目指せ 300 キロ 平成 21 年 5 月 12 日大豆栽培のポイント村山総合支庁産業経済部農業技術普及課 良質大豆の安定生産には 基本技術の励行と適期作業が必要不可欠です! ポイントを押さえて 300 キロどりを目指しましょう!! 何が何でも排水対策 ~ 排水対策のポイント ~ 大豆は湿害に弱く 特に生育初期の過湿は生育を抑制します また 排水不良なほ場では 砕土率が低くなり除草剤の効きが悪く 大事な窒素源である根粒菌の働きも悪くなります 転換畑では団地化を図り 地下水位が 40cm 以下になるよう 排水対策を徹底しましょう 1 明渠の設置 ほ場周囲に溝堀機 バックホー トレンチャー等で深さ 30~40cm の明渠を設置し 地表の停滞水を速やかに排除するとともに 必ず明渠を排水溝につないで ほ場の外へ排水しましょう 2 芯土破砕と弾丸暗渠 暗渠が設置されているほ場では トラクタアタッチのサブソイラによる芯土破砕や弾丸暗渠を 5~10m おきにかけて 暗渠による排水効果を高めます ( 下図参照 ) 5~10m 水尻 本暗渠弾丸暗渠明渠 図. サブソイラによる弾丸暗渠 生育後半の窒素を効かせよう ~ 土づくり 施肥のポイント ~ 大豆では 吸収される窒素の約半分は根粒菌由来 約 4 割は地力由来ですので 根粒菌が活動しやすい土づくりと地力を高める土づくりが重要です ( 下図参照 ) また 吸収される窒素の 8 割は 開花期以降に吸収されるので 生育後半に窒素を効かせることも重要です ( 下図参照 ) 5% 施肥由来 1.5kg 全吸収窒素量 38% 地力由来 12.1kg 根粒由来 18.6kg 約 2 ヶ月 8 割以上 約 2 ヶ月半 57% 図. 収量 445kg/10a の大豆における吸収窒素の内訳 (N 成分 /10a) 播種期開花期成熟期 図. 生育期間別の窒素吸収量 ( モデル )
1 根粒菌の働きを良くする土づくり 根粒菌が活動しやすい土壌 ph6.0~6.5 を目標に カルシウム資材 ( 炭カル等 100 ~200kg/10a) を施用しましょう 根粒菌を良く働かせるために 1 排水をよくしよう 4 過剰な速効性の窒素施肥は避けよう 2 通気性を確保 ( 酸素供給 ) しよう 5 転換畑初年目では根粒菌を接種しよう 3 土壌 ph6.0~6.5 に矯正しよう 2 地力を維持増進する土づくり 大豆連作による地力の消耗が収量低下の大きな要因となっています 大豆連作ほ場では特に 堆肥等の有機物を 1~2t/10a 施用し 地力の維持 増進に努めましょう 3 基肥の目安 基肥窒素は 根粒菌が働き始めるまでのつなぎと考えて施用しましょう < 基準施用量 > ( 成分 kg/10a) 窒素 リン酸 カリ 2~3 7~8 8~10 基肥一発肥料を使用する場合は 窒素成分で 6~7.5kg/10a を目安としましょう 4 生育後半にチッソを効かせる施肥技術 開花期以降の窒素吸収が子実肥大のカギとなります 2 回目の培土直前 (6~7 葉期 ) に緩効性肥料を用い 窒素成分で 6~8kg/10a を全面施用しましょう 連作で 地力の消耗が著しいほ場ほど 緩効性肥料追肥の効果が高まります 速効性の肥料では草姿を乱す原因となりますので 必ず緩効性肥料を用いましょう 品種を選んで小粒化回避 ~ 種子準備のポイント ~ 使用する作業機械の能力や大豆作前後の作物の作付けに合わせて 適期作業ができるように品種を選定しましょう 近年 連作や登熟期間の高温等により 小粒化が問題となっております 大粒品種のリュウホウやエンレイを作付けの中心とし 小粒化を回避しましょう 1 主な品種の特性 [ 認定品種 ] リュウホウ 早晩生開花期成熟期 主茎長 (cm) 主茎節数 ( 節 ) 分枝数 ( 本 ) 百粒重 (g/100 粒 ) 収量 (kg/10a) 中生 7 月 26 日 10 月 4 日 44.6 12.2 4.0 29.4 316 [ 優良品種 ] エンレイ 中生 7 月 29 日 10 月 7 日 66.0 14.4 5.0 31.4 359 [ 奨励品種 ] タチユタカ 2 栽植密度と種子量 下図を参考に 紫斑や褐斑のない無病種子を準備しましょう 播種時期 中晩生 8 月 2 日 10 月 17 日 60.7 16.4 4.4 27.6 281 栽植本数 ( 本 /10a) 播種機セッティング例 ( 畦間 株間 1 株粒数 ) 必要種子量 (kg/10a) タチユタカリュウホウ エンレイ百粒重 :26g 百粒重 :30g 5 月下旬 ~ 13,000~ 75cm 20cm 2 粒 3.5 4.0 6 月上旬 17,000 60cm 20cm 2 粒 4.5 5.2 6 月中旬 20,000 60cm 17cm 2 粒 5.3 6.1 畦間については 使用するコンバインの刈幅やトラクタの輪距 ( トレッド ) にあわせ て決定しましょう
3 種子消毒と根粒菌接種 紫斑病に対する種子消毒 ( 山形県病害虫防除基準等を参照 ) を行いましょう 転換畑初年目では 種子消毒を行った後 根粒菌を接種しましょう 4 調湿処理 大豆の種子は 思いのほか乾燥が進んでおり 播種した直後に降水量が多いと 急激に吸水 膨張して子葉が損傷し 出芽率が低下することがあります 安定した出芽を確保するためには 播種前に種子の水分を 15% 程度まで引き上げておく調湿処理が有効です 種子を網袋に小分けし 水稲用の育苗箱にのせ 水稲用の育苗器を利用して時々撹拌しながら 25 で調湿します 育苗器の下部に 水を張った平たい容器を設置します 水分 12% であれば 3 日程度で水分 15% 程度に調湿できます 適期播種で収量安定 ~ 播種のポイント ~ 播種期は 大豆の収量に大きく影響します 5 月下旬 ~6 月上旬の播種適期を逃すことなく播種できるように 作業スケジュールを調整しましょう やむを得ず播種が遅れる場合は 前記の栽植密度と種子量の図を参考に 栽植密度を高めましょう 1 耕耘と播種 転換畑では表層の砕土率 ( 直径 2cm 以下の土塊の割合 ) が悪いため 出芽や土壌処理除草剤の効果が低下しがちです 耕耘は 砕土率 70% 以上を目標に 2 回耕耘または 逆転ロータリーを使用し 丁寧に行いましょう 播種は 1 株 2 粒まきとし 出芽 苗立ちを安定させるため 播種深が 3cm 程度になるように播種機を調整しましょう 2 除草剤散布 大豆は 生育初期では雑草に負けやすいので 土壌処理除草剤を播種直後に必ず散布しましょう ( 山形県除草剤使用基準等を参照 ) 除草剤をよく効かせるために 1 播種直後に散布しよう 2 砕土 整地を丁寧にしよう 3 過乾燥時や降雨時の散布は 効果が不安定 薬害の発生の恐れがあるので避けよう 4 水和剤 乳剤は登録された水量で希釈し散布しよう土壌が乾燥している場合は 登録の範囲の上限の水量で希釈し散布しよう動力噴霧機を使用する場合は できるだけ低圧で散布し 他作物への飛散を防止しよう 5 除草剤を散布してから土を動かすと効果が劣るので 散布後 2~3 週間は中耕 培土を避けよう 初期生育を確保するための播種新技術 播種直後に湿害を受けた大豆は 出芽不良や生育遅延を起こし 天候が回復しても生育量は回復できずに低収となります そこで 播種直後の湿害を回避し 初期生育を確保する播種技術を紹介します 1 有芯部分耕播種栽培 有芯部分耕播種栽培は 市販のロータリーの一部のツメをはずして 不耕起部分をつくり そこに播種することで 生育初期の過湿や過乾燥の軽減が期待できる栽培法です
図. ロータリーのツメのはずし方の例 ロータリーのツメをはずし 不耕起部分をつくっています 25ミリの降雨の後でも 播種されている不耕起部分は 過湿となっていません 2 小畦立て播種栽培 小畦立て播種栽培は 市販のドライブハロー等のツメを並べ替え 播種機をセットする部分に土を寄せて畦をつくり そこに播種することで 生育初期の湿害を軽減できる栽培法です 畦をつぶさないように 均平版ははずします 播種機 播種機 播種機 図. ドライブハローのツメの配列例 2 回の中耕 培土は基本技術です 2 回の中耕 培土は基本技術です 梅雨の時期の作業になりますが 降雨の合間を見て 確実に実施しましょう 1 中耕 培土の効果 中耕 培土により以下の効果が得られます 1 主茎の支持による倒伏の防止 2 畦間を排水溝とした 表面停滞水の排除
3 土中に酸素を供給し 根粒菌の働きを活性化 4 不定根の発生による養分吸収の促進 5 中耕による除草 2 中耕 培土の時期 2~3 葉期が 1 回目 6~7 葉期が 2 回目の中耕 培土の適期です 2 回目の中耕 培土が遅れると根や茎葉を痛め 生育停滞を起こすので 遅れずに実施しましょう 葉数は 本葉 (3 枚 1 組 ) の真ん中の 1 枚が 10 円玉より大きくなったら 1 枚と数えます ( 右図参照 ) 3 中耕 培土の方法 ( 右図参照 ) 1 回目の中耕 培土は子葉節まで軽く行います 2 回目の中耕 培土は初生葉節まで仕上げ培土を行います コンバイン収穫では 修各自の土の混入による汚損粒の発生を防止するため 培土の高さは 15cm 以下としましょう 株もとが凹状になると 水がたまりやすく 立枯性病害発生の原因となるので注意しましょう 雨乞いよりも畦間灌水 ~ 干ばつ対策のポイント ~ 1 干ばつの影響 大豆は 開花期から登熟初期 (7 月下旬 ~9 月上旬 ) にかけて多量の水を必要とします この時期に土壌水分が不足すると落花 落莢が多くなるとともに 根粒菌の活動も低下し 百粒重が小さくなって減収します 2 灌水を行う目安 晴天が続いて降雨が少なく 畦間に白乾亀裂が生じ 葉がしおれるようであれば 積極的に灌水しましょう 3 灌水方法 暗渠の水閘を閉じ 30a ほ場なら 3 日かけて水が水尻に到達するくらいの量で灌水しましょう この時 水口部の畦肩に板を当てて畦の崩れを防いだり ホースや土嚢を用いて流れを調節しましょう ( 右図参照 ) 油断大敵病害虫 ~ 病害虫防除のポイント ~ 図. 中耕 培土の方法 図. 畦間灌水の方法 図. 葉数の数え方 薬剤防除については 山形県病害虫防除基準等を参照すること 1タネバエ ネキリムシ タネバエの発生を防止するため 未熟な堆肥は施用しないようにしましょう また ネキリムシは雑草地に卵を産むので 播種前に ほ場周辺の雑草を刈取りましょう 必要に応じて播種時に薬剤を散布しましょう 2アブラムシ類
アブラムシはモザイク病や萎縮病等のウイルスを媒介します 気温が高く 乾燥した日が続くとアブラムシが増殖しやすくなり 爆発的に増殖したほ場においては 吸汁により早期落葉し 収穫皆無になることもあります アブラムシの発生が見られたら 早期に薬剤防除しましょう 3ウイルス病 モザイク病 萎縮病等のウイルス病が見られたら 早期に株を抜取るとともに アブラムシの防除を徹底しましょう 4 重点防除病害虫 紫斑病 マメシンクイガ 紫斑病 マメシンクイガは 大豆の品質 収量に大きな影響を与える病害虫です 確実に防除を実施しましょう 紫斑病の薬剤防除適期は開花後 25 日 ~35 日です マメシンクイガの薬剤防除適期は開花後 25 日と 35 日の 2 回です 適期収穫で高品質大豆の総仕上げ ~ 収穫 乾燥 調製のポイント ~ 収穫の遅れは しわ粒や裂皮粒などを発生させ 品質の低下を招きますので 適期収穫に努めましょう 1 刈取りの判断 コンバインによる収穫は子実水分 20% 以下 茎水分 50% 以下になれば可能です 目安は成熟期後 7 日後からで 主茎が手でポキンと折れるようになれば適期です ( 右図参照 ) 図. コンバイン収穫適期の目安 2 汚損粒の発生防止 茎水分による汚損粒発生を防止するため 朝露や夜露のある早朝や夕方の収穫は避けるとともに 降雨後の収穫も注意して行いましょう また 子実水分 20% 以上では 乾燥中に裂皮粒 しわ粒が発生しやすくなるので 収穫は避けましょう 収穫時に土を噛みこむと 汚損粒が発生するばかりでなく 異物混入の原因ともなるので 収穫時は 収穫部が水平になるように走行しましょう 青立ち株や雑草は 収穫前に刈取って除去しましょう 3 適切な乾燥調製 仕上げの水分は 15% 以下です 乾燥中の裂皮 しわ粒の発生を避けるため 送風温度は 30 以下としましょう 子実水分が 20% を越える場合は 更に送風温度を下げましょう 調製作業は 各種選別機を用いて異物や被害粒を除去するとともに 粒度 ( 大粒 中粒 ) を揃えましょう 安全で安心な消費者に信頼される農産物を作ろう! 農薬は使用する前によくラベルを読み 使用時期 使用方法を確認してから正しく使用しましょう また こまめに栽培記録 ( 肥料 農薬の使用履歴 作業実施日等 ) を記帳しましょう 農作業安全はみんなの願い ~ 農作業事故ゼロ運動展開中 ~