骨粗鬆症 ~ 今日からできる予防方法 ~ 1
骨粗鬆症 : 概念と WHO の定義 概念 骨粗鬆症は全身的に骨折のリスクが増大した状態である WHO( 世界保健機構 ) の定義 骨粗鬆症は低骨量と骨組織の微細構造の異常を特徴とし 骨の脆弱性が増大し 骨折の危険性が増大する疾患である 骨粗鬆症とは骨折を生じるにいたる病的過程である 骨折は骨粗鬆症の結果として生じる合併症の一つである 骨折してから骨粗鬆症の治療に入るのでは遅い! 2
骨のリモデリング骨が骨の強度と形態を維持するために 常に新陳代謝を繰り返すこと 骨量の劣化などを感知して破骨細胞が誘導されると 骨吸収が数週間続いた後 吸収部位に骨芽細胞が誘導され 数か月にわたって骨形成が行われます 成人では 骨吸収と骨形成はほぼ平衡状態にあります
骨粗しょう症とはどんな病気ですか? 骨のカルシウム量 ( 骨密度 ) が減り 骨がもろくなって骨折しやすくなる病気です 骨の状態と代謝 写真提供 : 浜松医科大学名誉教授井上哲郎先生 骨は組織が固定された物ではなく 内部で古い骨を壊して吸収し その場所に新しい骨を作ると言う 代謝 が行われています 骨粗しょう症はこの骨代謝の働きが衰えて骨の材料であるカルシウムやリンなどのミネラルが不足し スカスカになってしまう病気です 4
骨粗しょう症ではどんな症状があらわれますか? 1 自覚できるのは 背中や腰が痛いなど 老化によるものと思いがちな症状です しかし骨折しやすくなっており 特に足の付け根の骨折は寝たきりにつながる可能性があります 骨粗しょう症の症状 足の付け根の骨折 腰や背中が痛む 骨折しやすい部位 腰や背中が丸くなる 背が低くなる 1 ヵ月程度の入院 安静 運動機能低下 内臓機能低下 手首 腕の付け根転んで手を打った時 背骨 ( 椎体 ) 物を持ち上げた時 足の付け根 ( 大腿骨近位部 ) 転んで腰を打った時 寝たきり 5
骨粗しょう症ではどんな症状があらわれますか? 2 内臓が圧迫され 機能が低下したり 痛みにより日常生活が不便になったりします 圧迫による内臓機能の低下 背骨がつぶれるような骨折 ( 圧迫骨折 ) では 前かがみの姿勢となり内臓が圧迫されるため 消化不良や便秘 逆流性食道炎などの消化器症状や息苦しさなどの心臓や肺の症状が起こります 痛みによる日常生活の制限 息苦しさ 食欲不振 骨折によって背中や腰 手足に痛みが生じるため 日常の動作が制限され 生活が不便になり 体を動かすのがおっくうになります 6
参考 : 骨粗しょう症に関する疫学 骨粗しょう症の患者数 有病率 日本での患者数は約 1,280 万人 ( 男性 300 万人 女性 980 万人 2005 年 ) にのぼり 女性では 70 歳代で約 30% が 80 歳を超えると約半数の方が骨粗しょう症といわれています (%) 80 60 40 < 年齢別骨粗しょう症の年代別有病率 > 第 2~4 腰椎 男性 女性 (%) 80 60 40 大腿骨近位部 男性 女性 20 20 0 ~ 39 bnicme0010004 40 ~ 49 50 ~ 60 ~ 59 69 年齢 ( 歳 ) 70 ~ 79 80 ~ 0 ~ 39 40 ~ 49 50 ~ 60 ~ 59 69 年齢 ( 歳 ) 70 ~ 79 80 ~ 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2011 年版 ライフサイエンス出版
骨粗しょう症と寝たきりとの関係 足の付け根 ( 大腿骨近位部 ) の骨折の発生状況 要介護の原因 日本では足の付け根の骨折が増加傾向 24.1% 20.7% 14.7% Orimo H et al, Arch Osterporos, 4, 71-77, 2009 要介護 の原因の第 4 位は骨折 転倒 平成 22 年度 国民生活基礎調査 ( 厚生労働省 ) より改変 8
骨粗しょう症リスクテスト 1. あなたの両親のいずれかが 軽くぶつかったり転んだりして 腰の骨を折ったことがありますか? 2. あなたは軽くぶつかったり 転んだりして骨を折った事がありますか? 3. 今までに 3 カ月以上ステロイド錠剤 ( コルチゾン フ レドニゾロン等 ) を服用していたことがありますか? 4. 身長が 3cm 以上縮みましたか? 5. お酒をたくさん ( 安全な範囲を超えて ) 飲むことが多いですか? 6. たばこを 1 日 20 本以上吸いますか? 7. 下痢で苦しむことが多いですか? 女性の方へ 8.45 歳より以前に閉経を迎えましたか? 9. 妊娠以外で生理が12カ月以上止まったことがありますか? 男性の方へ 10. 性欲の欠如 その他男性ホルモンの低下に関連した病気になったことがありますか? 出典 :IOF(International Osteoporosis Foundation) 9
骨粗しょう症の危険因子 身体的要因 生活習慣に関するもの 病気や薬剤によるもの 加齢 閉経 やせている 家族に骨粗しょう症患者がいる 過度の飲酒 喫煙 カルシウム摂取不足 運動不足 日照不足 ( ビタミン D 3 不足 ) 糖尿病 関節リウマチ 胃切除 卵巣摘出など ステロイドの服用 ( 関節リウマチ 喘息など ) 10
骨粗しょう症ではどんな検査を行いますか? 血液検査 尿検査 X 線検査 機械で骨量を測る検査などがあります 骨量 ( 骨密度 ) 測定検査 腰椎 大腿骨近位部 (DXA 法など ) かかと ( 超音波法など ) 手首 (pqct 法など ) 手 (MD 法など ) X 線検査 血液 尿検査 骨の状態を診る 他の病気と鑑別する 骨の代謝 * の状態を診る ( 骨代謝マーカー ) 11
原発性骨粗鬆症の診断基準 12
椎体変形の半定量的 (SQ) 評価法 13
女性の年齢と骨量 女性ホルモンの変化 年齢に応じて予防に取り組むことが大切です 中年以降は生活習慣を見直して骨量の維持を心がけましょう 閉経後は骨量の減少を抑えて骨折を予防しましょう 成長期は食事と運動で骨量を増やす骨貯金の時期 14
どんな食事がいいのですか? カルシウム ビタミン D ビタミン K たんぱく質を積極的にとりましょう カルシウムを多く含む食品 骨の原料になる 推奨される食品 必要量の目安は 700~800mg/ 日 乳製品 牛乳コップ 1 杯 (200g) 220 mg 大豆製品 木綿豆腐半丁 (100g) 120 mg ビタミン D を多く含む食品 腸管からのカルシウム吸収を増やす 魚介類 いわし 1 尾 (100g) 70 mg 野 菜 小松菜 2 束 (100g) 170 mg など ビタミン K を多く含む食品 骨形成を促進し骨折を予防する たんぱく質 ( 肉 魚 卵 豆 穀類など ) 吸収量が少ないと骨密度の低下を助長する 果物と野菜 必要量の目安は 400~800IU/ 日 鮭 1 切れ (100g) 1,320 IU 300μg 生しいたけ 2 枚 (100g) 必要量の目安は 250~350μg/ 日 納豆 1 パック (50g) 17 IU キャベツ 2 枚 (100g) 78μg など など 必要な量の目安 : 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2011 年版 ライフサイエンス出版食品中の栄養素の含有量 : 新食品成分表 新食品成分表編集委員会編 2011 東京法令出版 15
カルシウムを多く含む食品とは? 16
どんな食事がいいのですか? カルシウム ビタミン D ビタミン K たんぱく質を積極的にとりましょう カルシウムを多く含む食品 骨の原料になる 推奨される食品 必要量の目安は 700~800mg/ 日 乳製品 牛乳コップ 1 杯 (200g) 220 mg 大豆製品 木綿豆腐半丁 (100g) 120 mg ビタミン D を多く含む食品 腸管からのカルシウム吸収を増やす 魚介類 いわし 1 尾 (100g) 70 mg 野 菜 小松菜 2 束 (100g) 170 mg など ビタミン K を多く含む食品 骨形成を促進し骨折を予防する たんぱく質 ( 肉 魚 卵 豆 穀類など ) 吸収量が少ないと骨密度の低下を助長する 果物と野菜 必要量の目安は 400~800IU/ 日 鮭 1 切れ (100g) 1,320 IU 300μg 生しいたけ 2 枚 (100g) 必要量の目安は 250~350μg/ 日 納豆 1 パック (50g) 17 IU キャベツ 2 枚 (100g) 78μg など など 必要な量の目安 : 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2011 年版 ライフサイエンス出版食品中の栄養素の含有量 : 新食品成分表 新食品成分表編集委員会編 2011 東京法令出版 17
避けた方が良い食品 過剰摂取を避けた方がよい食品の例 カルシウムの吸収を悪くする リンを多く含む食品 食塩 アルコール カフェインを多く含む食品 < アルコールの過剰摂取 > ビール 350ml は 2.5 缶以上 日本酒 1.5 合以上 ワイン 360ml 以上 < 嗜好品 > コーヒー 3 杯以上 < リンを多く含む食品 > インスタント食品や一部の加工食品清涼飲料水に多く含まれます < 食塩 > 男性 9g 以下女性 7.5g 以下 18
どんな運動が必要ですか? 骨に刺激を与えて強い骨をつくる運動をします また 筋力や バランス感覚を養う運動を行って転倒しにくくします 運動の効果 有効とされている運動の例 運動 歩行運動 スクワット運動 開眼片足起立運動 ( フラミンゴ体操 ) 骨量増加 筋力増強 反射神経の強化 運動機能を高め 転倒防止 骨折予防 1 日 30 分程度 週 3 回 足は肩幅よりやや広めに開く深呼吸をするペースで 1 セット 5~6 回を 1 日 3 回行う * 椅子に腰をかけ 机に手をついて腰を浮かす動作でもよい 片足ごとに 1 分間を 1 日 3 回 * 壁やテーブルにつかまりながら行う この他に かかと上げや背筋運動があります Nakatani Y et al, J Epidemiol, 22, 103-112, 2012 Sakamoto K, Clin Calcium, 16, 2027-2032, 2006 19
日光浴をしましょう < 適度な日光浴 > 適度な日光浴はビタミン D を合成し 腸からのカルシウムの吸収を促進します 夏場は木陰で 30 分 冬場は 1 時間程度が目安です * ポイント 日光に直接当たらなくてもよい 顔や手に少し浴びる程度で良いです 20
原発性骨粗鬆症の薬物治療開始基準 21
分類主な商品 副甲状腺ホルモン (PTH 薬 ) フォルテオ 抗モノクロナル抗体プラリア ビスフォスフォネート薬ベネットボナロンボノテオ 女性ホルモン薬エストリール 選択的エストロゲン受容体モジュレータ (SERM) エビスタ 主な特徴 PTH の間欠的投与により骨芽細胞が活性化され 骨形成が促進される 破骨細胞の活性化に関わる因子を抑制 破骨細胞に作用し 骨吸収を抑制する消化管からの吸収率わるく 上部消化管障害発生率が高い 主には破骨細胞の分化 活性化が抑えられ 骨吸収を抑制 骨に対して骨吸収抑制作用を示す 閉経後骨粗鬆症に用いられる カルシウム薬アスパラ Ca PTH の分泌を抑制し 骨吸収を抑制する 活性型ビタミン D 3 アルファロールロカルトロール 腸管での Ca 吸収促進剤 ビタミン K 2 グラケー骨吸収を抑制 骨代謝の不均衡を抑制する カルシトニン薬エルシトニン 骨粗鬆症薬の特徴 破骨細胞に作用し 骨吸収を抑制中枢性の鎮痛作用あり 骨粗鬆症に起因する疼痛に対し有効 イプリフラボンオステン 蛋白同化ホルモンプリモボラン 間接的な骨吸収抑制 骨形成促進 小腸からの Ca 吸収促進 骨密度上昇作用
治療薬にはどんなものがありますか? A8 さまざまなお薬があり それぞれ効果や使い方 剤形などが違います 体内のカルシウム量を増やす薬 骨の形成を促進する薬 骨の溶解を抑制する薬 経口剤 点滴剤 活性型ビタミン D 3 薬 ( 錠剤 カプセル剤 ) ビタミン K 2 薬 ( カプセル剤 ) PTH *1 薬 ( 注射剤 ) *1 PTH(parathyroid hormone) 副甲状腺ホルモン *2 SERM(selective estrogen receptor modulator): 選択的エストロゲン受容体モジュレーター 上記は主な作用です 詳細は各製剤の添付文書を参照ください 女性ホルモン薬 ( 錠剤 貼付剤 ) SERM *2 ( 錠剤 ) ビスホスホネート薬 ( 錠剤 点滴静注剤 ) カルシトニン薬 ( 注射剤 ) 投与間隔 投与方法 特徴 服薬における注意事項 1 日 1 回 1 週間に 1 回 4 週間に 1 回 朝 起床してすぐにコップ 1 杯 ( 約 180mL) の水とともに飲む 4 週間に 1 回 医療者が 30 分以上かけて点滴する 骨の溶解 ( 骨吸収 ) を強力に抑制する 骨量を増やし 骨折を予防する効果がある 服用後 少なくとも 30 分以上は上体を起こし 水以外の食べ物や他の薬をとらない 錠剤をかんだり 口の中で溶かしたりしない 23
フォルテオ プラリア デノタスチュアブル配合錠 24
転びやすい場所と対策 家の中や服装を工夫するなど 生活環境を整えて 転倒しないようにしましょう 家の中の工夫 鈴木隆雄 転倒の発生状況およびその危険因子 Osteoporosis Japan vol.7 no.1 1999 より 服装の工夫 25