大阪電気通信大学 6/19/18 本日の講義の内容 恒常性 1 血液と内分泌系 教科書 第 12 章 体液の恒常性 体液の浸透圧と老廃物の排出 ホルモンの働き 自律神経の働き 自立神経とホルモンの協調 恒常性 ( ホメオスタシス ) とは 体液の恒常性 外部環境が変化しても内部環境を常に一定に保とうとするしくみを恒常性 ( ホメオスタシス ) という セキツイ動物の体液 内部環境をつくる体液は セイキツイ動物の場合 血液 リンパ液 ( リンパ ) 組織液の 3 つである 血液 血管内を流れる液体で血球 ( 有形成分 ) と血漿 ( 無形成分 ) からなる 組織液 血液中の血しょうが毛細血管から組織中に染み出したもの 細胞との間で養分や老廃物などの受け渡しをしたあと 大部分は毛細血管にもどって血漿となる リンパ液 リンパ球 ( 有形成分 ) とリンパしょう ( 無形成分 ) からなる 組織液の一部が毛細リンパ管内に入ってリンパしょうとなる 血液の組成とはたらき 血液の主な働きは 1 物質やガスの運搬 2 生体防御 ( 免疫機能 ) 3 血液凝固 4 恒常性の維持 ( 体温pH 調節 ) である 次回の講義で説明します 1
2018/6/5 赤血球とヘモグロビン 赤血球は骨髄でつくられ 寿命は120日 古くなった赤血 球は 肝臓や脾臓で破壊され ビリルビンという黄色の 物質となって体外に排出される ヘモグロビン(Hb)はセキツイ動物の赤血球に含まれる呼吸 色素の一つで 赤血球の乾燥質量の約94 をしめている ヘモグロビンはヘムという鉄を中心といた色素とグロビ ンとうポリペプチド鎖が4個並んでできている ヘモグロビン1分子あたり 4分子の酸素と結合すること ができ 肺で酸素と結合して酸素ヘモグロビン(HbO₂)と なり 組織で酸素と解離してヘモグロビン(Hb)に戻る 酸素解離曲線 酸素の結合と運搬 混合気体中に含まれる単一期待の占める圧力を分圧と いい 単位はmmHg(ミリメートルエイチジー)で示さ れる 人では 肺胞と組織を比べると 酸素分圧は肺胞で高 く 二酸化炭素分圧は組織で高くなっている ヘモグロビンは酸素分圧や二酸化炭素分圧よって 酸 素と結合したり 酸素を放出したりする ヘモグロビン (Hb 暗赤色) 肺胞(O₂分圧高 CO₂分圧 低) O₂ 組織(O₂分圧低 CO₂分圧高) 酸素ヘモグロビン (HbO₂ 鮮赤色) 循環系 酸素分圧と酸素ヘモグロビンの割合を示したグラフを酸素解離曲 線という 組織にどれだけの酸素が供給されたかがわかる ヘモグロビンは二酸化炭素濃度が高いところで酸素を放出する 例えば 肺胞 酸素濃度が100 二酸化炭素濃度が40 組織 酸素濃度が30 二酸化炭素濃度が70 酸素を解離する割合は 体中のどの細胞にも酸素や養分が行きわたり 老 廃物の回収が行われるように発達した器官が循環 系である 循環系は酸素や養分 代謝産物などを 運搬し 内部環境をつねに一定に保つ 循環系には血管系とリンパ系の二つがある 96-30 100=69( ) 96 肺循環 心臓 肺 心臓 体循環 心臓 心臓 ヒトの心臓のつくりと働き http://www.jll.co.jp/ 2
セキツイ動物の心臓 血管の種類 血管には 動脈 静脈 毛細血管の三種類がある 静脈弁は血流の逆流を防ぐとともに 血流を生じる働きがある https://kotobank.jp/ 血管系 毛細血管をもち 血液が血管内を流れる閉鎖血管系と毛細血管をもたず 血液が組織を流れる開放血管系がある 閉鎖血管系の例 セキツイ動物 環形動物 ( ミミズなど ) 開放血管系の例 節足動物 ( バッタ エビなど ) 軟体動物 ( アサリ イカなど ) 血液凝固のしくみ 血液が血管外に出て自然に固まることを 血液凝固という 1 出血すると血小板がこわれて 血液凝固因子が放出される 2 血液凝固因子と血しょう中の Ca 2+ が共同して 血しょう中のプロトロンビンをトロンビン ( タンパク質分解酵素 ) に変える 3 トロンビンが血しょう中にとけているフィブリノーゲンを分解して水に溶けないフィブリンに変える 4 フィブリンが赤血球や白血球に絡みついて血液を凝固する 生物知識の焦点 / 舘野正樹著 / Z 会より 動物の浸透圧 体液の浸透圧と老廃物の排出 ゾウリムシは収縮胞から水を排出して浸透圧を排出している http://www.edu.city.kyoto.jp/science/index.html 3
海産無セキツイ動物の浸透圧 硬骨魚類の浸透圧調節 外洋域に生息する無セキツイ動物浸透圧を調節する仕組みが未発達 例 : ケアシガニ 体液の浸透圧が外液よりも低張 河口域に生息する無セキツイ動物浸透圧調節の仕組みが備わっている 例 : ワタリガニ 啓林館 編生物 I 改訂版 > より引用 川と海を往復する無セキツイ動物浸透圧の仕組みがよく発達している 例 : モクズガニ https://www.suntory.co.jp/ 体液の浸透圧が外液よりも高張 老廃物の排出 養分からエネルギーを取り出すときの呼吸や 生体内の様々な代謝の結果 いろいろな不要物 ( 老廃物 ) が生じる 同じ水槽で鯛 ( 海水魚 ) と金魚 ( 淡水魚 ) を飼育することができる ヒトの場合 二酸化炭素 (CO₂) は肺から排出し アンモニアのような有害な化合物は 肝臓で無害な尿素に作り変えて腎臓から排出している 腎臓のつくり 腎臓の働き 尿の生成 血しょう成分のろ過 原尿の生成 (170L/ 日 ) 原尿からの再吸収 尿の生成 (1.5L/ 日 )= 原尿の約 1% 4
腎臓での再吸収量の計算 例題 イヌリンはすべてボーマン嚢へろ過され 細尿管では全く再吸収されない イヌリンを人工的に血しょうに加え その濃縮率を調べたところ120であった いま 1 時間に100mlの尿が排出されたりすると その間に再吸収された液体の量は何 mlか 肝臓のつくり 原尿量 = 尿量 イヌリンの濃縮率 =100 120=12000(ml) 再吸収量 = 原尿量 - 尿量 =12000-100=11900(ml) 肝臓の働き オルニチン回路 1 グリコーゲンの合成と貯蔵 2 尿素の合成 ( オルニチン回路 ) 3 解毒作用 4 血液の貯蔵と古くなった赤血球の破壊 5 胆汁の合成 6 発熱による体温の維持 アミノ酸の分解で生じたアンモニア (NH3) は 肝臓のオルニチン回路で尿素に作り変えられて 腎臓から排出される アンモニアの排出の仕方 ホルモンの働き 5
自立神経系神経を介するため 情報を瞬間的に伝えることが出来る 内分泌系情報物質を血流にのせるため 全身に行きわたるには 20 秒程度かかる しかし 持続的な調節が可能である ホルモンの発見 1902 年 イギリスのベイリスとスターリングは 十二指腸から血中に分泌され すい臓にはたらくホルモンを発見し セクレチンとなずけた ホルモンという用語はスターリングによって提唱され 動物体内の特定の腺 ( 内分泌腺 ) で形成され 血液中に分泌され 遠く離れた体内の他の器官に運ばれそこで 微量で特殊な影響を及ぼす物質 と定義された ホルモンによる調節の仕組み全般を内分泌系という ホルモンは主に内分泌腺で作られ 血流乗って体中の諸器官へといき 特定の細胞 ( 標的細胞 ) にだけ作用する ホルモンの種類 化学成分によって次に 3 つに大別される ホルモン 消化液汗 ステロイドホルモンステロイド核をもつホルモン例 ) 鉱質コルチコイド 雄性ホルモン 雌性ホルモンペプチドホルモンポリペプチドからできれいるホルモン例 ) 脳下垂体 膵臓 甲状腺 神経分泌細胞などでつくられるホルモンその他のホルモン例 ) 副腎髄質のホルモン 甲状腺のホルモン ホルモンの働き 1 成長の促進例 : 成長ホルモン チロキシン 2 性周期 出産の調節例 : 雄性ホルモン 雌性ホルモン 子宮筋収縮ホルモン 3 代謝の調節例 : アドレナリン グルカゴン インスリン 4 他のホルモン分泌の調節例 : 脳下垂体前葉の各刺激ホルモン 5 血圧 体温の調節例 : アドレナリン バソプレシン 6
ホルモン分泌の調節 フィードバック調節 最終的に分泌されたホルモンが その前の視床下部や脳下垂体に作用することで ホルモンの分泌量を調節するしくみ 負 のフィードバック調節の例 チロキシンが増加した場合 ( チロキシンの分泌を抑制する ) 甲状腺から分泌されたチロキシンが血流にのり 視床下部や脳下垂体前葉に作用する 生物知識の焦点 / 舘野正樹著 / Z 会より 自律神経の働き 自律神経は 大脳の影響を受けない間脳 ( 視床下部 ) の支配下にある神経系で 意思とは無関係に自律的に働く 交感神経と副交感神経 ノルアドレナリンとアセチルコリンの正反対の働きを働きを拮抗作用という http://blogs.yahoo.co.jp/pnctb565/15321031.htm 交感神経 ノルアドレナリン副交感神経 アセチルコリン 同一の器官で拮抗的に働くことが多い 7
胃腸薬と自律神経 瞬間下痢止め薬に含まれるロートエキスは アセチルコリンの作用を抑える働きがある 副交感神経による過剰な刺激を防ぎ 腸の働きを止めることで 下痢を抑えている 交感神経は 敵と戦ったり緊張したりするときに働き 副交感神経は 交感神経の反応をやわらげ休息する時に働く http://www.lion.co.jp/ja/products/171 血糖値の調節 低血糖 高血糖 自立神経とホルモンの協調 交感神経 間脳視床下部 副交感神経 副腎髄質 すい臓 ( ランゲルハンス島 B) アドレナリン インスリン 血糖値上昇 血糖値低下 体温の調節 主な参考文献 新しい教養のための生物学 ( 裳華房 ) 細胞の分子生物学第 5 版 (NEWTON PRESS) Essential 細胞生物学第 2 版 ( 南江堂 ) 8
来週の講義 (6 月 26 日 ) は 恒常性 2- 免疫とがん について講義します 事前学習として 細胞性免疫 について調べておいて下さい 授業で使用したスライドはホームページに UP します 必要に応じでダウンロードして下さい URL: http://www3.kmu.ac.jp/bioinfo/edu_osakadenkitsushin.ht ml 質問は以下アドレスへ Mail:sumiyoma@hirakata.kmu.ac.jp 9