至舞鶴 試験盛土 向笠地区 鳥浜地区 載荷盛土 : 向笠 3 載荷盛土 : 鳥浜 1 載荷盛土 : 鳥浜 2 至敦賀 1. 向笠 向笠 高瀬川 Apt1 Apt4 As1 Apt3 Ac2 Apt5 Apt6 Sh : 砂層 礫層

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真空圧密工法を用いた超軟弱地盤における載荷盛土の施工事例 平田昌史 1 福田淳 2 信田潤一 3 山田耕一 4 川井田実 4 1 正会員博 ( 工 ) 前田建設工業株式会社技術研究所 ( 179-8914 東京都練馬区旭町 1-39-16) 2 正会員修 ( 工 ) 前田建設工業株式会社技術研究所 ( 179-8914 東京都練馬区旭町 1-39-16) 3 正会員修 ( 工 ) 前田建設工業株式会社関西支店 ( 541-8629 大阪市中央区久太郎町 2-5-3) 4 正会員中日本高速道路株式会社名古屋支社敦賀工事事務所 ( 914-121 福井県敦賀市野神 12-6) 現在, 舞鶴若狭自動車道の築造が行なわれている福井県三方上中郡若狭町付近は, 深く狭長なおぼれ谷に, 河成堆積物や海成堆積物が厚く堆積した超軟弱地盤帯である. この軟弱地盤上に載荷盛土を施工する若狭工事では, 対策工法の 1 つに真空圧密工法を採用しており, 周辺地盤の変形抑制や圧密促進に高い効果を発揮している. 真空圧密工法は, 対象地盤にプラスチックボードドレーンを挿入し, 真空ポンプを使って強制的に排水することで圧密を促進させる工法である. 改良域の側方にも真空圧が作用するため, 周辺地盤の側方変形が低減され, 盛土の急速施工も可能である. 本研究では, 若狭工事で実施した真空圧密工法による改良効果を確認するとともに, 土 - 水連成 FEM 解析を実施しその有用性についての検討を行った. キーワード : 真空圧密, 軟弱地盤, 載荷盛土, 有限要素法, 数値解析 1. はじめに真空圧密工法は, 地盤にプラスチックボードドレーンを挿入し, 真空ポンプを使って強制的に排水することで圧密を促進させる工法であり, 気密シートやドレーン材, 真空ポンプ等の改良により, 近年実用化が急速に進んでいる工法である. 真空圧密工法では, 改良域の側方にも真空圧が作用するため, 周辺地盤の側方変形が改良域側へ引き込まれるのが特徴である. このため盛土施工と併用した場合には, 盛土載荷によって押し出される周辺地盤の側方変形を低減させることが可能であり, 真空圧載荷時には改良域の安定性も向上するため, 盛土の急速施工も可能となる. 本研究で取り上げる舞鶴若狭自動車道 1) 若狭工事では, 軟弱地盤対策工法の 1 つに真空圧密工法が採用されており, 周辺地盤の変形抑制や圧密促進, 工期短縮に対して非常に効果的であった. しかしながら, このような真空圧密工法特有の効果は, 地盤内の複雑な応力状態に依存するため, 通常のプレローディング工法に用いる慣用的な設計法では評価が困難であり, 土 - 水連成 FEM 解析の有用性が 2) 指摘されている. 本研究では, 舞鶴若狭自動車道若狭工事で実施した真空圧密工法の効果について紹介するとともに, 3) 拡張マクロ エレメント法を用いた土 - 水連成 FEM 解析を実施し, その有用性について検討した. 舞鶴東 IC 小浜西 IC 京都府 北陸自動車道 鳥浜地区敦賀 JCT 向笠地区若狭湾福井県 気山地区三田地区舞鶴若狭自動車道 滋賀県琵琶湖 図 -1 舞鶴若狭自動車道若狭工事の施工位置 2. 舞鶴若狭自動車道若狭工事の概要舞鶴若狭自動車道は, 吹田市を起点として中国自動車道吉川 JCT から分岐し, 福知山市 ~ 舞鶴市 ~ 小浜市を経て北陸自動車道敦賀 JCT に至る延長約 162km の高速道路であり, 現在, 未開通区間である小浜西 IC~ 敦賀 JCT( 延長約 5km) の施工が進められている. ここで取り上げる若狭工事は, 図 -1 に示した福井県小浜西 IC~ 敦賀 JCT のほぼ中間点, 福井県三方上中郡若狭町内の延長約 1km にわたる範囲に点在する 4 地区 ( 三田地区, 向笠地区, 鳥浜地区, 気山地区 ) において, ボックスカルバート等の構造物築造場所 9 箇所に, 載荷盛土を施工するものである 1). 三方五湖に近接する若狭町付近は,2 つの断層 ( 三方断層, 熊川断層 ) に囲まれた三遠三角地で -171-

至舞鶴 試験盛土 向笠地区 鳥浜地区 載荷盛土 : 向笠 3 載荷盛土 : 鳥浜 1 載荷盛土 : 鳥浜 2 至敦賀 1. 向笠 1 12345 向笠 2 12345 12345 高瀬川 12345 12345. Apt1 Apt4 As1 Apt3 Ac2 Apt5 Apt6 Sh : 砂層 礫層 : 粘性土層 : 腐植土層 Ac2u Apt7 Apt2 As1 Apt3 Ac2 As4 Ac4 Dpt Apt2 Ac2 Ac4 Dpt As6 As1 Apt5 Ac4 As6 Apt2 Ac2 As4 Apt1 Apt3 Apt5 Apt6 As6-1.. -3. -4. -5. D.L.(m) 496+ 497+ 498+ 499+ 5+ 51+ 52+ 53+ 54+ 55+ 56+ 図 向笠 ~ 鳥浜地区における地質想定縦断面図 57+ 58+ 59+ 51+ 測点 あり, これら断層の影響により形成された深く狭長なおぼれ谷埋積平野に, 河成堆積物や海成堆積物が厚く堆積した軟弱地盤帯が広く分布している. 図 は, 当該工事区間である向笠 ~ 鳥浜地区の地質想定縦断面図であるが,が ~1 程度の非常に軟弱な粘性土および腐植土が深さ 4m 以上にわたって厚く堆積していることがわかる. 若狭工事の施工に先立ち, 図 に示した向笠地区において軟弱地盤対策工法 ( バーチカルドレーン工 4),5) 法 ) の選定を目的とした試験盛土が実施されている. この試験盛土では, 盛土完了 ( 平成 19 年 1 月末 ) 時点での計画高約 8m を確保するために, 盛土施工厚は約 15m に達しており, 現在では最大 1m を超える大規模な沈下が発生している. また, このような大規模な沈下に伴い, 周辺地盤では盛土法尻付近が約 1m 外側に押し出されると同時に, 最大 1m を超える大きな隆起が発生し ( 写真 -1), 盛土法尻から 1m 以上離れた位置にまで影響を与えた. 若狭工事では, このような大規模な沈下に伴う周辺地盤の変形や長期的な残留沈下を抑制するため, 軟弱地盤対策が必要であると判断し, その対策の 1 つとして真空圧密工法 ( 高真空 N&H 工法 6) ) を採用している. 真空圧密工法は,4 地区 9 箇所の載荷盛土のうち, 特に近接構造物や後工程への影響が懸念される 3 箇所の載荷盛土 ( 三田載荷盛土, 鳥浜 2 載荷盛土, 気山載荷盛土 ) に対して実施している. 3. 真空圧密工法の施工状況とその効果 (1) 三田載荷盛土三田載荷盛土 ( 写真 ) では, 近接する河川や後工程への影響を考慮して, 真空圧密工法が採用されている. 三田地区は, 軟弱な粘性土層と腐植土層の間に砂礫層が介在した地盤構成をしており, 真空圧密用のプラスチックボードドレーン (1.2m 1.2m 正 地盤隆起の発生試験盛土写真 -1 試験盛土法尻付近の変形状況三田載荷盛土鳥羽川 写真 三田載荷盛土の全景方配置 ) は深さ 1m まで打設している. 盛土中央位置の地表面沈下量は, 真空圧載荷 ( 約 6kPa) および載荷盛土施工 ( 盛土高 13.2m) によって, 最大 2.9m の大きな沈下が生じている. しかしながら, 真空圧密工法の効果によって盛土法尻付近の変位は盛土外側へ.2m の押し出し,.31m の沈下を示しており, 周辺地盤への影響は非常に少ない. また, 盛土速度は最大 1cm/d( 平均 7cm/d) と, 通常の約 3 倍の急速施工が実施できており, 一般的な盛土施工と比較して大幅な工期短縮が実現できている. (2) 鳥浜 2 載荷盛土鳥浜 2 載荷盛土 ( 写真 -3) は, 図 に示したように粘性土および腐植土が深さ 4m 付近まで厚く堆積した若狭工事の施工区間で最も軟弱な地盤に位置し, 試験盛土と同じように 1m を超える大規模な沈下の -172-

発生が予想された箇所である. 鳥浜 2 載荷盛土では, 地盤深部に堆積する軟弱層の圧密促進のために, 通常のプラスチックボードドレーン (1.2m 1.2m の正方配置 ) を深さ 34m まで延長する対策を実施するとともに, 後工程への影響を考慮して真空圧密工法を採用している. 盛土中央位置の地表面沈下量は, 真空圧載荷 ( 約 8 kpa) および載荷盛土施工 ( 盛土高 13.5m) によって, 最大 1.6m に及ぶ非常に大規模な沈下が発生している. 盛土法尻付近では, 真空圧密を載荷した初期には改良域側へ引き込まれ, 地表面では引き込みクラックが発生し ( 写真 -4), その後の盛土施工に伴って, 地盤は徐々に盛土外側に押し出され, 盛土完了時には約.3m の押出しと約.2m の隆起が発生し, その影響範囲は盛土法尻から 1~ 15m 程度であった. この変形量は, 同じように 1m 以上沈下した試験盛土で計測された押出し量 ( 約 1m) の 1/3 以下, 隆起量 ( 約 1m) の 1/5 以下であり, 真空圧密による高い改良効果が確認できる. (3) 気山載荷盛土気山載荷盛土 ( 写真 -5) では, 傾斜した基盤に沿って軟弱な腐植土層が厚く堆積しており, 近接する既設構造物 (NHK 電波塔 ) への影響を抑制する目的で, 真空圧密工法が採用されている. 真空圧密用のプラスチックボードドレーン (.7m.7m 正方配置 ) は, 傾斜した基盤に沿って深さ 4~12m まで階段状に打設している. 地表面沈下量は, 真空圧載荷 ( 約 8kPa) および載荷盛土施工 ( 盛土高 8.5m) により最大 3.5m の大きな沈下が発生している. しかしながら, 真空圧密工法の効果によって, 盛土法尻付近の地盤変位は盛土内側 ( 改良域側 ) へ.17m の引き込みと.35m の沈下を示しており, 近接する既設構造物の変位も管理基準値以下に抑制されている. 4. FEM 解析における真空圧密工法のモデル化土 - 水連成 FEM 解析を実施するにあたっては, プラスチックボードドレーンの三次元的な集水効果と真空圧載荷をどのようにモデル化するかがポイントとなる. 真空圧密工法のモデル化としては, 改良域の要素境界上を排水面として負圧を与えることで真空 圧密を再現した解析事例 7), 8), 9) が幾つか報告され ており, 真空圧密工法特有の引き込み型の側方変形や改良域の沈下量を, 比較的精度よく再現できることが示されている. しかしながら, これらの解析事例では, プラスチックボードドレーンは奥行き方向へ壁状に挿入されたモデルとなるため, 地盤の等価 鳥浜 2 載荷盛土写真 -3 鳥浜 2 載荷盛土の全景真空圧載荷位置クラック発生写真 -4 地表面クラックの発生 ( 鳥浜 2 載荷盛土 ) 気山載荷盛土 NHK 電波塔 写真 -5 気山載荷盛土の全景透水係数や真空圧を与える境界条件の設定が非常に困難である. このため, 複雑な自然地盤を対象とした場合の適用限界も指摘されている 2). そこで本研究では, 真空圧密工法のモデル化として著者らが提案する 拡張マクロ エレメント法 3) を用いた. 拡張マクロ エレメント法は, 関口ら 1) によって提案されたマクロ エレメント法を, 内挿関数の選び方に依存しない一般的な空間離散化式に拡張するとともに, 地盤の傾斜, ドレーンの打設配置, ウェルレジスタンスや真空圧密工法を考慮する手法を組み込むことで, より汎用性を高めた手法である. この拡張マクロ エレメント法を用いることで, 三次元的な取扱いが必要となるプラスチックボードドレーンの集水効果を, 二次元平面ひずみ条件下においても要素レベルで忠実に考慮できるとともに, プラスチック ボードドレーン内部に直接真空圧を作用 11) できる ため, 真空圧密工法の圧密促進効果をより自然に表現することが可能となる. -173-

y 真空圧密範囲 (1.2m 1.2m) 砂礫 (As1) 砂礫 (As1) 粘性土 (Dc4) 盛土 1. m 16.1 m 粘性土 (Ac2) 腐植土 (Apt1) 腐植土 (Dpt) 砂礫 (Dg1) x 非排水 固定境界 ( 底部 ) 図 -3 FEM 解析に用いたメッシュ ( 三田載荷盛土 ) 非排水 鉛直ローラー境界 ( 側端部 ) 表 -1 FEM 解析に用いた材料パラメータ一覧 ( 三田載荷盛土 ) 単位体積重量限界応力比圧縮指数非可逆比 ダイレイタンシー係数先行圧密圧力静止土圧係数 間隙比 ポアソン比 e-lnkの傾き 透水係数 土質 γ t M λ Λ D σ v ' K e ν' λ k k (kn/m 3 ) (kn/m 2 ) (m/day) 盛土 18.6 弾性係数 E=118 (kn/m 2 ).333-8.64E+ 沖積粘土層 Ac2 16.4 1.2.226.712.54 5..5 1.5.333.226 2.58E-4 沖積砂層 As1 18.3 弾性係数 E=15 (kn/m 2 ).333-8.64E 沖積腐食土層 Apt1 12.3 2. 1.389.836.16 7..25 4.5.2.477 8.64E-4 沖積礫層 Ag1 19.8 弾性係数 E=145 (kn/m 2 ).333-8.64E 洪積粘土層 Dc1 18.5 1.2.13.75.46 223..5.75.333.13 2.58E-4 洪積礫層 Dg1 21.7 弾性係数 E=128 (kn/m 2 ).333-8.64E-1 洪積腐食土層 Dpt1 12.7 2..434.7.4 192..25 2.8.2.34 5.19E-4 洪積粘土層 Dc4 18.7 1.2.156.614.4 181..5 1..333.156 2.58E-4 沖積砂層 Dg2 22.1 弾性係数 E=115 (kn/m 2 ).333-8.64E-1 盛土圧 真空圧 (kn/m 2 ) 真空圧載荷 4 3 2 1 盛土施工開始 : 真空圧 : 盛土圧 盛土圧 盛土施工終了 真空圧 変位杭計測位置 地表面沈下計測位置 変位杭計測位置 地表面 過剰間隙水圧 (kn/m 2 ) -1-3 -4-5 -1-15 28/11/16 29/1/5 : 実測値 () : 実測値 (+R15.6m) : 実測値 (G.L.-4.m) : 実測値 (G.L.-8.m) 29/2/24 29/4/15 29/6/4 29/7/24 G.L.-8.m 29/9/12 29/11/1 29/12/21 +R15.6m G.L.-4.m 21/2/9 図 -4 FEM 解析結果と動態観測結果の比較 ( 三田載荷盛土 ).2. -.2 -.4 -.6 実測値 ( 変位杭 ) : 28/12/26 : 29/4/29 : 29/11/3 28/12/26 29/4/29 29/11/3 -.8-13 -12-11 -1-9 -8-7 -6 盛土センターラインからの距離 (m) 間隙水圧計測位置 28/12/26 29/4/29 -.2 29/11/3 実測値 ( 変位杭 ) : 28/12/26 -.4 : 29/4/29 : 29/11/3 -.6 -.8 8 9 1 11 12 13 14 15 盛土センターラインからの距離 (m).2. 5. 真空圧密工法の FEM 解析 (1) 三田載荷盛土の FEM 解析真空圧密工法を採用した 3 箇所の載荷盛土に対して, 土 - 水連成 FEM 解析を実施した.FEM 解析条件は, 載荷盛土横断面方向に対して 2 次元平面ひずみ条件としている. 図 -3 は, 三田載荷盛土の横断面における FEM 解析メッシュである. 地盤部分のメッシュは, 事前のボーリング調査結果から設定しており, 盛土部分のメッシュは, 盛土施工厚まで盛土形状を引き伸ばすことで沈下の影響を考慮した. 施工履歴は,1 層 3cm の敷均し 転圧の実施工に合わせて盛土要素を追加することで表現している. 表 -1 は,FEM 解析に用いた材料パラメータである. 材料パラメータは各種室内試験結果を基に設定しており, 盛土および 砂礫層は線形弾性モデル, 粘性土層および腐植土層 12) は特異点の影響を回避するため Expanded 関口 太田モデル 13) を用いている. なお, 真空圧密工法の改良域には拡張マクロ エレメント法を用い, 計測された真空圧 ( 約 6kPa) を載荷している. 図 -4 は, 動態観測結果と FEM 解析結果の比較である. 図中のプロットが動態観測による実測値, ラインが FEM 解析による計算結果である. これらの図を見ると, 地表面沈下量および法尻付近の地盤隆起量は, 実測値とよく一致している. また, 真空圧密改良域内の過剰間隙水圧の解析結果も実測値と良く一致しており, 拡張マクロ エレメント法を用いることで, 地盤の変形だけではなく, 真空圧が載荷された地盤内の複雑な有効応力状態も精度良く再現できていると考えられる. -174-

y 真空圧密範囲 (.85m.85m) 真空圧密範囲 (1.2m 1.2m) 表土 (B) 腐植土 (Apt1) 16. m 砂礫 () 砂礫 (As4) 18. m 腐植土 (Apt6) 盛土 24.1 m 鋼矢板 (L=1m) 粘性土 () 腐植土 (Apt3) 腐植土 (Apt5) 粘性土 () 砂礫 (As6) x 非排水 固定境界 ( 底部 ) 図 -5 FEM 解析に用いたメッシュ ( 鳥浜 2 載荷盛土 ) 非排水 鉛直ローラー境界 ( 側端部 ) 表 FEM 解析に用いた材料パラメータ一覧 ( 鳥浜 2 載荷盛土 ) 単位体積重量限界応力比圧縮指数非可逆比 ダイレイタンシー係数先行圧密圧力静止土圧係数 間隙比 ポアソン比 e-lnkの傾き 透水係数 土質 γ t M λ Λ D σ v ' K e ν' λ k k (kn/m 3 ) (kn/m 2 ) (m/day) 盛土 18.6 弾性係数 E=118 (kn/m 2 ).333-8.64E+ 沖積粘土層 13.2 1.2.614.721.92 35.7.5 3..333.434 3.46E-4 沖積腐食土層 Apt1 11. 2..771.793.68 41.4.25 3.5.2.434 5.18E-4 沖積粘土層 Apt3 12.6 2..771.793.8 19.9.5 2.8.2.34 5.18E-4 沖積砂層 18.6 弾性係数 E=981 (kn/m 2 ).333-8.64E-1 沖積腐食土層 Apt5 14. 2..497.739.61 2..25 2..2.34 1.73E-4 沖積砂層 As4 18.6 弾性係数 E=981 (kn/m 2 ).333-8.64E-1 沖積粘土層 18.1 1.2.141.654.35 269.3.5 1.2.333.141 2.59E-4 沖積腐食土層 Apt6 13.8 2..273.782.43 122.5.25 1.5.2.217 2.59E-4 沖積砂層 As6 19.6 弾性係数 E=118 (kn/m 2 ).333-8.64E-1 盛土圧 真空圧 (kn/m 2 ) 層別 過剰間隙水圧 (kn/m 2 ) 5 4 3 2 1-1 -3-4 -5-6 -7-8 15 1 5-5 -1 28/1/1 真空圧載荷 28/11/2 盛土施工開始 : 盛土圧 : 真空圧 :FEM 解析入力値 : 実測値 G.L.-3.8m : 実測値 G.L.-9.8m : 実測値 G.L.-17.7m : 実測値 G.L.5.7m : 実測値 G.L.-31.m : 実測値 G.L.-7.m : 実測値 G.L.-17.m : 実測値 G.L.-3.m 29/1/9 29/2/28 29/4/19 盛土圧 G.L.-7.m 29/6/8 G.L.-17.7m G.L.-9.8m G.L.-3.8m 真空圧 29/7/28 G.L.5.7m G.L.-17.m G.L.-3.m 29/9/16 盛土施工終了 G.L.-31.m 29/11/5 変位杭計測位置 層別沈下計測位置 1.5 1..5. 実測値 ( 変位杭 ) : 29/2/28 : 29/6/23 : 29/9/25 地表面沈下計測位置 29/6/23 29/9/25 地中変位計測位置 間隙水圧計測位置 盛土法尻 29/2/28 -.5-12 -1-8 -6-4 盛土センターラインからの距離 (m) 図 -6 FEM 解析結果と動態観測結果の比較 ( 鳥浜 2 載荷盛土 ) 深度 (m) -5-1 -15 29/2/28 5-3 -35-4 -45-1. -.5..5 1. 1.5 2. 28/11/29 Apt6 As6 水平変位量 (m) Apt1 29/9/25 Apt3 29/6/23 29/4/23 Apt5 As4 実測値 ( 地中変位計 ) : 28/11/29 : 29/2/28 : 29/4/23 : 29/6/23 : 29/9/25 (2) 鳥浜 2 載荷盛土の FEM 解析図 -5 は, 鳥浜 2 載荷盛土の横断面における FEM 解析メッシュである. 地盤部分のメッシュは, 事前のボーリング調査結果とプラスチックボードドレーン 打設時のオシログラフ分析結果から設定 14) してお り, 盛土部分のメッシュは三田載荷盛土と同様に, 盛土施工厚まで盛土形状を引き伸ばすことで 1m を超える大規模な沈下の影響を考慮している. 表 は, FEM 解析に用いた材料パラメータである. 向笠地区では, 若狭工事施工前に試験盛土に対して FEM 解析を実施 5) しており, 材料パラメータも詳細に検討さ れている 15) ため, 試験盛土の FEM 解析で使用した材料パラメータを用いている. 構成モデルは, 盛土および砂礫層は線形弾性モデル, 粘性土および腐植土は Expanded 関口 太田モデルとした. なお, 盛土法尻付近では, 側方変形の抑制対策として長さ 1m の鋼矢板が打設されており, ビーム材を用いてモデル化している. 真空圧密工法による改良領域は, 実際の施工に合わせて深さ 16m 付近からプラスチックボードドレーンの打設間隔を変えて設定しており, 地盤深部のプラスチックボードドレーンに対しても真空圧 ( 約 8kPa) を一律に載荷した. -175-

盛土 12.3 m 真空圧密範囲 (L=4~12m,.7m.7m) 非排水 鉛直ローラー境界 ( 側端部 ) 12. m 腐植土 (Apt) y 非排水 固定境界 ( 底部 ) x 崖錘堆積物 (Adt) 図 -7 FEM 解析に用いたメッシュ ( 気山載荷盛土 ) 強風化頁岩 2 強風化頁岩 1 表 -3 FEM 解析に用いた材料パラメータ一覧 ( 気山載荷盛土 ) 単位体積重量限界応力比圧縮指数非可逆比 ダイレイタンシー係数先行圧密圧力静止土圧係数 間隙比 ポアソン比 e-lnkの傾き 透水係数 土質 γ t M λ Λ D σ v ' K e ν' λ k k (kn/m 3 ) (kn/m 2 ) (m/day) 盛土 18.6 弾性係数 E=118 (kn/m 2 ).333-8.64E+ 沖積腐食土層 Apt 1.8 2. 1.432.818.85 27.6.25 5.9.2.781 3.46E-4 崖錐堆積物 Adt 17.7 弾性係数 E=118 (kn/m 2 ).333-8.64E-4 強風化頁岩 1 19.6 弾性係数 E=24 (kn/m 2 ).333 - - 強風化頁岩 2 2.6 弾性係数 E=362 (kn/m 2 ).333 - - 盛土圧 真空圧 (kn/m 2 ) 地表面 過剰間隙水圧 (kn/m 2 ) 3 2 1-1 -3-4 -5-6 -3-6 -9-12 27/11/8 真空圧載荷 27/12/28 盛土施工開始 : 真空圧 : 盛土圧 : 実測値 () : 実測値 (+R7.4m) 28/4/6 G.L.-8.m : 実測値 (G.L.-4.m) : 実測値 (G.L.-8.m) : 実測値 (G.L.-5.m) 28/9/3 29/3/22 盛土圧 +R7.4m 真空圧 29/11/27 G.L.-4.m G.L.-5.m 盛土施工終了 21/9/23 211/9/8 真空圧停止 212/1/12 214/1/5 間隙水圧計測位置 2 1 28/4/26 地中変位計測位置 地表面沈下計測位置 変位杭計測位置 -1 実測値 ( 変位杭 ) : 28/4/26 28/7/15 : 28/7/15 : 29/8/25 28/8/25-3 1 2 3 4 盛土法尻からの距離 (m) 深度 (m) 水平変位量 (m) -.5..5 1. 1.5 B -5-1 -15 29/9/25 29/9/25 29/9/25 実測値 ( 地中変位計 ) : 28/4/26 : 28/7/15 : 29/8/25 Apt Sh 図 -8 FEM 解析結果と動態観測結果の比較 ( 気山載荷盛土 ) 図 -6 は, 地表面沈下計, 層別沈下計, 間隙水圧計および地中変位計による動態観測結果と FEM 解析結果を比較した図である. 図中のプロットが動態観測結果, ラインが FEM 解析結果である. これらの図を見ると, 沈下量, 過剰間隙水圧および水平変位量の解析結果は, 動態観測結果と非常によく一致しており, 実施した FEM 解析が非常に高い精度で現場を再現できていることがわかる. (3) 気山載荷盛土の FEM 解析図 -7 は, 気山載荷盛土の横断面における FEM 解析メッシュである. 地盤部分のメッシュは, 事前のボーリング調査結果から, 基盤の傾斜を考慮して設定している. 表 -3 は,FEM 解析に用いた材料パラメータである. 材料パラメータは各種室内試験結果を基 に設定しており, 構成モデルには三田載荷盛土, 鳥浜 2 載荷盛土と同様に, 盛土および砂礫層は線形弾性モデル, 粘性土層および腐植土層は Expanded 関口 太田モデルを用いている. 真空圧密工法の改良域は, プラスチックボードドレーンの打設深度 (4~ 12m) に合わせて階段状に設定し, 計測された真空圧 ( 約 8kPa) を載荷している. 図 -8 は, 動態観測結果と FEM 解析結果の比較である. 図中のプロットが動態観測による実測値, ラインが FEM 解析による計算結果である. これらの図を見ると, 地表面沈下量, 法尻付近の地盤変位量, 地盤内水平変位量, 過剰間隙水圧の FEM 解析結果は動態観測による実測値と良く一致しており, 実施した FEM 解析が非常に高い精度で現場を再現できていることがわかる. -176-

水平変位出力位置 鉄塔基礎投影位置 鋼管矢板打設 水平変位出力位置 鉄塔基礎投影位置 深層混合処理範囲 水平変位出力位置 鉄塔基礎投影位置 15.5m 15.5m 2.m 3 3 3 荷重 (kpa) 2 1 : 真空圧 ( 実測値 ) : 盛土荷重 ( 実測値 ) 盛土中断 盛土再開 盛土終了 荷重 (kpa) 2 1 : 真空圧 ( 実測値 ) : 盛土荷重 ( 実測値 ) 盛土中断 盛土再開 盛土終了 荷重 (kpa) 2 1 : 真空圧 ( 実測値 ) : 盛土荷重 ( 実測値 ) 盛土中断 盛土再開 盛土終了 沈下量 (cm) 過剰間隙水圧 (kpa) 水平変位量 (mm) 真空圧, 盛土荷重 (kpa) -1-3 -4-5 -4-6 -8-1 -12 2-4 -6 27/11/18 5 4 3 2 1-4 -6-8 -1-12 対策工 : なし 28/1/7 28/2/26 28/4/16 盛土施工開始 : 地表面沈下 ( 実測値 ) : 過剰間隙水圧 ( 実測値 -4.m) : 過剰間隙水圧 ( 実測値 -8.m) : 過剰間隙水圧 ( 実測値 -5.m) 真空載荷開始 28/1/14 28/12/3 29/1/22 : 検討前実測値 : 検討後実測値 29/3/13 盛土荷重 盛土休止期間 :3 日 28/6/5 28/7/25 28/9/13 28/11/2 28/12/22 真空圧 : 水平変位 ( 実測値 ) FEM 解析実施 29/5/2 29/6/21 29/8/1 29/9/29 29/11/18 21/1/7 21/2/26 21/4/17 21/6/6 6. FEM 解析の活用方法と有用性 (1) FEM 解析による沈下 変形予測先に示したような精度の高い FEM 解析結果を用いることで, 地盤に今後どのような沈下や変形が生じるのかを正確に予測することが出来ると同時に, この予測結果を用いて対策工の検討も可能である 16). 図 -9 は, 気山載荷盛土における法尻付近の側方変位が, 真空圧密による引き込みから盛土施工による押し出しに転換した時期に, 盛土施工を一時中断して近接構造物 (NHK 電波塔 ) への影響抑制対策を検討した事例である. この検討結果によると, 深層混合処理による対策工が地盤の水平変位抑制に最も効果的であると考えられる. 但し, この FEM 解析結果を用いて別途検討した構造物基礎の変形量は, 対策工なしのケースにおいても管理基準値を十分満足したため,FEM 解析による予測変位量を参考に, 観測施工を行いながら対策工なしで工事を再開した. なお実際の地盤変位量は,FEM 解析による予測値を超え 盛土施工終了 75 日 : 検討前実測値 : 解析結果 : 検討後実測値沈下量 沈下量 (cm) 過剰間隙水圧 (kpa) 水平変位量 (mm) 真空載荷終了 -1-3 -4-5 -4-6 -8-1 -12 2-4 -6 27/11/18 28/1/7 28/2/26 28/4/16 過剰間隙水圧 : 地表面沈下 ( 実測値 ) : 過剰間隙水圧 ( 実測値 -4.m) : 過剰間隙水圧 ( 実測値 -8.m) : 過剰間隙水圧 ( 実測値 -5.m) 対策工 : 鋼管矢板 12 8 4-4 -8-12 過剰間隙水圧 (kpa) 盛土休止期間 :3 日 28/6/5 28/7/25 28/9/13 28/11/2 28/12/22 層厚 / 深度 含水比, w (%) 間隙比, e 圧密降伏応力, P c (kpa) 一軸圧縮強度, qu (kpa) 2 4 6 8 2 4 6 8 1 12 1 2 3 4 5 1 15..2.4.6.8 1. 鋼管矢板打設 : 水平変位 ( 実測値 ) 沈下量 (cm) 過剰間隙水圧 (kpa) -1-3 -4-5 -4-6 -8-1 -12 2-4 -6 27/11/18 : 地表面沈下 ( 実測値 ) : 過剰間隙水圧 ( 実測値 -4.m) : 過剰間隙水圧 ( 実測値 -8.m) : 過剰間隙水圧 ( 実測値 -5.m) 対策工 : 深層混合処理 28/1/7 28/2/26 28/4/16 盛土休止期間 :3 日 28/6/5 28/7/25 28/9/13 28/11/2 28/12/22 (a) 対策工なし (b) 鋼管矢板打設 (c) 深層混合処理 図 -9 気山載荷盛土における構造物への影響 ( 水平変位 ) 解析結果 図 -1 鳥浜 2 載荷盛土における真空ポンプ停止時期 水平変位量 (mm) ボーリング調査結果 : 事前調査 : 事後調査 深層混合処理 : 水平変位 ( 実測値 ) FEM 解析 : 初期入力値 : 解析結果 図 -11 気山載荷盛土のボーリング結果と解析結果の比較 ることはなく, 近接する構造物の変位も管理基準値以下に抑制され, 無事施工は終了している. このように,FEM 解析は対策工検討等に非常に有効な手法であると言える. 図 -1 は, 図 -6 に示した鳥浜 2 載荷盛土の FEM 解析から予測した地盤沈下量と過剰間隙水圧の経時変化である.FEM 解析を実施した時点の予測によると, 盛土施工後の真空圧載荷期間を 75 日 ( 技術資料によ 6) る最短載荷期間 ) とすれば, 沈下量は圧密度 95% を満足し, 十分に圧密が促進されると判断できる. その後計測された沈下量および過剰間隙水圧の実測値は,FEM 解析による予測結果と良く一致している. このため実際の施工では,FEM 解析による検討通りに, 盛土施工終了から 75 日後に真空ポンプを停止した. 真空圧密工法の場合, 真空ポンプの稼動日数 ( 真空圧の載荷日数 ) が, 改良地盤の品質 ( 圧密度や強度増加 ) や工程 コストに大きな影響を与えるため, このような検討が実施可能な FEM 解析は非常に有用な手段である. -177-

(2) FEM 解析による圧密度と強度増加の予測拡張マクロ エレメント法を用いた二次元 FEM 解析では, 沈下 変形だけでなく過剰間隙水圧も動態観測結果と一致しており, 真空圧密による改良域内の有効応力分布を精度よく再現できていると考えられる. 図 -11 は, 気山地区において実施した FEM 解析結果とチェックボーリング結果を比較した図である.FEM 解析による圧密降伏応力 ( 圧密度 ) は, チェックボーリングによる試験結果と良く一致している. また,FEM 解析より算定した一軸圧縮強度も, チェックボーリングによる試験結果を非常に良く再現できていると考えられる. このように FEM 解析結果を用いることで, 真空圧密改良域内の圧密度や地盤強度を推定することが可能であり, これまで検討が困難であった真空圧密施工中の安定性評価への応用も十分可能であると考えられる. 7. おわりに本研究で紹介した若狭工事の載荷盛土では, 真空圧密工法を採用することにより周辺地盤への影響が大幅に抑制されるとともに, 急速施工による大幅な工期短縮が実現できている. さらに, 盛土施工後の沈下は早い時期から収束しており, 真空圧密工法による改良効果が顕著に現れている. これら若狭工事の載荷盛土に対して実施した土 - 水連成 FEM 解析では, 真空圧密工法のモデル化に拡張マクロ エレメント法を用いることで, 沈下 変形だけでなく改良域内の過剰間隙水圧 ( 有効応力 ) も動態観測結果を非常に精度良く再現できている. このような精度の高い FEM 解析結果を用いれば, 真空圧密による側方変形低減効果や対策工の検討, 地盤内の圧密度や強度増加の評価など, これまで検討が困難であった事例についても定量的に評価することが可能である. 今後は, 真空圧密工法の施工時安定性や施工管理手法等の詳細な検討を実施するとともに, 本手法の適用性についてもさらに検討を行っていく予定である. 参考文献 1) 信田潤一, 平田昌史, 山田耕一, 川井田実 : 超軟弱地盤上の載荷盛土における施工対策事例, 地盤工学会中部支部, 第 18 回調査 設計 施工技術報告会概要集, pp.49-54, 29. 2) 今井五郎 : 真空圧密工法 の更なる発展に向けて - 真空圧を利用した地盤改良の原理とその適用 -, 土木学会論文集, No.798/VI-68, pp.1-16, 25. 3) 平田昌史, 清水英樹, 福田淳, 山田耕一, 川井田実 : 拡張マクロ エレメント法を用いたバーチカルドレーン打設地盤の FEM 解析, 土木学会, 応用力学論文集, vol.13, ( 投稿中 ), 21. 4) 川井田実, 信田潤一, 平田昌史, 山田耕一 : 深い腐植土地盤における高速道路建設 - 舞鶴若狭自動車道 ( 小浜 ~ 敦賀 ) の軟弱地盤対策 -, 第 54 回地盤工学シンポジウム論文集, 地盤工学会, pp.563-57, 29. 5) 平田昌史, 木藤政則, 山田耕一, 飯塚敦, 荒井克彦 : 超軟弱地盤における道路盛土の変形挙動要因とその抑制対策, 土木学会論文集 C, Vol. 66, No.2, pp.356-369, 21. 6) 真空圧密技術協会 : 高真空 N&H 工法 - 改良型真空圧密工法 - 技術資料, 24. 7) 山添誠隆, 三田地利之 : 真空圧密併用盛土下における泥炭地盤の変形挙動解析, 地盤工学ジャーナル, Vol.1, No.4, pp.143-156, 26. 8)Chai, J.-C., Carter, J.P. and Hayashi, S. : Vacuum Consolidation and its combination with embankment loading, Canadian Geotechnical Journal, Vol.43, No.1, pp.985-996, 26. 9) 水野健太, 土田孝, 新舎博 : 真空圧密工法で改良された浚渫粘性土埋立地盤の変形挙動とその解析, 地盤工学ジャーナル, Vol.3, No.1, pp.95-18, 28. 1) 関口秀雄, 柴田徹, 藤本朗, 山口博久 : 局部載荷を受けるバーチカル ドレーン打設地盤の変形解析, 第 31 回土質工学会シンポジウム発表論文集, pp.111-116, 1986. 11) 竹山智英, 青木孝憲, 荒井亜希, 太田英樹 : マクロエレメント法の真空圧密工法への適用 ( その 1), 第 43 回地盤工学研究発表会,pp.887-888, 28. 12) 竹山智英, 太田秀樹, 飯塚敦, Pipatpongsa Thirapong, 大野進太郎 : 関口 太田モデルにおける特異点処理法, 第 3 回地盤工学会, 関東支部研究発表会講演集, pp.313-317,26. 13) 大野進太郎, 飯塚敦, 太田秀樹 : 非線形コントラクタンシー表現式を用いた土の弾塑性構成モデル, 応用力学論文集, Vol.9, pp.47-414, 26. 14) 平田昌史, 福田淳, ドゥバンバオ, 信田潤一, 山田耕一, 川井田実 : 腐植土を含む超軟弱地盤における解析パラメータの決定, 第 65 回土木学会年次学術講演会 ( 投稿中 ), 21. 15) 久保大輔, 平田昌史, 中山泰起, 福田淳, 山田耕一, 川井田実 : オシログラフを利用した軟弱地盤における砂層位置の推定, 第 65 回土木学会年次学術講演会 ( 投稿中 ), 21. 16) 福田淳, 平田昌史, 西川浩二, 信田潤一, 山田耕一, 川井田実 : 真空圧密工法における FEM 解析結果の活用事例, 第 65 回土木学会年次学術講演会 ( 投稿中 ), 21. -178-