史跡朱雀大路跡等の整備計画は 国営平城宮跡歴史公園の第一期開園に向け 史跡朱雀大路跡等の整備に関する有識者懇談会 を設立し 史跡朱雀大路跡 特別史跡平城宮跡内の二条大路 第一次朝堂院南面広場について ご意見をいただきながら具体的に検討を行ったものです 対象エリアは 第一期開園区域のうち 史跡平城京朱雀大路跡及び特別史跡平城宮跡内の二条大路 第一次朝堂院南面広場を対象としています 第一次朝堂院南面広場 二条大路 史跡朱雀大路跡 凡例国営公園区域第一期開園区域対象エリア 1
検討概要朱雀大路と二条大路朱雀大路は平城京の条坊 ( 都市計画 ) の中心であり 下ツ道をもとにして計画され 両側には街路樹と水路が整備されています また 二条大路は南北方向の基準線として朱雀門の前を東西に横切り 朱雀大路と同様に街路樹と水路が整備されていたとされています 本懇談会では これらの研究の結果を踏まえ 往時の条坊道路の形や広さが感じられるような整備の方針を検討しました 第一次朝堂院南面広場往時の第一次朝堂院南面広場の機能 役割は明確ではありませんが 朱雀門から第一次大極殿院を望む軸線の景観を表現した広場とするための整備方針を検討しました また 鉄道により南北に分断されているため 南北の現況や遊水池機能等の土地利用状況の特性も踏まえ検討しました 第 1 回懇談会 : 平成 26 年 10 月 31 日開催 これまでの整備の経緯 発掘調査結果 対象エリアの位置づけ 上記内容を踏まえ 保存と活用の観点から整備方針を検討 第 2 回懇談会 : 平成 26 年 12 月 16 日開催 対象エリアの整備計画( 案 ) の検討 第 3 回懇談会 : 平成 27 年 2 月 24 日開催 対象エリアの整備計画( 案 ) を了承 2
( 座長 )( 敬称略 ) 谷直樹大阪市立大学名誉教授 ( 委員 )( 敬称略 五十音順 ) 朝廣佳子 ( 株 ) 読売奈良ライフ代表取締役社長 小野健吉 ( 独 ) 国立文化財機構奈良文化財研究所副所長 北口照美 奈良佐保短期大学客員教授 寺崎保広 奈良大学教授 堀江典子 佛教大学准教授 ( 行政委員 )( 敬称略 ) 辻本慎太郎 国土交通省近畿地方整備局公園調整官 内田和伸 文化庁文化財部記念物課文化財調査官 山下信一郎 文化庁文化財部記念物課文化財調査官 小槻勝俊 奈良県教育委員会文化財保存課長 石井一良 奈良県土木部まちづくり推進局平城宮跡事業推進室長 中井 公 奈良市教育委員会文化財課長 中西寿人 奈良市総合政策部総合政策課長 林 良彦 ( 独 ) 国立文化財機構奈良文化財研究所文化遺産部長 3
懇談会での意見を踏まえた朱雀大路の整備の方向性は次のとおりです 二条大路との一体性を確保し 地道であったことをイメージできる土系の舗装とします 街路樹は大路の広がりや東西の対称性 緑陰の確保や建物の遮蔽を考慮して植栽します 大宮通りに接する部分は 大路が大宮通りを越えて羅城門まで続くことを想起させることに加え 公園の入口としての玄関性を備えます 朱雀大路の整備の方向性を踏まえた整備計画は次のとおりです 奈良市の整備 ( 東側現況 ) を基本とし 街路樹 側溝 坊垣が東西対称となる大路の整備を行います 平城宮跡の正面玄関としてふさわしい 広がりのある空間とします また 二条大路との景観的な一体化を図ります 舗装は 地道 の自然な風合いと色彩を備えたマサ土舗装で統一します マサ土舗装の路面は 透水性に加え 排水性 土埃対策 歩きやすさ等について十分な検討を行うものとします 大路東側の側溝と木橋については奈良市整備による現況を基本に再整備を行います 大路西側については これまで発掘調査は行われていませんが 東側における側溝 坊垣等の整備が奈良市教育委員会による調査 計画に基づくものであることから 朱雀大路の特徴である東西対称の都市計画の表現として 東側と同様に街路樹 側溝 坊垣の整備を行うものとします なお 西側の発掘調査は平成 27 年度に予定しています 側溝は東側に現存する遺構表示を維持すると共に 西側も同様の断面で整備します 二条大路の横断部は バリアフリーの面からも通行の支障にならないよう平坦とし 舗装材料の違いによる遺構表示を行うものとします また 条間北小路 坪内道路の横断部には橋を設けます 街路樹 ( シダレヤナギ ) は現況木を活用しつつ 東西対称の並木の形成を図ります 朱雀大路の街路樹については 万葉集に詠まれた歌などから ヤナギが植えられていた可能性が高いため すでに植栽されているシダレヤナギを引き続き用いるものとします 植栽においては 東側の現況木で樹勢の良いものを活用するとともに 西側にコンテナ植栽されている樹木の移植も検討します 植栽間隔については 大路東側の現況( 約 7m) を基本に 生長後の葉張りや背景の遮蔽効果 緑陰などを考慮して設定するものとします 大路西側の現況街路樹は 植樹枡に植えられた樹木の生育状況が思わしくないことから 植栽基盤は シダレヤナギの根系の生長に必要となる十分な幅を持つ植栽帯を確保するものとします 4
大宮通りに接する部分は 羅城門まで続く平城京の広がりを考慮しつつ 公園の入口空間として整備を行います 大路の広さや 南北方向の眺望を妨げないよう 朱雀大路には工作物を設けないようにします 大宮通りの歩道は 朱雀大路マサ土舗装の色彩に合わせた舗装とすることで 大路の連続性を演出します また 側溝 坊垣の表示についても検討すると共に 大宮通りの向かい側の建物については 景観的な調和など今後の働きかけに配慮していきます 入口空間としての機能配置は 大宮通り歩道からのアクセスを考慮して 東西にポケットパークを配置し 両側に案内サインとベンチを整備します 大宮通りから先に続く平城京の軸線については 朱雀門や条間小路付近の眺望点における解説サインで往時の正確なパース図を示すなど眺望イメージを補完します 下ツ道の遺構は 大路の広がりを妨げない最小限の表示とします 平城宮の骨格線として重要な意味を持つ下ツ道の幅員を 小舗石などを用いた線として表現します 範囲は現況の記念植樹 ( ハナモモ ) の位置 ( 南半分 ) までとします 記念植樹は朱雀大路以外への移植も含めて検討します また 解説サインは 朱雀大路内での移設を検討します 5
朱雀大路整備計画平面図 朱雀大路整備計画断面図 6
大宮通りより朱雀門を望む ( 配植 現況間隔樹形は開園時を想定 ) 大宮通りより朱雀門を望む ( 配植 現況間隔樹形は 10 年後を想定 ) 7
懇談会での意見を踏まえた二条大路の整備の方向性は次のとおりです 現況のシラカシは伐採し 大路から東大寺方向を眺望できるようにします 伐採後のシラカシはベンチ等に加工し 記憶の継承を行います 街路樹はヤナギを主とし 緑陰の確保や建物の遮蔽を考慮した植栽間隔とします 二条大路の整備の方向性を踏まえた整備計画は次のとおりです 二条大路本来の景観に近づける整備を行います 文化庁の発掘調査に基づいて整備された 往時の幅員を示す両側の側溝( 大路東側 ) を基本に 側溝間の植栽地や舗装などを整理して 広がりのある東西対称の景観に近づける整備を行います 舗装は 地道 をイメージするマサ土舗装に統一し 朱雀大路との一体化を図ります シラカシの伐採にあたっては 材木利用によるベンチ整備のほか 記憶の継承についてきめ細かな対応を行います 抜根は 地下遺構への影響に配慮して行わないものとします ( 路床面の地際で切除し舗装の下に埋めることを基本とします ) 街路樹については 朱雀大路と同様 二条大路についてもヤナギが主として植えられていた可能性が高いため シダレヤナギを用いるものとします また 出土した木簡に記録のあるエンジュを街路樹の一部として植栽します エンジュの植栽は 利用者への適切な説明を行える位置として 休憩 宮跡展望施設の近傍及び平城宮跡展示館に向かう坪内道路の脇を候補とします シダレヤナギの植栽は 二条大路の現況木の生育状況が思わしくないことから移植は行わず 全て新植によって行うものとします このことから 植栽間隔については 朱雀大路の現況 ( 約 7m) を基本にした間隔にこだわらず 生長後の葉張りや背景の遮蔽効果 緑陰などを考慮して新たに設定するものとします ( 朱雀大路の現況より もう少し余裕を持たせる方向で検討 ) 植栽基盤は 朱雀大路と同様に 樹木の根系の生長に必要となる十分な幅を持つ植栽帯を基本とします 大路両側の側溝は現存する遺構表示の維持と一部新設を行い 休憩 宮跡展望施設からの動線横断部には橋を設けます 8
二条大路整備計画平面図 二条大路整備計画断面図 二条大路朱雀門前から東大寺方面を望む ( 樹形は 10 年後を想定 ) 9
懇談会での意見を踏まえた第一次朝堂院広場の整備の方向性は次のとおりです 第一次朝堂院南面広場については 北側は現状を基本に 南側は季節感を重視した統一感のある広場として整備を行います 第一次朝堂院広場の整備の方向性を踏まえた整備計画は次のとおりです 全体として現況に合わせた暫定整備を基本とします 北側の遊水池的窪地や宮内道路 利用動線は現状のまま維持管理します 南側は 宮内道路を舗装するほかは暫定的に草地広場とし 現況の動植物の生息 生育に配慮した季節感を重視する空間とします 現況の利用動線を整理するとともに 宮内道路の見通しを確保し マサ土舗装を行います なお 近鉄線北側の宮内道路は 中央に水路が残り 動線的にも行き止まりとなることも勘案し 暫定整備時のため 舗装は行わず 草刈により見通しを維持します 利用動線の舗装は 当面現況のまま利用しますが 次期補修 改修の際に 自然色の景観舗装とします 草地広場は現況動線や宮内道路 排水路の高さにすりつけるように整地を行います また 在来草本の種子を採取するなどして 草地の形成を図ります 在来種の中でもある程度早期に安定するものや 花が咲くなど季節感を感じることのできる草本類を導入します 10
第一次朝堂院南面広場整備計画平面図 朱雀門から大極殿方向を望む ( 想定図 ) 11
5 朱雀大路 二条大路 第一次朝堂院南面広場 朱雀大路 二条大路 第一次朝堂院南面広場 朱雀大路 二条大路 第一次朝堂院南面広場 全体整備計画図 全体整備計画平面図 全体整備計画平面図 12