研修テキスト 固定資産税あなたは課税明細書の内容を説明できますか? 講師 杉森真哉 本書の全部または一部を許可なく複製 転載することを禁じます
本日の講義のポイント 固定資産評価額 課税標準額 税額の関係をしっかり押さえる 課税明細書は を取り除くとスッキリ見えてくる とにかく の4つをまずは押さえる 目次 1. 基礎知識... 1 2. 評価額計算... 2 3. 土地の税額計算... 3 4. 建物の評価額 税額... 4 5. 軽減措置... 4 6. 課税明細書 ( 東京都 )... 4 7. 課税明細書 ( 横浜市 )... 5 8. 課税明細書 ( さいたま市 )... 5 9. 払い過ぎチェック ( 土地編 )... 6 10. 払い過ぎチェック ( 家屋編 )... 6 1. 基礎知識 (1) 概要 定義毎年 1 月 1 日 ( 賦課期日 ) に土地 家屋 償却資産を所有している人が その固定資産の所在する市区町村に納める税金 (2) 価格 評価額の決定固定資産税評価額は国が定めた 固定資産評価基準 に基づいて市町村が決定 3 年に 1 度 全件評価替えを行い 価格を決定する 価格水準他の公的価格との価格水準は下記の通りである 地価公示 地価調査 ( 県地価調査基準地 ):100% ( 時価 ) 相続税路線価 :80% 固定資産税評価額 :70% 路線価世間一般で路線価とは 国税庁発表の相続税路線価を指す しかし固定資産税にも固定資産税を評価するための路線価が存在する 固定資産税路線価図 : http://www.chikamap.jp/ 課税主体固定資産が所在する市区町村 納税義務者原則 固定資産税を納める人は 固定資産の所有者 納税義務者が 1 月 1 日前に死亡している時には 賦課期日において現に所有している人 税率標準税率は 1.4% 市町村の条例によって異なる税率を定めることができる 納税方法市町村から納税者に納付書が送付され 市町村の条例で定められた納期 ( 通常は年 4 回 ) に分けて納税 免税点市町村の区域内に同一人が所有する土地 家屋 償却資産のそれぞれの課税標準額が次の金額に満たない場合には 課税されない (3)1 月 1 日が基準日 まずは空から地上を撮影して証拠を取る航空写真で撮影して 家屋の新築 滅失箇所を特定後 現地調査を実施して最終判定する 家屋の新築 滅失撮影された航空写真を使って 前回撮影時点の航空写真と比較して 家屋の新築 滅失箇所をピックアップする 1
(4) 地目の認定例固定資産税による地目の認定は 登記における意思内容と現況を考慮して最終的に判定する この地目の認定次第で この後の評価額 課税標準の価格水準が決定されるため 非常な重要な作業である 2. 評価額計算 画地画地範囲ごとの地積が評価の単位となる 筆と呼ばれる単位ではなく 画地という現況利用の範囲によって評価する 例えば 2 筆以上で隣接する敷地で一体利用されている場合には 2 筆が 1 画地として評価の単位となす 逆に 1 筆の中で 地目に相違があり分割して評価することが望ましい場合には 分割されたそれぞれの範囲を 1 画地として評価の単位とする 評価額計算式 単価 ( 補正等 ) 地積 ( 時点修正 ) 単価地目別に価格水準が決定される 宅地等の場合宅地等は路線価方式 ( 市街地宅地評価法 ) とその他の宅地評価法により評価される その他の地目は 売買実例価額方式や近傍地比準方式によって評価される 市街化区域内であれば 地目の如何にかかわらず 将来的に宅地になる可能性が高い そのため 宅地を前提にした価格に対して 造成費相当分を差し引いて決定される 宅地等以外宅地等以外の地目は 現在の利用状況に応じた価格で決定される 地積原則として 法務局に登記されている地積によって評価額を計算する よって 実際の現地面積と相違する場合もあり 縄延び 縄縮みによる影響もある ただし 登記地積と実際の現地面積に大きな乖離が有る際は 現地面積とすることもできる なお 地積の単位は 0.01 m2単位 その他は 1 m2単位 補正等画地の位置 状況に応じて補正等をすることができる 奥行価格補正 側方路線影響加算 二方路線影響加算 不整形地補正 無道路地補正 間口狭小補正 奥行長大補正 がけ地補正 2
節税を左右する住宅用地 時点修正地価の下落状況に応じて 評価替え年度以外でも地価下落を反映することができる措置 土地の課税明細書の見方 3. 土地の税額計算 価格 ( 評価額 ) 課税標準額 税額が最も重要! 3
4. 建物の評価額 税額 評価額の計算方法 適用対象住宅専用住宅または併用住宅 ( 居住部分の割合が 1/ 2 以上 ) であること床面積が 50 m2 ( 賃貸住宅は 40 m2 ) 以上 280 m2以下であること 減額期間一般の住宅は新築後 3 年度分 3 階建て以上の中高層耐火住宅等は 新築後 5 年度分 6. 課税明細書 ( 東京都 ) 課税明細書の見方 分かりやすくするためには? 都市計画税を しないこと 負担水準を しないこと 5. 軽減措置 新築住宅に関する軽減措置 ( 参考 ) 2012 年 3 月 31 日までに建築された新築住宅で 下記要件を満たすものについては 居住部分の床面積のうち 120 m2までの床面積にかかる固定資産税額が 1/2 に減額される 適用対象住宅専用住宅または併用住宅 ( 居住部分の割合が 1/2 以上 ) であること床面積が 50 m2 ( 賃貸住宅は 40 m2 ) 以上 280 m2以下であること 減額期間一般の住宅は新築後 3 年度分 3 階建て以上の中高層耐火住宅等は新築後 5 年度分 高齢者向けの優良賃貸住宅にかかる軽減措置 2012 年 3 月 31 日までに建築された新築住宅で 下記要件を満たすものについては 居住部分の床面積のうち 120 m2までの床面積にかかる固定資産税額が 1/2 に減額される 4 (1) 基礎情報 不動産の所在 町二丁目 1 番 1 地目登記地目 : 宅地 現況地目 : 宅地 ( 税額は現況地目で判断される ) 地積登記地積 :150.00 m2 現況地積 :150.00 m2 ( 地積は現況地積を用いる ) 住宅用地住宅用地の特定措置が適用されているかどうか とっても重要な場所 内訳は 地積で表示されることもあり 割合表示もあり また全く表示されない場合もあり この場合には 現況地積 150.00 m2のうち 150.00 m2全てが住宅用地の対象に該当するため 150.00 全てが小規模住宅用地となるため 課税標準額を計算する際には評価額 1/6 である (2) 計算式 価格 ( 評価額 ) 45,000,000 円 本則課税標準額本来の支払うべき課税標準額 計算式この土地の場合には 全て小規模住宅用地のため 評価額 小規模住宅率 (1/6)= 本則課税標準額 45,000,000 円 1/6 = 7,500,000 円 課税標準額前年度の課税標準額が本則課税標準額と同一であるかを見れば 来年度税額上昇するかどうかが判る 判定式本則課税標準額 > 前年度課税標準額 次年度税額が上昇可能性あり 7,500,000 円 > 4,500,000 円 次年度税
額が上昇する 税額 計算式課税標準額 税率 1.4% = 税額 4,875,000 円 1.4% = 68,250 円 (3) 明細書の解説 ( 裏読み ) 土地にかかる補正や時点修正率が判る評価額と地積が判れば 土地の単価が判る 単価計算式価格 ( 評価額 ) 地積 = 単価 45,000,000 円 150.00 m2=300,000 円 土地 補正率判定式市町村で公開される路線価等を確認すれば 土地個別の補正等が判る単価 公開路線価 = 補正率 評価額 公開路線価 地積 = 評価額 課税標準額計算式 小規模住宅 (200 m2以下 ) は 評価額 小規模住宅率 (1/6)= 本則課税標準額 一般住宅 (200 m2超 ) は 評価額 小規模住宅率 (1/3)= 本則課税標準額 非住宅 ( 店舗 事務所 工場 その他 ) は 評価額 70%( 負担水準 )= 本則課税標準額 税額計算式本則課税標準額 税率 1.4%= 税額 課税標準額前年度の課税標準額が本則課税標準額と同一であるかを見れば 来年度税額上昇するかどうかが判る 判定式本則課税標準額 > 前年度課税標準額 次年度税額が上昇可能性あり 3,220,949 円 > 3,020,000 円 次年度税額が上昇する可能性あり ただしこの場合には 負担水準が 93% のため 前年度と税額は据え置きになる 税額 計算式課税標準額 税率 1.4% = 税額 3,020,000 円 1.4% = 42,280 円 8. 課税明細書 ( さいたま市 ) (1) 確認事項 不動産の所在常盤 6 丁目 4-4 地目登記地目 : 宅地 現況地目 : 宅地 ( 税額は現況地目で判断される ) 地積登記地積 :100.00 m2 現況地積 :100.00 m2 ( 地積は現況地積を用いる ) 住宅用地小規模住宅用地 : 課税標準額 = 評価額 1/6 価格 ( 評価額 ) 12,862,500 円 本則課税標準額 計算式この土地の場合には 全て小規模住宅用地のため 評価額 小規模住宅率 (1/6)= 本則課税標準額 12,862,500 円 1/6 2,143,750 円 7. 課税明細書 ( 横浜市 ) (1) 確認事項 不動産の所在港町 1-1 地目登記地目 :?? 現況地目 : 宅地 ( 税額は現況地目で判断される ) 地積登記地積 :?? 現況地積 :160.00 m2 ( 地積は現況地積を用いる ) 住宅用地小規模住宅用地 : 課税標準額 = 評価額 1/6 価格 ( 評価額 ) 19,325,697 円 本則課税標準額 計算式この土地の場合には 全て小規模住宅用地のため 評価額 小規模住宅率 (1/6)= 本則課税標準額 19,325,697 円 1/6 3,220,949 円 5 課税標準額前年度の課税標準額が本則課税標準額と同一であるかを見れば 来年度税額上昇するかどうかが判る 判定式本則課税標準額 > 前年度課税標準額 次年度税額が上昇可能性あり 2,143,750 円 > 1,607,813 円 次年度税額が上昇する可能性あり 負担水準が 75% のため 税額 計算式課税標準額 税率 1.4% = 税額 1,715,000 円 1.4% = 24,010 円
9. 払い過ぎチェック ( 土地編 ) チェックに必要な資料 1. 課税明細書 : 毎年送付されてくる明細書のこと 2. 役所所有の地番図 : または法務局の公図 地積測量図でも可 3. 固定資産税路線価図 : 全国地価マップで参照 確認事項 1. 基礎情報の確認明細書で下記項目が正しいか確認します 地番 地目 面積 住宅用地特例の適用有無の4つ ホ ) さらに細かく小規模住宅 ( 評価額 1/6) 一般住宅 ( 評価額 1/3) の範囲を確認しましょう へ ) 課税内容が誤っている可能性がありますのて 役所に現在の課税内容を確認しましょう 10. 払い過ぎチェック ( 家屋編 ) 家屋のチェックに必要な資料 1. 課税明細書 : 毎年送付されてくる明細書のこと 2. 役所所有の地番家屋図 : 役所の課税図面 2. 課税内容のチェック1 イ ) 評価額 面積 て 土地の単価を計算ロ ) 土地の単価別に 課税している範囲を確認範囲が異なる場合は役所に確認ハ ) 土地の単価 > 路線価 になっていないか路線価は 固定資産税路線価図を参照して下さい 3. 課税内容のチェック2( 住宅用地特例のチェック ) イ ) 課税されている範囲 は全て住宅て すか? 住宅であれば ロへ 住宅が無ければ ハへ 住宅と店舗 事務所などが混在の場合 二へ 確認事項 1. 基礎情報の確認 : 課税明細書に記載建物と実際の建物が一致しているかチェックしましょう 課税明細書には 1 棟ごとの登記床面積 構造 建築年などが記載されています それらを元に 確認してみましょう さらに細かい点まで確認するためには 役所から評点数計算書 ( 役所が家屋を評価した内訳書 ) を取り寄せる必要があります その上で下記手順へ行きます ロ ) 全ての土地に住宅用地は適用されていますか? 適用されている場合は ホへ 適用されていない場合は へへハ ) お持ちの土地は非住宅用地になりますのて 住宅用地特例外て す 2. 材質 補正率をチェック特に材質と補正率などについては 建築時の資料などを元に確認します もし建築施工会社に聞いて教えてもらえるようであれば 聞いて照合を手伝ってもらえるとスムーズに分かります 二 ) 混在している場合には 建物別の延床面積の比率を計算しましょう 住宅延床面積の比率と実際に住宅用地に適用されている面積比率を比較して 住宅延床面積比率 > 住宅用地適用面積比率 であれば 適用されている面積が少ない可能性があります 3. その他 付帯設備など 償却資産を計上している場合には 家屋として課税されていないか確認課税明細書のみでチェックできるのは 1だけになりますが 建物を取り壊して申告していないと 未だに課税されている可能性もありますので 注意が必要です 6
固定資産税が安くなる土地はこんな土地!( 節税方法 ) 下記のような土地をお持ちでしたら もしかしたら固定資産税を節税できるかもしれません ケース1: 土地単価 5 万円 ケース2: アパート用地または駐車場用地を所有表通り (10 万円 ) と裏通り (5 万円 ) に面する土地 アパート用地 2000 m2 駐車場 800 m2 表 店舗 居宅 裏 通 500 m2 300 m2 通 り り 税額 54 万円 税額 78 万円 境目のフェンスを取り払うことによって 敷地全体の税金が 1/6 に! 境目を明確に区分すると居宅敷地が 1/6 に! アパート用地 2000 m2 駐車場 800 m2 表 店舗 居宅 裏 通 500 m2 300 m2 通 り り 税額 32 万円 (22 万円削減 ) 税額 52 万円 (26 万円削減 ) ケース 3: 土地単価 10 万円 元店舗で今は住宅として使用 店舗敷地 200 m2 ケース4: 土地単価 5 万円マンション ビル所有の土地で当初テナントが主だったが 今は居宅が主の場合 ( 社宅 福祉施設なども該当可能性あり ) 税額 20 万円 建物敷地 2000 m2 税額 98 万円 住宅用地の申請をすると 税金が 1/6 に! 居宅部分が過半数を占めると 税金が 1/6 に 住宅敷地 200 m2 建物敷地 2000 m2 税額 23 万円 (75 万円削減 ) 税額 5 万円 (15 万円削減 ) 本書の全部または一部を許可なく複製 転載することを禁じます 7
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