施工と管理12年4月.indd

Similar documents
Microsoft Word - 表紙

Microsoft Word - 表紙

GBRC Vol.38 No ことはないので パネル下面と屋根上面の風圧がほぼ等 βと隙間dの水準を表-1に示す なお 屋根勾配β 4. しくなる Pi1 Pi と考えられる これより ここで は 低層住宅屋根の一般的な屋根勾配である4.5寸勾配 はパネル下面の風圧を屋根上面の風圧で

相 原 知 子 の 風 圧 )の 測 定 が 困 難 となる そこで 目 隠 しパネル 近 傍 の 屋 根 面 圧 ( 外 圧 )を 目 隠 しパネルの 裏 面 圧 と 仮 定 して 算 出 したピーク 風 力 係 数 を 用 いることとした なお 実 務 者 のための 建 築 物 外 装 材 耐

施工と管理13年1月.indd

藤沢市地区計画運用基準 施行平成 30 年 4 月 1 日 る 本運用基準は, 地区計画の届出に際しての審査の画一化及び円滑化を図るため, 必要な事項を定め 項目第 1 建築物等の用途の制限に関する事項第 2 建築物の容積率の最高限度に関する事項第 3 建築物の建蔽率の最高限度に関する事項第 4 建

Microsoft Word - 0_第0章_2012年12月3日_.docx

域の指定 直接強風を受ける場所 ( 海岸 河岸 山上 がけ上等 ) での速度圧は 300kgf/ m2以上 近接する建築物や防風林等による速度圧の低減 ( 最大 50% まで ) 等の規定も定められていた また 風力係数は建築物や工作物の断面形状に応じて定められており 当時から閉鎖型建築物と開放型建

第 Ⅱ ゾーンの地区計画にはこんな特徴があります 建築基準法のみによる一般的な建替えの場合 斜線制限により または 1.5 容積率の制限により 利用できない容積率 道路広い道路狭い道路 街並み誘導型地区計画による建替えのルール 容積率の最高限度が緩和されます 定住性の高い住宅等を設ける

上野原市規則第××号

<4D F736F F D2090E797A2836A B835E CC82DC82BF82C382AD82E88E77906A B8C91CE8FC6955C F97702E646F63>

Kumamoto University Center for Multimedia and Information Technologies Lab. 熊本大学アプリケーション実験 ~ 実環境における無線 LAN 受信電波強度を用いた位置推定手法の検討 ~ InKIAI 宮崎県美郷

横浜市環境科学研究所

[ 例 1] 敷地の分割例 1270 m2の敷地を 135 m2ずつに分割する場合 270 m2 135 m2 135 m m2の敷地を 140 m2と 130 m2に分割する場合 270 m2 140 m2 130 m2 2

<4D F736F F D2091E6358FCD31328B438FDB A5182F08ADC82DE816A2E646F6378>

試験 研究 仮設構造物の設計風速 Design wind speeds for temporary structures 西村宏昭 *1 1. はじめに仮設構造物は比較的短い期間だけに存在する構造物である これらの構造物は 通常の恒久建築物や構造物の設計風速を用いて耐風設計されると 安全ではあるが

日整連第  -   号

面する側にあっては2メートル以上 精華台みずき通り線に面する側及び精華大通り線に面する区域にあっては5メートル以上 精華台地区計画により別に定める側にあっては10 メートル以上後退しなければならない 3 前 2 項の規定は 守衛室その他これに類するもので 延べ面積が50 平方メートル以下かつ地階を除

エ建替え後の建築物の絶対高さ制限を超える建築物の部分の水平投影面積の合計は 現に存する建築物又は現に建築の工事中の建築物の絶対高さ制限を超える建築物の部分の水平投影面積の合計を超えないこと オ建替え後の建築物の絶対高さ制限を超える建築物の部分の水平投影部分の形状は 現に存する建築物又は現に建築の工事


目次構成

PowerPoint プレゼンテーション

PowerPoint プレゼンテーション

untitled

床倍率表 床倍率表 階 方向 1 階 X 方向 1 階 Y 方向 2 階 X 方向 2 階 Y 方向 床倍率手順 床倍率の条件全ての階 方向 区画において ( 平均存在床倍率 必要床倍率 ) を満たしている必要があります (= 床倍率充足率 ( 平均存在床倍率 / 必要床倍率 ) が 1.00 以上

地区の細区分 1 流通 業務地区 2 都市型居住地区 地区 建築物 建築物等の高さの最高限度 建築物等の高さの最高限度は 15mとする ただし 敷地面積が1,000m2以上あり かつ金沢市景観審議会において都市景観上支障がないと認められた場合は 25mとする 整備計画 等に関する事項 建築物等の形態

絶対高さ制限を定める高度地区についてのQ&A

さいたま市消防用設備等に関する審査基準 2016 第 4 渡り廊下で接続されている場合の取り扱い 155 第 4 渡り廊下で接続されている場合の 取り扱い

<4D F736F F D BC696B195F18F568AEE8F808CA992BC82B582C982C282A282C42E646F63>

tosho_koudotiku

1 目的 建築基準法第 68 条の 5 の 5 第 1 項及び第 2 項に基づく認定に関する基準 ( 月島地区 ) 平成 26 年 6 月 9 日 26 中都建第 115 号 建築基準法 ( 昭和 25 年法律第 201 号 以下 法 という ) 第 68 条の 5 の 5 第 1 項 及び第 2

Microsoft Word - 高度地区技術基準(H _HP公開用).doc

第2章

地区 の 区分 名称駅南口西街区地区駅南口東街区地区駅北口駅前広場地区 面積約 2.8 ha 約 0.6 ha 約 1.7 ha 用途地域による用途制限の他に 次の各号に掲げる建築物は 建築し てはならない 地区整備計画 建築物等に関する事項 建築物の 用途の制限 1. 指定道路 1 に面する敷地の

第 7 章鹿児島県と連携した耐震改修促進法による指導及び助言等 国の基本方針では 所管行政庁はすべての特定建築物の所有者に対して法に基づく指導 助言を実施するよう努めるとともに 指導に従わない者に対しては必要な指示を行い その指示に従わなかったときは 公表すべきであるとしている なお 指示 公表や建

新千里西町B団地地区地区計画

Microsoft PowerPoint - fuseitei_6

東京都市計画高度地区変更(練馬区決定) 【原案(案)】

南部地区 地区の名称 南部地区建築物の用途の制限 ( ほなみ町 桜新町 ) 敷地面積の最低限度 ( 東原町 苗津町 長者町の各一部 ) 22.5ha 沿道業務地区 17.6ha 合計 40.1ha 建築物等の形態又は意匠の制限 沿道業務地区には 次に掲げる建物は建築してはならない マージャン屋 ぱち

CLT による木造建築物の設計法の開発 ( その 3)~ 防耐火性能の評価 ~ 平成 26 年度建築研究所講演会 CLTによる木造建築物の設計法の開発 ( その 3) ~ 防耐火性能の評価 ~ 建築防火研究グループ上席研究員成瀬友宏 1 CLT による木造建築物の設計法の開発 ( その 3)~ 防耐

調布都市計画深大寺通り沿道観光関連産業保護育成地区の概要

3. 線熱貫流率の求め方鉄筋コンクリート造等の住宅の線熱貫流率は 以下の (1) から (3) までの方法により求める 100 分の 1 未満の端数を切り上げた小数第二位までの値とする (1) を含む壁体全体の貫流熱損失 (Qw) を求める { 熱橋長さ (W)=1m} 壁体の長さ (L W ) の

標準入力法H28_解説書_ALL_v2.3_

画像類似度測定の初歩的な手法の検証

巻 4 号 (2017) 生産研究 で与えられる. ただし, 適用距離ならびに建ぺい率を考慮し, 建築物の前面位置 が取りうる範囲を ただし.. に制限する. 本稿では現実的なパラメータ設定を鑑み, は成立するものと仮定する. また, ならば, 道路斜線制限を受けず, 常に容積率の上限

(2) 路地街区 ア路地街区の内部で 防火性の向上と居住環境の改善を図るため 地区施設等に沿った建築物の高さの最高限度及び壁面の位置の制限を定めることにより 道路斜線制限を緩和し 3 階建て耐火建築物の連続した街並みを形成する イ行き止まりの路地空間では 安全性の確保のため 2 方向の避難を目的とし

<4D F736F F F696E74202D F8AF991B B8A EA8EAE816A816990E096BE89EF8E5189C18ED C5816A>

<8D5C91A28C768E5A8F91836C C768E5A8F A2E786C73>

< F2D30362D30318E7B8D7397DF82C98AEE82C382AD8D908EA62E6A74>

大阪市再開発地区計画にかかる

ブレースの配置と耐力

目 次 流山インターチェンジ北部物流センター地区地区計画計画書 1P 流山インターチェンジ北部物流センター地区地区計画計画図 3P 流山インターチェンジ北部物流センター地区地区計画運用基準 4P 地区整備計画の運用について 運用基準の解説 5P 6P (1) 建築物等の用途の制限 6P (2) 建築

第1章 単 位

松山市家庭的保育事業等の設備及び運営に関する基準を定める条例施行規則平成 26 年 10 月 27 日規則第 65 号 ( 趣旨 ) 第 1 条この規則は, 松山市家庭的保育事業等の設備及び運営に関する基準を定める条例 ( 平成 26 年条例第 52 号 以下 条例 という ) の施行に関し必要な事

目 次 平方北部物流施設地区地区計画計画書 1P 平方北部物流施設地区地区計画計画図 3P 平方北部物流施設地区地区計画 地区整備計画 の内容の解説 4P (1) 建築物等の用途の制限 5P (2) 建築物の敷地面積の最低限度 6P (3) 建築物等の高さの最高限度 6P (4) 壁面の位置の制限

本町二・四・五・六丁目地区の地区計画に関する意見交換会

特に条件を定めない 条件付きで緩和する 緩和を認めない B 保存樹木 文化財等 世田谷区みどりの基本条例 ( 平成 17 年 3 月 14 日条例第 13 号 ) 第 9 条に基づき指定された保存樹木等又は 同条例第 18 条の規定に基づく小樹林の保全のために これらの存する土の部分を避けて建築する

根拠条項 第 131 条の 2 第 3 項 壁面線の指定等がある場合の高さ制限の例外認定 法令の定め第 131 条の 2 3 前面道路の境界線若しくはその反対側の境界線からそれぞれ後退して壁面線の指定がある場合又は前面道路の境界線若しくはその反対側の境界線からそれぞれ 後退して法第 68 条の 2

RMS(Root Mean Square value 実効値 ) 実効値は AC の電圧と電流両方の値を規定する 最も一般的で便利な値です AC 波形の実効値はその波形から得られる パワーのレベルを示すものであり AC 信号の最も重要な属性となります 実効値の計算は AC の電流波形と それによって

土木工事に係る設計 調査等業務委託における管理技術者及び照査技術者等の資格要件 別紙 2 1. 管理技術者 照査技術者の資格要件 業務の種類管理技術者照査技術者 設計業務 技術士法 ( 昭和 58 年法律第 25 号 ) 第 2 条に規定する技術士 [ 総合技術 監理部門 ( 業務に該当する選択科目

5-1から3許可・不許可

パソコンシミュレータの現状

<967B8E8E8CB196E291E82E786264>

Microsoft Word - 防露試験ガイドライン doc

金沢都市計画地区計画の変更

測量試補 重要事項

周期時系列の統計解析 (3) 移動平均とフーリエ変換 nino 2017 年 12 月 18 日 移動平均は, 周期時系列における特定の周期成分の消去や不規則変動 ( ノイズ ) の低減に汎用されている統計手法である. ここでは, 周期時系列をコサイン関数で近似し, その移動平均により周期成分の振幅

Microsoft Word 電波障害_通し頁_ doc

2

都市計画図 外神田二・三丁目地区(PDF)

Microsoft Word - ●決定⑤地区計画-2.docx

1 吾妻町 平成18年3月27日に東村と合併し東吾妻町になりました 2 六合村 平成22年3月28日に中之条町に編入しました 5.2-2

1

Microsoft Word - 岡崎駅南リーフレット案【最終】

0.45m1.00m 1.00m 1.00m 0.33m 0.33m 0.33m 0.45m 1.00m 2


A-2

構造力学Ⅰ第12回

旧(現行)

平方・中野久木物流施設地区

建築基準法第 43 条第 2 項第 2 号の規定による許可の同意の取扱い基準 平成 18 年 6 月 1 日東広島市建築審査会 建築基準法 ( 以下 法 という ) 第 43 条第 2 項第 2 号の規定により許可を行う場合, 次 に定める基準のいずれかに該当する建築物の敷地については, 建築審査会

名前 第 1 日目 建築基準法 2 用途規制 1. 建築物の敷地が工業地域と工業専用地域にわたる場合において 当該敷地の過半が工業地域内であると きは 共同住宅を建築することができる 2. 第一種低層住居専用地域内においては 高等学校を建築することができるが 高等専門学校を建築する ことはできない

1. 空港における融雪 除雪対策の必要性 除雪作業状況 H12 除雪出動日数除雪出動回数 H13 H14 H15 H16 例 : 新千歳空港の除雪出動状況 2. 検討の方針 冬季の道路交通安全確保方策 ロードヒーティング 2

PowerPoint Presentation

Microsoft Word - Hよよ _景観形成ガイドライン (最終)●●● - コピー

大脇 山下式 2012 予測計算シートの使い方 床衝撃音研究会

耐震診断 耐震改修に関する設計に係る業務報酬基準案について寄せられたご意見と国土交通省の考え方 20 名の個人 団体から合計 66 件の意見をいただきました とりまとめの都合上 内容を適宜要約させていただいております 本業務報酬基準案と直接の関係がないため掲載しなかったご意見についても 今後の施策の

スライド 1

としてまとめました 準備実験では 試験体の内外に 518 カ所の温度センサー ( 熱電対 ) と 41 カ所の熱流センサー ( 熱流束計 ) を設置して計測を行ったほか ビデオカメラを試験体内に 13 台 試験体外に 9 台設置して火災の様子を観察しました 2.2 準備実験より得られたこと木造 3

日影許可諮問(熊野小学校)

Microsoft PowerPoint - zairiki_3

地区整備計画書地区整備計画建築物等に関する事項地区の区分 地区の名称地区の面積 建築物等の用途の制限 建築物の敷地面積の最低限度 建築物の延べ床面積の敷地面積に対する割合の最高限度建築物の建築面積の敷地面積に対する割合の最高限度 壁面の位置の制限 独立住宅地区 A 約 21.9 ha (1) 長屋


東京都市計画用途地域の変更 ( 東京都決定 ) 都市計画用途地域を次のように変更する ( 中野区分 ) 種類面積容積率建ぺい率 第一種低層住居専用地域 第 二 種 低層住居 専用地域 /10 15/10 4/10 5/10 外壁の後退距離の限度 建築物の敷

タンニン酸を用いた師範RO/NF膜の酸化剤体制処理

公津西地区地区計画運用基準

<4D F736F F F696E74202D C CC89C88A B8CDD8AB B83685D>

東京都建築安全条例の見直しの考え方

<4D F736F F D CF8D5888C48C7689E68F91817A948E91BD B8A58926E8BE62E646F63>

第2章 事務処理に関する審査指針

Transcription:

中村修 *1) 奥田泰雄 *2) 益山由佳 *3) *1)( 株 ) 風工学研究所所長 博士 ( 工学 ) *2) 国土交通省国土技術政策総合研究所建築研究部建築新技術研究官 博士 ( 工学 ) *3)( 株 ) 風工学研究所風洞実験部研究員 1 はじめに 広告板に関する規定は都道府県の条例で定められている たとえば 東京都の出版する屋外広告物のしおり 1) によると 広告物等の高さは 設置する建築物高さ h の h/ 以下 最大高さ 5m 第 1 種 第 種 準住居地域は m 以下 木造家屋の屋上に設置する場合は 10m 以下とする とされている あまり高いところに広告板を設置しても見ることができないので 0m 前後までの建物に多く設置されているようである 建築基準法では 施行令第 18 条第 1 項の三に 法 88 条第 1 項の規定としての工作物としての規定を受ける広告塔 広告板 装飾塔 記念塔その他これらに類するものは高さ 4m を超えるものが対象となる として 法 88 条第 1 項の規定により構造計算が必要となる とはいえ 基準法の中には広告板のようなものに対して適切な風力係数等が示されているとは言えない 以上のような観点から ここでは 建築物屋上に設置される広告板の設計風荷重をどのように設定したらよいかについて示すこととする なお 本調査は国土交通省の建築基準整備促進事業の一環として実施した結果を少し噛み砕いて示したもので 風洞実験に関する詳細は文献 ) ) を参照されたい 2 風荷重の算定方法 建築基準法で風荷重を算定する場合 構造骨組用と外装材用とに分けて示されている 広告板をどちらで検討するかは 詳細にはそれぞれの対象部位に応じていずれかを用いることが望ましいが 煩雑さを避けるため 荷重負担面積が比較的小さいこと 一般的に外装材用の風荷重の方が大きめの値となることから ここでは外装材用の荷重算定法に基づいて示すこととする なお 以上に関連した検討も文献 ) ) に示している 建築基準法によると外装材用の風荷重は速度圧 q に風力係数 C を乗じて算定する W = qc (1) 速度圧 q は次式で算定され 風速 V と一対一に対応している q = 0.6V 2 () すなわち 速度圧 q は設計風速と考えることもできる 風は時々刻々変動しているが この時の風速は平均風速が用いられる わが国では平均風速は 10 分間の変動する風速の平均値を採用している 風荷重も風速と同様に変動するので 設計はそのピーク値を用

いる必要があり 速度圧を平均値としているので風力係数をピーク値としている ( ピーク風力係数 Ĉ ) W = q Ĉ (3) ピーク風力係数は次式のように表現できる Ĉ =[C'pe C'pi]max (4) 上式の意味するところは 時々刻々変化する面表裏の圧力 ( 外面の風圧 :C'pe 内面の風圧 :C'pi) の差から得られる 10 分間中のピーク値 ( 最大値 ) を抽出し ピーク風力係数とするということである 通常 内面は室内側となるので その場合は経験的に次式を用いて表現している Ĉ = Ĉ pe Ĉ pi (5) ピーク外圧係数については建築物の形状や部位に応じて 平成 12 年度建設省告示第 1458 号 ( 以下 告示 1458 号と記す ) に数値が与えられており ピーク内圧係数については告示 1458 号の表 6, 11 に与えられている 正のピーク外圧係数については さらに次式により定めることとなる Ĉ pe = Gpe Cpe (6) ピーク外圧係数を時間平均値である外圧係数 Cpe とピーク値に変換するためのガスト影響係数 Gpe との積として示している 一方 負のピーク外圧係数については 告示 1458 号の表 3, 5, 10 に示されている 以上より 閉鎖型建築物として正および負のピーク風力係数の絶対値が大きくなるようなケースについて計算してみると次に示すようになる 正のピーク風力係数 :3.0 正のピーク風力係数 3.0 は ガスト影響係数は地表面粗度区分 Ⅲ の高さ 10m として Gpe =2.5 外圧係数は建築物壁面の最大値 Cpe=1.0 ピーク内圧係数は Ĉ pi=-0.5 として得られる 負のピーク風力係数 :-3.2 負のピーク風力係数 -3.2 は屋根面の最小値を選択して得たものである さて 建築物屋上に設置されるような広告板のピーク風力係数を考えてみると 以上のケースと大きく異なるのはピーク内圧係数である 内側にも同様な流 れの場があるので 状況に応じて変化し ピーク風力係数が更に大きくなるような状況が推測できる 現に以下に示す風洞実験ではピーク風力係数として 正の最大値 7.0 負の最大値 -6.0 が示されている 3 風洞実験による風力係数の検討 3.1 風洞実験方法屋上広告板の風力係数を検討するため風洞実験を行った 対象とした広告板は 建築物屋上に設置されている広告板の実状から以下の特徴を考慮して決定した 都道府県の条例などによると広告板の頂部までの高さは 40m ~ 50m 以下と定められている 広告板の高さは 2 ~ 10m 程度が多い 広告板の幅は建築物全体および一部の両方があるが 多くは 5 ~ 10m 程度である 多くの広告板は建築物との間に空間があり 30 ~ 100cm 程度が多い 建築物の外壁面に沿って設置されることが多い 建築物の平面の中央部に設置される場合はペントハウスを利用することが多い また 下からの見えを良くするために上にあげられる 比較的小さな建築物の場合には 屋上の外周部に沿って壁面全面に設置していることが多い 以上より 実験では 広告板が設置される建築物は表 1 に示すように 幅 B 奥行き D が 20m 10m の建築物 1 30m 20m の建築物 2 の 2 種を対象とした 広告板については表 1 に示すように 幅 b 高さ h および広告板下部と建築物との隙間 h をパラメータとした 模型の縮尺は 1/100 である 建築物 1 の広告板は 壁面の全面に広告板が設置されるケース 建築物 2 は ある一部に広告板が設置されるケースとした ( 図 1(a) 参照 ) 図 1(b) に建築物 2 について 建築物と広告板の設置位置の関係を示す 広告板の設置位置を大別すると 広告板が壁面隅角部に設置された場合 壁面中央部に設置された場合および壁面中央位置において壁面端部から 5m 後退した位置に設置された場合である 建築物の屋上に設置される広告板は 壁面の 1 面だけに設置される場合のほか 長辺壁面の隅角部と短辺壁面の隅角部の 2 面にわたり L 型のように設置される場合 あ 表 1 実験パラメータ 形 状 パラメータ 実寸法 [m] 模型寸法 [mm] 建築物 1 B D 20 10 200 100 H 10, 30 100, 300 建築物 2 B D 30 20 300 200 H 10, 30 100, 300 b 5, 10, 20 50, 100, 200 広告板 h 3, 8 30, 80 h 0, 0.3, 1 0, 3, 10

るいは 3 面 4 面に設置される場合などがあり 本実験では図 1(c) に示すようにそれぞれ I 型 L 型 コ型およびロ型と称した 検討ケースは 表 1 図 1 および設置パターンのパラメータの組合せ 102 ケースを対象とした 図 2 に風圧測定点の配置例を示す 風圧測定点位置 および数は広告板により異なるが 風力が測定できるように広告板の表裏のほぼ同一位置に測定孔を配置している 面表裏の測定孔の配置は 先に示した面に加わる風力は面の表裏の圧力差から決まるという (4) 式から理解していただきたい 図 2 は広告板のエリア分けについても示している エリアの設定は 幅 5m 図 1 実験模型および広告板設置位置 図 2 風圧測定点配置例およびエリア分け 注 ) 図中の数字は測定点番号 4

を基準として分割し 高さ方向には分割を行わない エリアの設定は 広告板の形状および大きさからこの程度のエリア内の風圧力の最大値をそのエリア内の設計値として一律に用いることが現実的と考えて設定したものである 3.2 風洞実験結果結果の一例を図 3 に示す この例は平面 30 20m 高さ 30m の建築物 2 に幅 10m 高さ 8m の広告板が建築物の隅角部に設置されたものである (I 型 ) この広告板で最大値を示したのはエリア 2 の測定点 8 である 図の詳細および結果の特徴を以下に示す 図 3 は測定点 8 に着目し 風力係数を風向角別に示 したものである 図中の 印の変動とは変動風圧力の標準偏差を意味する 正の最大値は 約 7 が風向角 290 で生じており その時の平均値は 2 程度である また 負の最小値は 約 -6 が風向角 210 で生じており その時の平均値は -2 程度である 風向角 290 で最大値の生じた測定点 8 での最大ピーク風力係数 7 は 表面の 2 程度の値と裏面の - 5 程度の値によって生じている (Ĉ =2-(-5)= 7) これは 表面に吹き付ける正圧に加え 建築物頂部の角部から吹き上げる強い流れによって発生する大きな負圧によって生じているものである 以上のように 各エリア内の最大値を整理 検討すると ピーク風力係数は 広告板が建築物のどの部分に位置するかよりも むしろ広告板がどのように構成され広告板の端部 角部 中央部のようにどの部分に位置するか ( 表 2 中の図参照 ) の方が顕著な影響を受けることが示された I 型 L 型 コ型およびロ型のピーク風力係数の絶対値の最大値を整理して示すと表 2 のようになり 以下のような傾向が示される 端部および中央部における最大ピーク風力係数は I 型の絶対値が大きい 最小ピーク風力係数は 端部では形状による差は 図 3 測定点 8 の風力係数の風向変化の例 表 2 ピーク風力係数一覧表 端部角部中央部 I 型 L 型 コ型 ロ型 正値 7.0 6.5 4.5 負値 -6.0-5.5-6.0 正値 5.5 5.0 5.0 負値 -5.5-5.0-3.5 正値 6.0 5.0 4.5 4.5 負値 -4.0-5.5-4.0-3.0 5

あまりないが 角部および中央部では L 型の絶対値が他の形状よりやや大きい ロ型は他の形状と同程度もしくは絶対値が小さい なお 広告板下部と建築物との隙間についても 1m 以内の範囲で検討を行ったが その範囲内であれば大きな影響のない結果を得た したがって それ以上の隙間を有する場合には特別な配慮が必要である また 広告板の平面設置位置 ( 図 1(b) 参照 ) で建築物壁面から後退した距離の影響については 広告板の設置型等によりピーク風力係数は異なるため 明確な傾向は見られなかった 今回検討した壁面端部から 5m 以 例 1)I 型 内の後退距離であれば 上記に示す数値を参考にしてよいが これ以上の後退距離を有する場合には 隙間同様に特別な配慮が必要である 4 風力係数の適用例 表 2 の結果に基づいていくつかの例についてピーク風力係数を設定してみる 図 4 の例 1) は I 型の場合で それぞれ 5m 幅の 4 つのエリアのピーク風力係数は端部および中央部の値のいずれかが設定されることとなる 例 2) は L 型の場合で 広告板で構成される角部となるエリアの片側は端部でもあるので両方の絶対 例 2)L 型 例 3) コ型 例 4) ロ型 図 4 屋上広告板設置状況に応じた表 2 のピーク風力係数の適用例 6

値の大きな値を採用する必要がある 例 3) はコ型の場合で 端部でかつ角部となるエリアとなる部分がある 最後の例 4) はロ型であるが 角部か中央部のいずれかの値が採用されることとなる 5 おわりに 屋上広告板について多くの風洞実験を行い 風力係数の検討を行った その結果をまとめると以下に示すようになる (1) 屋上広告板の風力係数は 設置される建築物や設置場所等によって異なる性状を示し それぞれの要素が複雑に関連し合い 系統的に明確な傾向を見出すのは難しいが 大きな傾向として以下が示された 1 建築物の隅角部近くに設置された広告板 広告板の角部 広告板の端部のピーク風力係数は 広告板の中央部に比べ 大きめの値が示される 2 ロ型の広告板のピーク風力係数は I 型 L 型およびコ型と比べ値が小さめであり 場所による差が少ない (2) 屋上広告板の設計用風力係数として 表 2 を提案するが 現段階では 告示などで規制されたものでないことと認識していただきたい また 限ら れた建築物および広告板の形状であり ここでの想定から外れるものについては風洞実験等が必要である 謝辞本研究は国土交通省の実施する平成 22 年度建築基準整備促進事業の一環として実施している事業のうち 風圧力 耐風設計等に関する基準の合理化に資する調査委員会 の成果の一部である 検討を進める上で本調査委員会の親委員会 ( 委員長 : 東京工芸大学田村幸雄教授 ) および風力係数 WG の委員の方々に貴重なご意見を頂いた ここに記して感謝の意を表します 参考文献 1) 東京都 屋外広告物のしおり (2010) 2) ( 株 ) 風工学研究所 平成 22 年度建築基準整備促進事業風圧力 耐風設計等の基準の合理化に関する調査報告書 平成 22 年 3 月 3) 益山由佳 中村修 奥田泰雄 伊藤真二 菊池浩利 野田博 吉田昭仁 植松康 屋上広告板のピーク風力係数 日本風工学会誌 vol.36 No.4(No.129) p362-375 (2012) 7