認知症高齢者グループホーム等火災対策に係る主な論点

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消防用設備・機械器具等に係る最近の検討状況等

資料 1-6 認知症高齢者グループホーム等に係る消防法令等の概要 1 消防法令の概要 主な消防用設備等の設置基準消防用設備等の種別消火器屋内消火栓設備スプリンクラー設備自動火災報知設備消防機関へ通報する設備誘導灯 設置基準規模 構造にかかわらずすべて延べ面積 700 m2以上延べ面積 275 m2以

資料 2-3 障害者施設等の火災対策のあり方 ( 案 ) 1 認知症高齢者グループホーム火災を踏まえた課題 ⑴ 消防機関への通報について長崎市認知症高齢者グループホーム火災 ( 以下 本件火災 という ) では 自動火災報知設備の鳴動後に 火災通報装置の操作が行えず 施設からの通報がなされなかった

第 3 章 1. の既往調査研究 1で紹介した 小規模多機能サービスに関する調査報告書 にも指摘されていたように 小規模多機能サービス事業所の整備にあたっては 建築基準法 消防法上の取り扱いの点で検討の余地を残している これに関して 2006 年 1 月に長崎県大村市の認知症高齢者グループホームで発

障害者施設等火災対策(報告書案)

本部会の検討目的資料 1 認知症高齢者グループホームや特別養護老人ホーム等の高齢者社会福祉施設と障害児 障害者施設や救護施設 乳児院等の障害者施設等は 消防法令上 同等の火災危険性があるとされている同一の用途区分 ( 消防法施行令別表第一 ⑹ 項ロ ) に位置づけられている 認知症高齢者グループホー

178 第 3 章消防用設備等の設置単位 さいたま市消防用設備等に関する審査基準 2016 小規模特定用途複合防火対象物 ( 政令別表第 1⒃ 項イに掲げる防火対象物のうち 特定用途に供される部分の床面積の合計が当該部分が存する防火対象物の延べ面積の10 分の1 以下であり かつ 300m2未満であ

消防法施行規則等の一部を改正する省令等の公布について ( 参考資料 ) 別紙 1 1 改正理由 (1) 背景住宅宿泊事業法 ( 平成 9 年法律第 65 号 ) が平成 30 年 6 月 15 日に施行され 住宅宿泊事業に係る事前の届出が同年 3 月 15 日に開始された ( 住宅宿泊事業法の施行期

障害者施設等火災対策(報告書案(修正版))

2 スプリンクラー設備の設置基準の見直し 消防法施行令第 12 条第 1 項関係 スプリンクラー設備を設置しなければならない防火対象物又はその部分に 次に掲げるもの 火災発生時の延焼を抑 制する機能を備える構造として総務省令で定める構造を有するものを除く で延べ面積が 275 m2未満のものが追加さ

平成 26 年 3 月 28 日 消防庁 障害者施設等火災対策報告書 の公表消防庁では 平成 25 年 2 月 8 日 ( 金 ) に長崎県長崎市において死者 5 名が発生した認知症高齢者グループホーム火災を踏まえ 予防行政のあり方に関する検討会 の下に 障害者施設等火災対策検討部会 を開催し 障害

障害者施設等火災対策報告書

さいたま市消防用設備等に関する審査基準 2016 第 4 渡り廊下で接続されている場合の取り扱い 155 第 4 渡り廊下で接続されている場合の 取り扱い

平成25年中には、放火自殺者を除き火災による死者は1,278人

2 病院次のいずれにも該当する病院のうち 相当程度の患者の見守り体制を有するもの ( 火災発生時の消火活動を適切に実施することができる体制を有するものとして総務省令で定めるもの ) 以外のもの ( ア ) 特定診療科名を有するもの ( イ ) 一般病床又は療養病床を有する病院 火災発生時の延焼を抑制

東京都建築安全条例の見直しの考え方

ホテル火災対策検討部会報告書 ( 概要 ) < 検討の目的及び体制 > 平成 24 年 5 月 13 日 ( 日 ) 広島県福山市において死者 7 名 負傷者 3 名が発生したホテル火災を踏まえ ホテル 旅館等の火災被害拡大防止対策及び火災予防行政の実効性向上等に関する検討を実施 予防行政のあり方に

事務連絡 平成 27 年 3 月 31 日 各都道府県消防防災主管課 東京消防庁 各指定都市消防本部 御中 消防庁予防課 認知症高齢者グループホーム等の火災対策の充実のための介護保険部 局 消防部局及び建築部局による情報共有 連携体制の構築に関するガイドラインに係る執務資料の送付 認知症高齢者グルー

別添 ( 用語の定義 ) 消防法( 昭和 23 年法律第 186 号 ) 法 消防法施行令( 昭和 36 年政令第 37 号 ) 令 消防法施行規則( 昭和 36 年自治省令第 6 号 ) 規則 特定小規模施設における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令 ( 平成 20

ことを想定しているが これは既に違反対象物の公表制度を実施している消防本部の運用実態等を参考に 当該制度の実施に伴う事務負担やその効果等について検討を行った結果 特に都市部における建物の利用者数等による火災危険性が高いことを考慮したものである なお その他の消防本部においても政令指定都市の消防本部の

スプリンクラー設備の設置を要しない有床診療所 病院の考え方 ( 案 ) 資料 入院の常態化の有無 免除される対象 常態的に患者が入院していないと判断 一日平均入院患者数が 1 人未満 常態的に患者が入院していない施設 (1) 入院患者数が一日平均 1 人未満となる 1~ 床の施設 ()

5 議事概要 : 委員発言 : 事務局発言 参考資料 2-3の H14-23 施設種別ごと SP 有無別火災件数 の注意書きで 放火又は放火の疑いを除いている理由は何か 放火又は放火の疑いについては 出火原因自体が人為的なものであるため 火災対策を考える上では除外して考えるのが一般的である 参考資料

目次 ( )

2 消防法令違反等の是正の徹底消防法令違反等の防火安全上の不備事項が認められた施設等について 特に違反が多く認められた防火管理面の対策の徹底等 重点的な是正指導を推進する 3 避難対策の充実等夜間を想定し 施設等の構造 入所者の人数 管理体制等の具体的状況に即した避難訓練の実施により 適切な避難誘導

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民泊の安全措置の手引き ~ 住宅宿泊事業法における民泊の適正な事業実施のために ~ 平成 29 年 12 月 26 日 ( 平成 30 年 3 月 29 日改訂 ) 国土交通省住宅局建築指導課

資料 2-3 超大規模防火対象物等における自衛消防活動に係る訓練の充実強化方策 ( 案 ) 平成 30 年 10 月 31 日 事務局

参考資料 三郷市火災予防条例の一部を改正する条例案の素案 平成 26 年 9 月 三郷市消防本部 大規模な屋外催しにおける防火管理体制の構築について 1 改正の背景 1 京都府福知山市花火大会火災平成 25 年 8 月 15 日 京都府福知山市で行われた花火大会において 死者 3 名 負傷者 56

PowerPoint プレゼンテーション

教授 ) において 本件火災の発生状況や 今後の消防のあり方について検討が行われた 検討会での検討結果を踏まえてとりまとめられた報告書では 火災予防対策として 以下のように提言がなされた 延べ面積 150 m2未満の飲食店にあっては 一部の地方公共団体の火災予防条例により消火器の設置が義務付けられて

隣地境界線126 第 3 章消防用設備等の設置単位 さいたま市消防用設備等に関する審査基準 消防用設備等の設置単位消防用設備等の設置単位は 建築物 ( 屋根及び柱又は壁を有するものをいう 以下同じ ) である防火対象物については 特段の規定 ( 政令第 8 条 第 9 条 第 9 条の

東京都建築安全条例(昭和二十五年東京都条例第八十九号)新旧対照表(抄)

3-5添付資料⑤Q&A集

資料 5-1 防耐火に係る基準 資料の素案 第 1 章総則 ( 設計基準 ) 1.2 用語の定義 主要構造部 : 建築基準法第 2 条第 5 号による 耐火構造 : 建築基準法第 2 条第 7 号による 準耐火構造 : 建築基準法第 2 条第 7 の 2 号による 防火構造 不燃材料 : 建築基準法

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動車車庫については 隣地境界線又は同一敷地内の他の建築物との距離は2m 以上とし 各階の外周部に準不燃材料で造られた防火壁 ( 高さ1.5m 以上 ) を設けること (3m 以上の距離を確保した場合を除く ) に改める 号通知 記 2 自動火災報知設備の設置について の一部改正記 2 中

Microsoft Word - ★事務連絡 (2)

<817989FC92F994C5817A E786C7378>

十分に御留意いただき, 管理規約の改正について御検討ください 民泊に関する御相談 問合せ先 マンションに関すること 京 ( みやこ ) 安心すまいセンター電話 FAX 住宅宿泊事業法に関すること 保健福祉局医療衛生推進室医務衛生課電話

第 3 倉庫に係る防火安全対策 1 目的この基準は 近年 倉庫が大規模化し また 作業所的要素が出てくるなど特殊化する傾向が見られることから 倉庫に係る出火防止 延焼拡大防止 避難の安全確保等に係る具体的基準を定めたものである 2 指導対象この基準に基づき指導する防火対象物の範囲は次に掲げるものとす

必要なのは住宅という位置づけであり 住宅火災に対する備えではないかグループホームでは 障害のある人たちの 地域の中で暮らし続けたい という思いを実現するために 長い間 実践が積み重ねられてきました その結果 グループホームは 特別な施設 ではなく 普通の住まい として地域の中に存在し また入居者は

すぐ連絡! すぐ実施! 杉並消防署からのお知らせ 自衛消防訓練を実施しましょう 自衛消防訓練は 火災が発生した場合に消防隊が現場に到着するまで 自衛消防 活動により 迅速 的確に人命の保護と災害の拡大防止の措置をとれるようにする ことを目的としています 訓練の種別 自主的に訓練することが必要です!

ごと又は施行規則第 1 3 条第 1 項第 2 号に規定する小規模特定用途複合防火対象物における特定の用途部分ごとに設置義務が生じるときも同様とする ( 報告及び公表の決定 ) 第 4 条査察員は 立入検査において 公表の対象となる違反を認めた場合は 立入検査結果通知書により署長に報告するものとする

保育所の設備及び運営に関する基準 保育室等 屋外 遊戯場 設備 ( 必置 ) 面積設備 ( 必置 ) 面積 調理室 便所 0 1 歳児 乳児室及びほふく室 医務室 2 歳以上児 保育室又は遊戯室 乳児室 ほふく室 3.3m2 / 人 保育室 遊戯室 1.98m2 / 人屋外遊戯場 近隣の都市公園を代

各都道府県消防防災主管部長 東京消防庁 各指定都市消防長 殿 消防予第 2 6 号 平成 30 年 2 月 1 日 消防庁予防課長 消防法施行令別表第一 (5) 項ロ ( 下宿等 ) の防火対策に係る注意喚起等について 1 月 31 日に北海道札幌市で発生した消防法施行令 ( 昭和 36 年政令第

Microsoft PowerPoint - 5(防火_萩原)140307講演発表PPT萩原rev3

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屋内消火栓設備の基準 ( 第 4.2.(3). オ ) を準用すること (2) 高架水槽を用いる加圧送水装置は 屋内消火栓設備の基準 ( 第 4.2.(4). ア イ及びウ ) を準用するほか (1). ア イ及びウの例によること (3) 圧力水槽を用いる加圧送水装置は 屋内消火栓設備の基準 ( 第

( 例 ) 病床数が 60 の場合 職員の総数が5 人以上であり かつ 当該職員のうち宿直勤務者を除いた職員数が2 人以上である体制をいう イ規則第 5 条第 3 項第 1 号に規定する 職員の数 とは 一日の中で 最も職員が少ない時間帯に勤務している職員 ( 宿直勤務者を含む ) の総数を基準とす

平成23年度事例集04

194 第 3 章消防用設備等の設置単位 さいたま市消防用設備等に関する審査基準 共通事項 省令第 12 条の 2 並びに第 13 条第 1 項第 1 号及び第 2 項に規定するスプリンクラー設備を設置するこ とを要しない構造の取り扱いは 次によること ⑴ 省令第 12 条の2で定める

消防予第  号

番号 特定共同住宅等の種類と必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等 二方向避難型特定共同住宅等である (1) 初期拡大抑制性能 ( その 2) 図面番 ア地階を除く階数が 5 以下のもの 消火器具屋外消火栓設備動力消防ポンプ設備 又は住戸用及び共同住宅用非常警報設備 イ地階を除く階数

基準2 消防用設備等の設置単位の取扱いに関する基準

(5) 第 1 号から前号までの規定により住宅用防災警報器が設置される階以外の階のう ち 次に掲げるいずれかの住宅の部分 ア床面積が 7 平方メートル以上である居室が 5 以上存する階の廊下 イアに規定する階に廊下が存しない場合にあっては 当該階から直下階に通ずる 階段の上端 ウアに規定する階に廊下

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平成21年6月1日施行

鉄道建築ニュース用原稿 「シャッター」 070928   (社)日本シヤッター・ドア協会

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番号

ウ火元責任者は 自主検査の結果 異常が認められたときは 防火管理者及び防火管理責任者 ( 工事責任者 ) に報告し 指示を受けて対処する (2) 放火対策ア建物の外周部及び階段等には 可燃性の工事用資材又は梱包材等は置かないようにする やむを得ず置く場合は整理整頓し防炎シート等で覆い保管する イ工事

平 成 27年 4 月消 防 法 改 正 275 未満の小規模福祉施設にも 設備の設置が義務化 従来のの問題点を解消! ミニの優れたポイント は火災を早期に感知し 瞬時に自動で消火を行うことで 初期火災に大きな威力を発揮しま す は従来のと比べ 設置施設に負担の少ない自動消火 設備です 消防法施行令

記 1 埼玉県三芳町倉庫火災の教訓について ⑴ 火災発生に際して 発見者は自ら初期消火を試みたものの 結果として 自動火災報知設備の鳴動から約 7 分が経過するまで 119 番通報が行われなかったこと ⑵ 屋外消火栓設備を用いた初期消火の際 ポンプの起動操作が行われておらず 初期消火に必要な放水量が

としてまとめました 準備実験では 試験体の内外に 518 カ所の温度センサー ( 熱電対 ) と 41 カ所の熱流センサー ( 熱流束計 ) を設置して計測を行ったほか ビデオカメラを試験体内に 13 台 試験体外に 9 台設置して火災の様子を観察しました 2.2 準備実験より得られたこと木造 3

目次に記述する項目を以下に示す なお目次にはページ番号を記載すること 1. 建築物の概要 1.1 建築物概要 1.2 付近案内図 1.3 建築計画概要 1.4 設備計画概要 2. 防災計画基本方針 2.1 防災計画上の特徴 2.2 敷地と道路 2.3 避難階の位置 2.4 防火区画 防煙区画 2.5

1 届出の趣旨工事中に建築物を使用する場合は, 建築基準法に基づいて当該建築物に設置されている避難施設等の機能に支障を来たすことがよくあります もとより建築基準法は, 建築物の最低限の安全性能を定めたものですから, 避難施設等の機能に支障が生じているときに出火したりすれば, 大災害につながるおそれが

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学校施設管理について

資料2 保育所における屋外階段設置要件について

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目次 1 検討部会の目的 委員構成 開催スケジュール... 1 (1) 検討部会の目的... 1 (2) 検討体制... 1 (3) 検討部会の開催状況 長崎県長崎市の認知症高齢者グループホーム火災の概要... 2 (1) 火災の概要... 2 (2) 火災に対する国 地方公共団体の対

<4D F736F F D AEB8CAF95A893C18DD BC814089BB8A C982A882AF82E98E968CCC96688E7E93992E646F6378>

はじめに 消防法の規定では 一定規模の建物の管理権原者は 防火管理者を定め 消防計画を作成し 防火管理上必要な業務の実施を定めています その中でも 消防計画に基づく訓練の実施は最も重要な事項です 特に特定防火対象物 ( 集会場 スーパー ホテル 病院等の不特定多数の人が出入りする施設 ) には 年

Microsoft Word - RM最前線 (修正版).doc

第2 令別表第1の取扱い

議のうえ統括防火管理者として選任し 防火管理上必要な業務の内容について説明をしたうえで 全体についての防火管理業務を行わせなければならない 3 前項の規定により 統括防火管理者を選任したときは 防火管理対象物における管理権原者の主要な者として を代表者として指定し 代表者名をもって届出を行うものとす

消防法令が改正され 防火防災管理体制が強化されます! ~ 消防法第 8 条の 2 統括防火防災管理者制度 ~ 近年 雑居ビル等で多くの死傷者を伴う火災が相次いで発生していることや東日本大震災での激しい揺れにより 高層ビル等において人的 物的被害が発生したことを受け 防火 防災体制を強化するために消防

鉄道建築ニュース用原稿 「シャッター」 070928   (社)日本シヤッター・ドア協会

Microsoft PowerPoint - 02.防火の概念と法令

平成  年  月  日

ホテル 旅館等における夜間の自衛消防訓練マニュアル 別添 1 目的このマニュアルは, ホテル 旅館等において夜間火災が発生した場合に, 宿泊者の安全確保を図るために, 自衛消防組織等が対応すべき事項を示し, 防火管理体制の充実を図ることを目的とする 2 対象このマニュアルの対象は, 新たな防火基準適

2013年9月2日14時頃、埼玉県さいたま市、越谷市、北葛飾郡松伏町、千葉県野田市、および茨城県坂東市において竜巻が発生し、57名が負傷、1,155棟の建物が被害を受けた(消防庁調べ: 9月4日15:00現在)

消 防 計 画

基準19 ハロゲン化物消火設備の設置及び維持に関する基準

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エコテックその他火災 ( 産業廃棄物 ) 概要 平成 29 年 6 月 14 日 ( 水 )17 時 00 分飯塚地区消防本部 下線部は 前回からの変更点 1 出火場所嘉麻市大隈 ( 有 ) エコテック代表者氏名代表取締役社長高山和仁 2 出火日時覚知平成 29 年 5 月 28 日 (

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1 目的 建築基準法第 68 条の 5 の 5 第 1 項及び第 2 項に基づく認定に関する基準 ( 月島地区 ) 平成 26 年 6 月 9 日 26 中都建第 115 号 建築基準法 ( 昭和 25 年法律第 201 号 以下 法 という ) 第 68 条の 5 の 5 第 1 項 及び第 2

ポリカーボネート板に関する建築物の屋根への適用状況

簡易宿所指導基準 都市計画局建築指導部 消防局予防部 健康局健康推進部 当基準は 建築基準法 消防法及び旅館業法を適用するにあたり 建築基準法別表第 1( い ) 欄 (2) 項に掲げる用途 ( ホテル及び旅館に限る ) に供する建築物で かつ 旅館業法第 2 条第 4 項に該当する 簡易宿所営業

ともに 警報を発するものをいう 第三放水型ヘッド等の構造及び性能規則第十三条の四第二項に規定する放水型ヘッド等の構造及び性能は 次に定めるところによる 一放水型ヘッド等の構造は 次によること ( 一 ) 耐久性を有すること ( 二 ) 保守点検及び付属部品の取替えが容易に行えること ( 三 ) 腐食

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( 第二面 ) 建築設備の状況等 1. 建築物の概要 イ. 階 数 地上 階 地下 階 ロ. 建築面積 m2 ハ. 延べ面積 m2 ニ. 検査対象建築設備 換気設備 排煙設備 非常用の照明装置 給水設備及び排水設備 2. 確認済証交付年月日等 イ. 確認済証交付年月日 昭和 平成 年 月 日 第 号

Transcription:

長崎市認知症高齢者グループホーム火災の概要 資料 4 建物名称 : グループホームベルハウス東山手用途 : 複合用途 ( グループホーム 事務所 共同住宅 ( 消防法施行令別表第 1(16) 項イ )) 建築年月日 : 昭和 40 年 11 月 18 日 ( 建物登記上 ) 構造 階層 : 鉄骨造一部木造 地上 4 階建て延べ面積 :581.85m2 ( うち グループホーム部分 (1,2 階 ) の面積は259.64m2 ) 建築面積 :164.55m2収容人員 :17 名 ( そのうち グループホーム部分は13 名 ) 火災発生日時 : 平成 25 年 2 月 8 日 ( 金 ) 調査中 覚知時刻 : 19:43 鎮圧時刻 : 21:09 鎮火時刻 : 21:49 焼損程度 : 部分焼 ( 焼損床面積 51.5m2 ) 人的被害 : 死者 5 名 負傷者 7 名 施設外観 1

在館者の状況 4 階平面図 南側 木造部分 ( 住居 ) 自力脱出 北側 凡例 死者 生存者 建物所有者 3 階平面図 20:30 救助 7 号室 ( 物置 ) 6 号室 ( 物置 ) 5 号室 ( 物置 ) 3 号室 ( 住居 ) 9 2 号室 ( 住居 ) 1 号室 ( 事務室 ) 7 は病院搬送時には重症であったが その後 (3 月 4 日 ) 死亡 2 階平面図 20:20 救助 自力脱出 19:48 救出 19:47 救出 13 号室 8 12 号室 10 11 号室 10 号室 2 9 号室 8 号室 1 屋内階段と廊下を区画する非自閉式の扉 外部へ 1 階平面図 外部へ 6 20:06 救助 リビング施設職員 20:02 救助 7 20:00 救助 4 居室居室 自力脱出 5 19:54 救助 UB 3 居室居室 20:01 救助 外部へ 4 階が住宅のため設置した非自閉式の扉 2

グループホームの防火対策の状況 消防用設備等の設置状況及び防火管理の実施状況 グループホーム等の設置基準 ベルハウス東山手における設置義務の有無 ベルハウス東山手における対応状況 消火器具全てあり設置 ( 火災時に使用された形跡なし ) 自動火災報知設備 全てあり設置 ( 火災時に鳴動したことを消防隊が確認 ) 火災通報装置全てあり設置 ( 火災時に使用された形跡なし ) スプリンクラー設備 275 m2以上なし設置なし 誘導灯全てあり 消防用設備点検報告 防火管理 全て ( 半年に 1 回実施 1 年ごとに報告 ) 利用者及び職員の合計が 10 人以上 あり あり 設置 ( 一部誘導灯のバッテリー切れ ) 平成 24 年 9 月 30 日に立入検査時に指摘 実施 平成 24 年 8 月 20 日提出済み 防火管理者選任 届出済み消防計画届出済み避難訓練 平成 19 年 12 月 3 日に実施以降 実施した旨の報告はなし 3

社会福祉施設へのスプリンクラー設備の設置基準 1 社会福祉施設のうち 自力避難が困難なものが主として入居する施設 延べ面積が 275 m2以上で設置義務 ( 参考 ) 設置基準の改正経緯 昭和 62 年 10 月政令改正 ( 昭和 63 年 4 月施行 ) 延べ面積 6000 m2以上 1000 m2以上 ( 東京都松寿園火災を契機 ( 昭和 62 年 6 月 6 日死者 17 名 2,014 m2 )) 平成 19 年 6 月政令改正 ( 平成 21 年 4 月施行 ) 延べ面積 1000 m2以上 275 m2以上 ( 長崎県大村市グループホーム火災を契機 ( 平成 18 年 1 月 8 日死者 7 名 279 m2 )) 2 社会福祉施設のうち 1 以外の施設 平屋建て以外の防火対象物で延べ面積が 6,000 m2以上で設置義務 4

認知症高齢者グループホーム等火災対策検討部会 平成 25 年 2 月 8 日に発生した長崎県長崎市の認知症高齢者グループホーム火災を踏まえ 認知症高齢者等が入所する施設における火災対策のあり方について検討するため 消防庁が主催する 予防行政のあり方に関する検討会 の下に 認知症高齢者グループホーム等火災対策検討部会 を開催する 1 主な検討項目 (1) 認知症高齢者グループホーム ベルハウス東山手 火災の概要と課題の整理 (2) 認知症高齢者グループホーム等における防火対策のあり方 2 検討委員 ( 敬称略 五十音順 ) 室﨑益輝 ひょうご震災記念 21 世紀研究機構副理事長 ( 座長 ) 荒井伸幸 東京消防庁予防部長 石崎和志 国土交通省住宅局建築指導課建築物防災対策室長 上田孝志 札幌市消防局予防部長 榎 一郎 千葉市消防局予防部長 勝又浜子 厚生労働省老健局高齢者支援課認知症 虐待防止対策推進室長 河村真紀子 主婦連合会事務局次長 佐々木勝則 公益社団法人日本認知症グループホーム協会常務理事 佐々木美香子札幌市保健福祉局高齢保健福祉部介護保険課事業指導担当課長 次郎丸誠男 危険物保安技術協会特別顧問 ( 元消防研究所所長 ) 野村歡 元国際医療福祉大学大学院教授 伯川秀人 長崎市消防局予防課長 山田常圭 消防庁消防研究センター上席研究官 3 スケジュール 3 月 11 日に第 1 回 5 月 24 日に第 2 回 6 月 27 日に第 3 回を開催 8 月を目途にとりまとめ 5

認知症高齢者グループホーム等 火災対策に係る主な論点 長崎市の火災における課題 (1) 自動火災報知設備の鳴動後の火災通報装置の操作がされておらず 施設からの通報ができていなかった (2) 従業員に対する消防訓練が十分実施されていなかった (3) 出火階以外での被害拡大要因の一つとして 防火区画が建築基準に不適合であったことが関連した可能性がある また こうした状況について関係行政機関間での情報共有が不十分であった ソフト面 ( 防火管理や近隣応援体制など ) の対策と ハード面 ( 建築構造や感知 通報 消火設備など ) の対策を総合的に実施することが必要 6

ソフト面での対策 (1) 全ての従業員が火災時に適切に対応できる従業員教育の推進 従業員への教育の時期等をあらかじめ計画として明文化させることについて 福祉部局 消防部局が連携して指導する (2) 効果的な訓練の実施 漫然と訓練を行うだけでは効果は期待できないため 建物構造や入居者の特性 避難経路等の実情を考慮し 施設ごとの工夫が必要 避難訓練マニュアルや他の施設での先進事例などを参考に 消防本部等が個別施設の訓練計画に対して具体的なアドバイスを行うことや 保健福祉部局を通じた各施設へのマニュアルや先進事例などの周知を図ることが重要 ハード面での対策 (1) 自動火災報知設備と火災通報装置の連動の原則義務化に向けた検討 (2) 防火関係規定に不適合の施設への関係行政機関の改善指導の徹底 (3) スプリンクラー設備の設置基準の見直し その他必要な対策 (1) 関係行政機関の情報共有 連携体制の構築 (2) 利用者への情報提供 7

スプリンクラー設備の設置基準の見直しに係る基本的考え方 認知症高齢者グループホームについては 原則として全ての施設にスプリンクラー設備を設置することを義務づけるべき ただし 例外として 施設の構造が スプリンクラー設備を用いずにも火災時に介助者による対応によって避難が有効に行われると想定されるものである場合は スプリンクラー設備を設置不要としてもよいのではないか 8

スプリンクラー設備の目的 効果 スプリンクラー 感知器 避難誘導 地区音響装置 自動火災報知設備の鳴動で避難誘導を開始 避難誘導 避難誘導 火災進展 スプリンクラー設備の作動 放水の開始 延焼抑制 火災が拡大し スプリンクラーヘッドが熱を受け一定の高温に達し放水される 他の部分への延焼を抑制し 避難を可能とする 一局所のみの火災で抑制する 自力避難困難者の避難に要する時間が確保されるよう 延焼抑制効果を得ることが必要 原則としてスプリンクラー設備設置を義務化 9

例外 1 火災が発生しても火炎が拡大しにくく 煙も生じにくいように措置されたもの 例外 2 例外 1 と同等の安全性を有するもの スプリンクラー設備の設置が免除される構造について ( 注 ) 認知症高齢者グループホーム等の高齢者社会福祉施設についての検討案であり 障害者施設等の関係者からも意見を伺いながら引き続き検討する (1) 延べ面積が 275 m2未満のもの ((2) に該当するものを除く ) ア : 延焼抑制構造の区画 (1) を有するイ : 壁 天井の不燃性が高い (2) ものとなっていること 延べ面積が 275 m2以上 1,000 m2未満のものと同様の要件 ア : 延焼抑制構造の区画 (1) を有するイ : 避難が容易な構造 (3) を有するものとなっていること 具体的な構造 (2) 1 戸建で延べ面積が 100 m2以下の 1 フロアのもので かつ居室が 3 以下のもの 壁 天井の不燃性が高い (2) ものとなっていること 避難が容易な構造 (3) を有するものとなっていること 1 延焼抑制構造の区画準耐火構造の床 壁で区画され 開口部の面積が一定以下で 当該開口部に自閉式等の防火戸が設けられており 区画された部分の床面積が100m2以下で 居室が3 以下のもの 2 壁 天井の不燃性が高い壁 天井のうち 地上に通ずる主たる廊下その他の通路にあっては準不燃材料であり その他の部分にあっては難燃材料であること 3 避難が容易な構造避難階のみに要介助者が入居している施設であって 早期感知や屋外から直接に避難誘導できる経路の確実な確保が図られており かつ 火災の影響が少ない時間内に介助者が入居者を屋外に避難させられることが個別に検証されたもの 10

( 参考 ) スプリンクラー設備の設置免除要件の考え方 スプリンクラー設備の設置と同等の延焼拡大抑制効果が得られるよう 火災が発生しても火炎が拡大しにくく 煙も生じにくいように措置されたものについてはスプリンクラー設備の設置を免除 例外 1 275 m2以上 1000 m2未満の施設で既に免除されている 準耐火構造の防火区画を形成すること ( 図線 ) 防火区画は 100 m2以下で 4 以上の居室を含まないこと 内装 ( 避難経路は準不燃材料 その他の部分 ( 居室を含 ) は難燃材料 ) 扉は防火設備で自動的に閉鎖すること 廊下 居室居室居室居室 共用室 ( 要件でいう居室にあたる ) 当該防火対象物が 100 m2未満 1 階層かつ 3 室以内である施設については 防火区画の構造を要さず 内装制限 のみが必要 100 m2以下かつ 3 室以下の施設の考え方 廊下 居室居室居室 11

前出の 内装制限 は 壁 天井が燃焼し火炎が伝搬することによる延焼の抑制に効果があるとともに 出火室 出火部分の内装が燃焼することによる煙の発生を一定時間抑えることで避難時間を確保するもの 平屋で各居室から直接屋外に出られるような施設において 避難を終えるまでの時間が十分に短いことが検証されたものは 内装制限なしでも安全な避難が可能 例外 2 内装の不燃化を要さない構造の考え方 煙感知器 介助者が屋外から容易に進入できるよう措置された開口部 屋外への避難経路 廊下 居室居室居室 1 感知器の種別を煙感知器に限定する ( 熱感知器よりも火災を早く感知し作動する ) 2 居室が屋外に直接面する 3 介助者が屋外から居室に容易に進入できる 4 廊下を経由して避難する場合でも2 方向の避難経路が確保されている 5 どの避難経路からも火災による影響を受ける前に入居者を屋外に避難誘導できることが検証されている 12