アルコール依存症リハビリテーション プログラムに対するパス作成 射場亜希子 1 葛山秀則 1 置塩紀章 1 田中大輔 2 大西智美 1 飯田哲二 1 森本真司 1 1 兵庫県立光風病院 2 湊川病院
はじめに 精神科領域では治療期間の長さや治療法の多様性などの問題があり クリニカルパスの導入が他領域に比べて遅れている 当院では従来よりアルコール依存症リハビリテーションプログラムを受講する患者に対し 紙カルテ上でパスを使用していた 平成 25 年に電子カルテ導入となり 従来のパスの廃止を余儀なくされ 一貫した医療の提供が困難となった そのため平成 26 年 3 月より電子カルテ上でアルコール依存症リハビリテーションプログラムのクリニカルパスを作成 運用し さらに紙ベースでの俯瞰的な患者スでの俯瞰的な患者用 医療者用クリニカルパスを併用している
稼働病床数 286 床 兵庫県立光風病院 精神科救急病棟 (60 床 ) 亜急性期 慢性期病棟(108 床 ) 児童思春期専門病棟 (65 床 ) アルコール依存症専門病棟(53 床 )
アルコール依存症専門病棟ル依存症専門病棟 病床数 53 床 患者はほぼアルコール依存症 平均年齢は 50 歳代後半 男女混合だが 男性が圧倒的に多く 女性は4 人以下 基本 開放病棟 病棟内に閉鎖エリアがある 保護室は 2 床あるが ほとんど使うことはない
アルコール依存症とはル依存症とは アルコール依存症患者は日本に約 109 万人いると推計されている 働き盛りの男性では 50~80 人に1 人くらいの割合で罹患していると思われ 最近では 女性や高齢者も増えてきている しかし 依存症の専門治療を受けている患者は 数万人に過ぎない アルコール依存症は 飲酒のコントロールが自分自身の力だけではできなくなっている病気である 体や本能が 理性を超えて強くお酒を求めている状態であり 意志が弱いからアルコール依存症になるのではない また アルコール依存症患者には 酒癖の悪い者だけル依存症患者には 酒癖の悪い者だけではなく 一人で静かに飲む者もしばしばみられる アルコール依存症からの回復には 断酒 するしかない
当院でのアルコール依存症 リハビリテーションプログラム 基本は 3 か月間 プログラムには原則 全て参加 最初の1 週間は閉鎖エリア 閉鎖エリアでは携帯電話使用不可 間食不可 断酒と関係のない書籍等の持ち込み不可 入院 1 週間後より開放エリア 院内および病院近隣の散歩可 入院 2 週間後より自助グループ参加目的の外出は可 入院 1か月後より自宅などへの外出 外泊訓練を行う ほかに 2 週間の解毒入院 45 日の短期入院あり
月曜日 午前のプログラム午後のプログラム夜のプログラム薬物教室 ( 月 1 回 ) 合同断酒会料理教室 ( 月 2 回 ) ( 月 2 回 ) テキスト学習 ( 不定期 ) 各種検査 処置ビデオ学習 ( 月 2~3 回 ) 火曜日水曜日木曜日 金曜日 個人プログラム 薬剤指導 栄養指導 心理検査など 教育プログラム トレッキング / ビデオ学習 ( 体力にあわせどちらかに参加 ) 院内断酒会小集団療法 初期講習 ( 入院中 1 回 ) 退院前教室 ( 入院中 1 回 ) 体力測定( 入院中 2 回 ) レクリエーション ( 第 2 4 週 ) 栄養教室 ( 月 1 回 ) グループミーティング ( 不定期 ) AA メッセージ ( 月 1 回 )
適用基準 除外区分プログラム受講可能な身体状態で重篤な身体合併症がないある 座位保持が可能である プログラム受講可能な精神状態で著しい認知機能低下がないある プログラム受講に同意している アセスメント プログラム受講可能なレベルまで精神状態が安定している主治医によりアルコール依存症およびアルコール乱用の診断がなされている主治医により病名告知がなされている PtはARP 治療契約に同意している ( 家族がいる場合 )Ptの家族はARP 治療契約に同意している
アウトカム Ptは安全に病棟生活を送ることができる Pt は規則正しい生活を送ることができる Pt は自身の身体合併症を認識できる Pt は自身の飲酒問題に取り組める 転倒 転落を起こさず過ごすことができる Pt は安全に薬を内服できる スタッフは治療を評価できている アウトカム評価 (29 日目 ) アセスメント Ptは病棟規則を守ることができる Ptは他 Ptとトラブルを起こさずに過ごすことができる ( 単独散歩を行っている場合 ) 散歩の範囲 時間を守ることができる Pt は安定した夜間の睡眠を得ることができ 日中の活動に支障がない排便コントロールができている Ptは自身の内科的合併症について理解できている ( 必要な場合 )Ptの内科的合併症について治療をおこない 動機づけとする Pt は ARP に積極的に参加できている主治医は院外自助 GについてPtに説明し 参加を促した Ptは自分がAL 症であると認めることができる Ptは自身のアルコール問題について認識できている ( 再飲酒があった場合 )Ptに入院継続の意思がある ( 再飲酒があった場合 )Ptは再飲酒防止の誓いを記載した ( 再飲酒があった場合 )Ptは再飲酒の状況をスタッフとともに振り返った ( 再飲酒があった場合 )Ptは再飲酒防止の誓いの内容を院内断酒会で発表した ( 家族がいる場合 ) スタッフはPtに対する家族の思いを把握する看護師は転倒 転落のリスク評価をおこなった転倒 転落のリスク評価に基づき 適切な対策がとれている Ptは自身の内服薬 ( 特に抗酒薬 ) について理解できている薬の副作用が出現していないかスタッフは評価できている薬の自己管理が可能かスタッフは評価できているスタッフは外泊時の確実な内服方法について計画できている第 1 回多職種カンファを行った あるいは行う予定である
電子カルテ上でのパスの利点 新人スタッフでも治療の流れが把握しやすい 指示 検査オーダーなどにもれがない 看護師が積極的に CIWA ArA を評価するようになった 定期的な多職種カンファを行うようになった 入院治療で 最低限すべきこと スタンダードは何か を考えるようになった 紙ベースでの俯瞰的な患者用 医療者用クリニカルパスを併用することで 患者 医療者間で治療の目標などを共有しやすくなった
考察 従来より問題とされてきた検査のオーダー忘れなどのミスが減り 身体面の評価をスムーズに行えるようになった また俯瞰的なクリニカルパスを併用することで 患者だけでなく新人スタッフも治療の流れを把握しやすくなったと考えている 精神科の治療では治療のゴールが明確でなく 客観的なアセスメントやアウトカムの評価が困難である アルコール依存症リハビリテーションプログラムは90 日という長期にわたるプログラムであり 検査の確認漏れが生じやすく またバリアンスやパス中止に至りやすい
結論 電子カルテ上にパスを作成したことで 検査オーダーや指示を一貫して行えるようになった貫して行えるようになった さらに改定を重ねることで治療の質を向上させ断酒成功に さらに改定を重ねることで 治療の質を向上させ 断酒成功につなげていきたい