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労災疾病等 13 分野医学研究 開発 普及事業 第 2 期 ( 平成 21 年度 ~ 平成 25 年度 ) 分野名 四肢切断 骨折等の職業性外傷 職業性の四肢の挫滅損傷及び外傷性切断に対する早期治療等に関する地域医療連携体制の構築に係る研究 開発 普及 職業性外傷疾患研究センター 主任研究者燕労災病院整形外科部長幸田久男

はじめに 上肢の職業性外傷の形態は 単純な打撲から切創や切断に至るまで多岐にわたる 損傷された手の機能を最大限に回復させるには 受傷後早期から適切な治療が必要であるが そのためには 損傷形態および重症度の正確な診断と専門医による適切な治療計画の決定が不可欠となる 重度損傷手の機能的予後は その重症度と治療の妥当性によって決定されるが 損傷形態や重症度が機能的予後や職場復帰レベルにおよぼす影響に関しての調査も十分になされているとは言い難い そこでわれわれは第 1 期労災疾病研究において 手指切断 不全切断 50 例を Hand Injury Severity Score ( 以下 HISS) で評価し 最終獲得機能や職場復帰レベルの予測に HISS が有用であることを示した しかし HISS は皮膚 腱 神経 骨損傷に関しての評価であり 血管損傷の評価が含まれないことが問題点と考えられた テーマ 1 手指外傷に対するスコアリングシステムの再構築 上肢の職業性外傷における手指切断は最も重篤な受傷形態のひとつであり マイクロサージャリー技術 ( 微小手術 ) および医療機器の進歩によりその成功率は格段に向上している 一方 工業機器の進歩と労災事故防止の啓発によって 手指切断症例数は減少し 切断部位は指尖に多い傾向が見受けられる しかし 切断部位が遠位になれば より高度な再接着技術や医療機器が求められることになるため 再接着のみならず指尖切断に対する再接着術以外の治療法に関しても検討する必要がある また 手指切断に対して機能的および整容的に良好な手指を再建するためには 切断指再接着術後の二次手術が不可欠である さらに 高齢化の進む現在の日本では活動性の高い高齢者が増加しており 彼らが職業性外傷を受傷する機会も増すことが予想されることから 高齢者に対する再接着術の適応や限界についての検討を行う必要がある テーマ 2 切断指再接着に関する調査研究 切断指再接着手術は一般的に緊急的に行われ 執刀医はもちろん助手や看護師など多くのマンパワーと時間を要する さらに多数指切断に対して再接着を行う場合 手術時間はより長くなり執刀医の負担は無視できない 一方でマイクロサージャリーの進歩により切断指再接着の適応は拡大しつつあり より高度な技術とよりよい成績を求められている それらに対応するためには 限られた施設にマイクロサージャンを集約化し 複数の専門医が手術を行うことが望ましい テーマ 3 マイクロサージャン ( 微少外科医 ) 集約化の必要性に関する検討

目的 労災疾病等 13 分野研究 開発 普及事業 本研究では以下の項目に関して検討することを目的とした テーマ 1 手指外傷に対するスコアリングシステムの再構築 テーマ 2 切断指再接着に関する調査研究 1 指尖部切断における確実性の高い安全な術式および手術器械の開発を検討すること 2 指尖切断に対する再接着術以外の術式を検討すること 3 機能的および整容的に良好な手指を再建するための切断指再接着後二次手術を検討すること 4 高齢者に対する再接着術を検討すること テーマ 3 マイクロサージャン ( 微少外科医 ) 集約化の必要性の検討 テーマ 1: 手指外傷に対するスコアリングシステムのするスコアリングシステムの再構築 対象と方法 対象は第一期研究と同一の症例群で 上肢職業性外傷のうち 切断や挫滅損傷のように神経や血管損傷を含み マイクロサージャリーによる再接着や血行再建および遊離組織移植による再建が必要であった重度損傷手とした 平成 8 年 1 月から平成 12 年 9 月までに受傷し 受傷後 5 年以上経過した82 例を選定し 呼出調査に応じた50 例 ( 受傷時年齢 18~69 歳 平均 43 歳 男性 40 例 女性 10 例 ) に対して直接検診を行った 対象症例の罹患側 損傷指数 切断 不全切断の別 損傷レベル 損傷形態 術後経過観察期間は表 1のとおりである 表 1 症例の概要

調査項目は 1 X 線写真撮影 2 Semmes-Weinstein test ( 以下 SWT), 2-point discrimination test ( 以下 2-PD) による知覚評価 3 手指可動域測定 4 玉井の評価基準による手指総合機能評価である さらに診療録を参照し 損傷指数 玉井分類による損傷レベル ( 図 1) 損傷形態を調査し これらが最終成績におよぼす影響を検討した 損傷レベルは遠位から近位に向かって ZoneⅠ から ZoneⅤ に分類し 損傷形態は clean crush avulsion の 3 型に分類した 重症度の包括的スコアとして Campbell らによって提唱された HISS 及びわれわれが考案した修正 HISSを用いた 各指に対して皮膚 骨 腱 神経損傷の範囲および程度に応じた基礎点数をつけ ( 表 2A) それらの合計に各指の機能的重要度に応じた定数をかけた後 各指の得点を合計した ( 表 2B) 図 1 玉井分類による切断レベル 修正 HISS では 血管損傷の評価として手掌部動脈弓損傷 総指動脈 および固有指動脈損傷にそれぞれ 8 8 4 点を追加し 2 本以上の固有指動脈損傷は 8 点の加点を行った ( 表 3) HISS と玉井の評価基準 修正 HISS と玉井の評価基準 および皮膚 骨 腱 神経 血管損傷因子それぞれの点数と玉井の評価基準との相関について Spearman の順位相関係数を用いて検定した

表 2 Campbell s Hand Injury Severity Score (HISS) 表 3 HISS Vascular HISS に血管損傷因子を追加

結果 HISS と玉井の評価基準との間には 相関係数が -0.772 と高い相関関係が示され 損傷重症度が高いほど最終獲得機能が低下した ( 図 2) 図 2 玉井の評価基準と HISS の相関関係 また HISS における各損傷因子と玉井の評価基準との間の相関関係は図 3 に示すとおりであった 図 3 HISS の各因子と玉井の評価基準との相関関係

修正 HISS と玉井の評価基準との間にも 相関係数が 0.737 と高い相関関係を認めたが 相関の強さは従来の HISS と同程度で 重傷例のみを含む群では血管損傷因子を加えたことによる有意な差は認められなかった 一方 血管損傷因子のみと玉井の評価基準との間の相関係数は -0.657 で 皮膚損傷因子および神経損傷因子と同程度の高い相関関係が認められた ( 図 4) 図 4 HISS の各因子と玉井の評価基準との相関関係 考察とまとめ 血管損傷因子を追加した修正 HISS と玉井の評価基準との間に高い相関関係が示されたが 相関の強さは従来の HISS と同程度であった 理由として 本研究の症例群が重傷例のみに限定されており 全症例で血管損傷を合併していたことから 修正 HISS として血管損傷因子を加えても HISS と玉井の評価基準との相関関係に大きな影響を及ぼさなかったためと推測される 血管損傷因子のみと玉井の評価基準との間の相関係数は 皮膚損傷因子および神経損傷因子と同程度の高い相関関係が認められており 血管損傷因子を追加して検討することの妥当性が示された 機能的母指の再建を最も重要な目標とすることは 母指を含んだ手指外傷に広く適応されるべき概念であり HISS の定数で母指が最も高いことは妥当と考えられる しかし 母指に対する対向指の再建においては様々な考察がなされており 必ずしも中環指の機能的重要度が高いとは限らず 母指以外の定数については議論の余地が残される 今後 軽症例を含む幅広い対照群を修正 HISS で評価し その有用性や各指の機能的重要度に関して検討していく必要があると考えられた

テーマ 2: 切断指再接着に関するする調査研究 1 指尖部切断における確実性の高い安全な術式および手術器械の開発に関する検討 対象と方法 再接着成功率 最終診察時の爪床幅の健側比 外観上の指尖萎縮の有無 DIP 関節以遠の長さの健側比 関節可動域の健側比 (%TAM:%Total Active Motion) 寒冷不耐の有無 知覚回復 (SWT, 2-PD) および骨癒合状態を調査した 結果 15 指中 13 指が生着し 生着率は 87% であった 爪床幅が健側比で平均 95.4% 末節長の健側比が平均で 93% と良好な形態が保たれ %TAM の平均は 92% だった 知覚回復は SWT で purple 8 blue 4 であったが 50 歳以上の 2 例で 2-PD が測定不能であり 患指に強いしびれが残存していた

考察とまとめ 労災疾病等 13 分野研究 開発 普及事業 指尖切断に対する再接着術では 従来の動脈吻合のみでも瀉血を併用すれば良好な成績が得られた 高倍率顕微鏡などの医療機器の進歩により 指尖切断においても静脈吻合を追加できる症例は増える傾向にある これにより瀉血のリスクを回避でき より安定した治療成績が期待できる テーマ 2: 切断指再接着に関するする調査研究 2 指尖切断に対する再接着術以外の術式の検討 対象と方法 神経縫合は 2 指のみに行われた 3 指で損傷指あるいは母趾からの爪床移植を併用した 術後うっ血の対策として 幅の狭いジグザグ切開を用い 血管茎に約 4mm 幅の皮下静脈網を含めて皮弁を挙上した ( 図 3) 術後経過観察期間は 4~13 か月 平均 6.6 か月だった 皮弁生着率 術後合併症 最終診察時の %TAM および SWT を調査した

結果 労災疾病等 13 分野研究 開発 普及事業 14 皮弁とも完全に生着した 術後合併症として 2 皮弁で軽度のうっ血を呈したため 皮弁の抜糸と注射針による瀉血を行った %TAM は 52~ 95% で平均 74% だった PIP および DIP 関節の屈曲拘縮角度の平均はそれぞれ 9.4 度 12 度であった 最終経過観察時に Semmes Weinstein test が行われていたのは 11 指で 2 例を除いて purple から blue の知覚回復が得られた 神経縫合を行わなかった ( 非知覚皮弁 )9 指のうち最も大きい皮弁 (25 35mm) の知覚回復は不良であったのに対し 神経縫合を行った ( 知覚皮弁 )2 指のうち最も大きい皮弁 (28 35mm) の知覚回復は良好であった 考察とまとめ 血管茎に皮下静脈網を含めて皮弁の挙上することで術後のうっ血を回避でき 高い生着率が得られた 採取可能な皮弁サイズについては今後詳細な検討が必要となるが 比較的大きな皮弁に対しては神経縫合を追加することが望ましい

テーマ 2: 切断指再接着に関するする調査研究 3 機能的および整容的に良好な手指を再建するための切断指再接着後二次手術の検討 対象と方法 再接着あるいは血行再建の成功率 初回手術が不成功であった症例を除く二次手術の有無 手術法 手術時期について調査した 結果 全体の生着率は 94% で 完全切断指では 93% 不全切断指では 95% の生着率であった 単独指再接着の症例では33% が二次手術を受けたにとどまったが 多数指再接着の症例では74% が二次手術を受けていた 損傷レベルにおいては Zone1 10% Zone2 25% Zone3 76% Zone4 96% Zone5 100% で二次手術が行われ 損傷レベルが近位になるにしたがい 二次手術が必要となる症例の割合が増加していた また損傷形態別では clean 27% Crush 74% avulsion 78% で二次手術が行われており 損傷形態が複雑化するにしたがい 二次手術の頻度も増加していた 最も多く行われていた二次手術は骨移植 皮膚 軟部組織 腱および骨に関する手術だった

手術時期を初回手術後 2 か月を境に早期 晩期に分けると 早期では皮膚 軟部組織の再建が最も多く施行され 晩期では腱剥離術や腱移行術が最も多かった 考察とまとめ 多数指切断や複雑な組織欠損を伴う症例では 必ずしも一期的再建が十分に行えるとは限らず 適切な時期に皮膚 軟部組織 骨安定性 手指可動域などを再建することが必要となる 一般に 皮膚 軟部組織 骨安静性 腱 関節 外観の順に二期的再建が行われるべきである テーマ 2: 切断指再接着に関するする調査研究 4 高齢者に対する再接着術の検討 対象と方法 1 指のみの再接着が 6 例で 2 指 3 指 4 指の再接着が各 1 例ずつであった 全例 腕神経叢ブロック下に通常の再接着手技で手術を行い 術後抗凝固療法を 1~2 週間施行した 再接着成功率 手術時間 術後合併症 および最終診察時の TAM SWT を調査した

結果 労災疾病等 13 分野研究 開発 普及事業 手術時間は 2 時間 52 分から 7 時間 45 分 平均 5 時間 8 分で 8 例 14 指 (93%) は完全生着したが 左母指切断の 1 例 1 指に部分壊死を認め 逆行性橈側前腕皮弁による再建を要した 指可動域は母指以外の TAM が 0 度から 177 度 平均 80.3 度で 母指 TAM が 20 度から 70 度 平均 38.7 度であった 知覚評価を施行しえた 8 指すべてで Semmes Weinstein Test が Purple となり protective sensation が獲得されていた 1 例で術中不穏により全身麻酔に変更した 術後合併症は 1 例で輸液負荷による心不全を発症したが 輸液の減量と全身管理により回復し 切断指は良好に生着した 考察とまとめ 高齢者に対する切断指再接着の成績は若年者の成績との間で有意差はなく 年齢のみで再接着術の適応を決定すべきでない 手術は低侵襲を心がけるとともに 術後合併症の予防にも細心の注意を払う必要がある

テーマ 3: マイクロサージャン ( 微少外科医 ) 集約化の必要性に関するする検討 対象と方法 2005 年 10 月から 2009 年 7 月までに燕労災病院整形外科で行われた切断指再接着 31 例 52 指のうち 多数指再接着が行われた 13 例 32 指を対象とした 性別は男性 12 例 女性 1 例で 年齢は 21~78 歳 平均 50 歳であった 完全切断は 6 例で 部分的に皮膚の連続性を有する不全切断は 7 例であった 再接着成功率 手術時間 助手を除く執刀医の数などについて調査した 結果 再接着指 32 本中 31 本が生着し 全体の生着率は 97% で 完全切断が 93% 不全切断が 100% の成功率だった 手術時間は 4 時間 34 分から 12 時間 31 分 平均 6 時間 22 分で 再接着 1 指あたりの手術時間は平均 3 時間 13 分であった 執刀医数別にみると 術者 1 名の手術は 1 指あたり 3 時間 33 分 術者 2 名では 2 時間 54 分であった 考察とまとめ 多数指切断に対する再接着術では 複数の術者を確保することで かなりの手術時間短縮と安定した治療成績が見込まれる 切断指再接着の適応は今後拡大していく傾向にあり マイクロサージャン集約化の必要性について各方面への啓発が必要である

四肢切断 骨折等の職業性外傷 分野 研究者一覧 幸田小熊成澤間庭 久男雄二郎弘子圭一 燕労災病院整形外科部長新潟労災病院整形外科第五整形外科部長新潟手の外科研究所教育部長新潟大学整形外科

本研究は 労災疾病等 13 分野医学研究 開発 普及事業により行われた 四肢切断 骨折等の職業性外傷 分野テーマ : 職業性の四肢の挫滅損傷及び外傷性切断に対する早期治療等に関する地域医療連携体制の構築に係る研究 開発 普及