは NMDA アンタゴニストの使用に伴う耐性の逆転の可能性を認識して メサドンを投与することである ( テーブル2; メサドン量換算 ) 例えば エドモントングループは 開始量を10:1 Ripamonti らは 4:1(MEDDs100mg) 8:1(MEDD s90-300mg) 12:1(MEDDs300mg 以上 ) メサドンへの変更方法は 各グループで異なった イタリアとエドモントンは 先行するオピオイドを1/3ずつ毎日減量し 同時にメサドンを1/3ずつ開始し 3 日間でフルドーズにした その他は ストップ and ゴーのアプローチを使い メサドン開始と同時に他のオピオイドを中止していた Stop and go は 有毒な代謝物の排泄を早めるかもしれず それは切り替えの理由でもある 徐々に切り替える方法は すぐに代謝物質を排泄しないが 良い疼痛コントロールをもたらすだろう どのオピオイドスイッチと同様に毎日の副作用モニタリングは必要 フェンタニル Mercadante らは 前向き研究で経皮フェンタニルとメサドン切り替えを行った 使用された比率は 1:20. 例えば 患者は 100μg/h(2.4mg/ 日 ) の経皮フェンタニルから 48mg のメサドン / 日に切り替えられる レスキューは供給される メサドンの量は臨床反応によって 変更され 痛みと症状はモニターされる 疼痛と症状の強さは 24 時間以内に著明に改善した 最終的なオピオイド量と事前に使用していたオピオイド量 ( フェンタニル ) には関連は無かった メサドンの増量 メサドンの長い半減量により 増量は 48 時間以下では 鎮静のリスクがあるため 行わない 静脈投与では 当初 12 時間は投与量の変更はしない 投与の頻度 最近 認められたメサドン投与スケジュールは 長い半減期のため 8 時間毎である ある予備的なデータは さらに頻繁でない投与が効果的であると示唆している メサドンから戻すローテーション メサドンから他のオピオイドにローテーションする記述は ケースレポートと1つの少ないサンプルの後ろ向き研究に限られていた このローテーションでは NMDA 活性化に 5
よる疼痛の悪化とオピオイド耐性の形成が心配となる 最近の研究では これらは見つかっていない 患者の記録の後ろ向きのレビューでは 安定した量に限り 30% 以下ずつで毎日他のオピオイドに変更する この研究では 戻すローテーションで痛みの像悪や他の症状は見られていない オピオイド未使用患者へのメサドン使用 オピオイド未使用患者への適切なスケジュールとメサドン治療導入は よくわかっていない Bruera らのトライアルでは 7.5mg/ 一日 2 回投与がドロップアウトの数に関連していた Ripamounti らは 3mg/8 時間毎を推奨していた その他のメサドンを開始するアプローチは 必要な時にメサドンを使用するを含んでいた ローディングドーズアプローチ と呼ばれるものは 5-10mg を 4 時間毎に必要とする場合に投与していた 1 週間このレジメンで行い 総投与量が計算された そのドーズを 2-3 回 / 日投与でスケジュールした 突発痛には 総投与量の 10% が投与された 他の方法は コンサーバティヴアプローチ と呼ばれ メサドンは 5-10mgを 2-3 回 / 日で 4 から 7 日間かけて 徐々に量の調節を痛みの反応をみながらする このアプローチは レスキューにメサドン以外を使用する これらのアプローチと比較する研究は行われていない まとめ メサドンは がん疼痛マネジメントに有用な鎮痛薬である 1.μアゴニストで NMDA 受容体拮抗の作用もある 2. セカンドラインオピオイドとしての役割 3. オピオイド耐性をリバースできる ;MNDA 受容体拮抗作用によってオピオイドへの反応が増すことによる 4. メサドンは フォーストラインオピオイドとして モルヒネと同等に役立つことが臨床試験により確認されている 5. メサドンは 脂肪親和性により突発痛に使用する鎮痛薬としての調査が行われている メサドンは 経口 または舌下投与の効果発現が早く 突発痛に適している 突発痛に対するメサドンの適切な量は まだ確立されていない 先行研究では メサドンの量に個人差があり 粘膜投与のフェンタニルと同様のアプローチが必要 一つのプラセボコントロール研究は 神経障害性疼痛への効果を示唆している 6. メサドンは 腎不全患者にとても良い鎮痛薬である 6