8 第 1 部外国人を対象とした防災対策のあり方 多言語コミュニティ FM として再スター トした FM わぃわぃ など 日本には これまでなかった 多言語 多文化 に よる活動に注目が集まった ( 写真 1) 携帯電話やインターネットがまだ普 及していない当時の日本で暮らす外国人 は 公衆電話から

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リッチモンドホテルより届いたハラール弁当の 1 つ 内容 1. 熊本県 市の在住外国人の状況 2. 熊本地震の概略 3. 外国人被災者支援の経過 外国人被災者の課題 支援活動での課題 課題への1つの取組例 2017/11/2 災害時外国人支援情報コーディネー

文化庁平成 27 年度都道府県 市区町村等日本語教育担当者研修 2015 年 7 月 1 日 生活者としての外国人 に対する日本語教育の体制整備に向けた役割分担 日本語教育担当者が地域課題に挑む10のステップ よねせはるこ米勢治子 ( 東海日本語ネットワーク )

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26 第 2 部近年の災害時の対応事例 本市の場合は大学や日本語学校 専門学校などで学ぶことを希望する外国人住民が多いためである なお 昨今の日本全体の傾向としてベトナム人やネパール人が増えており 本市においても 震災後 ( 平成 29 年 4 月末現在 ) の国別人口の上位 4 カ国は 中国 31

(2) 施策目標 施策目標 1 日本人と外国人が共に活躍できる環境の整備 東京で暮らす外国人が日本人と同様に能力を最大限発揮し 活躍できるよう 子供の教育支援等に着実に取り組む また 外国人ビジネスパーソン等の生活に関するサポートや外国人留学生等に対する就業 起業支援等を行い 外国人が東京で一層活躍


生時には会館が観光文化交流局対策部 ( 現政策局国際課 ) により外国人避難対応施設として開設 という規定を根拠に 前震後 4 月 15 日午前 1 時 本震後 4 月 16 日午前 4 時に会館避難所が開設された 会館避難所運営については 明確な規定がなく 会館を管理運営していた当事業団が担うこと

資料 3-1 男女共同参画の視点からの 防災対応について 東日本大震災への男女共同参画の視点を踏まえた被災者支援 平成 23 年 7 月 20 日 内閣府男女共同参画局

職員の運営能力の強化 避難所担当職員研修の実施 全庁対象の避難所担当職員研修(5 回開催で約 400 名参加 ) 区毎の避難所担当職員研修 男女共同参画の視点に立った避難所づくり 共助による災害時要援護者支援の取り組みについて説明 各区災害対策本部との連絡 避難所内の課題解決の調整など 地域団体等へ

資料 1 熊本地震時の外国人被災者支援活動について 熊本市国際交流振興事業団 事務局長 八木浩光 2017/11/2 災害時外国人支援情報コーディネーター 1

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多文化共生クイズ 1 答えと解説 問題 8. 名古屋市に住む外国人市民に聴きました 簡単な漢字 ひらがな カタカナ を読める割合は 70% 以上である か か? 解説 名古屋市に住む外国人で 日本語が 不自由なく読める 読むのにはほとんど困らない 簡単な漢字 ひらがな カタカナが読める 人は約 74

インターネットを通じた「心に残るつぶやき」の多言語化

1 外国人傷病者対応 資料 1

☆配布資料_熊本地震検証

32 第 2 部近年の災害時の対応事例 甚大で余震が続く恐怖は人生初めての経験だった 前震後 住んでいたアパートの隣の部屋の洗濯機が壊れたぐらいに思ったインド人留学生家族や 本震後 この世の終わりを感じた もう母国へ帰ることができない 怖くて動けなかった と当時を振り返るバングラデシュやパプアニュー

韓国 朝鮮籍市民は 過去の歴史的な経緯から 従来 非常に高い割合を占めていましたが 昭和 60 年 (1985 年 ) の国籍法の改正や日本国籍の取得 ( 帰化 ) 高齢化の進行などにより減少傾向となっています また 1980 年代以降 政府による中国帰国者及びインドシナ難民の受け入れなどもあり 中

事務連絡平成 24 年 4 月 20 日 都道府県各指定都市介護保険担当主管部 ( 局 ) 御中中核市 厚生労働省老健局総務課高齢者支援課振興課老人保健課 大規模災害時における被災施設から他施設への避難 職員派遣 在宅介護者に対する安全確保対策等について 平成 23 年 3 月 11 日に発生した東

2019 年 5 月 経営 Q&A 回答者 永浦労務管理事務所 特定社会保険労務士永浦聡 外国人材の受入れ対策講座 ~ 外国人労働者の現状 ~ Question 当社は 地方都市でホテルを数軒経営しています 法律の改正もあり 今後日本には外国人労働者が増えてくるというニュースを新聞 テレビ等で目にし

第 1 期多文化共生会議最終報告書の提言 (2007 年 3 月 ) への対応状況のまとめ 1 提言番号提言内容現行の実施状況 ( 平成 21 年 2 月時点 ) 社会生活部会からの提言 テーマ 1 外国人市民への情報提供システムの確立 1-1 外国人市民への広報活動に関する基準をつくる優先して提供

平成 28 年度 県民 Webアンケート 第 6 回自主防災の取り組みについて 実施期間 2016/9/15~2016/9/21 アンケート会員数 224 人回収数 191 件 ( 回収率 85.3%) 近年 全国各地で自然災害が多発しており 奈良県でもいつ大きな災害に見舞われるかわかりません 災害

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外国人との共生・交流社会づくり推進指針(仮称)素案

年齢別では 10 才代では 知っている人は 40.0% であるのに対し 30 才代以上では 7 割以上の人が 知っていると回答しています 図表 3 おおきな地震が起きると考えられていることを知っているか ( 年齢別 ) 10 才代 (N=10) 40.0% 50.0% 10.0% 20 才代 (N=

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2 主な論点 ( 例 ) Ⅰ 外国人との共生社会の実現に向けた基本的考え方 < 総論 >( 例 ) 最近 ( 経済危機後 ) の外国人を取り巻く状況 目指すべき共生社会のあり方 社会的統合 ( あるいは多文化共生 ) の意義や内容 ( どこまでの社会的統合 ( あるいは多文化共生 ) を求めるのか

新宿区は 外国人住民が全国で一番多く暮らす自治体で 全区民の 10% を超えています 地域別 全国 平成 26 年 1 月 1 日現在 住民記録人口総数 ( 人 ) 日本人住民人口 外国人住民人口 人数 ( 人 ) 割合 (%) 人数 ( 人 ) 割合 (%) 128,438, ,434

多文化共生について (1) 施策の概要 (2) 多文化共生に関する近年の状況 国籍や民族などの異なる人々が 互いの文化的差異を認め合い 対等な関係を築こうとしながら 地域社会の構成員として共に生きていくような 多文化共生の地域づくりを推し進める 総務省の取組 平成 18 年 3 月に 地域における多

[ 参考 ]: 平成 11 に実施された堺市市民意識調査 ( 外国人市民編 ) における 市政情報の入手について の回答結果では 入手方法として 広報さかい (48.7%) が最も多く 次いで 自治会の回覧板 (39.9%) 新聞 テレビなどのマスコミ報道 (35.2%) の順となっていました 国籍

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1.1 阪神 淡路大震災環境省は 阪神 淡路大震災 ( 平成 7 年 1 月 17 日発生 ) の際に兵庫県及び神戸市の協力を得て 大気中の石綿濃度のモニタリング調査を実施した 当時の被災地における一般環境大気中 (17 地点 ) の石綿濃度の調査結果を表 R2.1 に 解体工事現場の敷地境界付近に

災害時の外国人問題について 要旨 平成 20 年 8 月王越洋 目的日本は島国で, 地震や水害などの災害の多い国である. 過去における災害の中で, たくさんの高齢者や外国人の死亡が報告されている. このような人たちの死亡率が高かったため, 最近, 日本では災害時要援護者 ( 高齢者, 障害者, 外国

○ 訪日外国人旅行者の受け入れ環境整備事業

国土技術政策総合研究所 研究資料

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H25 港南区区民意識調査

岐阜県多文化共生推進基本方針 ( 案 ) に対するパブリックコメントとそれに対する県の考え方 ( パブリックコメント結果 ) ページ番ご意見 ( 概要 ) 号 年毎に見直しをされるようですが 大きな社会情勢などの変化があれば見直しをする必要があると思います 基本は5 年で良いと思いますが

第4113 第 1 章で示したように 我が国全体として外国人住民 外国人旅行者が増加する中 多摩 島しょ地域においても外国人住民数は年々増加しており 平成 29(2017) 年には総人口の約 3.8% を占めている 各国の経済状況の変遷等により 様々な国籍の外国人住民が地域に居住するようになってきて

3 歯科医療 ( 救護 ) 対策 管内の歯科医療機関の所在地等のリスト整理 緊急連絡網整備 管内の災害拠点病院 救護病院等の緊急時連絡先の確認 歯科関連医薬品の整備 ( 含そう剤等 ) 自治会 住民への情報伝達方法の確認 病院及び歯科診療所での災害準備の周知広報 - 2 -

化共生推進プランは 2012 年に基本計画として策定された 期間は平成 24 年から平成 28 年の 5 年とされ 言葉 制度 こころという 3 つの壁を解消するということを重要な課題としている その中で特に重要視されていると考えられるのは制度の壁である これは 3 つの課題に対して考えられたそれぞ

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4 研修会の内容の工夫 在住外国人の参加促進 より実践的なワークショップ形式の導入 多彩な講師 5 広報 行政 教育委員会 警察 消防 教員 報道機関への共催や後援 派遣依頼を積極的に行った チラシに年間スケジュールを載せ 随時情報を更新していったことで 参加者は都合に合わせて選択できた 6 調整業

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報道機関各位

災害時における外国人支援 もに 地域の地理に不安な外国人や災害時にどのような行動をとればよいかわからない外国人でも適切に避難行動がとれるような工夫が必要だ 例えば 震度 7 の地震が起きました と言われても 震度 7 がどの程度の危機的な状況なのか知らなければ 危機感は伝わらない 避難してください

2. 意見の概要と市の考え方寄せられた意見の概要及び意見に対する市の考え方は次のとおりです 意見書の内容意見に対する市の考え方 前文 に条例の基である 言語 の位置づけを明確に示し 前文 に手話は言語として位置づけられている旨の記載条例の策定趣旨を理解しやすくしてください を追加しました また 前文

調査結果 外国人労働者の受入れについて 自分の職場に外国人労働者が いる 28% 情報通信業では 48% が いる と回答 全国の 20 歳 ~69 歳の働く男女 1,000 名 ( 全回答者 ) に 職場における外国人労働者の受入れ状況や外国人労働者の受入れに対する意識を聞きました まず 全回答者

資 料 1

東北地方太平洋沖地震 多言語支援センター

総行国第   号

日本語教室の あり方 を考える 日本語教室って どういう場所? 下の図は 地域日本語教育のシステム図 と呼ばれているものです この図の中心の楕円 ボランティア を活用した日本語支援 が日本語教室を表しています 日本語教室は 生活者としての外国人 ( 学習者 ) と 生活者としての日本人 ( ボランテ

1 東日本大震災での多くの被害が発生!! 平成 23 年 2011 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災は 三陸沖を震源としたマグニ チュード 9.0 仙台市内での最大震度 6 強 宮城野区 という巨大な地震でした 東部沿岸地域では 推定 7.1m 仙台港 もの津波により 家屋の浸水やライフラ

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5_【資料2】平成30年度津波防災教育実施業務の実施内容について

資料1 第3回災害救助に関する実務検討会における意見に対する回答

地震や防災に関する情報の取得源はテレビが最も多い 地震や防災に関する知識をどこで得ているかをたずねたところ テレビ と回答をする方が 66.6% と多数を占め の イ ンターネット (45.3%) 新聞 (30.7%) といった回答を大きく引き離した結果となりました テレビは昨年 一昨年に続き最も多

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評価項目 評価ポイント 所管部局コメント 評価 国際交流に関する情報の収集及び提供事業国際交流活動への住民の参加促進事業国際理解推進事業在住外国人に対する相談事業在住外国人に対する支援事業 安定 確実な施設運営管理 公正公平な施設使用許可や地域に出向いた活動に取り組むなど新たな利用者の増加に努め 利

自主防災組織をつくろう

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3 地域コミュニティ活動について 地域コミュニティ活動 への参加について よく参加している 時々参加している とい う回答は 55.4% となりました また 参加したことはない と回答された方以外を対象に 地域コミュニティ団体の課題と 思うもの を尋ねたところ 回答が多かったものは 以下のとおりです

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Transcription:

多文化共生の時代における災害時対応 7 多文化共生の時代における災害時対応 ( 一財 ) ダイバーシティ研究所代表理事 田村太郎 はじめに日本で暮らす外国人の数はリーマンショックや震災の影響で微減が続いていたが 2013 年末から再び増加に転じ 2017 年 6 月には 247 万人を越えた 最近はベトナムやネパールの出身者も増え 多国籍化がいっそう進んでいる 国籍が多様になるということは 文化のちがいや災害に関する知識も多様になるということであり 以前にも増した丁寧な災害時対応が求められている また訪日外国人数も 2015 年に約 2,000 万人となり 政府は新たに 2020 年までの目標を 4,000 万人とする方針を示している 数が増えるだけでなく 滞在の長期化や個人旅行 リピーターの増加傾向で これまで外国人とは縁がなかった地域でも観光客を見かけるようになった 一般の住宅に 民泊 で 1 ヶ月滞在する外国人観光客もおり 生活ゴミを出したり体調を崩して熱が出ることもある 訪日外国人にも外国人住民と同様に 生活情報の提供や災害時の配慮が求められている 本稿では 阪神 淡路大震災から熊本地震までの災害で 外国人が直面した課題や自治体 NPO による対応の進展を解説しながら 多文化共生の時代に求められる地域での取り組みについて課題や可能性をまとめてみる 1. 災害時における多言語 多文化対応の広がり ~ 阪神 淡路大震災から新潟県中越地震まで~ 日本における災害時の外国人支援の幕開けとなったのは 1995 年の阪神 淡路大震災である 外国人の在留資格を再編し 日系ブラジルなど日本で暮らす外国人が急増するきっかけとなった 1990 年の改正入国管理法の施行からまだ 5 年 当時は自治体による多言語での情報提供も まだ多くはなかった 今日では外国人支援や災害対応の主力となっている NPO も 阪神 淡路大震災をきっかけに法人制度の議論が始まったもので 当時の被災地では自治体も市民も 手探りで外国人被災者の支援にあたった 大きな被害を受けた阪神間には 在日コリアンや華僑など何世代にもわたって暮らしている外国人も多く暮らしていたが 日本語でのコミュニケーションが難しいと思われる 2 万人近い新たな住民もいた 震災の翌日から多言語でのホットラインを開設し のちに 多文化共生センター へ改組して多文化共生をめざす地域活動の草分けとなった 外国人地震情報センター や いずれも神戸市長田区で無免許で放送していた韓国語の FM ヨボセヨ とベトナム語の FM ユーメン が合体し 震災から 1 年後に放送免許を取得して

8 第 1 部外国人を対象とした防災対策のあり方 多言語コミュニティ FM として再スター トした FM わぃわぃ など 日本には これまでなかった 多言語 多文化 に よる活動に注目が集まった ( 写真 1) 携帯電話やインターネットがまだ普 及していない当時の日本で暮らす外国人 は 公衆電話からテレフォンカードで友 人や知人と連絡を取り合っており 通訳 が電話に出てくれるサービスは重宝され た また車での避難生活や 公園でのテ ント生活を続けていた外国人にとって ラジオから自分の言葉が流れてくるとい う事実は 情報提供という域を超え 社 会に認識されている安心感につながった 阪神間で展開された外国人被災者支 援の動きは 兵庫県や神戸市 またそれ ぞれの国際交流協会とも連携し 県や市 の施策にも影響を与えた 当時 外国人 の 6 人に 1 人は日本での滞在に有効な在 留資格がなかったこともあり 健康保険 に加入していない外国人が負傷して医療 費が支払えず 病院からパジャマのまま 放り出されるという事例も発生したが NPO と行政で協議を重ねた結果 復興基金事業と して未払い医療費の補填制度が実現した また官民を越えた相談員による定期的な勉強会 を共催し 相談事例や対応のノウハウを共有する場を継続させた 2002 年に日韓共催で開 催されたサッカーワールドカップでは 医療通訳のマッチングシステムを神戸市で試験的 に導入するなど 災害の経験をバネに 多文化共生を掲げた日常の地域づくりを推し進め たのが阪神 淡路大震災の特徴といえる 災害時の多言語対応を改めて見つめ直し しくみとして整えるきっかけとなったのは 阪神 淡路大震災以来の震度 7 を記録した 2004 年 10 月の新潟県中越地震である 長岡市 では全国の支援関係者と連携し 震災 3 日目から市内の避難所を巡回 外国人の安否やニ ーズの把握に務めるとともに 必要な情報を翻訳して避難所に届ける活動を展開した 筆 者もこの活動に参加したが 中越地震の経験があってようやく阪神 淡路大震災の取り組 みとの相対化ができ 災害時に普遍的に必要な取り組みが何かを論じることができるよう になったと感じている 写真 1 外国人地震情報センターが作成した 母国語ホットライン を知らせるチラシ

多文化共生の時代における災害時対応 9 総務省の関連団体である 自治体国際化協会 では 中越地震での取り組みを参照し 2005 年度に 災害時多言語情報支援ツール を開発 また通訳 翻訳を中心とした人材育成のための資料も作成し 自治体による災害時の外国人対応を後押しする大きな一歩となった また同年には総務省国際室が 地域における多文化共生の推進のための研究会 を設置し 翌年 3 月に自治体が体系的 計画的に地域で取り組むべき施策をまとめた 多文化共生推進プラン を発表するなど 阪神 淡路から手探りで進められてきた数々の取り組みが 10 年を経て全国的に展開できるモデルとして整理されるに至った 2. 災害多言語支援センター 設置の動き ~ 新潟県中越沖地震から東日本大震災まで~ 中越地震からわずか 3 年後 2007 年に発生した新潟県中越沖地震は 長岡市に隣接する柏崎市を中心に被害が出たこともあり 直後から新潟県や長岡市が中越地震での経験を活かしながら外国人被災者の支援にあたった 震災の翌日には県が 柏崎災害多言語支援センター を市内に設置 全国からコーディネーターや通訳が派遣され 約 2 週間 交代で避難所の巡回や多言語での情報提供を行った 図 1 柏崎災害多言語支援センターの活動概要

10 第 1 部外国人を対象とした防災対策のあり方 自治体国際化協会ではこの中越沖地震での取り組みを参照し 2008 年度に研究会を設置して 災害多言語支援センター設置運営マニュアル を作成 外国人住民の構成や自治体等の支援体制を元に災害時に必要な人材をあらかじめ算出して 災害時にそのコーディネートにあたる組織や人材の育成を行うことを促した また各地の国際交流協会が連携して避難所運営訓練や多言語支援センターの設置運営訓練を行い マニュアルに沿って避難所巡回の模擬訓練や多言語での情報提供のシミュレーションを行う動きが全国に広まった 東日本大震災では少なくとも 3 つの 災害多言語支援センター が設置され 外国人への支援を行なった このうち 仙台市国際交流協会 が市から指定管理で運営していた 仙台国際センター に設置したものと 滋賀県にある 全国市町村国際文化研修所 に NPO 法人 多文化共生マネージャー全国協議会 が設置したものは 震災当日のうちに立ち上がっている 仙台のセンターは 2010 年度の 国際センター の指定管理業務の中で災害時に多言語支援センターを設置することを明記していたことや 災害時に外国人支援にあたるボランティアの育成や登録制度を整えており 自動参集のルールも決めていたこともあって 直ちに設置され活動を開始した 滋賀県に設置されたセンターは 報道で伝わる被害の大きさを鑑み 現地の国際交流協会等の活動をバックアップし 全国から支援者が集まりやすい施設で多言語情報提供を行うという方針で設置が決められた 多文化共生マネージャー全国協議会 は中越沖地震の際 現地で活動を行ったメンバーが中心になって 災害時に活動できる人材のプラットフォームになることを目標に 2009 年に法人化した組織で 2006 年度より全国市町村国際文化研修所で実施している 多文化共生マネージャー養成研修 の履修者で構成されている 仙台でも滋賀でも あまりにも広域におよぶ大きな被害や 原発事故による混乱などで 当初予定していたような活動はできなかった側面はあったが 災害時に多言語で情報提供を行うことの重要性は十分に浸透し 当日のうちに人員や場所の確保ができるまで環境が整ってきたことは感慨深く また他の災害時要配慮者への支援と比べても 外国人への対応は進んでいるように感じられる 今後も分析と改善を重ねたい 3. 訪日外国人の増加と 情報コーディネーター ~ 熊本地震から次の災害への備えに向けて~ 熊本地震でも 災害多言語支援センター が開設され 市内の外国人被災者に安心をおどけることに一定の役割を果たしたのだが 熊本での対応で特筆したいのは 外国人対応避難施設 の設置である 熊本市は市内にある 熊本市国際交流会館 を ハラル対応の食事や外国人に固有に必要な物資や情報を提供する避難施設とし 同会館の指定管理事業者である 熊本市国際交流振興事業団 がその運営にあたった 近隣のホテルや外国人コミュニティの協力を得て ハラル対応の食事やアルコールを使わない除菌剤を提供するな

多文化共生の時代における災害時対応 11 ど きめ細かな対応で 100 人を越える外国人避難者が施設を利用した 外国人だけを対象にした避難所の開設は 地域の避難所で 外国人は専用の避難所へ行けば良い という排除の動きを促しかねず どの避難所でも外国人を受け入れることを原則とするのが基本だ しかし日本人ばかりの避難所に入っていくことにためらう外国人や どこが避難所かわからない外国人にとっては 外国人向けに特別な配慮がある施設や 普段から日本語教室や相談窓口としてなじみがある施設の方が安心して避難できるという側面もあり 日本人避難者もともに受け入れる形で 外国人対応避難施設 という柔軟なコンセプトで対応にあたった今回の熊本市の取り組みは評価できる 熊本地震や相次ぐ水害を受け 総務省は 2016 年秋に 情報難民ゼロプロジェクト を発足させ 主に高齢者と外国人への災害時の情報提供のあり方について 2020 年までの あるべき姿 とその実現に必要な施策を整理した報告書を同年末に発表した 外国人については避難所等に 情報コーディネーター を配置し 多言語での情報提供に努めることを柱としており 17 年度には名称を 災害時外国人支援情報コーディネーター として総務省国際室に検討会を設置 熊本地震での対応などを研究して コーディネーターが災害時に担当する役割や 育成や派遣のスキームを検討している 図 2 災害時において 2020 年にめざす姿 ( 外国人の場合 ) 出典 : 総務省情報難民ゼロプロジェクト報告書

12 第 1 部外国人を対象とした防災対策のあり方 外国人住民に加え訪日外国人数も急増するなか 検討会では 2018 年度中の人材育成の スタートと 2020 年までに全都道府県にコーディネーターが配置されている状態をめざし て検討を進めており これまで以上に充実した体制が整うことを期待したい 4. 最後に ~ 支援の 担い手 としての外国人への視点 ~ ここまでは支援の 対象者 としての外国人への視点から 過去の取り組みを俯瞰してきたが 最後に支援の 担い手 としての外国人 という視点から 今後の可能性についてまとめてみたい 災害時に必要な情報として日本人がつくった日本語の原稿を翻訳するだけでは 外国人には認識に齟齬が生じ 必要な情報が手に届かなかったり 促したい行動が適切にとれなかったりする 災害時に円滑に丁寧な支援活動を行うには 支援する側にも外国人住民の参加を呼びかけ ともに避難行動や避難生活で留意すべき点を考え 必要な準備を進めておく必要がある 外国人観光客への対応においても 外国人住民が支援の担い手として活躍してくれれば心強い 2017 年 6 月末現在で 一般永住者の在留資格を持つ外国人は 73 万人を越えている 2000 年代に入ってから 毎年 2 万人以上のペースで増えており ある程度の日本語が理解できる人も少なくない 外国人対応だけでなく 高齢化が加速する地域における災害時の貴重な担い手としても 外国人住民への期待は高い 平日の日中に災害が起きると 高齢者や障害者を支援する自治会の役員や若い世代が地域におらず 計画通りに避難支援ができないのが現状だ 東日本大震災や熊本地震では いくつもの外国人の団体が遠方からも駆けつけ 炊き出しや物資の提供を行っている 消防団員として地域で活躍する外国人も増えており 今後は支援の対象としての外国人だけでなく 担い手としての側面にも光を当て 地域を支えるパートナーとして参画できる機会を増やすべきだろう 災害に備えた具体的で実践的な訓練を繰り返し実施するとともに 日常の多文化共生の取り組みを推進し 災害時にも安心できる地域を形成することにこれからも心と力を合わせていきたい 参考文献 外国人地震情報センター編著 阪神大震災と外国人 ( 明石書店 1996) 総務省 多文化共生の推進に関する研究会報告書 (2006 年 3 月 ) 総務省 多文化共生の推進に関する研究会報告書 2007 (2007 年 3 月 ) 自治体国際化協会 多文化共生の視点を取り入れた防災 災害時支援多文化共生と防災の取り組み~ 全国の事例から学ぶ導入のポイント~ ( 自治体国際化フォーラム 239 号 2009 年 9 月 ) 自治体国際化協会 災害時の多言語支援のための手引き 2012 (2013) 熊本市国際交流振興事業団 2016 熊本地震外国人被災者支援活動報告書 (2016) 自治体国際化協会 災害時における外国人支援 ( 自治体国際化フォーラム 332 号 2017 年 6 月 )