AlGaN/GaN HFET 電流コラプスおよびサイドゲート効果に関する研究 徳島大学大学院先端技術科学教育部システム創生工学専攻電気電子創生工学コース大野 敖研究室木尾勇介 1
AlGaN/GaN HFET 研究背景 高絶縁破壊電界 高周波 高出力デバイス 基地局などで実用化 通信機器の発達 スマートフォン タブレットなど LTE LTE エンベロープトラッキング 低消費電力化 電源電圧を信号に応じて変更 1µs での電流コラプスが問題 2
AlGaN/GaN HFET の課題 : 電流コラプス 電流コラプス現象 高電圧印加後の電流値低下 原因 表面準位 フィールドプレート 保護膜 GaN 結晶中への負帯電 ホールトラップ説有力 明確にはなっていない 3
ホールトラップとは 放出割合 電子ホール e e n = p = C C nn 1 p p 1 n p 1 1 = = N N C V E exp exp E T V E kt E kt C T E C E MID E T E V 2.6eV ホールトラップ 3.4eV C n = σ nvthn C p = σ pvthp トラップが E MID とE V の間 p 1 >>n 1 ホール放出 >> 電子放出 電子 ホール τ(t=300k 2.6eV) 1 10 33 s 5.8 10 2 s ホールトラップホールの濃度に依存ホールを放出するから負に帯電 4
電流コラプス発生機構の検討 電流コラプス回復過程に関する研究 光照射測定 赤 (1.9eV): 変化なし 青 (2.6eV): 回復加速 2011 年度卒細川 伝導帯から 1.9~2.6eV にあるトラップが負帯電 温度依存性測定 温度依存性ほとんどなし 捕獲断面積 σ n =1.3 10-29 cm 2 活性化エネルギー E C -E T =-41.8meV [1] 細川, 木尾他 AlGaN/GaN HFET 電流コラプスの回復機構 2012 年 春季応物 E C E T 1.9~2.6eV E V GaN 3.4eV 5
電流コラプスの発生機構まとめ 電流コラプスに起因しているのは伝導帯から 1.9~2.6eV のトラップ ホールトラップ 回復は電子の放出ではない バンド間トンネルによるホールの供給 6
ホールトラップ基板とサイドゲート効果 電流コラプスに起因しているトラップがホールトラップ サイドゲート効果が観測できる サイドゲート効果測定 7
サイドゲート効果とは 半絶縁性基板上に作製された GaAs デジタル IC 離れた場所のn 電極の負バイアスでしきい値が上昇 ドレイン電流が減少 [2] Y. Ohno and N. Goto, J. Appl. Phys, MOSFETのバックゲート効果に類似 vol. 66, p.1217-1221 (1989) 8
サイドゲート効果バンド図 n i n E C E V トランジスタ側が負帯電するのでドレイン電流減少 9
サイドゲート効果測定用 AlGaN/GaN HFET u-al 0.25 GaN 25nm GaN(undoped) 8µm u-al 0.25 GaN 25nm GaN(undoped) 3µm Sapphire u-al 0.25 GaN 25nm GaN(undoped) 10µm Sapphire 厚 GaN エピ (Powdec) 薄 GaN エピ (Powdec) 4µm Sapphire 厚 GaN エピ (NTT-AT) 測定パターン SG S G D 8µm SG 10
サイドゲート効果のエピ膜厚依存性 厚 GaN エピ (8µm) P 社 薄 GaN エピ (3µm) P 社 +10V -30V [ 測定条件 ] V G =0V V D =0~7V V SG =+10~-30V GaN 層が厚いエピで V SG の印加により I D の減少が見られた 11
サイドゲート効果のエピ膜厚依存性 厚 GaN エピ (8µm) P 社 +10V 厚 GaN エピ (10µm) N 社 +10V -30V -30V [ 測定条件 ] V G =0V V D =0~7V V SG =+10~-30V 厚 GaN エピ (10µm) でも V SG の印加により I D の減少が見られた 12
リーク電流の大きさ @GaN 層 8µm I D V D =4V V D =0.1V I SG I D -V SG 特性における I D の変化量は 10-4 A~10-5 A I SG -V SG 特性における I SG の変化量は 10-7 A~10-12 A 13
基板厚とサイドゲート効果 ホールトラップの局所的負帯電が原因 コラプスはゲートドレイン間の狭い範囲で起きる サイドゲート効果は比較的長距離 エピ / 基板界面は電子トラップまたは大きな生成再結合 i-gan 層が薄いと界面準位で遮蔽される S G D コラプスの 負帯電 SG S G D サイドゲート効果の負帯電 SG ホールトラップ欠陥層サファイア基板 10µm 3µm 欠陥層 ホールトラップ サファイア基板 8µm 14
光照射と温度の影響測定 半導体パラメータアナライザ (4155C) を使用 VBA を用いてエクセルで制御 常に ON 状態 V G =0V V D =1V サイドゲート電圧 V SG を印加 V SG =-20V 2000s 負帯電過程 V SG =0V 2000s 回復過程 光照射測定 赤外 (1.3eV) 赤 (1.9eV) 青 (2.6eV) の 3 種の光 温度依存性測定 22 ( 室温 ) 30 40 50 15
過渡応答時の光照射の影響 V SG =-20V V SG =0V LED A 無し赤赤外赤外 LED B 無し青赤青 赤外照射 負帯電加速 青照射 電流増大 伝導帯から 2.0~2.6eV のトラップが負帯電 16
負帯電過程の温度依存性測定 V SG =-20V V SG =0V 温度変化により負帯電の時定数が変化 時定数導出 温度 22 30 40 50 時定数 135s 59s 20s 9s 17
負帯電過程の時定数 放出の時定数 τ 1 τ = e = p σ p = A 2 T v thp E exp 1 ( T ) p 1( T ) T E kt V lnτt 2 = ln A + E E kt T V 捕獲断面積 σ p 活性化エネルギー E T -E V 4.1 10-16 cm 2 0.757eV 18
回復過程の温度依存性 V SG =-20V V SG =0V 温度変化により回復の時定数が変化 時定数導出 温度 22 30 40 50 時定数 176s 63s 20s 11s 19
回復過程の時定数 1 τ = = e 放出の時定数 τ p σ p = A 2 T v thp E exp 1 ( T ) p 1 ( T ) T E kt V lnτt 2 = ln A + E E kt T V 捕獲断面積 σ p 活性化エネルギー E T -E V 3.4 10-16 cm 2 0.756eV 20
温度依存性から判ったトラップの特性 負帯電過程 捕獲断面積 σ p 活性化エネルギー E T -E V 4.1 10-16 cm 2 0.757eV 回復過程 時定数 捕獲断面積 活性化エネルギー ほぼ一致 時定数 ホール放出時定数 捕獲断面積 σ p 活性化エネルギー E T -E V 3.4 10-16 cm 2 0.756eV 負帯電 回復ともにホール放出が関係 負帯電しているトラップは伝導帯から2.64eV( ホールトラップ ) 21
回復過程がホールエミッション への疑問 回復するためにはトラップからの電子の放出が必要 伝導帯から2.64eVにあるトラップからの電子放出時定数 T=300Kで10 28 年という天文学的な時間 しかし 回復しておりその時定数はホール放出の時定数と一致 ホール放出で回復する理由を考える 22
半回復現象 V SG =-20V V SG =0V 完全回復 半回復 回復量は減少量の半分 半回復 現象 23
半回復現象を説明するバンド図 負帯電過程 1 バイアス印加前 2 V SG =-20V 印加 3 ホール放出 4 V SG =0V 5 負帯電再配置後 回復過程 電位の低下で 回復に起因 4 5 への過程でのホール放出による負帯電再配置の時定数が見えていた 24
半回復ではサイドゲート側も負帯電 負帯電過程 1 バイアス印加前 2 V SG +20V 印加 3 ホール放出 回復過程 4 V SG =0V 5 負帯電再配置後 半回復が存在するなら 4 5への過程でトランジスタ側の電位が高くなる 電流減少 25
正バイアス印加によるサイドゲート効果 V SG =+20V V SG =0V V SG =+20V 0V 電流減少確認 V SG =-20V V SG =0V 減少後の電流値 半回復の電流値とほぼ一致 4 5 へのバンド図の変化が考えられる 26
正バイアスサイドゲート効果の温度依存性 V SG =+20V V SG =0V 温度変化により時定数が変化 温度 22 30 40 50 時定数導出 時定数 157s 83s 32s 10s 27
半回復過程の時定数 捕獲断面積 σ p 活性化エネルギー E T -E V 3.8 10-16 cm 2 0.761eV 28
完全回復はあるのか? 2.64eV からの電子放出時定数 10 28 年 30000s の測定では完全回復に至らなかった 時定数より当然の結果 29
電流コラプス回復過程との比較 コラプス測定では 200sで完全回復 ストレス50V トンネルが起こりやすい サイドゲート測定では 完全回復未確認 ( 室温 暗室 ) ストレス20V トンネルが起こりにくい 完全回復には UV 光照射 完全回復 30
まとめ 負帯電 回復ともにホール放出が関係 負帯電しているのは伝導帯から 2.64eV にあるトラップ ホールトラップ 電流コラプス解析と同じ 回復には 半回復 という状態がある 31
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ホールトラップ 熱平衡状態 S G D E C 電子の捕獲 放出ホールの捕獲 放出の 4 パターン n=p=0 電子の放出 ホールの放出 ストレス印加定常状態 E V E C E V S G トラップ n=p=0 D V ストレス =+50V 34
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