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学位論文要旨 牛白血病ウイルス感染牛における臨床免疫学的研究 - 細胞性免疫低下が及ぼす他の疾病発生について - C linical immunological studies on cows infected with bovine leukemia virus: Occurrence of ot


成 21~22 年にかけて農林水産省の委託事業において動物衛生研究所 ( 現農業 食品産業技術総合研究機構動物衛生研究部門 ) が中心となり, 約 30 年ぶりに BLV 浸潤状況に関する全国調査を実施した. 本調査では, 移行抗体が消失する 6ヶ月齢以上の乳用牛 11,113 頭, 肉用牛 9,7

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A 農場の自家育成牛と導入牛の HI 抗体価の と抗体陽性率について 11 年の血清で比較すると 自家育成牛は 13 倍と 25% で 導入牛は 453 倍と % であった ( 図 4) A 農場の個体別に症状と保有している HI 抗体価の と抗体陽性率を 11 年の血清で比較した および流産 加療

Ⅰ 本ガイドラインの目的及び位置付け牛白血病のうち牛白血病ウイルス (bovine leukemia virus 以下 BLV という ) により引き起こされる地方病性牛白血病 ( 以下 本病 という ) は 近年 我が国での発生が増加しており 生産現場での被害も増加傾向にある このガイドラインは

第 3 節水田放牧時の牛白血病ウイルス対策 1. はじめに水田放牧のリスクの一つとして, 感染症があります 放牧場で広がりやすい牛の感染症の中でも, 牛白血病は近年わが国で非常に問題となっています この節では, 牛白血病の概要説明とともに, 水田放牧を行う際に取るべき牛白血病対策について紹介します

2016 年 12 月 7 日放送 HTLV-1 母子感染予防に関する最近の話題 富山大学産科婦人科教授齋藤滋はじめにヒト T リンパ向性ウイルスⅠ 型 (Human T-lymphotropic virus type 1) いわゆる HTLV-1 は T リンパ球に感染するレトロウイルスで 感染者

B 農場は乳用牛 45 頭 ( 成牛 34 頭 育成牛 7 頭 子牛 4 頭 ) を飼養する酪農家で 飼養形態は対頭 対尻式ストール 例年 BCoV 病ワクチンを接種していたが 発生前年度から接種を中止していた 自家産牛の一部で育成預託を実施しており 農場全体の半数以上の牛で移動歴があった B 農場

地方病性牛白血病

12 牛白血病対策のため考案したアブ防除ジャケットの実用化試験 東青地域県民局地域農林水産部青森家畜保健衛生所 菅原健 田中慎一 齋藤豪 相馬亜耶 水島亮 林敏展 太田智恵子 森山泰穂 渡部巌 小笠原和弘 1 概要わが国では近年 牛白血病の発生が増加しているが その原因である牛白血病ウイルス (BL

< HTLV 1 ウイルスについて > HTLV 1 ウイルスはヒト T 細胞白血病ウイルス 1 型と呼 ばれ 成人 T 細胞白血病などの原因であることが分かっています 日本は先進国の中でHTLV 1 抗体の陽性者が最も多く 100 万人を越えています 西日本に多くみられましたが 人口の移動とともに

報告風しん

13 プール法 県北 藤井

Title 日本における牛白血病ウイルスの浸潤状況と伝播に関する疫学的研究 ( 本文 (Fulltext) ) Author(s) 小林, 創太 Report No.(Doctoral Degree) 博士 ( 獣医学 ) 乙第 139 号 Issue Date Type 博士

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参考1中酪(H23.11)

Microsoft Word - 宮崎FMDマニュアル⑦ 指針別紙(評価)

Taro-H28.11

検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 I 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 茶色 )

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埼玉県調査研究成績報告書 ( 家畜保健衛生業績発表集録 ) 第 57 報 ( 平成 27 年度 ) 9 牛白血病ウイルス感染が生産性に及ぼす影響 中央家畜保健衛生所 畠中優唯 Ⅰ はじめに牛白血病は散発性と地方病性 ( 成牛型 ) の2つに分類される 牛白血病ウイルス (BLV) 感染を原因とする地

Taro-H23.10

★1-8

Taro-19増田

り感染し 麻薬注射や刺青なども原因になります 輸血の安全性や医療環境の改善によって 医原性の感染は例外的な場合になりました 日本では約 100 万人の B 型肝炎ウイルスキャリアがいます その大部分は成人で, 昔の母子感染を含む小児期の感染に由来します 1986 年から B 型肝炎ウイルスキャリアの

であった また 当該農場においては過去に EBL 発症例はなく BLV 検査は未実施で浸潤状況は不明であった 2 発症経過と病性鑑定実施経過平成 26 年 7 月末より 6 歳齢繁殖雌牛 1 頭 ( 発症牛 ) が 2 週間に及ぶ黄色水様性下痢を呈し 食欲低下と顕著な削痩が認められた 治療の効果がみ

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現在 本事業で分析ができるものは 1 妊娠期間 2 未経産初回授精日齢 3 初産分娩時日齢 / 未経産妊娠時日齢 4 分娩後初回授精日 5 空胎日数 6 初回授精受胎率 7 受胎に要した授精回数 8 分娩間隔 9 供用年数 / 生涯産次 10 各分娩時月齢といった肉用牛繁殖農家にとっては 極めて重要

蚊を介した感染経路以外にも 性交渉によって男性から女性 男性から男性に感染したと思われる症例も報告されていますが 症例の大半は蚊の刺咬による感染例であり 性交渉による感染例は全体のうちの一部であると考えられています しかし 回復から 2 ヵ月経過した患者の精液からもジカウイルスが検出されたという報告

検査項目情報 EBウイルスVCA 抗体 IgM [EIA] Epstein-Barr virus. viral capsid antigen, viral antibody IgM 連絡先 : 3764 基本情報 ( 標準コード (JLAC10) ) 基本情報 ( 診療報酬 ) 標準コード (JLA

化を明らかにすることにより 自閉症発症のリスクに関わるメカニズムを明らかにすることが期待されます 本研究成果は 本年 京都において開催される Neuro2013 において 6 月 22 日に発表されます (P ) お問い合わせ先 東北大学大学院医学系研究科 発生発達神経科学分野教授大隅典

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H28年度 業績発表会抄録

図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

2017 年 8 月 9 日放送 結核診療における QFT-3G と T-SPOT 日本赤十字社長崎原爆諫早病院副院長福島喜代康はじめに 2015 年の本邦の新登録結核患者は 18,820 人で 前年より 1,335 人減少しました 新登録結核患者数も人口 10 万対 14.4 と減少傾向にあります

2 参考 検体投入部遠心機開栓機感染症検査装置 感染症検査装置 (CL4800)

免疫学的検査 >> 5F. ウイルス感染症検査 >> 5F560. 検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 検体ラベル ( 単項目オーダー時

針刺し切創発生時の対応

はじめに 家畜保健衛生所が実施する事業 検査 調査等の業績は 各都道府県並びにブロックで毎年度に開催される家畜保健衛生業績発表会で発表 討議されている この全国家畜保健衛生業績抄録は 各都道府県の平成二十三年度の発表会の抄録を編集したものであり 発表された全ての演題が収載されている 抄録の配列は家畜

表 症例 の投薬歴 牛 8/4 9 月上旬 9/4 9/5 9/6 9/7 9/8 9/9 3 Flu Mel TMS Flu Mel Flu Mel Flu 体温 :39.0 体温 :38.8 : エンロフロキサシン Flu: フルニキシンメグルミン Mel: メロキシカム : ビタミン剤 TMS

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乳牛の繁殖技術と生産性向上

検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 I 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 茶色 )

陽転率別の清浄化へのシミュレーションを実施 今後は農家に対し具体的な対策を提案し 地域ぐるみで清浄化を推進していく所存 6. 春季に酪農場で発生した牛コロナウイルス病 : 青森県十和田家保富山美奈子 小笠原清高平成 26 年 4 月末 酪農家で集団下痢 乳量低下が発生し搾乳牛 1 頭が死亡 死亡牛の

2017 年 3 月臨時増刊号 [No.165] 平成 28 年のトピックス 1 新たに報告された HIV 感染者 AIDS 患者を合わせた数は 464 件で 前年から 29 件増加した HIV 感染者は前年から 3 件 AIDS 患者は前年から 26 件増加した ( 図 -1) 2 HIV 感染者

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糖尿病診療における早期からの厳格な血糖コントロールの重要性

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も 医療関連施設という集団の中での免疫の度合いを高めることを基本的な目標として 書かれています 医療関係者に対するワクチン接種の考え方 この後は 医療関係者に対するワクチン接種の基本的な考え方について ワクチン毎 に分けて述べていこうと思います 1)B 型肝炎ワクチンまず B 型肝炎ワクチンについて

検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 I 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 茶色 )

遡及調査にて77日前の献血時のHBVウイルス血症が確認できた急性B型肝炎の一例

始前に出生したお子さんについては できるだけ早く 1 回目の接種を開始できるように 指導をお願いします スムーズに定期接種を進めるために定期接種といっても 予防接種をスムーズに進めるためには 保護者の理解が不可欠です しかし B 型肝炎ワクチンの接種効果は一生を左右する重要なものですが 逆にすぐに効

両面印刷推奨 <4 種ウイルス疾患 ( 麻疹 風疹 水痘 流行性耳下腺炎 ) フローチャート> 医療機関の記録または母子手帳でワクチンを接種したことが A B C 2 回確認できる 1 回確認できる 全く確認できない D または E のどちらかを選ぶ D E 前回接種より少なくとも 1 ヶ月以上あけ

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2015 年 11 月 5 日 乳酸菌発酵果汁飲料の継続摂取がアトピー性皮膚炎症状を改善 株式会社ヤクルト本社 ( 社長根岸孝成 ) では アトピー性皮膚炎患者を対象に 乳酸菌 ラクトバチルスプランタルム YIT 0132 ( 以下 乳酸菌 LP0132) を含む発酵果汁飲料 ( 以下 乳酸菌発酵果

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イルスが存在しており このウイルスの存在を確認することが診断につながります ウ イルス性発疹症 についての詳細は他稿を参照していただき 今回は 局所感染疾患 と 腫瘍性疾患 のウイルス感染検査と読み方について解説します 皮膚病変におけるウイルス感染検査 ( 図 2, 表 ) 表 皮膚病変におけるウイ

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3. 安全性本治験において治験薬が投与された 48 例中 1 例 (14 件 ) に有害事象が認められた いずれの有害事象も治験薬との関連性は あり と判定されたが いずれも軽度 で処置の必要はなく 追跡検査で回復を確認した また 死亡 その他の重篤な有害事象が認められなか ったことから 安全性に問

肝臓の細胞が壊れるる感染があります 肝B 型慢性肝疾患とは? B 型慢性肝疾患は B 型肝炎ウイルスの感染が原因で起こる肝臓の病気です B 型肝炎ウイルスに感染すると ウイルスは肝臓の細胞で増殖します 増殖したウイルスを排除しようと体の免疫機能が働きますが ウイルスだけを狙うことができず 感染した肝

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平成20 年9月平成 20 年 ₉ 月 15 日発行広島市医師会だより ( 第 509 号付録 ) その結果がまとめられたことから 同月 17 日付けで 輸血療法の実施に関する指針 の一 部改正を行い通知しています 輸血前後の感染症マーカー検査の必要性 ( 指針改正箇所を抜粋 ) 本症は早ければ輸血

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マイコプラズマについて

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黒毛和種における牛白血病ウイルスの母子感染状況およびまん延防止対策の検討 中央家畜保健衛生所 山下将哉 大城守 津波修 野中克治 地方病型牛白血病は 牛白血病ウイルス ( 以下 BL V) に起因する致死性のリンパ肉腫で 発症率は 5 % 以下といわれている しかし近年 沖縄県を含め全国的に発生件数が増加傾向にあり 感染拡大が懸念されている ( 図 1 ) 地方病型牛白血病 (EBL) < 原因 > 牛白血病ウイルス < 病態 > 致死性リンパ肉腫 < 発症率 > <5% < 発生件数 > 28 年全国 1,4 件 (825 戸 ) 沖縄 25 件 (25 戸 ) 生後早期に感染したの多くは持続性リンパ球増多症となり感染源になることや 発病までに至る期間が短いとされることから への感染防御が極めて重要となっている 本病のまん延防止対策として様々なことが提唱されており 当所もそれらをもとに管内の対策に取り組んでいるところである 対策の一つに 母牛の初乳のへの給与中止 があるが そのいっぽうで BLV 感染牛の初乳中には BLV 感染細胞と同時に高力価の抗 BLV 抗体が含まれているため 生後 2 ~ 3 ヵ月の間は感染が防御されるともいわれている ( 図 3) 全国 沖縄県 12 14 1 838 発 772 8 生頭 587 数 6 468 47 4 248 169 161 192 2 99 H1 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H2 3 25 発生 2 頭数 15 1 5 1 1 1 7 H1 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H2 1 16 6 15 25 家畜衛生統計 における感染 生後早期に感染すると多くのは PL 牛となり感染源になる 発症までに至る期間も短くなる 初乳中の移行抗体により生後 2,3 ヶ月は感染が防御される 図 1 地方病型牛白血病の概要 母牛 BLV BLVは除角や直腸検査 吸血昆虫 乳汁などによる水平感染や垂直感染によって伝播される BLV に感染した牛の多くは長期間 無症状キャリアーとなり 約 3 % が一時的に持続性リンパ球増多症を呈する そして無症状期をへて 5 % 以下が発症するといわれている ( 図 2 ) Y BLV 抗原抗 BLV 抗体 図 3 Y Y Y Y Y Y Y Y における感染 BLV 感染 発症 感染牛の 5% 以下 BLV の伝播経路 感染牛 眼球突出 図 2 持続性リンパ球増多症 健康感染牛 削痩 約 3% 感染源 リンパ肉腫 BLV の伝播経路 水平感染 直検 除角 吸血昆虫 乳汁 同居牛 垂直感染 出生前感染 黒毛和種は初乳中の免疫グロブリン含量がホルスタイン種よりも高いという報告がある また 平成 19 年度に行われた地域別 BLV 浸潤状況調査では 率は乳牛で35% 肉牛の繁殖牛で12% であり 1 歳以下では乳牛で16% 肉牛で数% と報告されている 疫学的解析では抗体に関連する要因として 肉牛では外部からの導入 乳牛ではプール初乳があげられている この他にも黒毛和種とホルスタイン種では様々な違いがあるが これまでの調査や研究は乳牛が中心となっている ( 図 4)

黒毛和種 ( 肉牛 ) とホルスタイン種 ( 乳牛 ) の違い 初乳中免疫グロブリン 多い (16.1mg/ml) 少ない (73.1mg/ml) 率 12% ( 繁殖雌牛 ) 35% 1 歳以下の率 数 % 16% 抗体に関連する要因 外部からの導入 プール初乳 検査方法 抗体検査材料 : 母子 64 組を含む 14 戸 33 頭 ( 母牛 258 頭 72 頭 ) 方法 :PHA( 受身赤血球凝集反応 ) 遺伝子検査法 nested PCR (Fechnerらの報告に従いBLVenv 遺伝子 gp51 領域を標的とした ) 北海道畜産試験場 : 小原 平成 19 年度地域別 BLV 浸潤状況調査 ( 動物衛生研究所 : 村上ら ) 3 ヶ月齢未満ので nested PCR のものは移行抗体と判断しとした 図 4 黒毛和種とホルスタイン種の違い また 沖縄県は全国有数の黒毛和種生産出荷県であり 牛白血病のまん延防止対策が急務となっている そこで今回 初乳給与の是非について注目し 自然哺乳を主体とする黒毛和種における BLV 母子感染の実態を調査を行いまん延防止対策について検討したので報告する 材料および方法 抗体検査は 発症牛のあった農家を中心として 母子 64 組を含む 14 戸 33 頭の血清を用いて受身赤血球凝集反応 ( PHA ) にて行った 遺伝子検査はフェシュナーらの報告に従い nested PCR を行った なお 3 ヵ月齢未満のについては PHA であっても PCR のものは 移行抗体と判断しとした また より高精度で効率的な検査方法の検討をするため 今年の4 月に発売されたエライサ方法による検査をおこない PHA の結果と比較した また より高精度で効率的な検査方法の検討をするため エライサ方法による検査をおこない PHA の結果と比較した エライサは感度 特異度ともに従来の抗体検査方法より高いといわれ PHAに比べ安価で多検体処理が容易となっている ( 図 5) 抗体検査方法の比較 検査方法 2 材料 : 14 戸 33 頭のうち 2 戸 21 頭 ( 母牛 153 頭 57 頭 ) 方法 : ELISA(PHA の結果と比較 ) <ELISA 法の特徴 > 感度 特異度ともに高い PHA と比べ安価 多検体処理が容易 図 5 検査方法 結果と考察 全体での抗体率は 母牛で 49.2% で 13.9% であった また 1 歳を越えたあたりから抗体率が急激に上がっているのが確認できる ( 図 6)

感染状況 1 抗体率 (14 戸 33 頭 : うち母子 64 組 ) 母牛 49.2%(127/258) 13.9%(1/72) % 年齢と抗体率の推移 8 7 6 5 4 3 2 1 13.9 4. 43.5 66.7 61.9 64.7 75. 53.8 ~1 1~2 2~3 3~4 4~5 5~6 6~7 7~8 8< 46.4 年齢 感染状況 3 母牛ののうち無症状牛の子の率 :1%(4/4) うち3ヶ月齢未満 :4.3%(1/23) 3ヶ月齢以上 :17.6%(3/17) EBL 牛と PL 牛の子の率 : 8%(4/5) 図 6 抗体率 図 8 抗体母牛のの感染状況 母子における感染状況については 母牛 64 頭のうち 抗体母牛は 45 頭 抗体母牛は 19 頭であった 抗体母牛ののうち8 頭が 37 頭がであった ( 図 7) 図 7 感染状況 2 < 母子 64 組 > 母牛 64 頭中 45 頭が母牛ののうち 37 頭が 8 頭が 母 64 頭 母牛の 8 37 45 19 母子 64 組の抗体率 別の視点から見ると 母牛ののうち 無症状牛の子の率は 1.%(4/4) で そのうち3ヶ月齢未満では 4.3%(1/23) 3ヶ月齢以上で 17.6%(3/17) であった また 発症牛とリンパ球増多症牛の子の率は 8%(4/5) であった ( 図 8) 母牛ののうち 3ヶ月齢未満では高い抗体価を示すものが多く見られるが 3 ヶ月齢を過ぎたでは抗体価が低い傾向が見られた BLVに感染牛した (PCR ) のうち 3 ヶ月齢以降のものは 本来移行抗体がなくっていく時期であるのに高い抗体価を示している また 3 ヶ月齢以下のものでは 感染していないの多くが移行抗体により高い抗体価をしめしている また 感染も高い抗体価を示している ( 図 9) 抗体価 4,96 124 256 64 16 2 図 9 感染状況 4 母牛のの月齢と抗体価 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 11 12 月齢 移行抗体 (+) 移行抗体 (-) PCR(+) 母牛のの月齢と抗体価 これら 3 ヶ月齢以下の感染については 母牛の抗体価も高いため 初乳を摂取して以降は高い移行抗体により感染はなかったと思われるので出生前の垂直感染が疑われる また 図 1の表中 1のは 抗体測定不可であったがPCR であったため感染としている このは発症牛剖検時に胎児を検査したため 子宮内感染と思われる

3 ヶ月齢未満の感染 1EBL の子 2EBL の子 3EBL の子 4PL の子 5 無症状牛の子 胎齢 239 日 図 1 日齢 12 日 48 日 82 日 48 日 感染状況 5 抗体価 検査不能 4,96 1,24 4,96 母の抗体価 4,96 4,96 1,24 3 ヶ月齢未満の感染 抗体検査方法の比較については 母における一致率は 98.7 % では 7.2% であった PHAがでエライサがのものはなく 逆にPHAがでエライサがのものがで多く見られた ( 図 11) 子宮内感染 垂直感染の可能性 に感染がみられたとの報告 感染牛の初乳中には高力価の抗 BLV 抗体が含まれているため感染が防御されるという報告もあることなどから 総合的に考えて EBL 及び PL 牛のでは垂直感染の可能性が高いと考えられた 以上より初乳による感染は低いと考えられる 牛の初乳からの感染予防として 初乳の凍結や発酵処理によりBLVを失活させてから給与する方法があるが 黒毛和種では一般に搾乳は行われないので現実的ではない また 粉末初乳の給与という方法もありますが BLVに対する抗体のない状態を作るため 逆に水平感染の機会を増やすとも考えられる これらのことから黒毛和種の場合は初乳給与を基本とし 移行抗体が消失するまでに離乳 隔離すべきであると思われる また発症牛やリンパ球増多症牛においてはへの感染リスクが高いことから できるだけ早期に検査し の場合は淘汰を励行すべきとおもわれる ( 図 12) 母牛 母牛における一致率 98.7% における一致率 7.2% ELISA(+) PHA(+) 8 21 抗体検査方法の比較 一致 ELISA(-) PHA(-) 71 19 ELISA(+) PHA(-) 2 17 不一致 ELISA(-) PHA(+) まとめ及び考察 1) 無症状キャリアーでは 初乳を介した感染はリスクは低く 移行抗体が消失した以降の感染が多いことが示唆された 2)EBL 及び PL 牛のでは 子宮内および産道における垂直感染の可能性が高いと考えられた 3) 黒毛和種の場合は初乳給与を基本とし 移行抗体が消失するまでに離乳 隔離すべき 図 11 抗体検査方法の比較 4) EBL 牛 PL 牛のはできるだけ早期に検査し の場合は淘汰を励行 まとめ 無症状キャリアーから直接初乳を飲んだの感染率は低いといわれている 今回 1 歳以降での急激な抗体率の上昇がみられたことなどから 無症状キャリアーからへの感染率が低いことが示唆された とくに 3 ヶ月齢未満での感染率が低かったことから 垂直感染や初乳を介したへの感染リスクは低く 移行抗体が消失した以降の感染のほうが多いことが示唆された これは黒毛和種の初乳中の免疫グロブリン含量がホルスタイン種よりも高いことに関連すると推察される 経口的に摂取された感染リンパ球は感染源になることは少ないと言われている 発症牛の胎児では 3 % 図 12 まとめ及び考察 ELISAは 母子ともに感度が高いことが示唆された においてはPHAよりも多く移行抗体に反応していると思われる面があるが PCRの結果と比較しても感染牛の見逃しはなかったので ELISA は有用であると思われる また これまでの抗体検査と同様 感染を確実に摘発するには スクリーニング的にエライサを使用しPCRで判定することが必要かと思われる 終わりに 今後もこれまでどおり吸血昆虫の駆除 直腸検査手袋の 1 頭ごと交換 牛の分離飼育など基本的対策を指導していきながら 今回のように新たな対策の検討にも取り組み本病のまん延防止に努め

たい まとめ及び考察 2 5)ELISA 法は感度が非常に高いことが示唆された 感染の確実な摘発おいては ELISAとPCRの併用が有効 6) 基本的対策とともに 新たな対策の検討にも取り組み 本病のまん延を防止 図 13 まとめ及び考察 2