インスリン局所注射部の 表在超音波検査について 大阪労災病院 長友昌志中央検査部超音波室 良本佳代子金丸洋蔵山本浩司清原義幹狭間洋至岡野理江子久保田詞大橋誠糖尿病センター 演題発表に関連し開示すべき COI 関係にある企業等ありません
インスリン注射治療中の糖尿病患者 皮下注射部が反応し硬結を形成 原因注射しやすい部位への集中注射注射時に痛みの少ない硬結部に集中 同一部位への集中穿刺 結果インスリン吸収の不安定化インスリン分解の亢進 血糖値不安定
インスリン注射治療中の糖尿病患者 硬結の確認 触診等の外表所見による判定が大半 超音波検査による表在組織観察報告は少ない 大阪労災病院糖尿病センターは体表エコーにてインスリン注射治療中の糖尿病患者の腹壁を観察
インスリン硬結部の用語定義 リポジストロフィー注射に起因する皮下組織の変化を伴った皮膚変化下記リポハイパートロフィー リポアトロフィー アミロイドーシスなどの皮膚変化を含む リポハイパートロフィー皮下脂肪組織に局所的に発生する良性の腫瘍状腫脹 リポアトロフィー皮下脂肪組織に局所的に発生する萎縮 アミロイドーシスアミロイド蛋白の沈着
対象 当院受診中の皮下注射治療中である糖尿病患者 注射部精査に関して同意を得て超音波検査を施行
同意書内容 大阪労災病院倫理委員会の許可 目的 方法 利益 期間 費用 連絡先組織と責任者 同意と撤回 個人情報保護 検査内容 時期 : 注射部位変更前 変更直後 2 ヶ月後 4 ヶ月後 6 ヶ月後検査 : 問診 視触診 超音波検査採血 自己血糖測定
目的 1 表在超音波を施行し描出画像を検討する 2 同じ超音波装置において検査周波数の異なる描出画像の違いを検討する 3 ハイエンド ミドルレンジ ポータブル機器で描出画像の違いを検討する
目的 1 表在超音波を施行し描出画像を検討する硬結触知例と硬結非触知例を非注射部と比較 Bモード画像比較 エラストグラフィー画像比較 血糖値比較
使用超音波診断装置 使用機器 日立アロカ社製 Prosound F75 使用プローブ 電子リニア探触子 UST-5415 プリセット 汎用 thyroid
目的 1 表在超音波を施行し描出画像を検討する硬結触知例と硬結非触知例を非注射部と比較 Bモード画像比較 エラストグラフィー画像比較 血糖値比較
健常例 皮膚 真皮皮下組織筋膜筋層腹膜腹腔
注射時の変化 皮膚層 皮膚層 皮下組織 筋層 皮下組織 腹腔 筋層 腹腔
硬結触知例 明瞭な低エコー結節
硬結触知例 不明瞭な低エコー結節皮膚層と皮下組織の境界不明瞭化音響陰影
硬結非触知例 不明瞭な高エコー領域皮膚層と皮下組織の境界不明瞭化
硬結非触知例 不明瞭な高エコー領域皮膚層と皮下組織の境界不明瞭化部分的な音響陰影
硬結非触知例 不明瞭な高エコー領域高エコー領域の不均一化皮膚層と皮下組織の境界不明瞭化部分的な音響陰影のう胞性変化
硬結非触知例 皮膚層と皮下組織境界のノコギリ状変化
パノラマ画像 不明瞭な低エコー結節皮膚層と皮下組織の境界不明瞭化音響陰影
パノラマ画像 不明瞭な高エコー領域皮膚層と皮下組織の境界不明瞭化淡い音響陰影
パノラマ画像
パノラマ画像 高エコー領域 病変部 低エコー結節 高エコー領域 音響陰影
硬結非触知例 皮膚厚 健常例
まとめ 1 表在超音波を施行し描出画像を検討 B モード画像比較 表在超音波にてリポジストロフィーの状態を確認することが可能であった 明瞭または不明瞭な境界の低エコー腫瘤 不明瞭な境界の高エコー領域 音響陰影 皮膚層と皮下組織の境界不明瞭化など 触知例 明瞭または不明瞭な境界の低エコー腫瘤 非触知例 不明瞭な境界の高エコー領域
目的 1 表在超音波を施行し描出画像を検討する硬結触知例と硬結非触知例を非注射部と比較 Bモード画像比較 エラストグラフィー画像比較 血糖値比較
エラストグラフィー 超音波を用いた非侵襲的な組織弾性の評価プローブを軽く上下させ圧迫の歪みを色別に表現歪が小さい部分 ( 相対的に硬の部分 ) は青色歪が大きい部分 ( 相対的に軟の部分 ) は赤色
硬結触知例
硬結非触知例
硬結非触知例
硬結非触知例
まとめ 1 表在超音波を施行し描出画像を検討エラストグラフィー画像比較 超音波エラストグラフィーにより簡単に組織の硬化状態が確認できた 硬化が強いと青 同等なら周囲と変化なし 触知例 青く硬化が強い印象 非触知例 青く硬化が強い症例もある
目的 1 表在超音波を施行し描出画像を検討する硬結触知例と硬結非触知例を非注射部と比較 Bモード画像比較 エラストグラフィー画像比較 血糖値比較
硬結触知例 病変部 病変部
硬結非触知例 病変部 病変部
まとめ 1 表在超音波を施行し描出画像を検討血糖値比較 リポジストロフィー部と対象領域で血糖値変化が確認できた 触知例 血糖値変化が確認できた ( 当然 ) 非触知例 血糖値変化を呈する症例があった
目的 1 表在超音波を施行し描出画像を検討する 2 同じ超音波装置において検査周波数の異なる描出画像の違いを検討する 3 ハイエンド ミドルレンジ ポータブル機器で描出画像の違いを検討する
目的 2 同じ超音波装置において検査周波数の異なる描出画像の違いを検討する ワイドバンドプローブの周波数シフトを利用 利用可能範囲内の低周波と高周波の B モード画像比較
使用超音波診断装置 使用機器 日立アロカ社製 Prosound F75 使用プローブ 電子リニア探触子 UST-5415 プリセット 汎用 thyroid
周波数変化による画像比較 高周波 低周波 分解能 微細 粗雑 浅部描出 得意 不得意 深部描出 不得意 得意
周波数変化による画像比較 15.0MHz 非注射部 9.3MHz
周波数変化による画像比較 15.0MHz 注射部 9.3MHz
まとめ 2 同じ超音波装置において検査周波数の異なる描出画像の違いを検討する 15.0MHz( 高周波 ) リポジストロフィーは確認可能 9.3MHz( 低周波 ) おおむねリポジストロフィーは確認可能 10MHz 以上のリニアプローブにて検査施行 リポジストロフィーの確認が可能
目的 1 表在超音波を施行し描出画像を検討する 2 同じ超音波装置において検査周波数の異なる描出画像の違いを検討する 3 ハイエンド ミドルレンジ ポータブル機器で描出画像の違いを検討する
目的 3 ハイエンド ミドルレンジ ポータブル機器で描出画像の違いを検討する 各機器の B モード画像比較
画像比較検討超音波診断装置 ハイエンド機器ミドルレンジ機器ポータブル機器
ハイエンド機器 日立アロカ社製 Prosound F75 アロカ主導 Prosoundシリーズのトップ機
ミドルレンジ機器 日立アロカ社製 ARIETTA 60 日立とアロカ合併後初の共同開発機器上位に70がありひとつ下位の機器
ポータブル機器 富士フィルム社製 FC1 富士フィルムが携帯装置の SonoSite を吸収合併し共同開発 早い起動と落下に強いプローブが特徴
超音波機器別の画像比較 触知例 ハイエンドミドルレンジポータブル 非触知例
まとめ 3 ハイエンド ミドルレンジ ポータブル機器で描出画像の違いを検討する ハイエンド (1000 万円以上 ) ミドルレンジ (500 万円程度 ) ポータブル (300 万円程度 ) リポジストロフィーの確認が可能
総まとめ 表在超音波検査でインスリン注射部のリポジストロフィーが観察可能 リポジストロフィーは超音波で多種多様な変化観察可能触知例は低エコー結節非触知例は高エコー領域 超音波検査で確認しえた硬結非触知例でも血糖値が不安定化 リポジストロフィーを観察するには 超音波診断装置 10MHz 以上のリニアプローブ 患者の協力
経過予測
結語 表在超音波検査でインスリン注射部の定期的な観察は変化した皮下組織の状態を把握することが可能であり糖尿病患者の皮下注射指導や血糖をコントロールする上で重要であると考える