日本金属学会誌第 7 巻第 3 号 (008)5 57 Ti Ni Zr 合金の形状記憶特性と加工性に及ぼす Zr 濃度の影響 岡田直樹 藤井功隆 石川佳樹 小野田元伸 金熙榮 宮崎修一 日本ピストンリング株式会社技術開発部 筑波大学物質工学系 J. Japan Inst. Metals, Vol. 7, No. 3 (008), pp. 5 57 008 The Japan Institute of Metals Effect of Zr Content on Shape Memory Characteristics and Workability of Ti Ni Zr Alloy Naoki Okada,YoshitakaFujii,YoshikiIshikawa, Motonobu Onoda, Hee Young Kim and Shuichi Miyazaki Technical Development Department, Nippon Piston Ring Co., Ltd., Shimotsuga, Tochigi 39 04 Institute of Materials Science, University of Tsukuba, Tsukuba 305 8573 Shape memory alloys with high transformation temperatures are required for being used in devices that operate at elevated temperatures. Ti Ni Zr alloys are regarded as most practical high temperature shape memory alloys due to the relative low price of raw materials compared with other high temperature shape memory alloys such as Ti Ni Hf, Ti Ni Pt, Ti Ni Pd and Ti Ni Au. In this study, the effect of Zr content on transformation temperatures, shape memory characteristics and cold workability in Ti 49.5Ni (0 5)Zr alloys was investigated. The reverse transformation finish temperature increased monotonously with increasing Zr content, while the martensitic transformation temperatures decreased with increasing Zr content, reaching the minimum at 5 at Zr and then increased by further increasing Zr content. The martensitic transformation temperatures above 373 K were obtained in Ti 49.5Ni Zr alloys with a Zr content above 0 at. The shape memory properties were investigated by thermal cycling tests under various constant stresses. The critical stress for slip increased with increasing Zr content. The maximum recovery strain of about 5 was obtained in the Ti 49.5Ni (0 5)Zr alloys. The Ti 49.5Ni (0 5)Zr alloys could be cold rolled up to 90 reduction in thickness without fracture. The cold workability became worse with increasing Zr content. The total thickness reduction prior to fracture was about 30 for the Ti 49.5Ni 5Zr alloy (Received October 9, 007; Accepted November, 007) Keywords: shape memory alloy, shape memory effect, titanium nickel zirconium alloy, workability. 緒言これまで形状記憶合金は, 携帯電話用アンテナ, 床下換気口, 新幹線駆動装置の自動油圧調整ユニット, 混合水栓, 炊飯器, 熱水カット弁等の様々な製品となり, 世に送り出されてきた. その応用例の多くは, マルテンサイト相 (M 相 ) に負荷を与えられた状態で, 熱を受けオーステナイト相 (A 相 ) へ逆変態する際の回復歪み, 回復応力等を利用しているものである. その A 相へ逆変態する温度は, 合金組成や加工熱処理により制御している. 最も多く応用されている Ti Ni 合金は, 合金組成や加工熱処理を制御しても,A 相への変態温度は水の沸点近傍が限界であることから,373 K を超えた応用例は存在しない. 航空宇宙や自動車産業, 電気産業等では, 十分な加工性を持ち, 且つ 373 K 以上で変態する高温形状記憶合金があれば, 様々な用途に応用出来ると考えられる. 高温形状記憶合金については以前より研究がされており,Ti Ni に Zr,), Hf 3,4), Pd 5,6),Au 5,7),Pt 5,8,9) 等を添加することで変態温度が上昇することが知られている.Pd, Au, Pt は貴金属であり, Hf も稀少元素であり高価なことから実用性に乏しい. これら添加元素の中で最も低価格である Zr を添加した Ti Ni Zr 系が実用化の可能性が高いと考えられる.Ti Ni Zr 系合金では,Mulder らにより変態温度に関する報告 ) や,Hsieh らによる格子定数の変化や内部組織 0), 時効による影響 ) 等の報告がされてきた. しかしながら,Zr 添加による加工性や形状記憶特性に関する系統的な報告例は非常に少ない. 本研究では,Ti Ni Zr 合金の形状記憶特性や加工性に及ぼす Zr 濃度の影響に関して系統的に調べることを目的とした. また, その結果から高温形状記憶合金としての実用性を検討した.. 実験方法 Ti 49.5Ni xzr(x=0~5 at ) 合金インゴットをアルゴンアーク溶解法により作製した. 出発原料として,Ti( 純度
第 3 号 Ti Ni Zr 合金の形状記憶特性と加工性に及ぼす Zr 濃度の影響 53 99.9 ),Zr( 純度 99.9 ) および Ni( 純度 99.99 ) を用いた. 溶解後インゴット内の組成均質化を図るため, 石英管に真空封入し,3 K で 7. ks の熱処理を施した. その後, 放電加工により mmの板材になるように切り出した. mm 板材から示差走査熱量測定 (DSC) 用の試料 (3 mm 3mm mm) を放電加工機により切り出し, 放電加工時に付着した酸化膜を研磨により除去した. その後, 試料を石英管に Ar ガス封入を行い,3 K で 7. ks の熱処理 ( 溶体化処理 ), 水焼入れを施し,DSC 測定を行った. また,mm 板材から X 線回折測定用の試料 ( mm 8 mm mm) を放電加工機により切り出し, 放電加工時に付着した酸化膜を研磨により除去した. その後, ロール圧延機により 0 の冷間加工を施し,3 K で 7. ks の熱処理 ( 溶体化処理 ), 水焼入れを施した.573 K および 73 K で X 線回折測定を行い相同定および母相とマルテンサイト相の格子定数を求めた. 形状記憶特性は熱機械分析装置 (TMA) を用いて, 一定応力下での冷却 加熱サイクル試験により評価した. ロール圧延機による圧延と溶体化処理を繰り返し,0. mm の板材を作製し,TMA 用の試料 (.3 mm 0.7 mm 0. mm) を放電加工により切り出し,DSC 用試料と同様に研磨, 溶体化処理, 水焼入れを施した.TMA による一定応力下での冷却 加熱サイクル試験より回復歪みと塑性歪みを評価した. 形状記憶特性の評価材と同様にロール圧延により 0.4 mm にした板材から,3mm 3 mm 0.4 mm に切り出し, 研磨, 溶体化処理, 水焼入れを施した試料を作製した. その後, 鏡面研磨を施し,HF HNO 3 H O= 50 の液で腐食し, 光学顕微鏡 (OM) により粒径計測を行った. また, (CH 3 CO) O HClO 4 = 3 の液で電解研磨を施し, 走査型電子顕微鏡 (SEM) により内部組織の観察を行った. 加工性は, ロール圧延機により冷間圧延率を測定することにより評価した. mm 板材から圧延試験用の試料 (5 mm 5 mm mm) を放電加工により切り出し, 研磨により酸化膜を除去した後, ロール圧延機により圧下量を 0.0 mm ずつ圧延し, クラック導入時および試料破断時の圧延率をマイクロメーターにより測定した. 硬度評価は, mm 厚さに切り出した板材を鏡面研磨し, ビッカース硬度計を用いて行った. M f は Zr 添加量が 5at までは Zr 無添加材よりも低下し, Zr 添加量が 5at 以上で顕著な上昇を示していることが分かった.Ti 48.5Ni xzr において Mulder も同様な結果を報告した ). また,Hf においても同様な傾向を示した報告 3,6) があるが, その理由については不明である. 3. 相同定および格子定数 Fig. 3 に Ti 49.5Ni xzr 合金 (x=0~0 at ) の XRD プロファイルを示した. 測定はすべて 573 K で行った.Si およ Fig. DSC curves of Ti 49.5Ni xzr alloys. Fig. Zr content dependence of transformation temperatures for Ti 49.5Ni (0~5)Zr alloys. 3. 結果と考察 3. 変態温度 Fig. に Ti 49.5Ni xzr 合金 (x=0~5 at ) における DSC 曲線の Zr 濃度依存性を示した.Zr の添加量を増加させることで M 相から A 相への変態温度が上昇していることが分かる. しかしながら,A 相から M 相への変態温度は 5 at Zr 添加材では無添加材より低下し, その後添加量の増加に伴い上昇している.Zr 添加による変態温度の違いを詳しく検討するため,DSC 曲線からマルテンサイト変態開始温度 (M s ), マルテンサイト変態終了温度 (M f ), 逆変態開始温度 (A s ), 逆変態終了温度 (A f ) を求め, その結果を Fig. に示した.A f は Zr の添加に対応して上昇するが,A s, M s, Fig. 3 573 K. XRD profiles of Ti 49.5Ni (0~0)Zr alloys obtaind at
54 日本金属学会誌 (008) 第 7 巻 び Cu は標準試料および試料ホルダーである.Ti 49.5Ni では B 相と Ti Ni 相を確認した.Ti 49.5Ni 5Zr および Ti 49.5Ni 0Zr の B 相と Ti Ni 相のピークは,Ti 49.5Ni で確認した B 相と Ti Ni 相のピークより少し低角で現われた. Wu ら ) は EDS 分析により Ti Ni Zr では B 相および Ti Ni 相に Zr が固溶することを報告しており,Zr 添加材では,Zr の固溶により B 相および Ti Ni 相の格子定数が増加し, その回折ピークが低角側へシフトしたと考えられる. Fig. 4 に Ti 49.5Ni xzr 合金 (x=0~5 at ) における A 相と M 相の格子定数および格子体積の Zr 濃度依存性を示した. 本研究で調べた Ti 49.5Ni (0~5)Zr 合金において, すべての Zr 濃度で M 相は単斜晶の B9 構造である.Zr の添加に伴い,A 相の格子定数は増大することが分かる.M 相においては,a 軸と c 軸の格子定数は増大しているが,b 軸の格子定数は Zr の添加に伴い減少している. また,b 角は,Zr の添加に伴い, 大きくなっている. 得られた各格子定数より,A 相および M 相の格子体積を計算した. その結果 A 相および M 相のいずれにおいても,Zr の添加に伴い体積は増大した.Ti Ni Zr 系では Ti が Zr に置換されていると考えられ,Ti より原子半径の大きな Zr 濃度が増加するにつれて, 格子体積が増大したと考えられる. 応力の上昇に伴い e P が著しく増加している.Ti Ni Zr 合金でも応力の上昇に伴い e P は増加するが, 各応力での e P は小さくなったことが分かる. また,e P が 0.5 を越えた応力をすべり臨界応力 (s s ) と定義し,s s の Zr 濃度依存性を Fig. 7 に示した.s s は Zr 濃度 5at まではわずかに上昇し,Zr 濃度 5~0 at においては, 著しく上昇した. その後,Zr 濃度 0~5 at までは s s の上昇は小さくなった. 各 Zr 濃度における S T 曲線より得られた e A をプロットした結果を Fig. 8 に示した.Zr の添加量を増加させると最 3.3 形状記憶特性 TMA を用いて測定した一定応力下での冷却 加熱サイクル試験結果の一例として Ti 49.5Ni 合金の結果を Fig. 5 に示した. 実線は冷却時, 破線は加熱時の歪みを示している. 一定応力下での冷却 加熱サイクル試験は, 加熱, 引張, 冷却, 加熱を繰り返すことで各応力における歪み 温度曲線 (S T 曲線 ) を得ることができ, 変態 逆変態時に発生する形状回復歪み (e A ) と導入される塑性歪み (e P ) を評価することが出来る. 各 Zr 濃度における S T 曲線より得られた e P をプロットした結果を Fig. 6 に示した.Zr 無添加である Ti 49.5Ni は Fig. 5 Strain temperature curves under various constant stresses for a Ti 49.5Ni alloy. Fig. 4 Zr content dependence of the lattice constants and unit cell volumes of B and B9 phases.
第 3 号 Ti Ni Zr 合金の形状記憶特性と加工性に及ぼす Zr 濃度の影響 55 大回復歪み (e max A ) を示す応力が上昇した. この結果は,Zr の添加によって固溶硬化することで組織が強化され, マルテンサイト誘起応力も上昇したためではないかと考えられる. 最大形状回復歪み (e max A ) の計算値と実測値を比較するため, Fig. 5 で示した格子定数を用いて算出した e max A および Fig. 8 より求めた e max A の Zr 濃度依存性を Fig. 9 に示した. 最大 形状回復歪み (e max A ) の計算値は,A 相と M 相の格子定数と 格子対応を用いて求めた. このときの M 相は双晶を含ま ず, 単一の優先方位バリアントとした. また, 多結晶体であるため 36 の試料方位に現われる歪みを平均化した. この計 算値を求める方法の詳細は, 以前の論文で報告されている 3). 計算値では Zr の添加に伴い e max A は増大する結果を示 したが, 実測値は Zr 濃度による依存性はないものであっ た. その理由の つとして,Fig. に示す様に Zr の添加量 を増加させると A f が上昇し, それに伴い一定応力下での冷 却 加熱試験の温度が高くなったことが挙げられる. 試験温度が高くなることで転位の導入は容易になり, 塑性変形領域が Zr 添加による本来の変態歪み増加分を打ち消した結果, e max A の実測値は,Zr 濃度に依存せず Fig. 9 の様に一定値を 示したと考えられる. 3.4 組織観察および粒径 Fig. 6 Plastic strain (e P ) plotted against tensile stress in Ti 49.5Ni (0~5)Zr alloys. 光学顕微鏡 (OM) による組織写真を Fig. 0 に示した. いずれの組織写真においても, 結晶粒界もしくは粒内にある第 相の析出が存在している. 第 相は Fig. 3 で示した XRD プロファイルから (Ti, Zr) Ni であることが推測される.Zr 添加による結晶粒径の変化を確認するため, 得られた組織写真より粒径計測した結果を Fig. に示した.Zr の添加により結晶粒径が減少していることが分かる. 結晶粒径の減少が, すべり臨界応力を上昇させた一因と考えられる. また, 最大回復歪に Zr 濃度の依存性がなかったことは,Zr の添加により結晶粒径が小さくなり, 優先方位に再配列できない領域が増大した結果も,Fig. 9 の計算結果で予想される回復歪みの増加を抑えたと考えられる. 走査型電子顕微鏡 (SEM) による内部組織写真を Fig. に示した.Fig. 0 と同様にすべての組成において第 相である (Ti, Zr) Ni が確認された.(Ti, Zr) Ni の量は Zr 濃度による依存があり,Zr 濃度が 0~0 at では析出量に大きな違いがなかったものの,Zr 濃度が 5 at では, 著しく析出していることが分かった. この結果は Fig. 7 の s s の Zr 濃度依存性と対応していないことから,(Ti, Zr) Ni の析出による組織強化の影響は軽微なものであると推測される. 3.5 加工性評価と硬度測定 Fig. 7 Zr content dependence of the critical stress for slip for Ti 49.5Ni (0~5)Zr alloys. クラック導入時および破断時における圧延率の Zr 濃度依存性を Fig. 3 に示した. 図中矢印のついたプロットはロール圧延機による圧延の限界であり, その圧延率まで破断しなかったため, それ以上の圧延率が見込まれるものである. ま Fig. 8 Recovery strain (e A ) plotted against tensile stress in Ti 49.5Ni (0~5)Zr alloys. Fig. 9 Zr content dependence of maximum recovery strain for Ti 49.5Ni (0~5)Zr alloys.
56 日本金属学会誌 (008) 第 7 巻 Fig. 0 Optical micrographs of Ti 49.5Ni xzr alloys. (a) Ti 49.5Ni. (b) Ti 49.5Ni 5Zr. (c) Ti 49.5Ni 0Zr. Fig. Scanning electron micrographs of Ti 49.5Ni xzr alloy. (a) Ti 49.5Ni. (b) Ti 49.5Ni 5Zr. (c) Ti 49.5Ni 0Zr. (d) Ti 49.5Ni 5Zr. たが,Zr 濃度 5at 以上では, 著しい低下を示した. 加工性と硬度の関係を調べるために, ビッカース硬度の Zr 濃度依存性を Fig. 4 に示した.Zr 濃度が 0~5 at では硬度の上昇が小さかった.Zr 濃度が 5~0 at では著しく上昇し, Zr 濃度が 0~5 at では硬度の上昇は飽和した. 即ち, Fig. 7 に示した s s の Zr 濃度依存性と同様な傾向を示した. これらの傾向は Fig. の結晶粒径の Zr 濃度依存性と対応せず, また,Fig. の (Ti, Zr) Ni 量の Zr 濃度依存性とも対応していないことから,Zr 添加による固溶硬化が影響したと推測される. Fig. Zr content dependence of grain size for Ti 49.5Ni (0 ~0)Zr alloys. ず, クラック導入時の圧延率は Zr の添加量増加につれて, 段階的に低下している. それに対し, 試料破断時の圧延率は Zr 濃度 5at まで 90 以上の圧延を施しても破断しなかっ 3.6 Ti Ni Zr 合金の実用性の検討以上の結果より,Ti Ni Zr 合金の実用性を検討した.Zr の添加により A f は上昇し,Zr 濃度 5at においても約 400 K であり, 水の沸点を 30 K 越えるものであった. 形状記憶合金を利用する際, 加工熱処理を施し, 形状記憶特性の安定化と改善を図る. 加工熱処理の際, 焼鈍温度は溶体化処理温
第 3 号 Ti Ni Zr 合金の形状記憶特性と加工性に及ぼす Zr 濃度の影響 57 4. 結論 Fig. 3 Zr content dependence of cold workability for Ti 49.5Ni (0~5)Zr alloys. Fig. 4 Zr content dependence of vickers hardness for Ti 49.5Ni (0~5)Zr alloys. Ti 49.5Ni (0~5)Zr を作製し, 変態温度, 形状記憶特 性, 加工性について評価したところ, 以下のことが分かった. Zr の添加量の増加と共に A f 温度は上昇するが,A s, M s, M f は Zr 添加量 5at までは Zr 無添加材よりも低下し, Zr 添加量 5at 以上で顕著な上昇を示した. また,Zr 添加 量 0 at 以上では M s, M f, A s, A f が無添加材より高い温度を 示した. すべり臨界応力 (s s ) は,Zr の添加により上昇した. また, その傾向はビッカース硬度の Zr 濃度依存性に類似し, Zr の固溶硬化によるものと推測される. 最大回復歪 (e max A ) は, すべての組成で 5 程度を示し,Zr 濃度には依存しな かった. 冷間加工における破断時の圧延率の Zr 濃度依存性は, Zr 濃度 5at までは破断せずに 90 以上の加工が可能であ り,Zr 濃度 5at 以上で顕著な加工性の低下が見られた. Zr の添加により s s は上昇し,e max A は Ti 49.5Ni と同 等であったため,Ti Ni Zr では形状記憶特性の改善が期待 出来る. Ti Ni Zr 合金の実用性を検討すると, 変態温度の上 昇に必要な Zr 添加量は 0 at 以上であり, 十分な加工性を 示す Zr 添加量は 5at 以下であった. このため,Ti Ni Zr 合金を高温形状記憶合金として実用化するためには, 第 4 元素の添加による加工性の改善が不可欠である. 度よりも低いため, 内部組織は十分に再結晶化されておらず, 変態温度は溶体化処理材より低下する. こうしたことを踏まえると, さらに高い変態温度が必要であり,Zr は 0 at 以上の添加が望ましいと考えられる. 形状記憶特性については,Zr の添加により s s が上昇し, 冷却 加熱サイクルにおける塑性変形の導入が小さくなると考えられる. また,e max A は Zr 添加 無添加に関わらず一定 であり, 実用化されている Ti 49.5Ni と同等以上の特性を期 待できる. 冷間加工性については,Zr の添加により著しく低下する が,Zr 濃度 5at では 90 以上の加工が可能であった. し かし, 高温形状記憶合金として実用性のある変態温度を示す Zr 濃度は 0 at 以上であるが,Zr 濃度が 5at を超えると 加工性が著しく低下するため,Ti Ni Zr 合金の実用化には 加工性の改善が課題である.e A は Ti Ni と同程度で,s s は 元系合金より高いため, 加工性の改善が出来れば実用化の 可能性は高いと考えられる. 文 献 ) S. F. Hsieh and S. K. Wu: Mater. Charact. 4(998) 5 6. ) J.H.Mulder,J.H.MassandJ.Beyer:Proc.ICOMAT 9, (99) 869 874. 3) S. Besseghini, E. Villa and A. Tuissi: Mater. Sci. Eng. A 73 75(999) 390 394. 4) D. R. Angst, P. E. Thoma and M. Y. Kao: Proc. ICOMAT 95, (995) 747 75. 5) V. N. Khachin, V. G. Pushin, V. P. Sivokha, V. V. Kondrat'yev, S. A. Muslov, V. P. Voronin, Yu. S. Zolotukhin and L. I. Yurchenko: Phys. Met. Matell. 67(989) 5 35. 6) Ya. Xu, S. Shimizu, Y. Suzuki, K. Otsuka, T. Ueki and K. Mitose: Acta. Mater. 45(997) 503 5. 7) T. Kawamura, R. Tachi, T. Inamura, H. Hosoda, K. Wakashima, K. Hamada and S. Miyazaki: Mater. Sci. Eng. A 438 440(006) 383 386. 8) T. Inamura, Y. Takahashi, H. Hosoda, K. Wakashima, T. Nagase, T. Nakano, Y. Umakoshi and S. Miyazaki: Mater. Trans. 47(006) 540 545. 9) Y. Yamabe Mitarai, T. Hara, S. Miura and H. Hosoda: Mater. Trans. 47(006) 650 657. 0) S.F.HsiehandS.K.Wu:J.Alloy.Comp.70(998) 37 4. ) S.F.HsiehandS.K.Wu:J.Alloy.Comp.403(005) 54 60. ) S.K.WuandS.F.Hsieh:J.Alloy.Comp.97(000) 94 30. 3) S. M. Tan, V. H. No and S. Miyazaki: Acta. Mater. 46(998) 79 740.