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2006A0108 BL20XU フリップチップはんだ接合部における熱疲労き裂の進展および寿命評価への X 線マイクロトモグラフィー技術の応用 Application of X-ray Micro-tomography to Evaluation of Thermal Fatigue Crack Propagation and Lifetime in Flip Chip Interconnects 高柳毅 *1, 岡本佳之 *1, 釣谷浩之 *2, 佐山利彦 *2, 上杉健太朗 *3 *4, 森孝男 Takeshi Takayanagi *1, Yoshiyuki Okamoto *1, Hiroyuki Tsuritani *2, Toshihiko Sayama *2, Kentaro Uesugi *3, Takao Mori *4 *1 コーセル株式会社, *2 富山県工業技術センター, *3 高輝度光科学研究センター, *4 富山県立大学 *1 Cosel Co., Ltd., *2 Toyama Industrial Technology Center, *3 SPring-8/JASRI, *4 Toyama Prefectural University フリップチップ構造体のはんだボール接合部を対象とし 高分解能 X 線 CT 装置 (SP-μCT) を用いて 熱疲労によるき裂の発生および進展を解析した 特に 指向性の高い X 線の屈折 干渉現象を利用した屈折コントラスト法により はんだボール内のマイクロクラックを 明確にとらえることができた また 同一試料を時系列で観察し 疲労き裂の進展および破断寿命を評価することが可能となった 研究成果は 実際の電子基板マイクロ接合部における寿命評価を X 線 CT を用いて非破壊で実施できる可能性を示すものである 1. はじめに電子基板においては実装の高密度化が進行しており はんだ等を用いた電気的 機械的な接合部がμm オーダの寸法となっている いわゆるマイクロ接合部においては 疲労損傷 ( 組織変化 疲労き裂の発生や進展など ) が 電子基板の信頼性に大きな影響を与える因子であり これらの微細な欠陥や損傷を非破壊で検出 評価する技術の開発は エレクトロニクス関連産業においては急務となっている しかし 非破壊検査手法として 超音波検査や X 線管球を用いた透過検査が試みられているが 現状では μm オーダの欠陥や損傷を認識できる十分な分解能を有する画像が得られていない 一方 SPring-8 においては 上杉を中心として 放射光光源を用いた高分解能の X 線マイクロ CT 装置 ( 以下 SP-μCT) の開発を進めている 1,2) これまで はんだ接合部における熱サイクル負荷による微細組織変化の観察 3) あるいは アルミニウム合金内における疲労き裂の進展挙動解析 4) などに 成果をあげている そこで 本研究では 典型的なマイクロ接合であるフリップチップに用いられているはんだボール接合体構造を対象とし SP-μCT を用いて 熱サイクル負荷による疲労損傷について非破壊で解析 評価を行った すなわち 同一試料を時系列的に観察することで 微細組織の変化による疲労き裂の発生 およびマイクロクラ

ックの進展から破断に至るまでの過程を定量的に解析 評価した 2. X 線マイクロ CT 装置の概要 SP-μCT は SPring-8 の研究開発用の共用ビームライン BL47XU に設置されている 1,2) アンジュレータからの放射光を Si の二結晶分光器により単色化した X 線を試料に照射する この X 線は 擬似的に平行光と見なせるほど高い指向性を有しており 高分解能の 3 次元画像を再構成することが可能である また 単色光化することにより その X 線エネルギに対する X 線線吸収係数 (LAC, Linear Attenuation Coefficient) の 3 次元分布を定量的に評価することが可能である さらに この X 線のコヒーレントな特性を利用し フレネル回折によってエッジを強調表示させることが可能である すなわち き裂や物質境界における X 線のわずかな屈折および干渉を利用して エッジコントラストを強調した透過像を得る これを再構成することにより voxel (3 次元での画素 ) サイズの 1/10 オーダのマイクロクラックなどが検出可能となる 4) SP-μCT 本体は 試料を回転させる精密回転ステージ および X 線の透過像を撮影する X 線検出装置によって構成される X 線検出装置 ( 浜松ホトニクス社製 AA50 および C4880-41S) は 試料を透過した X 線を蛍光板で可視光に変換し 顕微鏡用対物レンズによって拡大した後 CCD カメラで撮影するものである 最終的に 0.47μm 0.47μm 0.47μm の voxel で構成される CT 画像を得ることが可能であり 1μm 程度の空間分解能を達成していることが確認された 3. 試験方法 3.1 試験体および熱サイクル試験観察用の試験体は Si チップと FR-4 基板が マイクロはんだボール (Sn-37wt%Pb 共晶 以下 共晶はんだ ) によって フリップチップ接合された構造である 直径約 150μm のはんだボールが 約 250μm 間隔で千鳥に配列されている なお 装置の制約のため 試験体を 厚さ 0.8mm 幅 0.8mm 長さ 10mm に加工して観察した この試験体の熱負荷による組織変化を観察するために 次の加速熱サイクル試験を実施した すなわち 高温保持温度 125 低温保持温度 -40 保持時間 30min およびランプ時間 2min の条件を設定した 3.2 透過像の撮影および CT 画像の再構成 SP-μCT を用い 任意のサイクル数において はんだボール内の微細組織の変化を観察した 試験体を回転ステージに固定し これを 180 回転させて 1800 枚の透過画像を撮影した 試験体の回転軸は 試験体の長手方向と平行になるように設定した 透過画像一枚あたりの X 線の露光時間は 0.2sec である また 透過画像の撮影領域は 1000μm 656μm とした 透過画像から CT 画像の再構成には 畳み込み逆投影法 (Convolution back-projection method) を用いた CT 画像においては LAC 値の分布を表示することで Pb リッチ相および Sn リッチ相の形状を可視化することができる なお X 線エネルギとして Sn の K 吸収端よりもやや低い 29.0keV を選択した 3.3 屈折コントラスト法による疲労き裂の検出屈折コントラスト法によってマイクロクラックのエッジコントラストを最大化するために 試験体と蛍光板との距離を最適化した 用いた光学系では 20mm 程度の距離が最適値であった また 得られた CT 画像と SEM 画像とを比較したところ SP-μCT の空間分解能をはるかに超える開口量 0.5μm 以下のマイクロクラックをとらえることが可能であった 4. 観察疲労き裂発生寿命の評価 4.1 熱サイクル負荷による組織変化共晶はんだは熱負荷により Sn リッチ相 Pb リッチ相の各相が凝集 粗大化すること ( 相成長 ) が知られている Fig.1 は 同一試験体の同

一断面における組織変化の例を CT 画像で示す 図中のグレースケールは LAC 値の大きさを示す 白い部分は LAC 値が大きい Pb リッチ相に また灰色の部分は LAC 値が小さい Sn リッチ相に 各々対応している これらの CT 画像は サイクル数 N の増加に伴う相成長の進行状況を明確にとらえている はんだボールの微細組織は X 線管球を用いた CT 装置ではとらえることができなかった情報であり SP-μCT による観察の有効性を示すものである さて 著者らは 共晶はんだの相成長を 次式で定義される相成長パラメータ S によって特徴付けられることを見出した 5) S = d 4 (1) ここに d は平均相寸法である すなわち 周期的な熱負荷が加えられる場合は S がサイクル数 N に比例して増加するように 相成長が進行する そこで CT 画像を用いて相成長パラメータ S を計測し 相成長の進行状況について定量的な評価を試みた Fig.2 は いくつかのはんだボールについて S の計測値の N に対する変化を示す なお S 0 は S の初期状態における値である 図より S の計測値が N に比例して増加していることが確認できる 4.2 疲労き裂発生寿命の推定さらに 著者らは S の 1 サイクル当たりの変化速度 ΔS とはんだ内の疲労損傷量との対応関係を調べ 次の疲労き裂発生寿命 Ni の推定式を提案している 6) ΔS = CN -α (2) ここに C およびαは定数である Fig.2 より ΔS = 0.91μm 4 が得られ 式 (2) より疲労き裂発生寿命は Ni = 310 サイクルと推定された 一方 別の試験体に対して断面の SEM 観察を実施したところ 平均の疲労き裂発生寿命は Ni = 300 サイクルと決定された 双方の結果は非常によく一致しており CT 画像を用いてマイクロはんだ接合部の疲労き裂発生寿命を推定できることを示している 5. 疲労き裂の進展および破断寿命の評価 5.1 疲労き裂の進展状況疲労き裂の発生後も熱サイクル負荷を継続すると 疲労き裂がはんだボール内部に進展していく Fig.3 は 同一試験体の同一断面における疲労き裂の進展状況の例を CT 画像で示す 疲労き裂が 明確にとらえられているのが分かる 約 300 サイクルで Cu パッド界面に近いはんだボールのコーナー部から疲労き裂が発生している 疲労き裂は はんだボールの内部を進展しており 界面き裂ではない 熱サイクル負荷に伴い 疲労き裂は 屈曲 分岐しながら はんだボールの中心部へと進展を続ける また ボイドがはんだボールの変形に伴って潰れていく状況も観察される これらの情報は X 線管球を用いた CT 装置ではとらえることができなかったものであり SP-μCT による観察の有効性を示すものである 5.2 疲労き裂の破断寿命の推定疲労き裂発生後の CT 画像から 疲労き裂の長さを計測した Fig.4 は いくつかのはんだボールについて疲労き裂長さ L の計測値の N に対する変化を示す 図より き裂進展の特徴として ボールごとのばらつきはあるものの き裂進展速度がほぼ一定であることが分かる そこで いくつかのボールについて平均のき裂進展速度を計算したところ 0.058μm/cycle の値が得られた さらに き裂進展速度を一定であると仮定して進展寿命を求めると Np = 1490 サイクルとなった したがって き裂の発生寿命 Ni = 311 サイクルに進展寿命 Np = 1490 サイクルを加えて 破断寿命は Nf = 1800 サイクルと推定された これは 2000 サイクル経過後では ほとんどのはんだボールが破断していることから 妥当な推定値であるといえる 6. まとめ放射光光源を利用した X 線マイクロ CT 装置 (SP-μCT) を用いて フリップチップはんだ接

合構造体における熱サイクル負荷による疲労き裂の観察 および疲労寿命の評価が可能となった 今後 実際の電子基板構造の観察に対して SP-μCT を適用することが期待される 参考文献 1) Uesugi, K. et al., Nucl. Instr. Method., Sec. A, Vol. 467-468 (2001), 853-856. 2) http://www.spring8.or.jp/e/bl/bl47xu/index.html 3) 釣谷浩之ほか, 機械学会年次大会講演論文集, No.06-1-(6) (2006), 203-204. 4) 戸田裕之ほか, 材料試験技術, Vol.49, No.1 (2004), 5-10. 5) 佐山利彦ほか, 機論 (A), Vol.65, No.640 (1999), 2553-2560. 6) 佐山利彦ほか, エレクトロニクス実装学会誌, Vol. 4, No. 4 (2001), 298-305. 0.0 257.0cm -1 Fig.1 CT images of the same solder bump showing phase growth process by the thermal cyclic loading Fig.2 Phase growth process by the thermal cyclic loading in solder bumps

Fig.3 CT images of the same solder bump showing fatigue crack propagation process by the thermal cyclic loading Fig.4 Crack propagation process by the thermal cyclic loading in solder bumps