商業科 ( 簿記 ) 学習指導案 広島県立芦品まなび学園高等学校教諭上田中康夫 1 学年 2 年次,3 年次,4 年次選択クラス 2 単元名第 16 章固定資産の取引 3 テーマ商業科簿記会計分野における実践力を育成する授業の工夫 4 単元について 単元観本単元は, 高等学校学習指導要領商業 第 10 簿記 内容 (2) エ固定資産に位置付く 学習指導要領解説商業編によれば, 本単元は 固定資産の意味と種類及びその取得, 売却に関する記帳について理解させる と記されている 固定資産の減価償却の記帳については, 決算整理で取り扱うが, 固定資産に関する一連の取引を理解させるために, 合わせて指導する 生徒観 2 年次 3 年次 4 年次の生徒は単位制であり, 科目選択をしている 簿記を選択した理由はさまざまであるが, 本当に興味 関心があって履修している生徒は少ない 卒業後, 簿記の資格を生かして進学 就職を考えている生徒ではないが, 授業に取り組む姿勢は真面目で, 意欲的に取り組む 履修している生徒のうち 3 名は,9 月に行われた広島県高等学校ビジネスコンテスト簿記 Ⅱ 部, 普通科 総合学科部門に参加し, 好成績を修めた 大会での結果で簿記に自信を持ち, 学習する意欲も高まっている また, その姿が他の生徒にも好影響を与えている 聴講生は簿記に関心を持ち, 実務に役立てようという思いで受講している 理解度に差があるが, 生徒と聴講生がお互いに助け合いながら学習を進める様子も見られ, 雰囲気の良いクラスである 指導観本校は普通科であり, 履修する商業科目も少なく, 商業に関する学習を専門的に深めることは難しい したがって学習内容が, 技術の習得に重点をおいた指導にならないように, 思考を深め判断する学習活動を取り入れていく この単元においては, 固定資産の取得と売却に関して取り上げる 固定資産に関する取引を学習していく中で, 生徒の思考を深め判断させるためには, 後の単元で学習する固定資産の減価償却を含めて指導する必要があると考える 固定資産の一連の取引として取得及び減価, 売却を理解させ, 固定資産の帳簿価額がどのように変化していくのかを生徒が主体的に考えることができるように指導したい また, 少人数なので, 生徒の実態を把握しながら, 簿記に対する苦手意識を持たせないよう, ポイントとなる箇所では丁寧な指導をしていく また, 簿記を学習していく中で生徒が学習内容を整理できる教材を用い, 意欲的に取り組んでいけるようにする 5 単元の目標固定資産に関する種類と意味を理解させるとともに, 帳簿における固定資産の価額がどのように変化していくのかを理解させ, 記帳に関する知識と技術を身に付ける 6 単元の評価規準関心 意欲 態度 思考 判断 技能 表現 知識 理解 固定資産の取得及び減価, 売却に関する取引に関心を持ち, 取引の記帳に自らすすんで取り組もうとする 固定資産の取得及び減価, 売却に関する取引を簿記特有のルールから考察し, 適切に判断し仕訳しようとする 固定資産の記帳に関する基礎的 基本的な技術を身に付け, 各種帳簿に合理的, 能率的に記録 計算 整理する 固定資産の記帳に関する基礎的 基本的な知識を身に付けるとともに, 固定資産の種類と意味及び固定資産台帳の役割を 理解する
7 指導と評価の計画 ( 全 2 時間 ) 評価次学習内容 ( 時数 ) 関考技知評価規準評価方法 1 固定資産の取引 (1 時間 ) 本時 2 固定資産に関する仕訳 固定資産台帳 (1 時間 ) 固定資産の取得及び減価, 売却に関する取引を, 簿記特有のルールから考察する 固定資産の種類と意味を理解する 固定資産の記帳に関する基礎的 基本的な技術を身に付け, 合理的 能率的に記録 計算 整理する 固定資産の記帳について, 進んで取り組もうとしている ワークシート発表定期考査ワークシート観察発表定期考査 9 本時の展展 (1) 本時の目標 1 固定資産の種類と意味を理解する 2 企業の帳簿では, 固定資産がどのように変化するのかを理解する (2) 観点別評価規準 1 固定資産の種類と意味を理解している ( 知識 理解 ) 2 固定資産の取得及び減価, 売却に関する取引を, 簿記特有のルールから考察している ( 思考 判断 ) (3) 準備物教科書 新簿記 実教出版ワークシート 1 固定資産の取引 ホワイトボード (40 cm 30cm ) ホワイトボード用マーカー (4) 学習の展開学習活動 指導上の留意事項 評価規準 評価方法 本時の学習のねらい を知る 導入 10 分 経営していくために必要なものについて考える 必要と思ったものを発表する 勘定科目にする 流動資産と固定資産の分類について考える 流動資産と固定資産の違いについて考える 意見を発表する 固定資産の種類と意味を理解する 本時は固定資産について学習することを説明する ワークシートを配布する ワークシートには記入せず, どのようなものが必要なのかを考えさせる 一人ずつ発表させ, 生徒から出た意見を板書する 生徒から出た意見をワークシートに記入するよう指示する 生徒の意見がどの勘定科目になるのかを説明し, 板書する 授業をしていく上で必要となる勘定科目を提示する 板書した勘定科目を流動資産と固定資産に分類する 流動資産と固定資産に分類されない勘定科目についても説明を加える 流動資産と固定資産について, どのような違いで分類されているのかを考えさせる 他人の意見がどうなのかを考えながら聞くように指示する 流動資産と固定資産を分類する基準を説明し, 固定資産の意味を理解させる 固定資産の種類と意味を理解している ( 知識 理解 ) ワークシート
展開 考えてみよう 1 について考える グループで意見交換し, グループとしての答えを決める グループごとに発表する 固定資産の取引について考える 固定資産の取得について考える 固定資産の減価について考える 固定資産の売却について考える 建物の帳簿価額, 売却価額を予想させる 自分の意見を基に他の生徒と相談し, グループとしての意見をまとめさせる ホワイトボードに金額を記入させ, その理由を説明させる 固定資産に関する 3 種類 ( 取得及び減価, 売却 ) の会計事実について考えていくことを説明する 固定資産として帳簿に記録する金額は, 購入時にかかったすべての金額となることを理解させる 付随費用について説明する 1 年以上にわたって使用することをおさえる 帳簿価額がどのような考え方で費用になるのかを説明する 耐用年数, 残存価額についての語句はこれから頻出するので, 理解できるよう丁寧に説明する 毎期の償却額が定額であることをおさえる 固定資産を売却した時に, 利益が算出されるのか, 損失が算出されるのかについて理解させる 30 分 考えてみよう 2 について計算する 一連の流れを確認して正しく計算するよう指示する まとめ 10 分 考えてみよう 1 について再計算をする 本時の学習内容を確認する ワークシートを提出する 次時の学習内容を知る 計算の条件として, 耐用年数 50 年, 残存価額は取得原価の10% と設定する 10 年後の帳簿価額がいくらになるのかを計算させる 自分たちの売却価額だと, 利益が算出されたのか, 損失が算出されたのかを考えさせる 流動資産と固定資産の違いについて再確認する 固定資産を取得したときの帳簿価額について再確認する 固定資産がどのように減価していくのかについて再確認する 固定資産を売却は利益が算出される場合と損失が算出される場合があることを再確認する ワークシートを回収する 本時の学習内容に関する仕訳, 固定資産を管理するために重要な帳簿となる固定資産台帳について学習することを予告する 固定資産の取得及び減価, 売却に関する取引を, 簿記特有のルールから考察している ( 思考 判断 ) 発言ワークシート
第 16 章固定資産の取引生徒番号 : 氏名 : 1 固定資産の取引 あなたは商品売買業の経営者です 経営をしていくためには, どんなものが必要ですか? 流動資産の勘定科目 固定資産の勘定科目 流動資産と固定資産を分類する基準 ( ) ( ) 考えてみよう 1 店舗用の建物を購入しました 建物の代金 5,000,000 改装費 550,000 仲介手数料 250,000 登記料 200,000 を支払いました A建物として記帳する金額はいくらになるでしょうか A B この建物を 10 年間使用して売却しました あなたは, いくらであれば売却しますか? B 固定資産の取引 1. 取得 2. 減価 3. 売却 減価の考え方 ( 備品 300,000 耐用年数 6 年残存価額は取得原価の 10%) 減価償却高 帳簿価額 残存価額取得時 1 年後 2 年後 3 年後 4 年後 5 年後 6 年後 耐用年数 考えてみよう 2 営業用の自動車 ( 車両価額 2,500,000 諸経費 500,000) について,3 年間使用した後 1,200,000 で売却しました それぞれの価額を計算してみよう ただし, 減価償却の計算は, 耐用年数 6 年, 残存価額は取得原価の 10% とする 購入時の帳簿価額 3 年間の減価償却高の合計 3 年後に売却すると の ( 利益 損失 )
第 16 章固定資産の取引生徒番号 : 氏名 : 1 固定資産の取引 あなたは商品売買業の経営者です 経営をしていくためには, どんなものが必要ですか? お金 現金 預金 当座預金 商品 商品 建物 建物 予想 パソコン プリンタ 備品 机 椅子 備品 車 バイク 車両運搬具 土地 土地 解答 従業員 給料 広告 広告料 印鑑 消耗品 筆記用具 消耗品 その他として, 電気代 水道代 ガス代 水道光熱費電話代 通信費家賃 支払家賃などが考えられる 流動資産の勘定科目 固定資産の勘定科目 現金 当座預金 商品 消耗品 備品 建物 車両運搬具 土地 流動資産と固定資産を分類する基準 ( 営業循環基準 ) 日々の営業活動に直接関係する資産を流動資産とする ( 1 年基準 ) 1 年以上使用する目的で所有する資産を固定資産とする 考えてみよう 1 店舗用の建物を購入しました 建物の代金 5,000,000 改装費 550,000 仲介手数料 250,000 登記料 200,000 を支払いました A建物として記帳する金額はいくらになるでしょうか A B この建物を 10 年間使用して売却しました あなたは, いくらであれば売却しますか? B 考えてみよう2が終わった後に提示耐用年数は50 年残存価額は取得原価の10% とすると, 10 年後の建物の帳簿価額はいくらになるか 4,920,000 固定資産の取引 1. 取得 登記料や仲介手数料などの付随費用を含める 2. 減価 使用することで価値が減少することを減価償却という 使用可能期間のことを耐用年数という 耐用年数が過ぎたときの価値を残存価額という 3. 売却 減価の考え方 ( 備品 300,000 耐用年数 6 年残存価額は取得原価の 10%) 45,000 減価償却高 45,000 帳簿価額 45,000 45,000 255,000 300,000 210,000 45,000 165,000 120,000 45,000 75,000 30,000 残存価額取得時 1 年後 2 年後 3 年後 4 年後 5 年後 6 年後 耐用年数 帳簿価額より高く売却できるときと, 低い価格でしか売却できないときがある 考えてみよう 2 営業用の自動車 ( 車両価額 2,500,000 諸経費 500,000) について,3 年間使用した後 1,200,000 で売却しました それぞれの価額を計算してみよう ただし, 減価償却の計算は, 耐用年数 6 年, 残存価額は取得原価の 10% とする 購入時の帳簿価額 3 年間の減価償却高の合計 3 年後に売却すると 3,000,000 1,350,000 450,000 の ( 利益 損失 )