よくある消化器疾患と 画像診断 救急医療と診療放射線技師 名古屋掖済会病院救命救急センター中島成隆
救急医療と 診療放射線技師 ちょっとだけ消化器疾患 名古屋掖済会病院救命救急センター中島成隆
本日の目標 日頃 放射線技師から救急医 研修医に対するやり場のない不満 ( 怒り ) オーダーされる検査への疑問を少しでも解消出来る 救急診療の場で診療放射線技師に求める姿を救急医の立場から提案する
救急外来に携わる人々 救急外来 検査技師 救急隊 看護助手 看護師 救命士 事務 医師 放射線技師
救急外来ってどんなところ? 日勤を終えて 疲れ切った卒後 1 年目もしくは 2 年目の医師が 殆どが軽症者ではあるが 自分の手にした受付表がもしかしたら重症者じゃないかと おびえながら ベテランの看護師や上級医に気を遣いながら walk in の診察の合間に救急車の対応をするところ
研修医の気持ち がんばって がんばって診察しても 次から次へと患者さんはやってくる 受付やトリアージ Ns からは 先生 さんの診察はまだ? 付き添いがすっごく怒ってるんだけど 分かってるよ 俺だって早く診たいよ そもそも熱だけで夜中に受診するなよな ったく (-.-#) とは口に出せず ストレスをため込み 救急科志望の研修医が他科志望に変わる (T_T)
放射線技師の気持ち やたら めったら CT 撮るなよな検査多すぎじゃない さっき ポータブル行ったばっかで写真も出来てないのに CT ってまじ かんべん CT 撮った後で KUB って 必要なの? 夜中なのに MRCP って明日じゃだめなの
検査が多くなる理由 未熟だから検査に頼る ( 訴訟 上級医 ) 忙しいから除外診断に走ってしまう放射線部門への距離が近い放射線技師が優しいあまり被爆のことを考えない
一般的な診療 主訴 病歴聴取 身体所見 A B C D E F G H I J K A C F I J 検査 診断 診断名 C 治療
救急外来での診療 例えば 胸痛 が主訴の患者さんに対してはまず除外へと走らせる まずは危険な胸痛の除外からだ 心筋梗塞はなさそう解離もないな 肺塞栓は 心電図 レントゲン 採血 エコーそれと 検査の絨毯爆撃 除外のための CT
掖済会病院の初療室
掖済会病院の初療室 アクセスが良いと検査の閾値が下がる よくわからんけど とりあえず CT だな
掖済会病院の当直体制 医師 :7 名看護師 :3 4 名救命士 :0 2 名放射線技師 :3 名 検査技師 :1 名 (24 時まで ) 受付事務 :2 名警備員 :1 名 手厚い体制 優しい人柄
初療室の放射線部門 単純 X-p CT 透視 技師の対応が良いと検査の閾値が下がる
検査の閾値が下がると 検査がしやすく見落としが減る一方で無駄な検査が増える 被ばくの管理って 誰がするの? 無駄な検査 ( 被ばく ) を減らすにはチェックと指導が常に必要だが いったい誰が? 上級医? それとも 放射線技師
放射線技師として 1 1 画像検査に関する専門的知識 画像検査に関して最も知識を持つ専門家として 撮影法について相談を受ける または指導する 日常から情報の詰まった画像を提供するための研鑽を怠らない 普段から医師との良好な関係を築いておく 医者も言わない 技師も聞かない 不利益は患者さんに降りかかる
勉強会懇親会 (1 次会 ) 懇親会 (2 次会 )
放射線技師として 2 2 診療の流れを知る 救急診療のガイドラインを知り その診療の中での画像検査の位置づけを理解する 例えば外傷診療 病院前 外傷初期診療
外傷診療 複数の医師 看護師やコメディカルが一度に診療業務に当たるため 適切な診療が円滑に進められるようチーム医療の重要性を強調 画像診断の中心的役割を果たす CT 検査について 診療上の位置づけと読影の原則を明確にした 全身 CT 撮影 (Trauma Pan-scan) に言及し とくに頭部 CT 検査を優先した 切迫する D で全身 CT 検査を容認 頸椎損傷での画像診断では単純 X 線撮影より CT 検査の有用性を推奨 Secondary survey での治療方針決定に有用な情報の多い事から 画像検査 の章を設けた
Trauma Pan-scan
Trauma Pan-scan 第一段階緊急処置を必要とする損傷を把握 FACT: Focused Assessment with CT for Trauma 第二段階 治療方針決定に必要な所見を評価 第三段階 見逃し確認 FACT は 3 分で評価
FACT で探す 1 頭部 CT 緊急減圧開頭術の必要性 2 大動脈 ( 肺動脈レベル ) 3 肺底部 Window を変更 ( 肺野条件 ) 4 骨盤腔 : 一気に下に! Window を戻す 5 骨盤 脊椎 : 下から上に! Window を変更 ( 骨条件 ) 6 臓器損傷 : 上から下に! Window を戻す 大動脈損傷 縦隔血腫大動脈損傷の好発部! 広範な肺挫傷 血気胸 心嚢血腫 腹腔内出血 臥位だと血気胸は肺底部で見やすい! 大量腹腔内出血はダグラス窩まで貯まる! 骨盤骨折 後腹膜出血高位後腹膜出血は PS で見つけにくい! 実質臓器損傷 ( 肝臓 脾臓 腎臓 膵臓 ) 腸間膜血腫 腸間膜血腫は FAST ではわかりにくい!
放射線技師の役割 3 急変時の蘇生チームメンバーになれる 急変時の対応 ( 目の前で患者さんが倒れたら ) その時にあなた一人だけだったら 是非 心肺蘇生の基本を学びましょう積極的にシミュレーションコースの受講を
シミュレーション教育 ISLS Immediate Stroke Life Support 神経救急蘇生 PSLS Prehospital Stroke Life Support 脳卒中病院前救護 PCEC Prhospital Coma Evaluation and Care 意識障害病院前救護 INARS Immediate Nursing Assessment Recognition Stabilization 心停止回避コース MCLS Mass Casualty Life Support 多数傷病者への対応標準化トレーニングコース
放射線技師としての骨格 診療放射線技師としての本質部分 1 画像検査に対する専門的知識を持ち 2 診療の流れ ( ガイドライン等 ) を理解し ( 検査の必要性と注目点が判断でき ) 3 急変時のチーム蘇生メンバーになれる 救急診療チームメンバーとしての部分もしかしたら医療従事者としての部分 優先度高 低 救急部門に携わる人には救急撮影認定技師
新たなシミュレーションコース? 放射線技師が病院内検査等で容体悪化に遭遇した場合の対応コース ( 医師が到着するまでにすべきこと やれること ) アプローチ方法は第一印象 評価 認識 行動 ( 処置 ) 再評価 再認識 再行動 再々評価 だれか企画してくれませんか?
そのオーダー 納得できねぇ 夜間の緊急 MRCP って 急性胆管炎の CT 診断は胆管拡張や胆道気腫などがその存在を疑う所見とされるが, これらは必ずしも確定的所見とはいえず, また結石の描出能も良好とはいえない ( レベル 3b) 急性胆管炎の成因診断における MRI,MRCP( 推奨度 B) MRCP は特に US で成因として結石が特定できなかった場合に, 成因の検索に適しているが小結石の診断には限界がある 急性胆管炎を疑うが エコーや CT で結石などの同定が出来ない 治療方針が立たない
MRCP の特徴 造影剤を使用せず 侵襲が殆ど無い 術者の熟練に無関係 体位の制約を受けずに多方向からの観察も可能 高信号を示す胆管と低信号の結石が高コントラストを呈する 閉塞部位よりも上流の胆管まで描出できる 小結石の診断には限界がある Sensitivity Specificity Laokpessi 93.0% 100% Lomanto 91.6% 100% Zidi 33.3% 100%
急性胆管炎 診断
急性胆管炎 重症度分類
急性胆管炎 治療
急性胆嚢炎 診断
急性胆嚢炎 重症度分類
急性胆嚢炎 治療 感染源のコントロールのためのドレナージが大切!
やっぱ 納得いかねえ 腹部の造影 CT お願いします 病棟に上がる前に KUB いいっすか? 膵炎だね イレウスもありそう CT で診断ついてるんじゃないの?(-_-#) KUB って本当にいるの? 何をみてるの
急性膵炎 診断 1. 上腹部に急性腹痛発作と圧痛がある 2. 血中または尿中に膵酵素の上昇がある 3. 超音波,CT または MRI で膵に急性膵炎に伴う 異常所見がある 上記 3 項目中 2 項目以上を満たし, 他の膵疾患および急性腹症を除外したものを急性膵炎と診断する ただし, 慢性膵炎の急性増悪は急性膵炎に含める 注 : 膵酵素は膵特異性の高いもの ( 膵アミラーゼ, リパーゼなど ) を測定することが望ましい ( 急性膵炎の診断基準厚生労働省難治性膵疾患に関する調査研究班 2008 年より )
急性膵炎 重症度分類 重症度判定基準 (2008) では,9 つの予後因子からなる判定基準がある それに加え, 造影 CT による造影 CT Grade がある この重症度判定基準によると,9 つの予後因子のみで重症度を判定できる特徴がある さらに, 造影 CT による造影 CT Grade と組み合わせて重症とされるものでは, より致命率が高いことが判明している : 推奨度 A
急性膵炎 予後因子 予後因子 ( 予後因子は各 1 点とする ) 1 Base Excess 3mEq/L, またはショック ( 収縮期血圧 80mmHg) 2 PaO 2 60mmHg(room air), または呼吸不全 ( 人工呼吸管理が必要 ) 3 BUN 40mg/dL(or Cr 2mg/dL), または乏尿 ( 輸液後も 1 日尿量が 400mL 以下 ) 4 LDH 基準値上限の 2 倍 5 血小板数 10 万 /mm³ 6 総 Ca 7.5mg/dL 7 CRP 15mg/dL 8 SIRS 診断基準 * における陽性項目数 3 9 年齢 70 歳 SIRS 診断基準項目 :(1) 体温 >38 または <36,(2) 脈拍 >90 回 / 分,(3) 呼吸数 >20 回 / 分または PaCO 2 <32 torr,(4) 白血球数 >12,000/mm³ か <4,000mm³ または 10% 幼若球出現
急性膵炎 造影 CT grade 1 炎症の膵外進展度 ( 図 V-1 参照 ) 前腎傍腔 0 点結腸間膜根部 1 点腎下極以遠 2 点 2 膵の造影不良域 ( 図 V-2 参照 ) 膵を便宜的に 3 つの区域 ( 膵頭部, 膵体部, 膵尾部 ) に分け判定する 各区域に限局している場合, または膵の周辺のみの場合 0 点 2 つの区域にかかる場合 1 点 2 つの区域全体を占める, またはそれ以上の場合 2 点 1 + 2 合計スコア 1 点以下 Grade 1 2 点 Grade 2 3 点以上 Grade 2
急性膵炎 造影 CT grade 膵外進展度 : 3 つに分類して判定 : 前腎傍腔, 結腸間膜根部, 腎下極以遠膵造影不良域 : 便宜的に,3 つの区域 ( 膵頭部, 膵体部, 膵尾部 ) に分けて判定する : 膵周囲のみあるいは各領域に限局,2 つの区域にかかる,2 つの区域全体あるいはそれ以上
急性膵炎 画像検査 急性膵炎が疑われる場合には, 胸腹部単純 X 線撮影は必要である : 推奨度 A イレウス像 大腸の拡張の急な途絶 (colon cut-off sign) 左上腹部の局所的な小腸拡張像 (sentinel loop sign) 十二指腸ループの拡張 ガス貯留像 後腹膜ガス像, 石灰化胆石, 膵石像など 腹部単純 X 線は急性膵炎患者の臨床経過の評価や, 消化管穿孔などの他疾患との鑑別診断のためには必須の検査であり, 急性膵炎が疑われる場合にはルーチンに撮影すべきである 膵炎の原因となる胆道結石や出血性膵壊死の診断に MRI は CT より有用である : 推奨度 B ちなみに超音波 CT は推奨度
小児の骨折疑い 健側撮影 って要りますか?
どうして小児では健側も撮るの? 小児の骨の特徴 若木骨折 隆起骨折 急性塑性変形を起こしやすい 軟骨部分が多いと損傷が分かりにくい 小児における骨折の特徴 成人に比べ 修復が早い 自家矯正能力 (remodeling) がある 過成長を生じる事がある 骨端線の損傷で成長障害を生じやすい
骨端線 ( 成長板 ) 損傷 Salter-Harris 分類 分かりにくい 小児の骨折疑い特に関節の評価では健側の撮影も必要
大動脈解離の診断 造影だけ で良いの?
大動脈解離の分類 ( 形態 )
大動脈解離の分類 ( 血流 ) 1 偽腔開存型 偽腔に血流がある 2 血栓閉塞型 偽腔に血流がない
血栓閉塞型の特徴 1 石灰化した内膜の偏位を認めることが多い ( 約 80%) 2 血栓化した偽腔が三日月型の高吸収域 (high-attenuating crescent sign ) として認められることが多い ( 約 60%)
いずれも造影 CT では見逃される可能性がある 解離を疑ったら単純 造影 ( 動脈相 平衡相 ) が必要!!
造影の際の一工夫 1 ルート確保は右腕 生食のフラッシュも 上大静脈や左鎖骨下静脈 肋間静脈への造影剤の停留がアーチファクトとなってしまう 2 撮影範囲は頸部 大腿まで 頸動脈や大腿動脈への解離を評価する 人工心肺を回す際に送血は大腿動脈が多い
まだ出来てないんだけど 処置室 1 番で胸部のポータブルお願いします あのー 腹部の造影 CT お願いできますか? まだ写真 出来てないんだけど (-_-#) CT と一緒じゃ ダメだったの?
ショックの初期対応 救急隊からの第一報 62 歳男性 腹痛後の意識障害 ショックバイタル内因性のロード & ゴーです 救急隊到着 上級医が叫ぶ 呼びかけに反応悪い 呼吸は浅くて速い 橈骨弱くて速い 冷汗湿潤あり BCD の異常 ベッドに移して さらに大声で叫ぶ モニターつけて 酸素リザーバーで 10L ルートとって採血も ポータブルで胸部レントゲン 心電図
ショックの初期対応 臥位安静 ( 患者がもっとも楽な姿勢 ) バイタルチェック ( 意識 血圧 心拍数 呼吸数 体温 ) OMI を迅速に O 酸素 ( とりあえずリザーバー 10~15L) M モニター I IVルート ( とりあえず細胞外液 ) 胸部 X 線 ( ポータブル ) ECG
ショック患者へのアプローチ ベッドサイドで出来るショックへの対応 さるも聴診器 さ酸素投与るルート確保もモニター聴超音波診心電図器胸部 X 線 ポータブル胸部レントゲンはショック 呼吸不全などではとても重要な検査です 一律にオーダーしてしまうことも
まとめ 医療を行っていく上で 画像検査の重要性は高い 特に救急医療においては 一般診療よりもまして重要な検査である 質の高い画像情報の提供は患者さんの利益となる無駄な画像検査は患者さんの不利益となる 不利益を減らし利益を高くする努力を 診療放射線技師と医師の双方がしなければならない 円滑なコミニュケーションのもと 患者さんの笑顔のため 一緒に頑張っていきましょう
ご静聴ありがとうございました 名古屋掖済会病院救急科スタッフ