頭頸部 95 原発部および画像的リンパ節転移陽性部には根治線量を加えるCTV1とする 術後照射では組織学的残存部 GTVが頭蓋底や上縦隔リンパ節領域に進展している場合には, 緩和医療としての照射になるので, 患者状態ごとに患者負担が大きくなり過ぎないように症状に合わせてCTVを設定する PTV: 上

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Transcription:

94 頭頸部 Ⅵ. 下咽頭癌 1. 放射線療法の目的 意義輪状後部, 梨状陥凹, 咽頭後壁の 3 亜部位からなる 本疾患の放射線治療あるいは 化学放射線治療による根治性は中咽頭や上咽頭よりも劣り, 全体で 5 年生存率が約 30% の疾患である 1, 2) T1~2 では局所に関して根治を望める疾患であり, 治癒した 場合の発声と嚥下機能温存の意義は大きい 2. 病期分類による放射線療法の適応 T1~2N0では, 根治的放射線治療あるいは根治的化学放射線療法が第一選択になる T1~2で進行した頸部リンパ節転移がある場合には, 原発部と傍咽頭リンパ節への根治的放射線治療後に頸部リンパ節の手術的摘出術を行うことを頭頸部外科医とあらかじめ計画しておく 亜部位別では梨状陥凹原発のT1~2は後壁や輪状後部原発にくらべ照射への反応が比較的良好であり, 根治照射の適応となりやすい 後壁や輪状後部原発 T2では脊椎前筋群や喉頭浸潤が初診時すでに起きていることが多く, 根治線量照射後の救済手術も困難なため, 手術的摘出時期をいたずらに遅らせない注意も必要である これ以上進行した症例では, 手術的摘出術を常に念頭に入れながら化学療法あるいは化学放射線療法 ( シスプラチン+5 FU) を先行する治療方針が, 最初から手術を行うことよりも機能温存で優れ, 生存率で劣らないことが梨状陥凹と披裂軟骨喉頭蓋ひだの下咽頭面原発癌の第 Ⅲ 相試験にて示唆された 3) 化学放射線療法を先行し40Gy 程度の時期に, 効果が良い場合には根治照射線量を投与し, 効果が思わしくない場合には手術的摘出をする施設も多い 判断根拠はCT 画像 内視鏡所見などでPR 以上の場合に放射線治療を続行する 進行したT4で化学放射線療法が成功しても気管孔造設が必至な症例では, 手術を先行して術後照射をすることが勧められるが, その境界はあいまいである 2) 3. 放射線治療 1) 標的体積 GTV: ファイバースコープ,CT,MRI 等で確認できる原発腫瘍および転移リンパ節 ファイバースコープでの観察範囲では腫瘍を把握し切れない 術後照射では肉眼的残存部 CTV: 頭蓋底から頸部食道縦隔入口部までの咽頭粘膜, および咽頭後リンパ節 ( ルビエールリンパ節 ), 上中下内深頸リンパ節, 鎖骨上リンパ節 治療前のリンパ節転移の病期がN2cでは副神経リンパ節, 顎下リンパ節を加える 根治治療の場合, リンパ節領域に関してはN0 症例では予防的線量のみを与えるCTV2とし,

頭頸部 95 原発部および画像的リンパ節転移陽性部には根治線量を加えるCTV1とする 術後照射では組織学的残存部 GTVが頭蓋底や上縦隔リンパ節領域に進展している場合には, 緩和医療としての照射になるので, 患者状態ごとに患者負担が大きくなり過ぎないように症状に合わせてCTVを設定する PTV: 上記 CTVに0.5 1 cm程度のマージンをつける 2) 放射線治療計画二次元治療計画原発巣と上中頸部までは左右対向二門で, また下頸部および鎖骨上窩は前方一門あるいは前後対向二門にて照射する 図 1a bに標準的な照射野を示す 照射野設定の解剖学的なメルクマールとして, 上縁は第一頸椎を十分含み, 後縁は棘突起, 下縁は輪状軟骨を十分含む ( 梨状陥凹の先端部を十分含む ) このためにはシミュレーション時の体位は下顎をなるべく挙上するように注意する そうしないと原発巣を十分に対向二門の照射野に含むことが出来ず, 下前方一門とのつなぎ目に原発巣が位置し線量の不確定要素を生む ビームの広がりによるつなぎ目での低線量域の出現を予防するため, ハーフフィールド法やマルチリーフを用いたそれに近い照射法がある いずれの場合にも過線量, 低線量域の出現を予防するため照射野のつなぎ目を途中で移動するべきである ( 図 1) 図 1a. 原発巣 上中頸部に対する照射野 図 1b. 下頸部 鎖骨上窩に対する照射野 三次元治療計画基本的に二次元と同様であるが, 再発部位を画像上で詳細に検討した報告によると, 表 1のようにCTVを再発のリスクに応じて分類し, それぞれにより適した線量を照射する試みもみられる 4)

96 頭頸部 表1 病期およびリスク別CTVによる線量配分 標的体積 病期 CTV1 CTV2 T1 2N0 P IN CN Ⅱ Ⅳ T3 4N P IN Ⅱ Ⅳ RPLN N2c P IN CN Ⅰ Ⅴ RPLN 線量 週 5 回 66 70Gy 2 Gy/fr 70 75Gy 1.8Gy/fr CN Ⅱ Ⅳ 50Gy 2 Gy/fr P primary tumor IN ipsilateral neck node CN contralateral neck node RPLN retropharyngeal neck node N+ N2c以外の N1 3 ローマ数字はSomらによって紹介されたCTによる詳細なリンパ節の区域分類5 とほぼ同義で Iは頤 顎下 Ⅱ Ⅳは頭蓋底から鎖骨までで胸鎖乳突筋の後縁ま でを含むリンパ領域である N2cでもI領域は入れない場合もある 三次元治療計 画装置をもちいレベル別 ルビエール にリンパ節領域の輪郭を囲った治療計画 の 1 例を図2 に示す 図2 赤 原発巣 水色 46 50Gy以降の縮小フィールドのCTV 薄紫 ルビエール 下 顎骨に近接する白 IB オレンジ ⅡおよびⅢ 薄緑 Ⅳ 紫 V 原発巣に近接 する白 甲状軟骨および輪状軟骨 3 照射法 照射には 4 6MV X線を用いる 患者の頸部はシェルで固定して治療する 線量 分割法は週 5 回通常線量分割が基本である 根治照射 術前照射では 1 回線量1.8 2Gyにて40 46Gyをリンパ節領域を含めて照射する 根治照射の場合40 46Gy後 GTVに少なくとも上下 2 のマージンをつけ脊髄をはずした照射野にて66 70Gyま

頭頸部 97 で治療を行う 術後照射は術前照射同様の照射野で40~50Gyを同様の照射野に対して行い, 手術標本断端陽性の場合はその部位に60Gy 程度まで照射野を縮小して治療する 気管切開孔は再発の頻度の高い部位でありここを十分照射野に含むように注意する 全身状態の良くない症例では, 手術所見を参考に原発巣および皮膜外浸潤があったリンパ節領域周辺および摘出が困難なルビエールリンパ節領域, 気切孔等の再発危険性の高い部位にのみ照射を行うのが現実的と思われる 術前照射で病変の進行を抑えたり,T3~4 症例では手術先行を是とする施設も多いが, 喉頭温存を断念するこれらの方針の基準はあいまいでエビデンスは乏しい 頭頸部癌では, 照射分割法の工夫が近年試みられつつある RTOGは, 下咽頭癌が 13% 含まれた1073 名の 4 群ランダム化比較試験で, 過分割照射法と同時ブースト加速過分割照射法 (accelerated fractionation with boost) により通常分割法よりも 5 年局所制御率で約 8 % の向上が認められたが, 生存率には差がなかったと報告した 6) 4) 化学療法との併用下咽頭癌を含んだ頭頸部扁平上皮癌を対象としたメタアナリシスで同時化学放射線療法は生存率を若干上昇させることが示された 7) しかし最適な薬剤およびスケジュールは決まっていない 一方,EORTCのランダム化比較試験は,A 群 : 手術先行治療よりも,B 群 : 放射線治療と化学療法を加えた治療方針のほうが優れていることを示した ( 表 2) 3) 3 年生存率,3 年無病生存率,3 年無遠隔転移率, 平均生存期間は, A 群 :B 群それぞれ43%:57%,31%:43%,60%:73%,25ヵ月 :44ヵ月であった また,B 群の 3 年喉頭温存率は, 全 100 例を母数とすると28%(95% 信頼範囲 17~ 37%), 他因死を除くと42%(31~53%) であった 表 2.EORTCのランダム化比較試験の概略 A 群 : 手術先行群 B 群 : 化学療法先行群 94 例登録し,92 名が手術を受け 89 名が術後照射 ( 平均 60Gy) を受けた 100 例登録し,97 名が化学療法を受け,34 例が手術 ( うち 33 例術後照射 ),60 例が放射線治療 ( うち 4 例が計画された頸部郭清, 8 例が照射後再発への手術 ) シスプラチンと 5 FU による導入化学療法を 1 クール行い PD 症例では手術, それ以外には 2 クール目を行い PD,NC 症例では手術,PR の時は 3 クール目を施行, 2 クール目で CR の場合 3 クール目を行わず放射線治療 線量分割は 70Gy/35 回 4. 標準的な治療成績日本放射線腫瘍学会第 11 回学術大会でのワークショップにて多施設での根治照射の総合治療成績がまとめられた それによると本疾患全体での根治照射の 5 年生存率は 35%,StageⅡ,Ⅲ,Ⅳにおいての同生存率は75%,40%,17% であった 8) Fuによる総説の中でT 分類別の局所制御率は,T1:79%,T2:71%,T3:17%,T4:8%

98 頭頸部 であった 1) 放射線治療と手術の両方による治療の下咽頭癌全体の 5 年生存率は21~ 40% とされている 早期癌について日本の多施設からの115 例の治療結果をまとめた中村らの解析によると,5 yr disease specific survivalはt1で95.8%,t2で70.1% と良好な値が報告されている 9) 一方で二次癌の発生を56.5%( 特に食道癌 ) に認め overall survivalを低下させる原因と指摘している 5. 合併症治療中の副作用としては, 照射野が上咽頭から頸部食道まで粘膜が広く照射されることから粘膜炎は必発であり, 対症的療法, 食事内容の調整が必要となる 化学療法併用の場合は粘膜炎が早期に出現する場合があり ( 特にドセタキセル併用時 ), 毎日少なくとも肉眼で見える範囲での中咽頭の観察は欠かせない 晩期障害として以下のものがある 喉頭浮腫 ( 中程度 15~25%, 重度 1.5~4.6%), 喉頭咽頭壊死は0.5~1.8% に生じる 1) その他, 放射線による晩期障害としては食道咽頭の狭窄, 手術が加わった場合の創傷治癒遅延, 瘻孔形成である 予防照射域に少なくとも40Gyの照射が行われるため, 標準的照射野にほぼ全体積が含まれる耳下腺機能の低下は必発し 10), それに伴う口腔乾燥が生ずる これらの障害を減らすために, T1~2N0では小さな照射野での治療を行う方針の施設もあり, 適応選択を慎重に行えば優れた機能温存を示す 11) 本邦においても早期下咽頭の放射線治療に関するアンケート調査結果報告によると,59 施設中 3 施設においては梨状陥凹原発腫瘍に対しては原発巣のみを照射野に含めていた 12) 近年, 食道がんスクリーニングに際して偶然, 下咽頭に粘膜病変を発見される機会が増え, エビデンスはないものの, そのような粘膜表層にとどまっている腫瘍に対しては, 原発巣のみの照射がQOLの観点から選択肢の一つに考慮されてもよいのかもしれない 6. 参考文献 1)Moss' Radiation Oncology. 7th ed. ed. by Cox JD ; Chapter 9. The Endolarynx and Hypopharynx by Fu KK, p214-245. 2)Hinerman RW, Amdur RJ, Mendenhall WM, et al. Hypopharyngeal carcinoma. Curr Treat Options Oncol 3 : 41-49, 2002. 3)Lefebvre JL, Chevalier D, Luboinski B. et al. Larynx preservation in pyriform sinus cancer : preliminary results of a European Organization for Research and Treatment of Cancer phase Ⅲ trial. EORTC Head and Neck Cancer Cooperative Group. J Natl Cancer Inst 88 : 890-899, 1996. 4)Chao KS, Wippold FJ, Ozyigit G, et al. Determination and delineation of nodal target volumes for head-and-neck cancer based on patterns of failure in patients receiving definitive and postoperative IMRT. Int J Radiat Oncol Biol Phys

頭頸部 99 53 : 1174-1184, 2002. 5)Som PM, Curtin HD, Mancuso AA. Imaging-based nodal classification for evaluation of neck metastatic adenopathy. AJR Am J Roentgenol 174 : 837-844, 2000. 6)Fu KK, Pajak TF, Trotti A, et al. A Radiation Therapy Oncology Group (RTOG) phase Ⅲ randomized study to compare hyperfractionation and two variants of accelerated fractionation to standard fractionation radiotherapy for head and neck squamous cell carcinomas : first report of RTOG 9003. Int J Radiat Oncol Biol Phys 48 : 7-16, 2000. 7)Pignon JP, Bourhis J, Domenge C, et al. Chemotherapy added to locoregional treatment for head and neck squamous-cell carcinoma : three meta-analyses of updated individual data. MACH-NC Collaborative Group. Meta-Analysis of Chemotherapy on Head and Neck Cancer. Lancet 355(9208): 949-955, 2000. 8) 三橋紀夫, 秋元哲夫, 早川和重, 他. 頭頚部癌の放射線治療 - 総説 -. NIPPON ACTA RADIOLOGICA 61 : 10-16, 2001. 9)Nakamura K, Shioyama Y, Karasawa M, et al. Multi-Institutional Analysis of Early Squamous Cell Carcinoma of the Hypopharynx Treated with Radical Radiotherapy. Int J Radiat Oncol Biol Phys 65 : 1045-1050, 2006. 10)Kaneko M, Shirato H, Nishioka T, et al. Scintigraphic evaluation of long-term salivary function after bilateral whole parotid gland irradiation in radiotherapy for head and neck tumour. Oral Oncol 34 : 140-146, 1998. 11)Cooper RA, Slevin NJ, Carrington BM, et al. Radiotherapy for carcinoma of the posterior pharyngeal wall. Int J Oncol 16 : 611-615, 2000. 12) 中村和正, 晴山雅人, 塩山善之, 他. 早期下咽頭癌の放射線治療に関するアンケート調査結果報告. 日放腫会誌 17 : 41-47, 2005. ( 北海道大学医学部保健学科放射線技術科学専攻西岡健 )