治療学犬と猫の化学療法 (3) 静脈内点滴が必要なほど重度な胃腸障害が発生 した場合 化学療法の延期が必要な状況 (4) その他, 動物の生活の質 (QOL) を極端に落とす 1 副作用が発生したとき 1

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70% の患者は 20 歳未満で 30 歳以上の患者はまれです 症状は 病巣部位の間欠的な痛みや腫れが特徴です 間欠的な痛みの場合や 骨盤などに発症し かなり大きくならないと触れにくい場合は 診断が遅れることがあります 時に発熱を伴うこともあります 胸部に発症するとがん性胸水を伴う胸膜浸潤を合併する

AC 療法について ( アドリアシン + エンドキサン ) おと治療のスケジュール ( 副作用の状況を考慮して 抗がん剤の影響が強く残っていると考えられる場合は 次回の治療開始を延期することがあります ) 作用めやすの時間 イメンドカプセル アロキシ注 1 日目は 抗がん剤の投与開始 60~90 分

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使用上の注意 1. 慎重投与 ( 次の患者には慎重に投与すること ) 1 2X X 重要な基本的注意 1TNF 2TNF TNF 3 X - CT X 4TNFB HBsHBcHBs B B B B 5 6TNF 7 8dsDNA d

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1 8 ぜ 表2 入院時検査成績 2 諺齢 APTT ALP 1471U I Fib 274 LDH 2971U 1 AT3 FDP alb 4 2 BUN 16 Cr K4 O Cl g dl O DLST 許 皇磯 二 図1 入院時胸骨骨髄像 低形成で 異常細胞は認め


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を優先する場合もあります レントゲン検査や細胞診は 麻酔をかけずに実施でき 検査結果も当日わかりますので 初診時に実施しますが 組織生検は麻酔が必要なことと 検査結果が出るまで数日を要すること 骨腫瘍の場合には正確性に欠けることなどから 治療方針の決定に必要がない場合には省略されることも多い検査です

というもので これまで十数年にわたって使用されてきたものになります さらに 敗血症 sepsis に中でも臓器障害を伴うものを重症敗血症 severe sepsis 適切な輸液を行っても血圧低下が持続する重症敗血症 severe sepsis を敗血症性ショック septic shock と定義して

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甲状腺機能が亢進して体内に甲状腺ホルモンが増えた状態になります TSH レセプター抗体は胎盤を通過して胎児の甲状腺にも影響します 母体の TSH レセプター抗体の量が多いと胎児に甲状腺機能亢進症を引き起こす可能性が高まります その場合 胎児の心拍数が上昇しひどい時には胎児が心不全となったり 胎児の成

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治療学犬と猫の化学療法 治療学 表 1 WHO と RECIST における治療効果評価法の概要と相異 評価法 WHO 面積 ( 腫瘤の最大長径 x 最大短径 ) や体積など RECIST 腫瘤の最大長径 犬と猫の CR( 完全奏効 ) 全病変の消失 P R( 部分奏効 ) >50% の縮小 >30% の縮小 SD( 維持病変あるいは安定 ) PR に満たない縮小 or PD に満たない増大 P D( 進行性病変 ) >25% の増大 >20% の増大 新規病変の出現 化学療法 RECIST:Response Evlution Criteri in Solid Tumors 2,WHO:World Helth Orgniztion 3 小林哲也 Koyshi, Tetsuy 公益財団法人日本小動物医療センター付属日本小動物がんセンター米国獣医内科学専門医 ( 腫瘍学 ) アジア獣医内科学専門医 ( 小動物 ) 薬剤減量が必要な状況と方法 (1) 好中球数の最下点 ( 総白血球数でない ) が 1,500/μL あるいは血小板数の最下点が 75,000/μL 未満となった場合 はじめに 1. 前回投与した薬用量が過剰であったと判断する状況 3 1 000 500 4 25 500 30 2 22 5 2 10 2 80 2 70 2 1 (2) 発熱性好中球減少症 (ferile neutropeni: 化学療法の効果判定法 25 FN) あるいは敗血症 が発生した場合 薬剤強度 (Dose intensity): 適切な薬用量での投与のすすめ 2 1 表 1 ) 化学療法の投与の是非を検討する際は, 末梢血液中の寿命 (4 7 時間程度 ) が最も短い血球である好中球を用いて骨髄の回復具合を判断する ただし, 化学療法中は, 総白血球数と好中球数が必ずしも連動して増減するとは限らない したがって, 総白血球数で化学療法投与の是非を問うことは避けるべきである ) 獣医療で発熱性好中球減少症 (FN) は厳密に定義されていないが,SorenmoやBrittonらは,FNを化学療法後の発熱を伴う好中球減少症で, 好中球数 2,500/μL 未満かつ直腸温で39.2 以上の発熱を伴う状態と暫定的に定義している Sorenmo,K. U., Hrwood,L. P.,King,L. G. et l. (2010) : Cse-control study to evlute risk fctors for the development of sepsis (neutropeni nd fever) in dogs receiving chemotherpy. J. Am. Vet. Med. Assoc., 2010 Mr. 15 : 236(6) : 650-656. Britton,B. M., Kelleher,M. E. Gregor,T. P. et l. (2014) : Evlution of fctors ssocited with prolonged hospitl sty nd outcome of ferile neutropenic ptients receiving chemotherpy: 70 cses (1997-2010). Vet. Comp. Oncol., Dec 12(4) : 266-276. c) 細菌感染によって引き起こされた全身性炎症反応症候群 (SIRS) を敗血症と呼ぶ 犬の全身性炎症反応症候群の定義は次の項目の2つ以上を満たすこと 1. 体温 :37.8 以下,39.7 以上,2. 心拍数 :120 回 / 分以上,3. 呼吸数 :20 回 / 分以上,Pco 2 が32 mmhg 以下,4. 総白血球数 :5,000/μL 以下,18,000 μl 以上, または桿状好中球の比率が10% 以上 ; 猫の犬の全身性炎症反応症候群の定義は次の項目の2つ以上を満たすこと 1. 体温 :37.0 以下,39.7 以上,2. 心拍数 :140 回 / 分以下,225 回 / 分以上,3. 呼吸数 :40 回 / 分以上,4. 総白血球数 :5,000/μL 以下,19,000 μl 以上, または桿状好中球の比率が10% 以上 60 Vol. 3 No. 2 2016 Vol. 3 No. 2 2016 61

治療学犬と猫の化学療法 (3) 静脈内点滴が必要なほど重度な胃腸障害が発生 した場合 化学療法の延期が必要な状況 5 4 3 474 92 3 000 75 000 2 4 5 6 4 150 000 2 3 (4) その他, 動物の生活の質 (QOL) を極端に落とす 1 副作用が発生したとき 1 1 2 2. 投与前に化学療法剤の代謝 排泄経路に機能不全や排泄障害が認められている状況 48 化学療法の適応性について迷ったときの考え方 (2) 分子標的薬 ( トセラニブ ) (1) 肝臓で代謝され, 胆汁を介して排泄される薬剤 総ビリルビン値が1.5 mg/dl 以上の際は, 薬用量を50% 減量するか他剤への変更が必要 3 10 3 1. すでに転移している症例 (1) 一般的な化学療法 24 7 (2) 腎機能障害が存在するときに絶対に投与すべきでない薬剤 2. 高齢動物 (3) 腎機能障害が存在するときに慎重に投与すべき 完全奏効を目指す場合と緩和を目指す場合の化学療法剤の使い方の違い 薬剤 62 Vol. 3 No. 2 2016 Vol. 3 No. 2 2016 63

治療学犬と猫の化学療法 3. 明らかな転移は認められないが, 低い奏効率しか見込めない症例 28 1 4 6 24 165 15 300 350 2 3 図 1 ドキソルビシン ( アドリアシン R ) 減量手術が可能な場合 10 代表的な化学療法剤の概要と実践的な薬用量の調整法 4 6 8 9 10 7 14 2 10 11 1. ドキソルビシン 3 12 6 7 13 14 併発疾患などにより副作用のリスクが高い場合の考え方 図 1 分類 作用機序 作用周期 代謝と排泄 減量手術が困難な場合 術後補助的化学療法を実施する際の効果の判定方法や実施期間 7 27 5 64 Vol. 3 No. 2 2016 Vol. 3 No. 2 2016 65

治療学犬と猫の化学療法 表 2 ドキソルビシン投与中に血管外漏出を疑った際の対処法 治療のコンセプト : ドキソルビシンの血管外漏出の治療の目的は, 漏出した薬剤を最小限の量で局所に留めること 対処法 1. 投薬を中止する 2. 装着されている留置針は直ぐに引き抜かず, その留置針から周囲に漏出した薬剤を可能な限り吸引する 漏出したドキソルビシンの量によっては, 漏出部位を外科的に洗浄 摘出することもある 3. 1 回 10 分間の冷湿布を 1 時間おきに 24 時間実施する 図 2 ドキソルビシン投与による脱毛の変化 ()11 歳齢, 去勢雄, マルチーズ, 初診時の外貌写真 皮下に発生した血管肉腫に対しドキソルビシンが投与された () 第 92 病日の外貌写真 合計 7 回のドキソルビシン (1 mg/kg) が投与された (c) 第 127 病日の外貌写真 約 1 カ月間の休薬後は色素沈着が若干軽減し, 被毛も生え始めた c 4. デクスラゾキサン ( サビーン R )300 600 mg/m 2 を約 15 30 分かけて静脈内投与 ドキソルビシンの血管外漏出後 3 時間以内の投与が最も効果的である 可能であれば, 翌日に同量を再投与するとよい 180 2 30 60 120 2 180 2 2 1 2 d 28 適応 5 15 10 25 c 図 3 ドキソルビシンの血管外漏出による周囲組織の変化 () 直後の写真 () ドキソルビシン漏出から 1 週間後の写真 漏出部の浮腫が始まっている (c) ドキソルビシン漏出から 6 週間後の写真 表皮の潰瘍化が始まった (d) ドキソルビシン漏出から 8 週間後の写真 皮下に大きなポケットが認められており, 壊死組織は骨まで到達している この犬は, 感染のコントロールおよび疼痛が管理できなくなり, 後肢の断脚を余儀なくされた 図 2 2 10 15 25 30 2 15 30 2 25 100 30 60 20 25 2 25 30 60 5 15 1 4 7 175 図 3 7 90 16 120 表 2 5 10 25 2 10 2 15 30 2 66 Vol. 3 No. 2 2016 Vol. 3 No. 2 2016 67

治療学犬と猫の化学療法 1 10 25 図 4 シクロホスファミド ( エンドキサン R ) () 注射剤 () 経口用原末 主な適応 図 5 ビンクリスチン ( オンコビン R ) 4 510 15 2. シクロホスファミド 200 250 2 15 2 30 2 図 4 1 1 分類 10 作用機序 分類 2 17 19 細胞周期 20 作用機序 代謝と排泄 1 細胞周期 50 21 代謝と排泄 25 2 5 7 1 1 5 5 20 50 510 5 24 1 薬価 28 3 10 5 7 1 130 1 856 504 968 薬価 28 3 4 5 8 322 100320 1 5 1 130 1 856 50 34 100 157 10 2 260 3 712 30 3 390 4 968 250 2 1 1 4 1 856 3 8 5 320 10 640 30 960 希釈後の保存法 95 15 22 24 10 22 13 25 4 320 257 530 203 3. ビンクリスチン 図 5 d) リンパ腫導入期におけるハイリスク因子 : サブステージ, 血液凝固異常あるいは DIC, 顕著な低アルブミン血症, リンパ腫の骨髄浸潤, 重度リンパ節腫脹, 極端な肝酵素の上昇, 血小板減少症など 68 Vol. 3 No. 2 2016 Vol. 3 No. 2 2016 69

治療学犬と猫の化学療法 表 3 ビンカアルカロイド ( ビンクリスチンやビンブラスチンなど ) 投与中に血管外漏出を疑った際の対処法 表 2 治療のコンセプト : 対処法 ビンカアルカロイドの血管外漏出の治療の目的は, 漏出した薬剤の吸収を促進すること 1. 投薬を中止する 2. 装着されている留置針は直ぐに引き抜かず, その留置針から周囲に漏出した薬剤を可能な限り吸引する 3. 生理食塩水を局所注射する 4. 温湿布を数時間適用する 適用 2 0 3 0 2 5 1 5 2 5 1 3 5 2 2 31 26 35 5 薬価 28 3 図 6 ビンブラスチン ( エクザール R ) 1 12 826 10 7 10 1 52 2 0 2 2 826 2 32 2 0 2 希釈後の保存法 95 29 30 1 253 87 1 500 2 500 0 2 0 4 2 3 0 2 その他 注意点 2 0 2 2 0 表 3 主な適用 27 4. ビンブラスチン 2 図 6 1 5 2 33 1 5 0 5 0 7 2 12 24 分類 0 7 2 作用機序 50 薬価 28 3 0 025 0 5 2 6 12 18 24 細胞周期 102 921 代謝と排泄 1 1 5 28 2 921 50 24 希釈後の保存法 95 514 5 7 5. カルボプラチン 図 7 1 5 2 分類 作用機序 70 Vol. 3 No. 2 2016 Vol. 3 No. 2 2016 71

治療学犬と猫の化学療法 その他, 注意事項 7. ロムスチン 図 7 カルボプラチン ( パラプラチン R ) 図 8 L アスパラギナーゼ ( ロイナーゼ R ) 図 9 6 8 分類 1 作用機序 2 細胞周期 細胞周期 1 代謝と排泄 24 50 代謝と排泄 細胞周期 薬価 28 3 代謝と排泄 50 5 3 213 4 135 15015 5 467 13 528 14 45045 13 725 29 483 1 5 6 426 1 8 270 10 5 467 13 528 30 10 934 27 056 1 7 21 1 4 3 213 4 135 1 000 その他, 注意事項 適用 400 34 5 4 7 6.L アスパラギナーゼ 45 12 3 43 10 適用 図 8 4 分類 薬価 28 3 51 1 作用機序 5 000 200 250 2 250 2 200 10 000 4 525 300 2 300 2 1 10 2 200 20 200 225 2 4 525 30 6 725 1 4 2 200 希釈後の保存法 72 Vol. 3 No. 2 2016 Vol. 3 No. 2 2016 73

治療学犬と猫の化学療法 図 9 ロムスチン (CeeNU R ) ( )C e e N U 10mgおよび 40mgカプセルの容器の写真 () ロムスチンの 40 mg,10 mg,2.5 mgカプセル 2.5 mgのロムスチンカプセルは, 院内の化学療法剤調合用の安全キャビネット内で作製している 図 10 トセラニブ ( パラディア R ) 10929 32 1095 15 60 70 2 1 3 15 30 70 80 2 30 35 80 2 40 80 90 2 3 53 17 32 4 60 2 4 6 3 3 4 10 500 1 000 4 500 c 図 11 トセラニブ投与による色素脱 ()10 歳齢, 避妊雌, パグ 口唇部の肥満細胞腫の治療でトセラニブの処方を開始 初診時の外貌写真 () トセラニブ処方後, 第 42 病日の外貌写真 口唇部の色素脱が始まっている (c) トセラニブ処方後, 第 183 病日の外貌写真 口唇部のみだけでなく, 顔面全体の色素脱が顕著である 10 2 1 36 薬価 3 44 6 1 6 8. トセラニブ 150 000 図 10 適用 3 4 分類 74 Vol. 3 No. 2 2016 Vol. 3 No. 2 2016 75

治療学犬と猫の化学療法 作用機序 代謝と排泄 6 1 45 図 11 適用 30 37 薬用量 28 3 2 4 2 93 2 8 3 3 251 19 5 48 3 38 2013 0 5 薬価 395 10 590 15 1 940 50 10 985 2 30 3 120 2 その他, 注意事項 50 2 3 2 751 1 39 参考図書 資料 1 2013 2 5 2010 3 8 2015 4 参考文献 1 1988 121 141 2 2009 1 1 45 2 228 247 3 1981 1 47 1207 214 4 1993 45 1987 1991 15202 2 304 306 5 3 1999 95 40 5517 522 6 2002 24 38 5445 451 7 2012 10 3 194 205 8 1992 1621978 1988 1200 7995 999 9 1988 2 4177 180 10 1996 4819911993 10 276 81 11 2013 4 12 1998 32 1991 1993 34 5 417 421 13 2007 21 4764 769 14 2004 18 2209 213 15 2001 271989 2000 1218 91444 1448 16 1992 32 6 282 88 17 2007 538 46 18 2007 6848 56 19 2010 24 1152 1457 20 2007 21 1141 148 21 2008 10 4 324 331 22 2003 216 1990 1996 15222 10 1388 1393 23 2012 19 24 2002 6 16 6704 709 252008 22 61373 1379 26 2013 27 1134 140 271991 27 315 321 28 2002 16 5570 575 29 2005 19 5732 736 30 2005 41 4221 226 31 2010 8 2138 152 32 58 10 2014 33 2 0 2011 34 523 2013 35 2009 7 4244 255 36 2001 15 3196 199 37 2016 11 38 2009 11654 1 15 113856 3865 39 2014 1610 1111 12091 76 Vol. 3 No. 2 2016 Vol. 3 No. 2 2016 77