抗ヒスタミン薬の比較では 抗ヒスタミン薬は どれが優れているのでしょう? あるいはどの薬が良く効くのでしょうか? 我が国で市販されている主たる第二世代の抗ヒスタミン薬の臨床治験成績に基づき 慢性蕁麻疹に対する投与 2 週間後の効果を比較検討すると いずれの薬剤も高い効果を示し 中でもエピナスチンなら

Similar documents

2018 年 10 月 4 日放送 第 47 回日本皮膚アレルギー 接触皮膚炎学会 / 第 41 回皮膚脈管 膠原病研究会シンポジウム2-6 蕁麻疹の病態と新規治療法 ~ 抗 IgE 抗体療法 ~ 島根大学皮膚科 講師 千貫祐子 はじめに蕁麻疹は膨疹 つまり紅斑を伴う一過性 限局性の浮腫が病的に出没

アトピー性皮膚炎におけるバリア異常と易湿疹化アトピー性皮膚炎における最近の話題に 角層のバリア障害があります アトピー性皮膚炎の 15-25% くらい あるいはそれ以上の患者で フィラグリンというタンパク質をコードする遺伝子に異常があることが明らかになりました フィラグラインは 角層の天然保湿因子の

とが多いのが他の蕁麻疹との相違点です 難治例ではこの刺激感のために日常生活に支障が生じ 重篤な随伴症状としてはまれに血管性浮腫 気管支喘息 めまい 腹痛 嘔気 アナフィラキシーを伴うことがあります 通常は暑い夏に悪化しますが 一部の症例では冬期の運動 入浴で皮疹が悪化することがあり 温度差や日常の運

通常の単純化学物質による薬剤の約 2 倍の分子量をもちます. 当初, 移植時の拒絶反応抑制薬として認可され, 後にアトピー性皮膚炎, 重症筋無力症, 関節リウマチ, ループス腎炎へも適用が拡大しました. タクロリムスの効果機序は, 当初,T 細胞のサイトカイン産生を抑制するということで説明されました

アトピー性皮膚炎の治療目標 アトピー性皮膚炎の治療では 以下のような状態になることを目指します 1 症状がない状態 あるいはあっても日常生活に支障がなく 薬物療法もあまり必要としない状態 2 軽い症状はあっても 急に悪化することはなく 悪化してもそれが続かない状態 2 3

認識できない外来性の抗原 ( 食物 薬剤 吸入性抗原 ) の体内への持続的侵入によるもの 2 生体内に何らかの異常があるにもかかわらず蕁麻疹との因果関係を認識し得ないもの ( 病巣感染 消化管障害 抗 IgE レセプター抗体の出現など ) 3 全身性疾患の部分症として蕁麻疹が出現している場合 (SL

saisyuu2-1

CQ1: 急性痛風性関節炎の発作 ( 痛風発作 ) に対して第一番目に使用されるお薬 ( 第一選択薬と言います ) としてコルヒチン ステロイド NSAIDs( 消炎鎮痛剤 ) があります しかし どれが最適かについては明らかではないので 検討することが必要と考えられます そこで 急性痛風性関節炎の

2015 年 11 月 5 日 乳酸菌発酵果汁飲料の継続摂取がアトピー性皮膚炎症状を改善 株式会社ヤクルト本社 ( 社長根岸孝成 ) では アトピー性皮膚炎患者を対象に 乳酸菌 ラクトバチルスプランタルム YIT 0132 ( 以下 乳酸菌 LP0132) を含む発酵果汁飲料 ( 以下 乳酸菌発酵果

序 蕁麻疹は, 皮膚科領域ではアトピー性皮膚炎, 接触皮膚炎などの湿疹 皮膚炎群, せつとびひ, 癤などの感染症と並ぶ, ありふれた疾患 ( コモンディジーズ )( 群 ) である. その病態は, 皮膚マスト細胞の急激な脱顆粒により説明され, 多くの場合は抗ヒスタミン薬の内服によりマスト細胞から遊離

2011 年 9 月 29 日放送第 74 回日本皮膚科学会東京支部学術大会 6 教育講演 4-1( 膠原病 ) 皮膚限局型エリテマトーデスの病型と治療 埼玉医科大学皮膚科教授土田哲也 本日は 皮膚限局性エリテマトーデスの病型と治療 についてお話させていただき ます 言葉の問題と病型分類エリテマトー

10 年相対生存率 全患者 相対生存率 (%) (Period 法 ) Key Point 1 10 年相対生存率に明らかな男女差は見られない わずかではあ

2009年8月17日

未承認薬 適応外薬の要望に対する企業見解 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 会社名要望された医薬品要望内容 CSL ベーリング株式会社要望番号 Ⅱ-175 成分名 (10%) 人免疫グロブリン G ( 一般名 ) プリビジェン (Privigen) 販売名 未承認薬 適応 外薬の分類

ず一見蕁麻疹様の浮腫性紅斑が初発疹である点です この蕁麻疹様の紅斑は赤みが強く境界が鮮明であることが特徴です このような特異疹の病型で発症するのは 若い女性に多いと考えられています また スギ花粉がアトピー性皮膚炎の増悪因子として働いた時には 蕁麻疹様の紅斑のみではなく全身の多彩な紅斑 丘疹が出現し

( 別添 ) 御意見 該当箇所 一般用医薬品のリスク区分 ( 案 ) のうち イブプロフェン ( 高用量 )(No.4) について 意見内容 <イブプロフェン ( 高用量 )> 本剤は 低用量製剤 ( 最大 400mg/ 日 ) と比べても製造販売後調査では重篤な副作用の報告等はない 一方で 今まで

2005年6月7日 厚生労働省班会議資料

検査項目情報 6475 ヒト TARC 一次サンプル採取マニュアル 5. 免疫学的検査 >> 5J. サイトカイン >> 5J228. ヒトTARC Department of Clinical Laboratory, Kyoto University Hospital Ver.6 thymus a

資料 3 1 医療上の必要性に係る基準 への該当性に関する専門作業班 (WG) の評価 < 代謝 その他 WG> 目次 <その他分野 ( 消化器官用薬 解毒剤 その他 )> 小児分野 医療上の必要性の基準に該当すると考えられた品目 との関係本邦における適応外薬ミコフェノール酸モフェチル ( 要望番号

(別添様式1)

線に及ぶ 4 パッチテスト 光パッチテストで多数の陽性物質が検出されるが それらの抗原によるアレルギー反応は直接原因ではない 5 病理組織学的に湿疹 皮膚炎群の所見を示し 時に真皮内に異型リンパ球の浸潤がみられる などです なお 現在までに本疾患の原因は解明されていません 慢性光線性皮膚炎の臨床像次

1 MRSA が増加する原因としては皮膚 科 小児科 耳鼻科などでの抗生剤の乱用 があげられます 特にセフェム系抗生剤の 使用頻度が高くなると MRSA の発生率が 高くなります 最近ではこれらの科では抗 生剤の乱用が減少してきており MRSA の発生率が低下することが期待できます アトピー性皮膚炎

娠中の母親に卵や牛乳などを食べないようにする群と制限しない群とで前向きに比較するランダム化比較試験が行われました その結果 食物制限をした群としなかった群では生まれてきた児の食物アレルゲン感作もアトピー性皮膚炎の発症率にも差はないという結果でした 授乳中の母親に食物制限をした場合も同様で 制限しなか

《学校用ダウンロードファイル》アレルギー疾患用学校生活管理指導表(平成27年度改訂版)

3. 安全性本治験において治験薬が投与された 48 例中 1 例 (14 件 ) に有害事象が認められた いずれの有害事象も治験薬との関連性は あり と判定されたが いずれも軽度 で処置の必要はなく 追跡検査で回復を確認した また 死亡 その他の重篤な有害事象が認められなか ったことから 安全性に問

(別添様式)

デュピクセントを使用される患者さんへ

ン (LVFX) 耐性で シタフロキサシン (STFX) 耐性は1% 以下です また セフカペン (CFPN) およびセフジニル (CFDN) 耐性は 約 6% と耐性率は低い結果でした K. pneumoniae については 全ての薬剤に耐性はほとんどありませんが 腸球菌に対して 第 3 世代セフ

2017 年 12 月 28 日放送 第 116 回日本皮膚科学会総会 8 教育講演 14-5 血管性浮腫の診断と治療 横浜市立大学大学院環境免疫病態皮膚科学 准教授猪又直子 はじめに血管性浮腫は 皮膚や粘膜の限局した範囲に生じる深部浮腫で 蕁麻疹の類縁疾患です 近年 国際ガイドラインが発表され メ

日本内科学会雑誌第98巻第12号

データの取り扱いについて (原則)

2019 年 3 月 28 日放送 第 67 回日本アレルギー学会 6 シンポジウム 17-3 かゆみのメカニズムと最近のかゆみ研究の進歩 九州大学大学院皮膚科 診療講師中原真希子 はじめにかゆみは かきたいとの衝動を起こす不快な感覚と定義されます 皮膚疾患の多くはかゆみを伴い アトピー性皮膚炎にお

を身につけることが必要です 図 1,2,3 臨床像から初めに他の疾患で あると考えても 少しでも合致しない 点があれば鏡検を行うようにします 極言すれば 初診時には念のため 全 例鏡検していくくらいの意気込みで ちょうどよいです そして 他の疾患と考えて治療を開 始したが 予想どおりの改善が見られ

スライド 1

抗精神病薬の併用数 単剤化率 主として統合失調症の治療薬である抗精神病薬について 1 処方中の併用数を見たものです 当院の定義 計算方法調査期間内の全ての入院患者さんが服用した抗精神病薬処方について 各処方中における抗精神病薬の併用数を調査しました 調査期間内にある患者さんの処方が複数あった場合 そ

助成研究演題 - 平成 27 年度国内共同研究 (39 歳以下 ) 改良型 STOPP を用いた戦略的ポリファーマシー解消法 木村丈司神戸大学医学部附属病院薬剤部主任 スライド 1 スライド 2 スライド1, 2 ポリファーマシーは 言葉の意味だけを捉えると 薬の数が多いというところで注目されがちで

<4D F736F F D20332E B90AB94E A82CC8EA197C389FC2E646F63>

未承認の医薬品又は適応の承認要望に関する意見募集について

本調査では アトピー性皮膚炎治療における 医師 - 患者間コミュニケーションの改善が治療継続のモチベーションを上げ 治療の満足度向上に寄与することが示唆されています サノフィジェンザイムは アトピー性皮膚炎患者さんの QOL 向上に取り組むため アレルギーに関する情報サイト アレルギー i において

スライド 1

Microsoft PowerPoint - 薬物療法専門薬剤師制度_症例サマリー例_HP掲載用.pptx

食物アレルギーから見た離乳食の考え方

ROCKY NOTE 食物アレルギー ( ) 症例目を追加記載 食物アレルギー関連の 2 例をもとに考察 1 例目 30 代男性 アレルギーについて調べてほしいというこ

より詳細な情報を望まれる場合は 担当の医師または薬剤師におたずねください また 患者向医薬品ガイド 医療専門家向けの 添付文書情報 が医薬品医療機器総合機構のホームページに掲載されています

第1回肝炎診療ガイドライン作成委員会議事要旨(案)

第3章 調査のまとめ

こうすればうまくいく! 薬剤師による処方提案

<4D F736F F F696E74202D D58FB08E8E8CB15F88F38DFC FC92F994C532816A>

2011 年 7 月 28 日放送第 47 回日本小児アレルギー学会シンポジウム7 アトピー性皮膚炎を考える から 学校保健における管理指導表の利用と課題 関東中央病院皮膚科部長日野治子はじめに私は市中の一診療病院に勤務しています アトピー性皮膚炎の患者さんも 小児から中年過ぎまで多数来院されます

美容皮膚科に関するアンケート今回 2つのアンケートを紹介します まず 初めに 皮膚科医による美容皮膚科への取り組み実態 の調査として 2007 年に行われた日本臨床皮膚科医会会員 4,073 名への 美容皮膚科に関するアンケート です このアンケート調査は 回収率は 30.35% と高く 美容皮膚科

タペンタ 錠 25mg タペンタ 錠 50mg タペンタ 錠 100mg に係る 販売名 タペンタ 錠 25mg タペンタ 錠 50mg 医薬品リスク管理計画書 (RMP) の概要 有効成分 タペンタ 錠 100mg 製造販売業者 ヤンセンファーマ株式会社 薬効分類 821 提出年月 平成 30 年

95_財団ニュース.indd

kari.indb

葉酸とビタミンQ&A_201607改訂_ indd

ルギー性接触皮膚炎症候群と診断されました 欧州医薬品庁は昨年 7 月にケトプロフェン外用薬に関するレヴュー結果を公表し 重篤な光線過敏症の発症は10 0 万人に1 人程度でベネフィットがリスクをうわまること オクトクリレンが含まれる遮光剤が併用されると光線過敏症のリスク高まることより最終的に医師の処

要望番号 ;Ⅱ 未承認薬 適応外薬の要望 ( 別添様式 1) 1. 要望内容に関連する事項 要望 者 ( 該当するものにチェックする ) 優先順位 学会 ( 学会名 ; 日本ペインクリニック学会 ) 患者団体 ( 患者団体名 ; ) 個人 ( 氏名 ; ) 2 位 ( 全 4 要望中 )

2017 年 2 月 1 日放送 ウイルス性肺炎の現状と治療戦略 国立病院機構沖縄病院統括診療部長比嘉太はじめに肺炎は実地臨床でよく遭遇するコモンディジーズの一つであると同時に 死亡率も高い重要な疾患です 肺炎の原因となる病原体は数多くあり 極めて多様な病態を呈します ウイルス感染症の診断法の進歩に

3 病床数 施設 ~19 床 床 床以上 284 (3 施設で未回答 ) 4 放射線専門医数 ( 診断 治療を含む ) 施設 ~5 人 226 6~10 人 人

報道関係各位 2015 年 7 月 31 日 ガルデルマ株式会社 塩野義製薬株式会社 ~ ニキビ経験者を対象としたニキビとニキビ痕に関する調査 より ~ ニキビ経験者の多くが ニキビ治療を軽視 軽いニキビでも ニキビ痕 が残る ことを知らない人は約 8 割 ガルデルマ株式会社 ( 本社 : 東京都新

600人の耳鼻咽喉科医師とその家族対象 アレルギー疾患に関する全国調査

あった AUCtはで ± ng hr/ml で ± ng hr/ml であった 2. バイオアベイラビリティの比較およびの薬物動態パラメータにおける分散分析の結果を Table 4 に示した また 得られた AUCtおよび Cmaxについてとの対数値

モビコール 配合内用剤に係る 医薬品リスク管理計画書 (RMP) の概要 販売名 モビコール 配合内用剤 有効成分 マクロゴール4000 塩化ナトリウム 炭酸水素ナトリウム 塩化カリウム 製造販売業者 EA ファーマ株式会社 薬効分類 提出年月 平成 30 年 10 月 1.1. 安全

PowerPoint プレゼンテーション

<4D F736F F D2089BB8A7797C C B B835888E790AC8C7689E6>

要望番号 ;Ⅱ-183 未承認薬 適応外薬の要望 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 要望者学会 ( 該当する ( 学会名 ; 日本感染症学会 ) ものにチェックする ) 患者団体 ( 患者団体名 ; ) 個人 ( 氏名 ; ) 優先順位 1 位 ( 全 8 要望中 ) 要望する医薬品

患者向医薬品ガイド 2019 年 5 月改訂 デュピクセント皮下注 300mg シリンジ この薬は? 販売名一般名含有量 (1 製剤中 ) デュピクセント皮下注 300mg シリンジ Dupixent 300mg Syringe for S.C. Injection デュピルマブ ( 遺伝子組換え

要望番号 ;Ⅱ-286 未承認薬 適応外薬の要望 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 要望者 ( 該当するものにチェックする ) 学会 ( 学会名 ; 特定非営利活動法人日本臨床腫瘍学会 ) 患者団体 ( 患者団体名 ; ) 個人 ( 氏名 ; ) 優先順位 33 位 ( 全 33 要望

<4D F736F F D DC58F4994C5817A53544C2094E789BA928D5F8AB38ED28CFC834B F94CC94848CB392C78B4C C5292E646F63>

博士論文 考え続ける義務感と反復思考の役割に注目した 診断横断的なメタ認知モデルの構築 ( 要約 ) 平成 30 年 3 月 広島大学大学院総合科学研究科 向井秀文

2015 年 3 月 26 日放送 第 29 回日本乾癬学会 2 乾癬本音トーク乾癬治療とメトトレキサート 名古屋市立大学大学院加齢 環境皮膚科教授森田明理 はじめに乾癬は 鱗屑を伴う紅色局面を特徴とする炎症性角化症です 全身のどこにでも皮疹は生じますが 肘や膝などの力がかかりやすい場所や体幹 腰部

2 4 診断推論講座 各論 腹痛 1 腹痛の主な原因 表 1 症例 70 2 numeric rating scale NRS mmHg X 2 重篤な血管性疾患 表

アレルギー疾患対策基本法 ( 平成二十六年六月二十七日法律第九十八号 ) 最終改正 : 平成二六年六月一三日法律第六七号 第一章総則 ( 第一条 第十条 ) 第二章アレルギー疾患対策基本指針等 ( 第十一条 第十三条 ) 第三章基本的施策第一節アレルギー疾患の重症化の予防及び症状の軽減 ( 第十四条

ータについては Table 3 に示した 両製剤とも投与後血漿中ロスバスタチン濃度が上昇し 試験製剤で 4.7±.7 時間 標準製剤で 4.6±1. 時間に Tmaxに達した また Cmaxは試験製剤で 6.3±3.13 標準製剤で 6.8±2.49 であった AUCt は試験製剤で 62.24±2

汎発性膿疱性乾癬のうちインターロイキン 36 受容体拮抗因子欠損症の病態の解明と治療法の開発について ポイント 厚生労働省の難治性疾患克服事業における臨床調査研究対象疾患 指定難病の 1 つである汎発性膿疱性乾癬のうち 尋常性乾癬を併発しないものはインターロイキン 36 1 受容体拮抗因子欠損症 (

心房細動1章[ ].indd

一次サンプル採取マニュアル PM 共通 0001 Department of Clinical Laboratory, Kyoto University Hospital その他の検体検査 >> 8C. 遺伝子関連検査受託終了項目 23th May EGFR 遺伝子変異検

2017 年 9 月 画像診断部 中央放射線科 造影剤投与マニュアル ver 2.0 本マニュアルは ESUR 造影剤ガイドライン version 9.0(ESUR: 欧州泌尿生殖器放射線学会 ) などを参照し 前マニュアルを改訂して作成した ( 前マニュアル作成 2014 年 3 月 今回の改訂

査を実施し 必要に応じ適切な措置を講ずること (2) 本品の警告 効能 効果 性能 用法 用量及び使用方法は以下のとお りであるので 特段の留意をお願いすること なお その他の使用上の注意については 添付文書を参照されたいこと 警告 1 本品投与後に重篤な有害事象の発現が認められていること 及び本品

症例報告書の記入における注意点 1 必須ではない項目 データ 斜線を引くこと 未取得 / 未測定の項目 2 血圧平均値 小数点以下は切り捨てとする 3 治験薬服薬状況 前回来院 今回来院までの服薬状況を記載する服薬無しの場合は 1 日投与量を 0 錠 とし 0 錠となった日付を特定すること < 演習

10 年相対生存率 全患者 相対生存率 (%) (Period 法 ) Key Point 1

Microsoft Word - cjs63B9_ docx

日本皮膚科学会雑誌第117巻第14号

食欲不振 全身倦怠感 皮膚や白目が黄色くなる [ 肝機能障害 黄疸 ] 尿量減少 全身のむくみ 倦怠感 [ 急性腎不全 ] 激しい上腹部の痛み 腰背部の痛み 吐き気 [ 急性膵炎 ] 発熱 から咳 呼吸困難 [ 間質性肺炎 ] 排便の停止 腹痛 腹部膨満感 [ 腸閉塞 ] 手足の筋肉の痛み こわばり

【1

糖尿病診療における早期からの厳格な血糖コントロールの重要性

A9R284E

医師のためのTUE申請ガイドブック2013_本文.indd

TJ1608_ _rinshou_CS6-iro1.indd

相談内容 1 アトピー性皮膚炎 + 食物アレルギー ( アナフィラキシー歴有 )+ 喘息疾患の小学生男児 年齢が上がるにつれて自分が管理していくことになるが 家でできる子どもへの指導方法 ( 教育方法 ) を知りたいです ライフサイクルに合わせた対処方法を子どもに教えたいです 回 答 1 お薬につい

3) 適切な薬物療法ができる 4) 支持的関係を確立し 個人精神療法を適切に用い 集団精神療法を学ぶ 5) 心理社会的療法 精神科リハビリテーションを行い 早期に地域に復帰させる方法を学ぶ 10. 気分障害 : 2) 病歴を聴取し 精神症状を把握し 病型の把握 診断 鑑別診断ができる 3) 人格特徴

Ⅰ. 改訂内容 ( 部変更 ) ペルサンチン 錠 12.5 改 訂 後 改 訂 前 (1) 本剤投与中の患者に本薬の注射剤を追加投与した場合, 本剤の作用が増強され, 副作用が発現するおそれがあるので, 併用しないこと ( 過量投与 の項参照) 本剤投与中の患者に本薬の注射剤を追加投与した場合, 本

現況解析2 [081027].indd


Microsoft Word _ソリリス点滴静注300mg 同意説明文書 aHUS-ICF-1712.docx

Microsoft PowerPoint - 【参考資料4】安全性に関する論文Ver.6

調査概要 1 日 2 回でずっと効く コンタック 600 プラス を製造販売するグラクソ スミスクライン株式会社のコンタック総合研究所 ( は 花粉シーズン到来を前に ドラッグストアや薬局 薬店で販売されている鼻炎薬を含めた 市販薬の知識 & イメージ

<4D F736F F F696E74202D2088F38DFC B2D6E FA8ECB90FC8EA197C C93E0292E B8CDD8AB B83685D>

日本皮膚科学会雑誌第122巻第7号

Transcription:

2011 年 3 月 3 日放送第 26 回日本臨床皮膚科医会総会 3 主催セミナー 5より 皮膚科診療における抗ヒスタミン薬の限界と可能性 広島大学大学院皮膚科教授秀道弘はじめに皮膚科診療において 痒みを伴う疾患の数は多く 本邦における皮膚科患者数の上位 20 疾患のうち 9 疾患が痒みを伴い それらの疾患患者数は全体の 56.6% に該当します 中でも蕁麻疹 アトピー性皮膚炎は患者数が多く その病態ではヒスタミンが重要な役割を果たします そして我が国では 多数の抗ヒスタミン薬が市販されており これらをどう使いこなすかということは 皮膚科診療において大変重要な課題といえます 我が国における抗ヒスタミン薬の種類と効果抗ヒスタミンには 古典的抗ヒスタミン薬とも呼ばれる第一世代の抗ヒスタミン薬と 抗アレルギー薬とも呼ばれる第二世代の抗ヒスタミン薬があり 最近は第二世代をさらに新しく中枢作用の低いものとそうでないもので区別しようという動きもあります 第二世代の抗ヒスタミン薬はおしなべて効果が高く 有用性も高いのですが 適応疾患および年齢 剤型に関して第一世代ものより制限があるものが多く またおそらくは費用の点でも第一世代の抗ヒスタミン薬が使われることは多いと思われます しかし 今日第二世代の抗ヒスタミン薬の適応年齢の幅と剤型はかなり拡大し 今後はさらに第一世代から第二世代への移行が進むものと予想されます

抗ヒスタミン薬の比較では 抗ヒスタミン薬は どれが優れているのでしょう? あるいはどの薬が良く効くのでしょうか? 我が国で市販されている主たる第二世代の抗ヒスタミン薬の臨床治験成績に基づき 慢性蕁麻疹に対する投与 2 週間後の効果を比較検討すると いずれの薬剤も高い効果を示し 中でもエピナスチンならびにそれ以降に登場した薬剤は いずれも 70-80% の有効率を示しています しかし不思議なことに 抗ヒスタミン薬の効果の比較では薬剤間で効果に差があるという報告と 無いという報告があり 中枢への副作用についても違いがあるという報告とないという報告があり 各薬薬メーカーは自分たちに有利なデータを取り上げて宣伝しています しかしそれらの論点は 概ね効果の大きさと中枢作用の少なさに集約できます そこで PubMed を使い 1949 年から 2010 年 2 月までの英語文献のシステマティックレビューを行ってみると 我が国で市販されている2つ以上の第二世代の抗ヒスタミン薬の有効性を直接比較検討した論文は 3 報のみで そのうち 2 報では薬剤間で効果に統計学的差異は見つかりませんでした ただし こと中枢機能への無影響性に関する限り フェキソフェナジンとロラタジンには比較的強いエビデンスが示されています なお 最終的な患者満足度は必ずしも効果の大きさと眠気スコアだけに規定されないので 実際の薬剤選択は好みも含めた患者背景を勘案して決定することが大切です では 抗ヒスタミン薬は 他にどのような視点で選んだら良いのでしょう? まず 蕁麻疹とアトピー性皮膚炎において そもそも抗ヒスタミンに何を期待するか ということを考えてみます アトピー性皮膚炎における抗ヒスタミン薬の位置づけ 蕁麻疹でもアトピー性皮膚炎でも 抗ヒスタミン薬は保険適応となっていますし 実 際広く用いられています でも 抗ヒスタミン薬に期待される効果は 蕁麻疹では極め

て大きいのに対し アトピー性皮膚炎ではそれほどでもありません また 蕁麻疹では抗ヒスタミン薬以外には極めて治療法が乏しいのに対し アトピー性皮膚炎にはステロイド外用薬という治療手段があり 他にタクロリムス軟膏や保湿剤も有効かつ大切な役割を果たしています また 2009 年に改訂された日本皮膚科学会のアトピー性皮膚炎の診療ガイドラインでは抗ヒスタミン薬は補助的療法としての位置づけになっていますが 抗ヒスタミン薬はなくても良いのかというとそういうことはありません アトピー性皮膚炎患者に対してフェキソフェナジンを 1 週間投与することでその痒みに対して程度は小さいながら統計学的に有意な軽減効果がもたらされており 1) また いったんステロイドとオロパタジンを用いて治療して症状を鎮静化した後 痒みが強くなったときだけオロパタジンを内服する対症的内服と 痒みはなくても常にオロパタジンを内服する予防的内服では 予防的内服が有意に痒みの再発を抑えられたというエビデンス 2) も報告されています つまり アトピー性皮膚炎に対する第二世代の抗ヒスタミン薬の作用は 自覚はされにくいが統計学的には有意な すなわち確実な効果があるということと 痒みの再発防止には 対症的な間欠投与よりも予防的な連続投与の方が良い と言うエビデンスが確認されています 蕁麻疹における抗ヒスタミン薬の位置づけ次に 蕁麻疹治療における抗ヒスタミン薬の役割を考えます 先ほど 慢性蕁麻疹に対する各種抗ヒスタミン薬の 2 週間後の効果は 70-80% と紹介しましたが 同じ薬剤でも 8 週間まで投与を続けると有効率は 90% を越えることが示されています ところがその同じ薬剤を 蕁麻疹の中でも機械性蕁麻疹に対して使われた場合には 4 週間で 60% 弱 8 週間後でも 75% 程度にまでしか達していません つまり 蕁麻疹の場合は病型により抗ヒスタミン薬の有効性に違いがあり 蕁麻疹治療ガイドラインにおける第 2 群 特定刺激ないし負荷により皮疹を誘発することができる蕁麻疹 に対して抗ヒスタミン薬の効果はあまり大き

くありません そのため 蕁麻疹の診療においては 治療を始める前にその患者さんの蕁麻疹のタイプを明らかにし 抗ヒスタミン薬による治療で期待される有効性について予め説明しておくことが大切です また 蕁麻疹では 一人の患者がしばしば異なる種類の蕁麻疹の病型を合併しており 特に自発型の蕁麻疹に誘発型の蕁麻疹を合併している場合はその各々について治療の見通しを予め説明しておくことで 患者満足度を高めることができます 抗ヒスタミン薬を選ぶ前に考えておくべきこと痒みを伴う皮膚疾患では この様に抗ヒスタミン薬が効きやすいものとそうでないもの また 疥癬のように 抗ヒスタミン薬の効果は得られにくいけれども正しい診断さえできればその後の対処は比較的簡単なものがあり 抗ヒスタミン薬を選択する場合はまず抗ヒスタミン薬に期待し得る実際的な効果と意義をよく考えておくことが大切です 痒みを生じる疾患を治療 予後の点で分けると 1 適切に診断すれば解決できるもの 2 診断はできても現代医療ではほとんど良い方法がないもの 3アトピー性皮膚炎や慢性蕁麻疹の様に 罹病は長期に及ぶが治療効果が期待できるもの そして4 他の重篤な疾患を除外する必要があるもの のように纏めることができると思います 抗ヒスタミン薬の対症的内服と予防的内服また 抗ヒスタミン薬の効果発現までの時間については 間欠的に軽度の症状が現れる症例や食物依存性運動誘発アナフィラキシーの様に 症状が出始めてから内服するものについては内服後 1 分でも速く効果が現れるものが良く その目的ではTmax すなわち内服後血中濃度が最大になるまでの時間が短いものほど有利といえます 一方 急性蕁麻疹の様に 毎日現れるが 1 回の症状は数時間以内に治まるものに対しては 効果発現までの時間は数時間以上経過してからでも良いので 日単位でできるだけ早いものが良い ということになります 抗ヒスタミン薬の増量と変更そして 通常量の抗ヒスタミン薬を数日以上内服しても効果不十分な場合は それまでにある程度効果を確認できている抗ヒスタミン薬を増量することで さらに大きな臨床効果を期待し得ます この点については 我が国で市販されている抗ヒスタミン薬ではセ

チリジン 3) およびエピナスチン 4) でエビデンスがありますが おそらく他の第 2 世代の抗ヒスタミン薬でも同様の効果があると期待されます また 1 種類の抗ヒスタミン薬で全く効果が得られなくても 他の種類の抗ヒスタミン薬では高い効果が得られることがあり 特に誘発可能なタイプの蕁麻疹では変更を試してみる価値があるでしょう 妊婦 授乳婦への投与最後に 妊婦 授乳婦への抗ヒスタミン薬の投与ですが 妊婦では基本的に妊娠初期は内服を中止します 具体的には 妊娠可能な女性では内服を続け 月経の中断により妊娠の可能性が示唆された場合には いったん内服を中止することで対処します 授乳婦では 妊婦に対する相対的安全性の高いクロルフェニラミン セチリジン ロラタジンなどが優先されますが その他の薬品については 国立成育医療センター 妊娠と薬情報センターのホームページ 5) をご参照下さい 参考文献 1.Kawashima M, et al. Br J Dermatol 148: 1212-1221, 2003 2. 川島眞ら. 臨床皮膚 60: 661-667, 2006. 3.Kameyoshi Y, et al. Br J Dermatol 57: 803-804, 2007 4. 古川福実他. 日皮アレルギー会誌 14:97-102, 2006 5.http://www.ncchd.go.jp/kusuri/index.html