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ータについては Table 3 に示した 両製剤とも投与後血漿中ロスバスタチン濃度が上昇し 試験製剤で 4.7±.7 時間 標準製剤で 4.6±1. 時間に Tmaxに達した また Cmaxは試験製剤で 6.3±3.13 標準製剤で 6.8±2.49 であった AUCt は試験製剤で 62.24±2

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381 抄録 キーワード

382 緒言 材料および方法 1. 調査方法

383 2. 統計解析 結果 1. 患者年齢 Fig. 1 2. 歯種別垂直歯根破折歯数

384 Table 1 Fig. 2 3. 歯根破折歯の臨床症状およびエックス線所見 Table 2 Table 3

2015 年 10 月 垂直歯根破折の早期診断と予防 385 較すると 金属支台を含まないレジン セメント支台歯 が有意に増加することが示された 一方 鋳造支台 既 製金属 ファイバーポストでは有意差が認められなかっ た 5 ポストコアの長さ 垂直歯根破折歯をポストコアの長さで分類すると ポ スト長が歯根長の 0 歯冠部のみのメタルコアで 148 本 32.2 が最も多く 次いでポストコア長 1/4 で 133 本 29.0 ポストコア長 1/2 で 73 本 15.9 ポス トコア長 3/4 で 22 本 4.8 であった ポストコア長 が長くなるに従って垂直歯根破折歯は減少した また ポストコアがないレジンおよびセメント支台歯も 83 本 18.1 の比率で垂直歯根破折が認められた Fig. 11 対照群 健康根管充塡歯をポストコア長で分類した 結果は ポストコア長 0 が 54 本 10.8 ポストコア 長 1/4 は 137 本 27.3 ポストコア長 1/2 は 163 本 32.4 ポスコア長 3/4 は 105 本 20.9 ポストが ないレジンおよびセメント支台歯は 42 本 8.3 であっ Fig. 3 Normal radiography finding with fracture line fracture tooth た Fig. 11 健康根管充塡歯では ポストコア長 1/2 お よび 3/4 の長いポストを有する症例が全体の 53.3 を示 した ポストコア長と歯根破折発症歯数はχ2検定において Fig. 3 B Periapical radiolucency 20.4 Fig. 4 有意差が認められ 残差分析結果において歯根破折歯と C Perilateral radiolucency 5.3 Fig. 5 D Halo 健康歯間ではポストコア長 0 が有意に増加し ポストコ radiolucency 16.2 Fig. 6 E Periodontal radiolu- ア長 1/2 3/4 では有意に減少することが示された cency 27.5 Fig. 7 F Vertical bone loss 1.7 Fig. 考 8 G Bifurcation radiolucency 4.8 Fig. 9 歯根破 折歯のエックス線所見で高頻度に認められたのは E 察 Periodontal radiolucency で 次いで A Normal B 歯内療法と歯根破折の関連性は 髄腔開拡時 根管形 Periapical radiolucency D Halo radiolucency の順 成時の切削応力に関与していることが示唆され 特に根 で 明確な破折線を有するエックス線所見はきわめて少 管形成中に使用するファイル操作が問題とされてい なかった いずれのエックス線所見も 歯周病変や根尖 る24 病変との鑑別が困難であるが 定期検診を行っている患 内の長期貼薬剤投与や根管充塡時の過剰垂直充塡圧とと 者では経時的変化によって歯根破折の特徴的所見が明確 もに垂直性歯根破折の要因と考えられている11 であった に 根管充塡歯の支台歯築造は歯根破折の誘因と考えら 根管形成時に発生する歯根象牙質亀裂は 根管 26 さら 13 4 支台築造の材質 れ 根管充塡後の予後経過不良症例や直接抜髄後の咬合 垂直歯根破折歯の支台築造材質は鋳造支台歯 ポスト 痛持続症例が報告されている15,16 いずれの症例も歯根 コアが 333 本 72.5 既製金属ポストが 36 本 破折の診断が困難であり 臨床症状の原因が不明確で長 7.8 ファイバーポスト 7 本 1.5 レジン セメ 期間の歯内療法を繰り返した結果 抜歯に移行すること ント 金属支台なしのみが 83 本 18.1 であった が多いため 歯根破折の早期診断はきわめて重要である Fig. 10 と考えられている 対照群 健康根管充塡歯の支台築造材質は 鋳造支 本研究における垂直歯根破折の診断は 主訴として咬 台歯 ポスト コアが 405 本 80.7 既製金属ポス 合時違和感のある歯を対象とした 患歯に対して他覚的 トが 54 本 10.8 ファイバーポスト 2 本 0.03 診断時に打診反応検査を行った結果 すべての歯根破折 レジン セメント 金属支台なしのみが 41 本 8.2 歯に共通して陽性所見が認められた さらに 4 mm 以 であった Fig. 10 上の歯周ポケットが破折歯全体の 66.1 に認められた 支台築造材質における歯根破折発症歯数を健康歯と比 いずれの臨床所見も根尖性および辺縁性歯周炎診断時と

日 386 Fig. 4 本 歯 科 保 存 学 雑 誌 Periapical radiolucency with fracture line 第 58 巻 第5号 Halo radiolucency がおのおの 5.3 16.2 の比率で認め られた これらの所見は歯根破折との相関性がきわめて 高く 早期診断に必要不可欠な診査結果であるが 破折 歯全体の 20 にしか認められなかった エックス線所見 に異常所見が認められない Normal にも 24.1 に歯根破 折が認められたことから エックス線所見のみによる早 Fig. 5 Isolated perilateral radiolucency with fracture line 期診断の困難性が示された さらに 感染根管治療が必 要とされる Periapical radiolucency 所見が 20.4 歯周 病変と考えられる Periodontal radiolucency 所見と Vertical bone loss 所見がおのおの 27.5 1.7 認められたこと から エックス線所見において歯根破折と根尖性および 辺縁性歯周炎の鑑別診断が必要である しかしながら 定期検診を行っている患者では 根管充塡歯の規格エッ クス線写真所見から根尖および歯周病変のわずかな経時 的変化と打診反応による臨床所見が相関しているため 歯根破折の発症を強く疑うことが可能である また 歯根破折発症は年齢との相関性が報告されてお り 年齢階級別に垂直歯根破折総数を調査した結果 40 歳代から垂直性歯根破折が発症し 50 歳代で最大値を示 した後 60 歳代 70 歳代と加齢に従って減少した 一 方 健康根管充塡歯の年齢分布は 40 歳代が最大値で加齢 とともに減少傾向が認められ 健康根管充塡歯と歯根破 折歯の最大値との間には 10 年の時間的経過が示された 歯根破折歯数を年齢別に健康歯と比較した結果では 60 歳代 70 歳代では有意に破折歯数が増加することが示 された すなわち 加齢に従って残存歯数が減少してい る要因に歯根破折が影響していることが示唆された これらの傾向は 8020 財団の調査結果1において歯根 破折は 40 歳代から発症し 50 79 歳までが高頻度に発 症 50 歳代 12.8 60 歳代 28.7 70 歳代 20.2 し 80 歳代では減少傾向にあったという報告と同様の結果 Fig. 6 Halo radiolucency with fracture line であった 40 歳以降は抜歯数の増加とともに 歯内療法 後に歯冠補綴やブリッジが増加する年齢であることか ら 歯根破折の発症が増加傾向にあると推察される の共通所見であることから 鑑別診断の必要性がある 歯種別に歯根破折の発症を調査した本研究結果から 垂直歯根破折歯のエックス線所見では Tamse 分類 によ 下顎大臼歯が最も垂直歯根破折を生じやすいことが示さ る破折歯の特徴的所見として Perilateral radiolucency と れた 対照群の健康根管充塡歯の歯種分布は上顎前歯が 8

2015 年 10 月 垂直歯根破折の早期診断と予防 Fig. 7 387 Periodontal radiolucency with fracture line Fig. 8 Vertical bone loss with fracture line Fig. 9 Bifurcation radiolucency with fracture line 最も多く次に上下顎小臼歯が多かったことを考慮する と 下顎大臼歯の歯根破折は有意に高い発症率であるこ The ratio of tooth number % 100 80 70 60 50 40 30 10 0 臼歯であり う 罹患率の高い歯種が必ずしも歯根破折 Resin & Cast Post Ready-made Fiber Post Cement core Post Fig. 10 垂直破折歯も少なかったと推察された 垂直破折の発症 が有意に高かったのは下顎大臼歯 上顎小臼歯 上顎大 20 とが理解できる 最も歯根破折が少なかった下顎前歯は DMFT 歯率が低く 歯内療法処置歯が少なく結果的に Fracture tooth Normal tooth 90 The distribution of post and cores materials in vertical root fracture teeth p 0.01. を発症しやすいとは限らず 歯内療法後の強い咬合力負 荷が原因になっているため根管充塡後の支台築造が歯根 されてきたが 歯根破折の発症や支台歯生存率に対する 破折に影響する因子であると推察された 評価に関しては一致した結論が得られていない さら 近年 歯根破折を予防する支台築造法やフェルールの 存在と歯根破折の相関関係に関する研究が多数報告 15 20 に 歯根破折は歯冠部からの歯根亀裂に起因するだけで なく 根管形成中のファイル操作によって根尖から生じ

388 Fig. 11 結論

389 文献

390 Abstract Key words