9-. 高さ制限 (. 絶対高さ,2. 斜線 ) の解説 高さ制限には,. 絶対高さ 2. 斜線 3. 隣地斜線 4. 北側斜線 5. 日影の 5 つの種類があります. 問題の出され方としては, あるの適当な地点 ( 部分 ) について, どれくらいの高さまで建築可能か? というような感じで出題されます. 解き方は, この 5 つの制限 それぞれについて計算してみて, もっとも厳しい制限をその部分の 高さの限度 として採用します. ただし, 大抵の場合は, 絶対高さ,4 北側斜線,5 日影は考慮しなくていいものとして出題されるため, 結果的に 2 斜線,3 隣地斜線により, 高さの限度 が決まる場合がほとんどです. どのような問題が出題されるのかというと, 下図のようなの地点 A についての建築できる高さの最高限度はいくらか? というような感じできいてきます. 地点 A 5 つの制限をそれぞれ算定してみて, もっとも厳しい制限より, この地点の 高さ制限 が決まる. 地点 A 9-. 高さ制限 (. 絶対高さ,2. 斜線 ) の解説 P/P8
. 絶対高さ ( 法 55 条, 令 30 条の0) 2 低層住専の場合, 建物の高さの限度 は,0m 以下もしくは,2m 以下のいずれかになります. これは, 高さ制限 の中では, 一番厳しい制限であるため, まず, 試験には計算問題として出ません. なぜかというとあまりにも厳しすぎて, 他の 高さ制限 を検討しなくても, この 絶対高さ により建築可能な高さの限度が決定してしまうからです. 0m または,2m( 地域別にどちらかで定められている ) を超えて建築してはいけません. 一級建築士試験では, 高さ制限の計算問題 は毎年 題出題されますが, が 種低層住専または, 2 種低層住専としては出題されたことがないのではないでしょうか? 少なくともここ 0 数年間では出題されていません. この 絶対高さ で 建築可能な高さの限度 がほぼ決まってしまうからです. 今後はひっかけで出題されるかもしれませんから, 2 低層住専ときたら, すぐ 絶対高さの制限 がある! と頭に浮かぶようにしておいてください. 2. 斜線 ( 法 56 条 項一号, 法別表第 3, 令 30 条の~ 令 35 条の4) 斜線によるある地点の高さの限度を計算する場合, 次の手順通りに進めて下さい.. 容積率 を求める. 2. 別表第三 ( に ) 欄 より, 勾配 と 適用距離 を求める. 3. の反対側の境界線 を決める. 4. の反対側の境界線 から, 求める地点が適用距離の範囲内にあることを確認する. ( 範囲外の場合は, 斜線制限は適用されないので, その地点の 高さの制限 の算定において, 斜線による高さの制限 は関係しません. つまり, 求める地点が適用距離を超えている場合は, 斜線 についての検討は必要なくなります.) 5. の反対側の境界線 から 求めたい地点 までの水平距離に 勾配 を掛け算して, 高さの限度を求める. これで内の求めたい地点についての斜線による建築可能な高さの限度が分かります. 具体的には, 次の図を使って説明していきます. この地点の斜線による高さの限度を求めてみよう. このようながあったとします. 9-. 高さ制限 (. 絶対高さ,2. 斜線 ) の解説 P2/P8
の反対側の境界線ってのはコレ! これは境界線 断面を見てみると... の反対側の境界線 境界線 高さの限度を求めたい地点 の反対側の境界線 斜線 は, 必ず の反対側の境界線 からスタートします. スタート位置の高さは前面の路面の中心の高さで考えます. 9-. 高さ制限 (. 絶対高さ,2. 斜線 ) の解説 P3/P8
斜線には決められた勾配があって, 勾配には,.25 か.5 の 2 種類しかありません. 住居系の場合.25 ただし, 2 種中高層 ( 法定容積率が 40/0,50/0 の場合に限る.), 2 種住居, 準住居地域のうち, 行政庁が指定する区域内の建築物については, 勾配.25 を.5 とすることができる.( 法別表第 3 備考三 ) 住居系以外の場合.5 垂直方向 水平方向 この 勾配 というのは, 水平方向の距離に対する垂直方向の高さの割合です. たとえば住居系の場合で水平方向に 20m 移動した地点の場合, 垂直方向 = 20m.25( 住居系の勾配 ) = 25m となります..25 垂直方向はいくら?.25 垂直方向 :25m 計算式 : 垂直方向の距離 = 水平方向の距離 勾配 なので, = 20m.25 = 25m となる. 水平方向 :20m 水平方向 :20m の反対側の境界線 コレが斜線. この線より高く建物を建てることはできません. ある地点の 斜線による高さの限度 建築可能範囲 以上で斜線による ある地点における建築可能な高さの限度 が分かります. そして, 内において, この斜線より低い部分が建築可能範囲となり, この斜線制限を超えて, 建物は建てることはできません. 9-. 高さ制限 (. 絶対高さ,2. 斜線 ) の解説 P4/P8
ただし, 斜線においては, 適用距離 というものがあります. これは, 斜線制限が適用される範囲を表すもので, の反対側の境界線 から, 適用距離を超える部分 には, 斜線制限が適用されず, 斜線制限の規定による高さの制限を受けません. 適用距離 も 勾配 といっしょに別表第 3( は ) 欄に出ています. 具体的には次の図を使って説明しましょう. の反対側の境界線 適応距離 適応距離を超える部分 適応距離 適応距離を超える部分 コレが斜線 建築可能範囲 適用距離を超える斜線の部分では斜線制限による制限はかからない. 以上が, 斜線の基本的な考え方です. この考え方をもとにいくつかの緩和措置がありますので, 次はそれらをマスターしていきましょう. 斜線における緩和措置には, 以下のの 5 つがあります. A. セットバック緩和 B..25 緩和 C.2 緩和 D. 水面緩和 E. 高低差緩和 A. セットバック緩和 ( 法 56 条 2 項, 令 30 条の 2) これは建物を境界線より離れて建てる場合において, その離れている距離の分だけ の反対側の境界線 を移動できるというものです. 文字だとわかりにくいので図を使って説明しましょう. このようながあったとします. 9-. 高さ制限 (. 絶対高さ,2. 斜線 ) の解説 P5/P8
建物 の部分に建物を建てるとします. の反対側の境界線 境界線 建物 境界線から建物までの距離 ( これを セットバック距離 という ) の反対側の境界線 は, セットバック距離 と同じ分だけの反対側になる. 同じ距離 建物 セットバック距離 9-. 高さ制限 (. 絶対高さ,2. 斜線 ) の解説 P6/P8
このように, の反対側の境界線がの反対側に移動するため, 斜線や適用距離も外側になったの反対側の境界線を基準に考えます. そのため, 内にはより高い建物が建築可能となるのです. これを セットバック緩和 ( 法 56 条 2 項, 令 30 条の 2) といいます. 断面を見てみると... の反対側の境界線 適応距離 適応距離を超える部分 斜線 建築可能範囲 セットバック緩和 により下図のようになります. の反対側の境界線 が セットバック距離 の分だけ移動する. この分だけ高く建てられるようになった. 適応距離 適応距離を超える部分 斜線 同じ距離 セットバック距離 9-. 高さ制限 (. 絶対高さ,2. 斜線 ) の解説 P7/P8
B..25 緩和 ( 法 56 条 3 項,4 項, 令 30 条の 2) これは住居系地域内にのみ適用される緩和措置です. どのような緩和措置かというと, 2 種低層住専を除いた住居系地域において, 前面が 2m 以上ある場合, 前面の反対側の境界線 からの 水平距離 が 前面幅員の.25 倍以上の部分 では, 斜線の勾配を :.5 としてよいというものです. 2 種低層住専については, 0m 2mの絶対高さ の制限がこの話以前に適用されるため除かれています. 本来, 住居系の勾配は :.25 なので, :.5 になることで内にはより高い建物が建築可能となるのです. では, 図で説明します. の反対側の境界線.25 :.25 の斜線 住居系地域 建築可能範囲 住居系地域の斜線を考える場合, 基本的には, 上の図のようになります. ここで前面の幅員が 2m 以上の場合は, 下の図のようになるのです. :.5 の斜線.5 :.25 の斜線 住居系地域.25 幅幅.25 ここから先の部分の勾配が.25 から.5 に緩和される. 9-. 高さ制限 (. 絶対高さ,2. 斜線 ) の解説 P8/P8
:.5 の斜線.5 :.25 の斜線 この部分が緩和されて, 建築可能となった. 住居系地域.25 幅幅.25 ここから先の部分の勾配が.25 から.5 に緩和される. 以上が,.25 緩和の基礎になります. どう? わかった? 問題でが住居系地域に該当する場合は, 幅員が 2m 以上じゃないかどうか必ずチェックしてね. この辺りの 注意力 が合否の分かれ目になります. 次に.25 緩和とセットバック緩和が複合される場合について解説します. 下の図を見てください. ( お, 教わる側もつらいと思うけど, 教える側もつらいねん. がんばれ!) の反対側の境界線 境界線 用途地域 : 住居系地域 建物の部分 このようなシチュエーションだとします. 9-. 高さ制限 (. 絶対高さ,2. 斜線 ) の解説 P9/P8
の反対側の境界線 境界線 幅員 セットバック距離 ( 境界線から建物までの距離 ) 幅員 セットバック距離 セットバック距離の分だけ, の反対側の境界線 が, の反対側に移動する. 上の図のように, セットバック緩和 を適用するとセットバック分だけの反対側の境界線が移動するというのは, 前の セットバック緩和 の所で, 説明しました. 9-. 高さ制限 (. 絶対高さ,2. 斜線 ) の解説 P0/P8
の反対側の境界線 本来の幅員 セットバック距離 これが幅員とみなされる. ( = みなし幅員 ) セットバック緩和 を適用した場合の幅員は上の図のようになり, みなし幅員 = セットバック距離 + 幅 + セットバック距離 = ( セットバック距離 2) + 幅 となります..25 緩和 の場合, の反対側の境界線 から 幅員.25 を超える範囲において適用されると先ほど説明しました. セットバック緩和を適用した場合, 上の図のように 幅員 とみなす範囲が大きくなってしまうため, 幅員.25 の範囲も大きくなり, において勾配を.5 とできる範囲が少なくなってしまいます. では, セットバック緩和を適用する場合 と, セットバック緩和を適用しない場合 とを図で比較してみましょう. 9-. 高さ制限 (. 絶対高さ,2. 斜線 ) の解説 P/P8
セットバック緩和を適用しない場合 幅.25 幅員.25 以上の範囲 ( この範囲では, 勾配が.25 から.5 に緩和される.) :.5 の斜線.5 :.25 の斜線.25 : 住居系地域 幅員 の部分 勾配が変わる位置 幅.25 幅員.25 以上の範囲 ( この範囲では, 勾配が.25 から.5 に緩和される.) セットバック緩和 がない場合, 反対側の境界線の位置は変わらないが, 幅員の大きさも変わらないため, 斜線勾配が :.25 から :.5 に変わる部分を内に多くとれる. 幅員 の部分 9-. 高さ制限 (. 絶対高さ,2. 斜線 ) の解説 P2/P8
セットバック緩和がある場合 セットバック緩和 がある場合, 幅員が大きくなる分, セットバック緩和 がない場合と比べて, 勾配が.25 から.5 に変わる位置がの奥まった所になるため, 不利となる場合がある. みなし幅員.25 みなし幅員.25 以上の範囲 ( この範囲では, 勾配が.25 から.5 に緩和される.) :.5 の斜線.5 :.25 の斜線 この距離が長くなるので, 不利になることがある..25 セットバック緩和による幅員 の部分 斜線による高さ制限については, セットバック緩和を適用したときの方が斜線の始まりの位置をから離れた位置にとることができるため有利になるが,.25 緩和については, 図のように場合によって逆に不利になることがある. そのため,.25 緩和の適用については, セットバック緩和も一緒に適用するか? もしくはセットバック緩和は適用せず.25 緩和 だけ適用するかを自由に選べることになっています. 試験においては, 両方で計算し, 有利な方を斜線による 高さの限度 として採用します.( 法 56 条 4 項 ) 9-. 高さ制限 (. 絶対高さ,2. 斜線 ) の解説 P3/P8
C. 2 緩和 ( 法 56 条 6 項, 令 32 条 ) 2 緩和とは, が2 面以上に接している場合の緩和措置です. 具体的には次の図を使って説明します. B A の 2 面がに面しています. A の幅員 > B の幅員 だとしましょう. その場合, 基準法上, A を 幅員の最大な前面 といいます. B A 幅員の最大前面 そして, 次の図のように 最大幅員 から 幅員の 2 倍 かつ 35m の範囲の部分と, その他の ( この例では B が該当 ) の中心線から 0m を超える部分については B も A と同じ幅員をもつものとして高さの算定することができます. 具体的に図を使って説明していきます. B 幅員 Wa Wa 2 かつ 35m 以内 A 幅員の 2 倍 かつ 35m 以内 の範囲 9-. 高さ制限 (. 絶対高さ,2. 斜線 ) の解説 P4/P8
次に その他のの中心線から 0m を超える部分 というのはどの範囲かというと下の図のようになります. B の幅員の中心線 B B の幅員の中心線から 0m 以内の範囲 A B の幅員の中心線から 0m を超える部分の範囲 その他のの中心線から 0m を超える部分 の範囲ってのはコレ! では, 最大幅員の 2 倍かつ 35m 以内の区域 と その他のの中心線から 0m を超える部分 とを重ね合わせてみよう. B の幅員の中心線 B 幅員 Wa Wa 2 かつ 35m 以内 B の幅員の中心線から 0m 以内の範囲 A B の幅員の中心線から 0m を超える部分の範囲 上の図のの部分 ( 最大幅員の2 倍かつ35m 以内の区域 ) との部分 ( その他のの中心線から0mを超える部分 ) とに含まれている範囲内のある地点において斜線の検討をする場合, 幅員はすべて 最大の幅員 があるものとして考えていいんだ. これも図で説明していきます. B A この地点の 斜線による高さの限度 を求めるとしよう. (2 緩和範囲内にあるものとする.) 9-. 高さ制限 (. 絶対高さ,2. 斜線 ) の解説 P5/P8
この場合, B も A の幅員 ( 最大幅員 ) を持っているものとして考えてよくなり, 下の図のようになる. B 幅員 Wb ( 本来の幅員 ) 幅員 Wa をもつとして考えてよい. 幅員 Wa A この地点の 斜線による高さの限度 を求めるとしよう. (2 緩和範囲内にあるものとする.) 上の図のような状態で, 計算をはじめることになります. これが 2 緩和 の基本です. どう? わかった? 下の図のように, 求める地点が 2 緩和範囲 の外だった場合は, 幅員の変更はありません. B 幅員 Wb ( 本来の幅員 ) 幅員 Wa A この地点の 斜線による高さの限度 を求める場合は幅員の変更はありません. (2 緩和範囲の外にあるものとする.) 試験問題で, が 2 以上のに面している場合には, この 2 緩和 が適用できるかどうかを調べなければなりません. その場合, 高さを求める地点が 2 緩和範囲 の内にあるのか? 外にあるのか? を判定します. 9-. 高さ制限 (. 絶対高さ,2. 斜線 ) の解説 P6/P8
D. 水面緩和 ( 令 34 条 ) 水面緩和 というのは, 前面の反対側に 公園, 広場, 水面等がある場合に, 公園等の反対側の境界線をの反対側の境界線とみなしてよい. というものです. 具体的には次の図を使って説明します. 通常は の反対側の境界線 とはコレです. コレが斜線. この線より高く建物を建てることはできません. 建築可能範囲 の反対側に水面 ( 川等 ) がある場合を考えてみよう. の反対側の境界線 ってのはコチラになります. 斜線 水面 ( 川等 ) 緩和されて建築可能範囲が増えた部分. 斜線 がスタートする位置はコチラになる. 9-. 高さ制限 (. 絶対高さ,2. 斜線 ) の解説 P7/P8
E. 高低差緩和 ( 令 35 条の 2) 高低差緩和 とは, 面と地盤面に高低差がある場合の緩和のことです. これも図で説明します. 地盤面 面 面 と 地盤面 との高低差 建築可能範囲 上の図のように 面 より 地盤面 のレベルが高く, 高低差がある場合, 建築可能範囲が少なくなってしまいます. そのための緩和措置が 高低差緩和 です. 具体的には, 地盤面 が 面 より m 以上高い場合, その高低差から m を引いた値の /2 だけ面が高い位置にあるものとして斜線の算定ができます. 緩和された面 H 地盤面 H- 2 この分だけが高い位置にあるものとしてよい. 緩和されて建築可能範囲が増えた部分. 9-. 高さ制限 (. 絶対高さ,2. 斜線 ) の解説 P8/P8