股関節疾患の診断と治療 ー当院での取り組みー 独立行政法人国立病院機構東京医療センター 人工関節センター藤田貴也
私の自己紹介 H7 年 3 月慶應義塾大学医学部卒業 H21 年 1 月慶應義塾大学整形外科股関節班チーフ H24 年 4 月独立行政法人国立病院機構東京医療センター整形外科日本人工関節学会評議員 人工股関節 再置換術の経験数 :843 例 筋間から進入する人工股関節置換術 : 506 例 当院では週 4 件ペースで施行
H25 年 4 月からの医療センターの人員配置 慶應大学整形外科から 8 人 東京医療センター採用レジデント 5 人 研修医 1~4 人 < 専門領域 > 高橋 : 肩関節脊椎 藤田 : 股関節骨盤人工関節小児整形 加藤 : 脊椎 斉藤 : 上肢手の外科 宇田川 : 膝関節足 栄 : 膝関節 他のDr : 一般整形 外傷
当院の人工股関節置換術 (THA) の症例数 150 130 110 90 70 50 股関節鏡骨盤骨切り人工関節抜去 THA revision THA 30 10-10 H18 年 H19 年 H20 年 H21 年 H22 年 H23 年 H24 年 H25 年 藤田赴任
当院の TKA+THA の症例数 200 180 160 140 TKA 120 100 80 60 THA 40 20 0 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25( 半年 ) H25 年見込み
H25 年 10 月 1 日からの人工関節センター設立 センター化のメリット 症例数があることによるパラメディカルのケアの精通 関連部署の連携による質の高い専門的な医療 患者さんの健康増進にさらなる貢献 当院の強み 全科で 25 科を取り扱う地域医療の基幹病院 合併症を有する患者でも万全の体制で手術が可能 4~6 日といった早急な退院を強いたりしない
人工関節センターへのご予約 地域連携枠股関節 : 木曜日初診 ( 藤田 ) 膝関節 : 金曜日初診 ( 宇田川 ) 水曜日初診 ( 栄 ) 人工関節専門外来月曜日と木曜日の午後 13:30~ お問い合わせ国立病院機構東京医療センター地域連携室 TEL 03-3411-0111
25 度以上 正常股関節の画像 関節軟骨はレントゲンに映らない
人工股関節置換術とは 頸部の骨切り 大腿骨と臼蓋 ( きゅうがい ) の骨を削る
人工股関節置換術の構造 ソケット チタン合金 ライナー ポリエチレン ヘッド コバルトクロム合金セラミック ステムチタン合金
人工股関節置換術で得られる効果 痛みがなくなる 脚長の補正 歩行 移動能力の再獲得 跛行 ( びっこ ) の 3 要因 疼痛 脚長差 筋力低下 THA により解決 本人のリハビリが重要
当院で行なっている最小侵襲手技による 人工股関節置換術 (MIS-THA) について
前方からの股関節へのアプローチの容易さ 股関節後方 股関節前方 後方 : 関節包の直上に短外旋筋群が付着切離しなければに到達不可能 前方 : 覆われている筋肉をよけるだけで臼蓋に到達可能
筋肉を切らない最小侵襲手技による人工股関節置換術 (MIS-THA) 筋間進入による長所 中殿筋が温存 疼痛が尐ない歩行能力の早期回復 入院期間の短縮 早期社会復帰 後方支持組織を温存 脱臼率が極めて尐ない 活動性の制限がない 中殿筋 術中出血量が尐ない 自己血貯血は不要術後ドレーン留置しない この筋間から進入
最小侵襲人工股関節置換術のビデオ供覧
BMI38 の高度肥満でもこの方法で施行 45 歳女性 身長 153.2cm 体重 89.5kg 手術時間 :90 分出血量 : 20ml
当院での人工股関節置換術の合併症対策
細菌感染の対策感染対策 クリーンルームの使用 抗菌剤の術前後の投与 手術ヘルメット ジェット洗浄器 最低 3L 以上洗浄 抗菌コート縫合糸 (PDS plus) 合成皮膚接着剤 ( ダーマボンド ) ドレーン留置しない 手術時間の短縮
出血の対策 骨を削るので骨からの出血は手術時間により多くなる 筋肉を切らないので出血量は尐ない 術前にトラネキサム酸 ( トランサミン ) の投与 最近は 自己血の貯血は行っていない 念の為に 同種輸血の同意書はいただいています
術中骨折への対策 日本では人工股関節の80% はセメントを用いない セメントを用いないので骨にハンマーで叩きこむ操作が必須 骨粗鬆症やリウマチや透析患者などの骨脆弱性のある場合には骨折リスクが高くなる 毎回 手術の際には骨折を固定するための器械を準備 してありますが使用することはほとんどありません
生体の股関節の動きは人工股関節の可動域を上回る
人工股関節置換術後の脱臼 人工股関節と脱臼は切っても切り離せない合併症 生体の股関節には脱臼を防止する組織で守られている 関節唇 関節包 大腿骨頭円靭帯がある 生体の骨頭径はだいたい 42mm 以上 人工股関節の可動域は 135~140 ( 骨頭径 26~32.36mm) 人工関節の動き以上に曲げると浮き上がり最終的には外れる
大きな骨頭を選択して脱臼リスクを軽減 1. 可動域が大きくなる 36-54mm head Head/Neck ratio (a / b) (Crowninshield RD.et al, 2004) b a b a 120-135 160-170 2. Jumping Distance 大きい はずれるまでの距離が大きい 脱臼を生じにくい (Cuckler.et.al, 2004)
最大の対策は筋肉を切らないアプローチの選択 筋腱非切離のアプローチ脱臼率が極めて低い Gluteus med. Tensor fascia lata X3 ライナー +Delta ceramic (40~44mm)
THA 術後のスポーツ 自転車 テニス ゴルフ バドミントン バレエ 水泳 平泳ぎ ~Xジョギング X マラソン 人生観に応じて許可
神経 血管損傷の対策 本アプローチでは大きな血管や神経には出くわさない 臼蓋のソケットの固定スクリューの方向前方の方向に長いスクリューは使用しない 大腿骨を下方に引き下げる操作間接的に坐骨神経が引っ張られる可能性はあるが極めて尐ない 神経 血管損傷は 生じる可能性は極めて尐ない
静脈血栓塞栓症 エコノミークラス症候群と同様な病態 人工股関節置換術などの下肢の整形外科手術で高いリスクがある
弾性ストキングの装着 静脈血栓症への対策 間欠的空気圧迫装置または予防的抗凝固療法 経口の血液第 10 凝固因子阻害剤の使用 車椅子は股関節 膝関節屈曲位で静脈うっ滞をきたす 一番の予防 : 車椅子よりも早期歩行開始 その意味でも筋間進入 MIS-THA は血栓予防にも効果的
人工股関節置換術はどれくらいもつか? 20 年生存率 :93~95% 再置換の理由 : 遅発性感染 反復性脱臼 インプラントの性能向上 手術年齢がより若くなってきた
より若年者には使用する機種を吟味 骨温存型ステムの選択 再置換に備えて骨を残す 機械的ゆるみを起こしにくい摺動面 ゆるみの元となりうるポリエチレン摩耗を尐なくする ポリエチレンの摩耗特性の向上 X3 ライナー MPC コーティングポリエチレン 抗酸化剤 (VitE) 含有ポリエチレン
Rapid Recovery Program の導入 H24 年 10 月より導入 医師 看護師 PT OT による人工関節専門チームによるケア 入院前から手術 退院後までの充実した情報提供 早期回復を促す運動プログラムの実践
人工関節インプラント証明書の発行 海外の空港での金属探知機による手荷物検査の時に役立ちます
同種骨バンクの体制拡充 同種骨移植 再置換術の手術の際に骨欠損部の補てんに使用 自家骨や人工骨にない利点 骨の強度が強い 骨の量が大きい 院内の倫理委員会の承認を得て日本整形外科学会の 整形外科移植に関するガイドライン および 冷凍ボーンバンクマニュアル に準じて運営しています 摘出した大腿骨頭 1. -80 3 か月以上冷凍 2. 加温処理して 3. 再度 -80 C に冷凍保存
当院では 先進医療 が認められ施行しています 実物大臓器立体モデルによる手術支援 変形や骨欠損の大きな症例の手術前に実物大のモデルを作成して綿密な術前計画に使用 3D プリンター
難しい再置換術も行なっています
臼蓋ソケットの脱転 47 歳女性 術後 3 年右 THAソケット脱転
臼蓋側再置換術
高度の臼蓋骨欠損症例 1 80 歳女性術後 27 年 ポリエチレンの破損
巨大な骨欠損 同種骨移植 臼蓋補強剤 手術時間 :5 時間 37 分出血量 :1430ml
高度の臼蓋骨欠損症例 2 術前 80 歳女性術後 27 年 2004 年に右 THA(AML 使用 ) ポリエチレンの破損
高度の臼蓋骨欠損症例 2 術後 80 歳女性術後 27 年 手術時間 :120 分出血量 : 35ml ポリエチレンの破損
人工関節周囲骨折 80 歳女性 T2 STIR 人工関節挿入例では 通常の骨接合の機種では対応できない
骨頭骨折と頸部骨折の合併 34 歳男性バイク事故 股関節周囲筋の大断裂 骨頭 Dual mobility System T2 STIR 股関節周囲筋修復 + 人工股関節置換術
他院による大腿骨転子下感染性偽関節 骨頭 前医で 2 回手術 再手術直前に横止めスクリー破損 偽関節に対して矯正短縮骨切り +THA 術後の培養で MRSE 判明
股関節鏡も行なっています MR Arthrogram CAM 関節唇損傷 FAI
骨盤骨切り術も行なっています MR Arthrogram 大転子切離による寛骨臼移動術 吸収性スクリューによる骨片の固定 サージセルによる止血で出血量低減
東京医療センター整形外科 脊椎側彎症 脊髄腫瘍 悪性骨軟部腫瘍を除くすべての領域で最先端の治療を提供しております 人工関節センターへの患者さんのご紹介お願いいたします
東京医療センター整形外科 月火水木金 初診 1 加藤脊椎 斉藤手外科 高橋肩 脊椎 藤田股関節 骨盤 宇田川膝 足 初診 2 橋本整形外科一般 交代制 栄膝 足 交代制 交代制 再診 1 藤田股関節 骨盤 高橋肩 脊椎 宇田川膝 足 斉藤手外科 加藤脊椎 再診 2 大門整形外科一般 入村整形外科一般 橋本整形外科一般 美馬整形外科一般 栄膝 足 お問い合わせ 東京医療センター :03-3411-0111 藤田メールアドレス : fujitameister@gmail.com
ご静聴ありがとうございました