債務控除できるもの できないもの 1. 概要相続税の申告で 債務控除できるものや葬式費用には 被相続人名義の銀行借入金や未納の所得税等の公租公課 未払医療費等のいわゆる債務の金額 葬式費用が挙げられます ( 相法 13) 斎場へのタクシー代や式後の飲食代なども含みますが 通常必要とされる範囲内とされ

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税金の時効 税務では 時効のことを更正 決定処分の期間制限 = 除斥期間 といいます その概要は 以下の通りです 1. 国税側の除斥期間 ( 通則法 70) 1 期限内申告書を提出している場合の所得税 相続税 消費税 税額の増額更正 決定処分の可能期間 : 法定申告期限から 3 年 2 無申告の場合

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( 相続時精算課税適用者の死亡後に特定贈与者が死亡した場合 ) (6) 相続時精算課税適用者 ( 相続税法第 21 条の9 第 5 項に規定する 相続時精算課税適用者 をいう 以下 (6) において同じ ) の死亡後に当該相続時精算課税適用者に係る特定贈与者 ( 同条第 5 項に規定する 特定贈与者

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第 5 章 N

き一 修正申告 1 から同 ( 四 ) まで又は同 2 から同 ( 四 ) までの事由が生じた場合には 当該居住者 ( その相続人を含む ) は それぞれ次の 及び に定める日から4 月以内に 当該譲渡の日の属する年分の所得税についての修正申告書を提出し かつ 当該期限内に当該申告書の提出により納付

2. 制度の概要 この制度は 非上場株式等の相続税 贈与税の納税猶予制度 とは異なり 自社株式に相当する出資持分の承継の取り扱いではなく 医療法人の出資者等が出資持分を放棄した場合に係る税負担を最終的に免除することにより 持分なし医療法人 に移行を促進する制度です 具体的には 持分なし医療法人 への

この特例は居住期間が短期間でも その家屋がその人の日常の生活状況などから 生活の本拠として居住しているものであれば適用が受けられます ただし 次のような場合には 適用はありません 1 居住用財産の特例の適用を受けるためのみの目的で入居した場合 2 自己の居住用家屋の新築期間中や改築期間中だけの仮住い

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5 適用手続 ⑴ 相続時精算課税の適用を受けようとする受贈者は 贈与を受けた財産に係る贈与税の申告期間内に 相続時精算課税選択届出書 ( 贈与者ごとに作成が必要 ) を贈与税の申告書に添付して 納税地の所轄税務署長に提出する ( 相法 21の92) なお 提出された当該届出書は撤回することができない

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課税売上割合 消費税の課税売上割合の計算は 次の算式により計算します 課税売上割合が 95% 以上と未満では 仕入税額 控除の計算方法が変わってくるため算定する必要があります 課税売上割合 = 課税売上 ( 税抜 )/( 非課税売上 + 課税売上 )( 税抜 ) 消費税の課税売上割合が 95% 以上

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定期金に関する評価 1. 概要生命保険金は その支払方法が一括で支払われるものと年単位の分割払いのものがあります 税務上は前者を一時金 後者を有期定期金又は終身定期金といいます ( 相法 24) いずれにしても 相続税の課税対象となっています ( 相基通 3-6) なお 平成 22 年度税制改正前は

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である 12 遺留分とは 遺言の内容にかかわらず一定の相続人が確実に受け取ることができる一定の 割合のことである 直系尊属のみが相続人である場合は 被相続人の財産の 1/3 その 他の場合には 被相続人の財産の 1/2 である ただし 兄弟姉妹には遺留分はない 13 相続の放棄は 被相続人の生前に行

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CONTENTS 第 1 章法人税における純資産の部の取扱い Q1-1 法人税における純資産の部の区分... 2 Q1-2 純資産の部の区分 ( 法人税と会計の違い )... 4 Q1-3 別表調整... 7 Q1-4 資本金等の額についての政令の規定 Q1-5 利益積立金額についての政

A. 受贈者に一定の債務を負担させることを条件に 財産を贈与することを 負担付贈与 といいます 本ケースでは 夫は1 妻の住宅ローン債務を引き受ける代わりに 2 妻の自宅の所有権持分を取得する ( 持分の贈与を受ける 以下持分と記載 ) ことになります したがって 夫は1と2を合わせ 妻から負担付贈

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国外転出時課税制度(出国税)の導入

目 次 問 1 法人税法における当初申告要件及び適用額の制限に関する改正の概要 1 問 2 租税特別措置法における当初申告要件及び適用額の制限に関する改正の概要 3 問 3 法人税法における当初申告要件 ( 所得税額控除の例 ) 5 問 4 法人税法における適用額の制限 ( 所得税額控除の例 ) 6

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野村資本市場研究所|顕著に現れた相続税制改正の影響-課税対象者は8割増、課税割合は過去最高の8%へ-(PDF)

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株式等の譲渡所得等の申告のしかた(記載例)

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教育資金の一括贈与に係る非課税特例の創設

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総合課税の譲渡所得の入力編

用語の意義 この FAQ において使用している用語の意義は 次のとおりです 用語 意義 所得税法 ( 所法 ) 所得税法 ( 昭和 40 年法律第 33 号 ) をいいます 所得税法施行令 ( 所令 ) 所得税法施行令 ( 昭和 40 年政令第 96 号 ) をいいます 改正所令 所得税法施行令の一

投資法人の資本の払戻 し直前の税務上の資本 金等の額 投資法人の資本の払戻し 直前の発行済投資口総数 投資法人の資本の払戻し総額 * 一定割合 = 投資法人の税務上の前期末純資産価額 ( 注 3) ( 小数第 3 位未満を切上げ ) ( 注 2) 譲渡収入の金額 = 資本の払戻し額 -みなし配当金額

コピー又は web からダウンロードしてご使用ください 答案用紙 Chapter1 問題 1 個人とみなされる納税義務者 Ⅰ 相続人及び受遺者の相続税の課税価格の計算 1 遺贈財産価額の計算 ( 単位 : 千円 ) 取得者財産の種類計算過程金額 2 生前贈与加算される贈与財産の額の計算 ( 単位 :

土地建物等の譲渡(マイホームの売却による譲渡損)編

給与所得控除額の改正前後の比較 改正前 改正後 給与等の収入金額給与所得控除額給与等の収入金額給与所得控除額 180 万円以下 収入金額 40% 65 万円に満たない場合は 65 万円 180 万円以下 収入金額 40%-10 万円 55 万円に満たない場合は 55 万円 180 万円超 360 万

相続税 贈与税の基本がよくわかる! 誰が相続人になるの? 税額はどのようにして求めるの? 土地 建物の評価はどうするの? 住宅取得資金の贈与は最大 3,000 万円が非課税に? 教育資金や結婚 子育て資金の贈与は非課税に? 新しくできる配偶者居住権ってどんなもの? etc.

平成10年8月

テキスト編 第 1 章相続税 贈与税とはなにか 目次 1 相続税が課税される理由 1 2 どれくらいの遺産がある場合 相続税は課税されるか 2 3 贈与税が課税される理由 3 4 相続税と贈与税の関係 4 第 2 章相続人と相続分 1 相続人と相続順位 5 2 相続の承認と放棄 14 3 相続人の相

(2) みなし相続財産ものか13 第1 章12 2 課税される 相続財産 の範囲 海外にある財産も課税対象となる 贈与税の暦年課税適用財産も 3 年以内は課税対象となる 葬式費用 墓地や墓碑 仏壇 仏具等は非課税 相続税の課税対象となる相続財産は (1) 被相続人が亡くなったときに所有していた財産

平成 25 年度税制改正解説相続税 ~ 基礎控除の引き下げ 税率構造の見直し等 法定相続人の数と基礎控除法定相続人の数と基礎控除 法定相続人の数 1 人 2 人 3 人 4 人 5 人 60,000 千円 70,000 千円 80,000 千円 90,000 千円 100,000 千円 36,000

平成23年度税制改正の主要項目

②業務チェックリスト 譲渡_②案_ 【修正】

2011年税制改正のポイント

なぜ法人化するのか? 所得税 住民税 事業税 社会保険 医療費が高い! それは 所得 (= 収入 - 経費 ) が高いからです すべてにかかわります 特に所得税は超過累進税率です 住民税 :10% 事業税 ( 不動産 ):5% どういう場合に法人化するのか? 相続税対策が終わった場合 相続税が発生し

控除の種類判定 次の表に従い 対象となる控除を判定します 区分対象となる控除該当ページ 一般住宅の新築等 A 一般住宅の新築等に係る住宅借入金等特別控除 3 ページ 認定住宅の新築等 A2 認定住宅の新築等に係る住宅借入金等特別控除 4 ページ 中古住宅の購入 A3 中古住宅の購入に係る住宅借入金等

2. 二世帯住宅と特定居住用宅地等 [1] 区分所有なし : 外階段 / 親族が取得する場合 Q. 被相続人 A が所有する宅地の上に A の所有する建物があり 1 階に A が居住し 2 階に子 B とその家族が居住しています ( 建物内部では行き来ができない構造 ) A と B は別生計です こ

相続税の節税対策としての生前贈与 相続税 贈与税はともに相手に渡る財産の金額に対して累進的な税率により税金がかかりま す そこで 相続税の税率よりも低い税率で贈与をすれば 相続税の節税になります 下の 図で相続税と贈与税税率を確認して下さい 贈与税は 相続税に比べ 基礎控除額が低く さらに税率が高く

内に 耐火建築物以外の建物についてはその購入の日以前 20 年以内に建築されたものであること 地震に対する安全上必要な構造方法に関する技術的基準又はこれに準ずるものに適合する一定の中古住宅 を 平成 17 年 4 月 1 日以降に取得した場合には 築年数に関係なく適用が受けられます (56ページ 一

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スライド 1

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平成 22 年 4 月 1 日現在の法令等に準拠 UP!Consulting Up Newsletter 債務控除できるもの できないもの 相続税の 3 年以内取得費加算の特例 http://www.up-firm.com 1/5

債務控除できるもの できないもの 1. 概要相続税の申告で 債務控除できるものや葬式費用には 被相続人名義の銀行借入金や未納の所得税等の公租公課 未払医療費等のいわゆる債務の金額 葬式費用が挙げられます ( 相法 13) 斎場へのタクシー代や式後の飲食代なども含みますが 通常必要とされる範囲内とされ支出の証明として領収書が必要です 保証債務は相続の時点で確定していないため たとえ会社が債務超過の状態でも債務控除出来ません また 遺産分割訴訟の際の弁護士費用や遺言執行費用 相続税申告のための税理士費用 不動産の測量費用等は債務控除の対象とされていません 遺産分割を争う弁護士費用は 譲渡所得の取得費にもなりません ( 東京地裁平成 22 年 4 月 16 日判決 ) 2. 債務控除できるもの 1 被相続人名義の借入金 未払金 2 葬式費用 4 未払医療費 5 連帯債務 3 準 確定申告の所得税 消費税 固定資産税 3. 債務控除できないもの 1 保証債務 連帯保証債務 ( 相基通 14-3) 2 遺言執行費用 遺産分割の紛争解決に必要な訴訟費用 弁護士費用 相続人が負担すべきもので被相続人の債務ではないからです ( 国税不服審判所平成 1 年 12 月 27 日裁決事例 ) 3 墓地 墓石 香典返し費用 法要代 ( 事前に墓地墓石を購入しておくと 相続税の計算が有利になります ) 4 団信生保でカバーされるマイホームローンやアパマンローン ( 国税不服審判所昭和 63 年 4 月 6 日裁決事例 ) 5 訴訟中の債務 故人が株主代表訴訟の被告として訴えられている場合等裁判で負けて相続人の負担となれば相続税の更正の請求が出来ます 被相続人を被告とする訴訟について 相続税申告後に敗訴が確定した場合には判決が確定した日から 2 ヶ月以 内に更正の請求をすれば救済されます ( 通則法 232) 株主代表訴訟等の場合も 貸し金請求などの通常の訴訟の 場合と同様に訴訟開始時点において存在した債務であることが判決によって確認されます 4. 保証債務特例と相続税の債務控除の関係個人の経営していた会社の借入金は 返済見込みが無い場合は相続人が債務控除できます そして個人財産の不動産を処分して 保証債務特例を適用することも出来ます 理論的には矛盾していますが 相続税と所得税の計算でダブル適用できます ( 所基通 64 の 5-3) http://www.up-firm.com 2/5

相続税の 3 年以内取得費加算の特例 1. 概要経営者の場合は相続税の資金負担が多額となるため 延納や物納の制度が用意されています 実務では手元資金の不足から 相続人が相続したマンション等の不動産を納税資金のために売却することが多々あります たとえば 相続人が相続によって取得した土地を売却したとします ただし 相続した土地を売却すると 通常はその売却益に対して所得税 ( 譲渡所得 + 住民税 ) が課税されます 土地の売却益 = 売却代金 -( 取得費 1+ 譲渡費用 ) 長期譲渡所得税 = 土地の売却益 20% ( 所得税 15%+ 住民税 5%) つまり 相続税の納税資金のために売却した土地の売却益 2 割に相当する譲渡所得税を払うことになります これでは不動産の売却額で相続税を納付しようとしても 所得税負担により相続税の納税資金が不足します 更にまずい事に税務上の取扱は 相続や贈与で取得した財産の取得時期や取得価額は前の人のものを引き継ぐ事になっています つまり 売却予定の不動産や有価証券の簿価ははるか大昔の取得 購入金額になります これではあまりに相続人に酷なので 相続税の取得費加算 の特例制度を設けて所得税を減らせるようになっています 相続した不動産の相続税は 原則的には売却する際の取得費や譲渡費用には算入出来ません この特例は 文字通り自分が支払った相続税を取得費に加えて譲渡所得を計算して売却益 = 所得税を減らせるというものです 土地の売却益 = 売却代金 -( 取得費 1+ 相続税の取得費加算額 + 譲渡費用 ) 1 取得費は相続不動産の場合は被相続人の取得価額を引き継ぎますが 不明の場合は譲渡対価の 5% にできます ( 措置法 31 条の 4 措置通 31 の 4-1) 多額の相続税がある人は 売却益がなくなり所得税が 0 となることもあります 売却する資産は相続した土地建物の 他に上場株式 ゴルフ会員権でも適用可能です また 相続税額が納付済でも 3 年以内の売却ならば譲渡所得税を 安くすることができます 更に物納した場合でもこの特例を利用出来ます 2. 主要な適用要件相続又は遺贈により取得した財産を売却すること ( 贈与や元から自分名義で所有していたものは不可 ) 相続時精算課税制度で贈与されたものは特例適用可能 相続開始前 3 年以内に被相続人から贈与されたものも可相続税額を負担していること ( 相続税額のないケースでは不可 ) 相続発生日から 3 年 10 ヶ月内に財産を売却すること (5 年後 10 年後では不可 相続税の申告期限前でも利用できます ) 相続財産全体ではなく 相続人ひとり毎に計算します取得費に加算できるのは最高でも譲渡益部分までです ( 相続税額が 1 億円で土地売却益が 2 億円ならば 1 億円の売却益を取消せます ) 譲渡回数に制限はありません http://www.up-firm.com 3/5

相続税の取得費加算の計算式は 具体的には以下の通りです A : 相続または遺贈により取得した土地等の譲渡 相続等した全ての土地等に対応する相続税額を取得費加算できます取得費加算額 = 譲渡人の確定相続税額 { 土地等の合計額 / 課税価格 ( 債務控除前 )} B : A 以外の場合 譲渡した資産等に対応する相続税額だけを取得費加算できます取得費加算額 = 譲渡人の確定相続税額 { その資産の価額 / 課税価格 ( 債務控除前 )} この計算式の分母はプラスの相続財産だけで計算し 借入金等のマイナスの債務は控除しないで計算します ( 債 務控除前 ) 3. 設例 1 同額の相続税対象となる財産を取得した長男と次男の二人がいたとします 長男は 財産 6 億円と債務 1 億円を相続しました 一方 次男は財産 5 億円だけを相続したとすると それぞれの課税価格 ( 債務控除後 ) は同額の 5 億円となります しかし この特例の計算では分母について長男は債務控除前の 6 億円 次男は 5 億円で計算するため 取得費加算額は次男の方が多くなります このことより 次のことがわかります 取得費加算の特例適用 ( 相続財産の売却 ) を検討している相続人は 債務はなるべく相続しない方が有利 4. 設例 2 次男が相続した財産 5 億円の内訳明細は 梅田土地 2 億円 難波土地 2 億円 上場株式 1 億円であったとします 次男の相続税額が 1 億円だった場合に 梅田土地を売却した場合は A に該当するので 取得費加算金額 =1 億円 4 億円 /5 億円 =8,000 万円です しかし 上場株式を売却した場合は B に該当するので取得費加算金額 =1 億円 1 億円 /5 億円 =2,000 万円となります この特例の計算の特徴は実際に売却した土地以外の土地の相続税も加味されるからです このことより 次のことがわかります 売却益 (= 所得税 ) が多額になりそうな場合は 土地の一部を売却した方が有利 http://www.up-firm.com 4/5

5. この特例を適用する確定申告に必要な添付書類相続税確定申告書のコピー相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書譲渡所得の内訳書 ( 確定申告書付表兼計算明細書 [ 土地 建物用 ]) 物納許可通知書 ( 物納した土地等がある場合 ) 相続税物納申請書と相続税物納申請書別紙 物納財産目録 ( 物納申請中の土地等がある場合 ) 相続財産を譲渡した場合の相続税額の取得費加算の特例チェックシート 措法 39 6. すぐに不動産等を売却できない場合の工夫景気の悪い場合や土地の立地条件が良くないと 納得できる価格で売却できないリスクがあります 引き合いや買い手がなかなか現れない場合は 親族や自社に土地を買い取らせるという工夫ができます そうすれば 土地の簿価をUP 出来るので 将来の第 2 次売却時点での売却益を減少させることができます 申告期限から 3 年以内に売却ができなければ この特例が使えません この特例の制限である申告期限から 3 年を経過する日までがポイントです この措置法 39 条の取得費加算の特例には 親族間の売買には適用出来ない という各種の譲渡所得の特例にある制限 条件がありません 資金を銀行借入で調達しても 親族や自社に時価相場で第 1 次売却すればじっくりと第 2 次売却交渉に取り組むことが出来ます 親族間第 1 次売買で相続税の取得費加算額を消費して 将来の第 2 次売却時点での簿価を高めておくことが譲渡所得の軽減につながります Reference Purpose Only 本レターに掲載している情報は 一般的なガイダンスに限定されています この文書は 個別具体的ケースに対する会計 税務のアドバイスをするものではありません 会計上の判断や税法の適用結果は 事実認定や個別事情によって大幅に異なることがありえます また 解説の前提となる会計規則や税制が変更されている可能性もあります 実際に企画 実行される場合は 当事務所の担当者にご確認ください http://www.up-firm.com 5/5