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質の高い病理診断のために 病理技術 診断基準の標準化を 目指した精度評価を実現します

32 子宮頸癌 子宮体癌 卵巣癌での進行期分類の相違点 進行期分類の相違点 結果 考察 1 子宮頚癌ではリンパ節転移の有無を病期判定に用いない 子宮頚癌では0 期とⅠa 期では上皮内に癌がとどまっているため リンパ節転移は一般に起こらないが それ以上進行するとリンパ節転移が出現する しかし 治療方法

皮的肺生検 ) で遺伝子変異が特定できる可能性がある場合に 血液検査後に 気管支鏡検査 ( または経皮的肺生検 ) を受けたい と回答したのは 130 名 (87.8%) でした 確定診断の検査時にて辛い思いをされた 92 名の方においても 82 名 (89.2%) が再度その辛い思いをした検査を受

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1. 研究の名称 : 芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍の分子病理学的研究 2. 研究組織 : 研究責任者 : 埼玉医科大学総合医療センター病理部 准教授 百瀬修二 研究実施者 : 埼玉医科大学総合医療センター病理部 教授 田丸淳一 埼玉医科大学総合医療センター血液内科 助教 田中佑加 基盤施設研究責任者

2

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解禁日時 :2019 年 2 月 4 日 ( 月 ) 午後 7 時 ( 日本時間 ) プレス通知資料 ( 研究成果 ) 報道関係各位 2019 年 2 月 1 日 国立大学法人東京医科歯科大学 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 IL13Rα2 が血管新生を介して悪性黒色腫 ( メラノーマ ) を

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大腸癌術前化学療法後切除標本を用いた免疫チェックポイント分子及び癌関連遺伝子異常のプロファイリングの研究 

43048腎盂・尿管・膀胱癌取扱い規約第1版 追加資料

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最初に事後指導項目規定をお示し致します これらは 陰性スメアに対して行っております まず 取り扱い項目は要医療 要治療の 2 項目あります 要医療扱いの細胞所見は 一つ目に 炎症を伴う強度細胞異型の見られるもの 二つ目として 萎縮像に炎症を伴った強度細胞異型の認められるもの 三つ目として 核異型の伴

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原発不明がん はじめに がんが最初に発生した場所を 原発部位 その病巣を 原発巣 と呼びます また 原発巣のがん細胞が リンパの流れや血液の流れを介して別の場所に生着した結果つくられる病巣を 転移巣 と呼びます 通常は がんがどこから発生しているのかがはっきりしている場合が多いので その原発部位によ

第58回日本臨床細胞学会総会 スキルアップ講座 呼吸器(腺系以外)

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らに本検査により 術中に腹膜再発リスク患者の高感度判定が可能となったため 現在 2017 年 4 月より 大阪市立大学医学部附属病院において 胃癌手術中の判定に基づいて術中に腹膜再発予防的治療を行う臨 床試験を開始しています 図 1. 胃癌の腹膜転移経路と手術中診断法 胃粘膜上皮で発生した癌細胞が胃

東邦大学学術リポジトリ タイトル別タイトル作成者 ( 著者 ) 公開者 Epstein Barr virus infection and var 1 in synovial tissues of rheumatoid 関節リウマチ滑膜組織における Epstein Barr ウイルス感染症と Epst

して広く用いられてきました この Clark 分類に異を唱えたのが Bernard Ackerman であります Ackerman は 1980 年に発表した malignant melanoma: a unifying concept と題する論文において Clark らの病型分類は無意味であると

平成14年度研究報告

0214 モダンメディア 61 巻 7 号 2015[ 新しい検査法 ] 新しい検査法 HER2 ALK EGFR CCR4 に対する免疫組織学的検討と分子標的療法 い伊 とうとも藤智 Tomoo ITOH お雄 現在 分子標的療法の急速な発達により 病理診断部門の役割はさらに大きなものとなっている

調査 統計 歯科治療における細胞診の有用性 - 東京歯科大学千葉病院臨床検査部における細胞診の統計 - 1),2) 村上聡 * 松坂賢一 1),3) 監物真 3) 塚本葉月 1) 田村美智 1) 秦暢宏 川原由里香 1) 草野義久 1) 劉潁鳳 1) 杜岩 1) 辛承一 1) 井上孝 1) 東京歯科

DNA/RNA調製法 実験ガイド

6 月 25 日胸腺腫 胸腺がん患者の情報交換会 & 勉強会質疑 応答 奥村教授にお聞きしたいこと 奥村教授の話 1 特徴 (1) 胸腺腫 胸腺がん カルチノイドの違いについて 胸腺腫はがんの種類か 病理学的には胸腺腫はがんではなくて正常と区別つかず機能を残したまま腫瘍化したもの 一部 転移するもの

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遺伝子検査の基礎知識

詳細 下記項目におきまして 所要日数を変更させていただきます 一部の項目では ご依頼曜日により所要日数が延長となりますが ご了承ください その他の検査内容に変更はありません β- トロンボグロブリン (β-tg) 2~6( 日 ) 2~4( 日 ) 血小板第 4 因子 (PF

前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

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第 56 巻第 2 号 (2017 年 9 月 ) (44)13 報 告 大腸癌における PCR-High Resolution Melting 解析を用いた RAS, BRAF 遺伝子検査 Detection of RAS and BRAF mutation in colorectal cance

第71巻5・6号(12月号)/投稿規定・目次・表2・奥付・背

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■リアルタイムPCR実践編

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学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 小川憲人 論文審査担当者 主査田中真二 副査北川昌伸 渡邉守 論文題目 Clinical significance of platelet derived growth factor -C and -D in gastric cancer ( 論文内容の要旨 )

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基調講演 デジタル技術と人が作る 広域病理細胞診断支援網のあり方

8 整形外科 骨肉腫 9 脳神経外科 8 0 皮膚科 皮膚腫瘍 初発中枢神経系原発悪性リンパ腫 神経膠腫 脳腫瘍 膠芽腫 頭蓋内原発胚細胞腫 膠芽腫 小児神経膠腫 /4 別紙 5( 臨床試験 治験 )

検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 P EDTA-2Na( 薄紫 ) 血液 7 ml DNA 検体ラベル ( 単項目オーダー時 ) ホンハ ンテスト 注 JAK2/CALR. 外 N60 氷 採取容器について

論文題目  腸管分化に関わるmiRNAの探索とその発現制御解析

体外診断用医薬品 この添付文書をよく読んでから使用してください *2018 年 2 月改訂 ( 第 2 版 ) 製造販売承認番号 : 22900EZX 年 3 月作成 ( 第 1 版 ) ROS1 融合遺伝子検出キット OncoGuide AmoyDx R

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1)表紙14年v0

2. ポイント EGFR 陽性肺腺癌の患者さんにおいて EGFR 阻害剤治療中に T790M 耐性変異による増悪がみられた際にはオシメルチニブ ( タグリッソ ) を使用することが推奨されており 今後も多くの患者さんがオシメルチニブによる治療を受けることが想定されます オシメルチニブによる治療中に約

Transcription:

日本臨床細胞学会関東連合学術集会 2012 年 9 月 8 日高崎 呼吸器細胞診検体の液状化処理と 非小細胞肺癌の診断 治療のための 遺伝子解析 中西陽子 1 関利美 2 根本則道 1,2 1 日本大学医学部病態病理学系病理学分野 2 日本大学医学部附属板橋病院病理診断科

肺癌診療における細胞診の重要性 検診における早期癌の発見生検困難 手術適応のない進行肺癌の診断 LBC の活用 :ThinPrep2000( オリンパス ) 標本作製以外に残余検体の保存が可能 標的細胞を含む貴重な検体免疫染色遺伝子発現解析遺伝子変異解析診断 治療への情報提供

肺癌診療に求められていること細胞診の役割 良性悪性 非腫瘍腫瘍 小細胞癌非小細胞癌 肺癌薬物療法の進歩治療感受性 副作用の予測に基づく厳密な治療法選択 EGFR 遺伝子変異 ALK 融合遺伝子 腺癌扁平上皮癌大細胞癌その他 細胞形態とともに細胞が持つ分子レベルの情報

LBC 免疫染色 肺癌の組織型鑑別 日本肺癌学会肺癌診療ガイドライン肺癌の病理 細胞診断ガイドライン 2011 年 6 月より抜粋

TTF-1 CK7 CK18 CEA ThinPrep 法 擦り合わせ法 Calretinin WT1 CK14 ThinPrep 法 擦り合わせ法 肺腺癌すべて 400 5 第 51 回日本肺癌学会総会ワークショップ

カクテル抗体による免疫染色抗体 :NSCLC Cocktail Core Kit ( ハ ソロシ ー研究所 ) ADCC Cocktail 抗体 TTF-1, NapsinA SqCC Cocktail 抗体 P63, CK14 肺腺癌 ThinPrep 標本 (6 か月保存 ) ( 400) TTF-1 陰性肺腺癌 ThinPrep 標本 (3 か月保存 ) ( 400) 6 第 49 回日本臨床細胞学会秋季大会

LBC 免疫染色 染色性に問題ない ThinPrepで塗沫したプレパラートは賦活処理も可能 6か月程度保存(4 ) しても染色可能 ただし 肺癌組織型鑑別には 複数の染色が必要 細胞数が少ない場合は困難 (LBCに限らず)

LBC 遺伝子発現解析による肺癌の組織型鑑別 少数細胞から一度に多数の解析可能

LBC とレーザーマイクロダイセクション一層の細胞を顕微鏡下で観察しながら異型細胞を回収 検体 保存液に浮遊させた細胞検体を自動塗沫 ThinPrep2000( オリンパス ) PALM MBⅢ-N(ZEISS) 組織細胞化学 2010 2011 2012

胸水 10 症例の遺伝子発現解析 ThinPrep 標本 レーサ ーマイクロタ イセクション リアルタイム RT-PCR 症例 7: 胃癌の転移症例 8: 肺扁平上皮癌その他 : 肺腺癌 1 種類のマーカーでは鑑別困難 性別 年齢 病期 細胞診 1 M 65 4 Class V AC 2 M 78 3B Class V AC 3 M 61 3B Class V AC 4 M 77 4 Class V AC 5 F 86 4 Class V AC 6 M 69 3B Class V AC 7 M 64 4 Class V AC 8 M 80 3B Class III 9 M 80 3B Class V Ca 10 F 75 3B Class V AC 症例 内因性コントロール 腺癌扁平上皮癌転移性悪性中皮腫 CK7 CK18 TTF-1 CEA CK6 CK14 CK20 WT1 Calretinin 1 + - + + - - - - - - 2 + + + - - - - - - - 3 + + + - - - - - - - 4 + - + + - - - - - - 5 + + + - + - - - - - 6 + + + - + - - - - - 7 + - + - + - - + - - 8 + - - - - + + - - - 9 + + + - - - - - - - 10 + + + - + - - - - - 10

LBC 遺伝子発現解析肺癌の組織型鑑別 少数の細胞から一度に多数の標的分子を解析できる 免疫染色の結果を予測できる可能性 複数年保存した ThinPrep 検体でも 細胞の同定が可能であれば解析できる 細胞量少なく 診断困難な症例に有用

LBC EGFR 遺伝子変異解析 肺腺癌における EGFR-TKI 治療感受性予測 進行肺癌では細胞診検体のみの場合あり 迅速 高感度 正確な評価結果が求められる 偽陰性の回避 右 :Thinprep2000( オリンパス ) 左 :i-densy TM 5310 (ARKRAY) 細胞同定の重要性

方法 -QP 法 - 沈渣 沈渣 i-densy TM IS-5310 ( アークレイ ) 1-2mL 腫瘍細胞確認 沈渣 細胞沈渣 DNA 溶液を分注 沈渣 L858R(exon 21) EGFR-TKI 感受性 exon19 deletion EGFR-TKI 感受性 T790M(exon 20) EGFR-TKI 耐性 KRAS codon12,codon13 BRAF V600E 試薬パック チップ 反応チューブを装置にセットしスタート

EGFR 遺伝子変異解析 QP 法による結果と DNA ダイレクトシーケンス法による解析結果 QP 法 EGFR 遺伝子野生型 (WT) EGFR 遺伝子変異型 (L858R) EGFR 遺伝子変異型 (exon19 欠失 ) EGFR 遺伝子変異型 (T790M) Exon 21 L858R Exon 19 deletion Exon 20 T790M DNA ダイレクトシーケンス法 Exon 21 L858R Exon 19 E746V, L747-S752 del Exon 19 E746-A750 del Exon 20 T790M 第 101 回日本病理学会総会

胸水 ( 腫瘍細胞多数 ) 胸水 ( 腫瘍細胞多数 ) DNA 抽出不要 検体採取から結果の評価まで約 90 分 40 400 40 400 胸水 ( 腫瘍細胞少数 ) 気管支洗浄液 ( 腫瘍細胞少数 ) DNA 抽出必須 マイクロタ イセクション細胞転写法 40 400 40 400

検体 EGFR 変異 QP 法 Clamp 法 胸水 N=25 69.8 歳 (51-86) M:F 17:8 気管支洗浄液 N=10 63.9 歳 (48-75) M:F 8:2 細胞診検体からの EGFR 遺伝子変異解析結果 変異型 Exon19deletion Exon21 L858R Exon 20 T790M 野生型非腫瘍腫瘍 DNA 抽出後 変異型 Exon19deletion Exon21 L858R Exon 20 T790M 野生型非腫瘍腫瘍 DNA 抽出後 0 5 1 1 18/19 19/19 1 0 0 1/1 7/8 8/8 0 5 1-18/18 1 0 0-7/7 シーケンス法 0 5 1-1 0 0 - - 細胞診 Ⅳ:1,Ⅴ:4 Ⅲ:1 Ⅳ:1,Ⅴ:18 Ⅴ:1 Ⅱ:1 Ⅲb:1,Ⅳ:1,Ⅴ:6 DNA 量 (ng/μl) 270.3 ±330.0 検出限界 DNA 量 0.1ng/μL 40.8 ±1.76 10ng/μL 第 101 回日本病理学会総会

剥離した細胞診検体 ( パパニコロウ標本 ) からの EGFR 遺伝子変異解析結果 検体 EGFR 変異 QP 法 Clamp 法 シーケンス法 細胞診 DNA 量 (ng/μl) 検出限界 DNA 量 胸水 46, F 変異型 Exon19deletion Exon21 L858R Exon 20 T790M Ⅴ 210.0 10ng/μL 気管支擦過細胞 67, F 変異型 Exon19deletion Exon21 L858R Exon 20 T790M Ⅴ 190.5 10ng/μL 胸水 ( ギムザ染色 ) 気管支擦過細胞 ( ギムザ染色 ) 20 400 20 400 第 101 回日本病理学会総会

年齢 性 細胞診クラス QP 法 +Tm 解析 PCR clamp 法シーケンス法 治療 胸水 ( 細胞沈渣 ) 1 65 M Ⅴ L858R L858R L858R ケ フィチニフ ( 継続中 ) 2 78 M Ⅴ WT WT 3 61 M Ⅴ WT WT 4 77 M Ⅴ WT WT 5 86 F Ⅴ WT WT 6 69 M Ⅴ WT WT 7 64 M Ⅴ WT WT 8 80 M Ⅴ WT WT 9 80 M Ⅴ WT WT 10 75 F Ⅴ L858R L858R L858R ケ フィチニフ 11 75 F Ⅴ L858R,T790M L858R,T790M L858R,T790M ケ フィチニフ ( 耐性化 憎悪し死亡 ) 12 72 F Ⅴ UD WT( 生検 ) 13 65 F Ⅴ WT WT 14 66 M Ⅴ WT WT 15 56 M Ⅳ L858R L858R L858R ヘ メトレキセト ( 継続中 ) 16 85 F Ⅴ WT WT 17 67 M Ⅴ WT WT 18 64 M Ⅴ L858R L858R L858R ケ フィチニフ ( 継続中 ) 19 51 F Ⅴ WT WT 20 68 F Ⅴ WT WT 21 66 M Ⅴ WT WT 22 78 M Ⅴ WT WT 23 73 M Ⅴ WT WT 24 56 M Ⅳ WT WT 25 69 M Ⅲ WT ND 気管支洗浄液 ( 細胞沈渣 ) 1 48 M Ⅴ WT WT 2 57 M Ⅴ WT WT 3 67 M Ⅱ WT ND 4 55 F Ⅴ WT WT 5 75 F Ⅳ WT WT 6 70 M Ⅴ WT WT 7 67 M Ⅴ ex19del ex19del ex19del Ope ト セタキセル+カルホ フ ラチン ( 継続中 ) 8 73 M Ⅴ WT WT 9 69 M Ⅴ WT WT 10 58 M Ⅲb WT ND 細胞転写法による過去のパパニコロウ標本 ( 精製 DNA) 1 67 F Ⅴ exon19del exon19del exon19del ヘ メトレキセト +カルホ フ ラチン ヘ メトレキセト エルロチニフ ( 継続中 ) 2 46 F Ⅴ ex19del,t790m ex19del,t790m ex19del,t790m ケ フィチニフ エルロチニフ ( 憎悪し死亡 ) パラフィン包埋組織 ( 精製 DNA) 1 75 F L858R L858R L858R ケ ムシタヒ ン ケ フィチニフ ( 合併症あり 憎悪し死亡 ) 2 80 M WT UD WT 3 67 F ex19del ex19del ex19del ケ フィチニフ ( 継続中 ) 4 67 F ex19del ex19del ex19del ヘ メトレキセト +カルホ フ ラチン ヘ メトレキセト エルロチニフ ( 継続中 ) 5 85 M ex19del ex19del ex19del BSC ( 経過観察中 ) 6 75 M L858R L858R L858R ト セタキセル ( 継続中 ) EGFR 遺伝子変異は各法で同様に検出 野生型症例でパラフィン組織 1 例 clamp 法で検出不可も 本法 シーケンス法では検出可能 感受性変異陽性例 13 例中 EGFR-TKI 治療 7 例 5 例は奏功し継続中 2 例は耐性化後死亡 T790M 変異 第 52 回日本肺癌学会総会

QP 法を用いた KRAS および BRAF 遺伝子変異解析 進行肺癌症例 (2009-2010stage ⅢB, Ⅳ) 生検のパラフィン切片 : 49 例細胞検体 : 18 例 i-densy( アークレイ ) を用いた QP 法と Tm 解析により KRAS codon12,codon13 遺伝子 BRAF V600E 遺伝子の変異解析 その他 38.9% BRAF 変異 4.1% KRAS 変異 22.4% EGFR 変異 34.6% EGFR 変異群 KRAS 遺伝子変異 Codon 12-Ser: tagtggc Codon 12-Asp: tgatggc KRAS or BRAF 変異群 Log-rank p=0.06 その他の群 Log-rank p=0.02 第 101 回日本病理学会総会

LBC EGFR 遺伝子変異解析 肺腺癌における EGFR-TKI 治療感受性予測 迅速 簡便 省スペースなどの技術開発により 右 :Thinprep2000( オリンパス ) 左 :i-densy (ARKRAY) ベッドサイド分子細胞診断 One-day 分子細胞診断 治療に直結する細胞診 第 50 回日本臨床細胞学会秋季大会

LBC ALK 融合遺伝子の検出 肺腺癌 ALK 融合遺伝子陽性クリゾチニブ治療感受性

ALK 肺癌患者の胸水 パパニコロウ /HE ニチレイ ALK 検出キット 摺合せ Abcam ALK(5A4) 1/50 + DAKO FLEX Linker Thinprep Thinprep セルブロック

肺癌診療における細胞診の役割 LBC を活用した 組織型鑑別 EGFR 遺伝子変異解析 ALK 融合遺伝子変異解析今後 分子標的薬の開発と共にさらに増える可能性 LBC Thinprep 法の活用が期待される 今後 細胞診技術に求められること 適切な検体採取 ( 形態や分子のダメージを減らす ) 適切な検体保存 ( あらたな治療標的分子の解析 )

肺癌診療における細胞診の役割 LBC を活用した 組織型鑑別 EGFR 遺伝子変異解析 ALK 融合遺伝子変異解析今後 分子標的薬の開発と共にさらに増える可能性 LBC Thinprep 法の活用が期待される 今後 細胞診技術に求められること 適切な検体採取 ( 形態や分子のダメージを減らす ) 適切な検体保存 ( あらたな治療標的分子の解析 )