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Transcription:

獣医師育成 確保支援対策事業 畜種別疾病講習会 目的 : 獣医学専攻学生の産業動物診療への意欲と理解を醸成すること 対象 : 獣医学科学生 (4 年生は授業振り替え 他学年は授業振り替えなし ) その他興味のある方はどなたでも参加できます 1. 日時 : 平成 20 年 12 月 8 日 ( 月 )8:40~17:00 2. 場所 : 山口大学農学部本館 4 階 6 番講義室 3. 内容 8:40 8:45 開会挨拶山口大学農学部獣医学科長中市統三 8:45 10:10 馬の繁殖診療の現状と課題イノウエ ホースクリニック ( 北海道 ) 10:20 11:50 馬の診療における二次診療の現状と外科診療最前線社台ホースクリニック ( 北海道 ) 井上裕士 田上正明 12:50 14:20 乳牛の代謝性疾患と獣医臨床栄養学あかばね動物クリニック ( 愛知県 ) 14:30 16:00 牛乳房炎の現状と対策愛媛県農業共済連大洲家畜診療所 鈴木保宣 杉山美恵子 16:10-16:55 総合討議 産業動物臨床の現状と将来 座長山口大学農学部獣医学科田浦保穂 主催 : ( 社団法人 ) 全国家畜畜産物衛生指導協会 ( 国立大学法人 ) 山口大学農学部獣医学科

講演要旨 1. 馬の繁殖診療の現状と課題 イノウエ ホース クリニック井上裕士 一次診療体制の実際馬の繁殖診療を含む一次診療体制として 往診依頼により必要な機材を載せた車で牧場に駆けつけるという方式が主体となっている この場合 多くの獣医師は単独で行動している したがって 保定は全て牧場の従業員に任せることが多く そのための指示は自分自身および保定者に加え 馬の安全を確保する上で欠かせない 特に繁殖分野に携わる獣医師は 馬の背後に回る直腸検査を頻繁に実施するため リスクを最小限にする上で細心の注意を払う必要がある 繁殖に携わる獣医師に要求されること馬生産業の特徴として 高額な交配料を投資する一方 体型の良い牡馬が生まれれば高額で売却できるというハイリスク ハイリターンの原則を持っている 近年 交配料支払いの条件が様々な形で工夫され 投資のリスクを低減しているが 基本的に繁殖に携わる獣医師には高い受胎率が要求される また いわゆる遅生まれと言われる 5 月から 6 月以降に誕生したサラブレッド種の市場価値は 最近極端に低下している その結果 人工照明法の普及とともに以前より交配開始時期が約 1 ヶ月早まるとともに より早期の受胎が望まれている 牝馬の繁殖に携わる臨床獣医師はこの現状を踏まえた上で 繁殖障害となる疾患またはその予兆を早期に発見し 診断および治療を迅速に行う といった診療が今まで以上に必要とされている 繁殖期における獣医師のルーティンワーク繁殖期に牝馬を受胎させるために獣医師が担う主な役割は Ⅰ. 交配適期を判定する Ⅱ. 交配後に妊娠診断をする Ⅲ. 繁殖障害となる疾患の予防と治療である これを実施するにあたり 飼養者からの稟告として 牝馬の年齢 出産歴 試情の状態等は重要な情報になる 臨床検査としては 外陰部の状態を評価し 直腸検査を実施する 直腸検査では卵巣の状態 子宮および子宮頚管の収縮の程度を触診し これらを数値化して記録する これと同時に超音波検査を実施し 卵胞の大きさを含めた卵巣の状態を評価し 子宮の状態を客観的に診断する また 必要に応じて外子宮口の触診 膣鏡検査 子宮内の細菌検査および細胞検査等を実施する 以上の検査結果をもとに生殖器の疾患を診断し ただちに治療に結びつける Ⅰ. 交配適期の判定交配適期の判定は 受胎率の向上 余分な交配による子宮内感染のリスクを減らす 種馬の負担を軽減する 飼養者の労力と時間を低減するといった点で 獣医師にとって重要な仕事のひとつである 空胎馬の場合は試情の状態により 出産した場合には分娩後 7 日前後から直腸検査を開始するのが一般的である まず 卵胞の大きさを測定するが 平均的に卵胞は繁殖シーズンの中期 (4 月から 5 月 ) では 45~50mm 程度まで発育し シーズンの終期 (6 月から 7 月 ) では 35 から 40mm 程度で排卵するので それを考慮しなければならない 交配頭数が多い種雄馬の場合には 前日または前々日に交配の予約を取る必要があるので 卵胞の発育状況を考慮し 排卵日を予測する必要があるのが現状である 熟練した獣医師でも 100% 排卵日を予測することは不可能なので 最近では排卵促進剤として hcg (2500~3000IU, iv or im) 酢酸ブセレリン (42μg, iv)

酢酸デソレリン (2.1mg, sc) などが高い頻度で使用されている 直腸検査時に子宮の収縮度合 超音波像として浮腫の程度 子宮内貯留液の性状等の情報も 牝馬の発情兆候や子宮の状態を評価し 交配をするか あるいは治療に専念し次回発情を待つかを決定する上で重要となる Ⅱ. 妊娠診断卵管で形成された受精卵は 排卵後 5~6 日目に直径約 0.2mm の桑実胚となって子宮内に進入する これが胎胞に成長し 9~11 日目に直径 3~5mm となって初めて超音波検査で確認される その後おおよそ 15 日目までは子宮内を遊離し 一日約 3.4mm 程度の成長を続ける 胎令 16 日前後に子宮内の一ヶ所 ( 多くの場合は左右どちらかの子宮角基部 ) に固着する (fixation) 馬では双胎の発症率が高い (5~10%) が この場合流産する あるいは胎子は未熟児として生まれ 経済的価値を待たないことから 一方の胎胞を用手的に破砕し単胎にする必要がある 胎胞が隣接している場合 用手破砕術の成功率は fixation が発現した後では低下する このことから 初めの妊娠診断は通常排卵後 14~15 日目 ( 交配後 15~16 日目 ) に実施される 2 つめの排卵が時間を置いて起こる場合 胎胞がまだ小さく見逃すことがあるがあるので 18 日目に再度鑑定するのが望ましい その後 1 から 2 週間間隔で約 9 週間まで胎子の成長をチェックする 超音波検査による妊娠診断において 子宮シストの存在は常々獣医師を悩ませている 子宮シストは俗に水疱と呼ばれ その起源から2つのタイプに分類される 一つは子宮腺の嚢胞状拡張により形成されたもので 通常その大きさは 10mm 以下であるとされている もう一つは 子宮内膜下のリンパ管が何らかの原因で閉塞し リンパ液が貯留して形成されたもので 一般的に前者より大型であり 日常の臨床で遭遇するほとんどがこのタイプであると考えられる シストの形成は加齢性の変化であり 老齢馬に多く認められる シスト自体は基本的に受胎の妨げになるとは考えられていないが その大きさや子宮内膜上での占める割合によっては 妊娠初期の胎胞が子宮内で自由に動くことを妨げられるため 胎令 10 日以降に黄体退行を阻止する信号を母体に伝えることを妨害されているのではないかと推察する報告もある シストのエコー像は 大小さまざまな不整形の球形として描出され いくつかの室に区分されていることが多く エコーフリーな内溶液を蓄えている 内視鏡検査では 子宮内膜の一点を茎として突出し 黄色い内溶液を含む不整形の胞状物として観察される 最近では 妊娠鑑定は特に双胎の場合を考慮するため 胎胞に fixatioin が発現する以前に超音波診断装置を用いて実施されるようになってきている しかし シストは妊娠早期の胎胞と超音波像が類似している場合があり 超音波診断装置を用いた早期妊娠診断時に胎胞とシストを鑑別することは非常に重要であるといえる 胎胞は通常 fixation が発現する16 日令頃までは子宮内に整った円形像として認められ その直径は一日に 3.4mm 程度成長する また 子宮内に遊離しているので 位置が変化することがある 一方 シストは短期間ではほとんど成長を見せず 子宮内で位置が変わることはない したがって この時期に胎胞かシストかの判別が困難である場合には 24~48 時間後に再検査を実施し その成長の程度や子宮内での位置の変化を確認することにより 判別が可能となり得る 胎令 16 日以降より胎胞はその成長と子宮の収縮により不整形となることが多く また 18~26 日令頃ではその直径は増加していないように見られる 21 日令以降に胎胞内に胎子が出現し心拍動が観察される場合は シストとの鑑別は容易であるが それまでの時期 (16~21 日令 ) に超音波像のみから胎胞とシストを判別することは困難である 一般的に 胎胞の超音波像は 胎令に即した大きさや形態を示し 21 日令以降に尿膜嚢が出現するまでは単一の球形を呈し 複数の室に分かれていない また 子宮内膜を押し上げて形成されるシストとは異なり 2~3 層の薄い細胞層でできた胎膜に

より形成されている シストの場合においても 通常の超音波像ではその壁の厚さは判読できないが 超音波がシストに垂直にあたり specular reflection が形成された画像上では 1mm 程度ではあるがその壁の厚さが描出されることが多い 一方 胎胞の場合には specular reflection が形成された画像上でも 胎膜の厚さは判読できない これらのことに留意して超音波像を観察すれば 多くの場合胎胞とシストの鑑別が可能となる Ⅲ. 牝馬の繁殖障害牝馬の繁殖障害の原因はきわめて多岐にわたっているが 今回は臨床現場で比較的発症頻度が高いものに関して概説する 1) 外陰部 膣の疾患 : a) 気膣 : 最も発症頻度が高いのは気膣である 外陰部は その上部が陥凹し 傾斜すると膣内に空気を吸引しやすくなる 空気が子宮内に進入すること自体が受胎を阻害するが 直上の肛門からの糞汁や空気中の真菌を同時に吸引することにより子宮内膜炎が誘起される 外陰部の傾斜は 先天的な骨盤の構造が原因となる場合もあるが 多くは加齢や栄養不良によるボディコンディションの低下に起因している 診断は超音波画像診断法により 膣内または子宮内に空気が描出されることが有効な指標と考えられるが 発情期中に陰部が伸展した際のみに空気が進入する潜在的な例もある 骨盤縁から陰部の上端までの長さ (cm) とその角度を掛け合わせた指数である Caslick Index が受胎率と相関があるとされている 治療法としては 陰門形成術 (Caslick s Vulvoplasty) が一般的に広く行われている また 重度な例では外陰形成術 (Episioplasty) が推奨される b) 尿膣 : 尿膣は子宮の重みとそれを支持する靭帯の弛緩により膣がスロープ状に頭側方向に下っていることに加え 本来排尿時に膣前庭括約筋の収縮により完全に閉鎖するべき膣前庭の頭側が 閉鎖不全の陥っている際に発症する したがって分娩を繰り返した経歴を持つ牝馬や 若令馬でも分娩後に一時的に発症することがある 診断として 膣内貯留液の色調 臭気 ph が参考になるが 客観的な方法として鏡検により尿中に多く含まれる炭酸カルシウムの結晶を確認する 貯留液中のクレアチニン濃度を測定するなどが行われる 分娩後 1 ヶ月程度で自然に回復している場合が多いので 初回発情で交配せずに子宮洗浄等の処置を施した後に1 周期待つことが推奨されるが 治癒しない場合には外科的処置として尿道形成術 (Urethroplasty) が必要となる 2) 卵巣の疾患 : a) 持続性発情 : 繁殖シーズンの始めにおける多くの空胎馬に見られ 両側の卵巣に 3cm 以下の卵胞が存在し それらが排卵に至らない場合に発現する 日照時間と関連しているが 近年 2 月頃より交配を開始する目的で 12 月末より人工照明を用いる牧場が増えたため 発症頻度は減少している 治療として 黄体ホルモンである Altrenogest 22mg を 7~10 日間経口投与し 休止することでリバウンド現象により発情が回帰することが多い b) 黄体遺残 : 繁殖シーズン中に数多く遭遇する疾患である 症状として 不受胎となった交配より発情を 3 週間以上示さず 機能性黄体が遺残しているために子宮や子宮頚管が緊縮している 診断は超音波画像診断で黄体を描出する 子宮内膜に浮腫が見られず エコー輝度が比較的高い黄体期のものであることを確認する 血中のプロジェステロン値を測定する等である 治療としては プロスタグランディン製剤を全身投与するが 投与前に受胎していないことを確実に診断するべきである c) 出血性卵胞 (Anovulatory Hemorrhagic Follicle): 卵胞の成長する際もしくは排卵前の過程において卵胞腔内で出血が起こり 無排卵となっている卵胞の状態で Autumn follicle と呼ばれ

ているが 繁殖シーズン中でもしばしば遭遇する 通常直径 7~10cm と大きく 時間とともに卵胞腔内にフィブリンが析出してくる 診断は超音波画像診断によるが 排卵後の出血黄体と鑑別するべきである 有効な治療法は未だに確立されていないが 約 1~3 週間で自然に退行し 発情が回帰するものが多い 3) 子宮の疾患 : a) 子宮内膜炎 : 不妊の最大の原因は 子宮内の細菌感染であるとされている 外部から子宮に至るまでには 陰部 膣前庭括約筋 子宮頚管といった 3 つの解剖学的な壁が存在し これらが破られた際に細菌が子宮内に進入する したがって交配時には細菌感染が最も誘起されやすい 健常馬であれば 交配後に子宮内に侵入した細菌や余分な精液は子宮の運動によって直ちに子宮外に排出され 感染を防御しているが 老齢馬や分娩後子宮機能の回復が不十分な牝馬では 交配後に感染が成立する例が多い (LeBlanc et al. 1994) 診断は 子宮内から採取したスワブによる細菌検査であるが コンタミネーションが起こりやすいので細胞診を同時に実施するべきである 予防として 交配前後の直腸検査時に子宮内に貯留液が認められた場合に 子宮の排出運動が不十分であると判断し 子宮収縮剤を投与する 治療として 抗生物質の子宮内投与または全身投与 子宮洗浄 子宮収縮剤の投与等があげられる b) 慢性子宮内膜疾患 (Chronic Degenerative Endometrial Disease): 牝馬の子宮内膜は 加齢や慢性の子宮内膜炎などが原因となり 子宮腺の退行性変化や内膜固有層における線維化を示すようになる これは 牝馬の受胎率や早期胚芽死の発症率と密接に関連している臨床的に重要な病変である 子宮内膜下の小動脈の硬化性変化との関連が示唆されるが 直接的な原因は未だに解明されていない 診断としては 子宮内膜バイオプシーを実施するが 単位面積当たりの病変の出現率によりグレード化して 受胎能の予後を判定する 2. 馬の診療における二次診療の現状と外科診療最前線社台ホースクリニック田上正明 我が国で 馬 というと競走馬 サラブレッドがまず思い浮かぶ人がほとんどではないでしょうか 我々の診療の対象もその 99.5% がサラブレッドです 欧米では サラブレッドは多くの馬の 種 の中の一つに過ぎず 馬はコンパニオンアニマルとして取り扱われ 繋養頭数 馬の臨床獣医師の数 その診療 ( 技術 ) レベルと規模 馬の獣医学教育の彼我の差を思うと暗然とするほどの開きがあります そういう状況の中で 我々馬の臨床獣医師は欧米の最先端獣医療に学び 少しでも後れを取らないように日々頑張っているのが現状です とは言え この 20 年間に我が国における馬の診療レベルは長足の進歩を遂げたといっても過言ではなく その進歩に二次診療所ならびにそこで行われている獣医療が大きく貢献していることは疑いようがないと思います 馬の臨床において二次診療が機能し得る最も大きな要因は 馬の個体単価が高く 高価な診断機器や医療器具と高度に訓練されたスタッフが必要とされる高度獣医療が コストパフォーマンスの面からも実施可能だからです 小動物臨床では すでに高度獣医療を標榜する紹介専門の二次診療所が 相当数機能してきている現状がありますが 馬の臨床分野ではごく限られた診療施設が機能しているだけであり 社

台ホースクリニックはそのひとつです 今回の講演では 社台ホースクリニックにおける診療の現状を紹介するとともに 主要な外科手術である関節鏡手術と開腹 ( 腸管 ) 手術について解説し 馬でしか行われないハイスピードトレッドミル内視鏡検査と最新の外科手技である腹腔鏡手術についても紹介したいと思います ( 時間が許せば ) また 最後に臨床獣医師の仕事についての私見を述べたいと思います 社台ホースクリニックと診療の概要 北海道の空の玄関である新千歳空港から車で約 20 分のノーザンファーム空港牧場内にあり 1992 年 9 月に 当初は社台グループの各牧場に繋養されるサラブレッドの二次診療施設として創設されました この数年の年間の手術頭数 ( 吸入麻酔下 ) は 500~600 頭 診療件数は 2,000 件を超え 手術馬の内訳は社台グループに属する牧場の馬が約 6 割 他の牧場 / 競馬場からの症例が約 4 割です また 保険診断業務や近傍の牧場への往診も行っています スタッフは 3 名の獣医師 2 名の VT( 動物看護士 ) と事務 ( パート )1 名で 社台グループの牧場からの症例には 所属の担当獣医師 (1 次診療 ) が クリニックでの診療を補助する体制で運営されています ハッキリ言って いつも忙しい 時として超忙しい 状況です 仕事の目標は Best Cure & Care for Every Horse! 言い換えると 日本一のサラレッドの生産牧場である社台グループの有する馬の診療所として 世界レベルで恥ずかしくない仕事をすること また 世界のトップレベルに一歩でも近づけるように努力し続けることです クリニックにおける診療の概要について述べます 関節鏡手術 Diagnostic & Surgical Arthroscopy 馬に対する関節鏡手術は 馬の整形外科手術の中で最も重要な分野の一つです クリニックでは過去 16 年間に 2,500 頭を超える症例の関節鏡手術を実施してきています その概要について スライドと DVD( 実際の症例 /1 歳 飛節の OCD/ 約 18 分 ) によって解説します 開腹( 腸管 ) 手術 Laparotomy/Celiotomy Colic Surgery 馬の死亡原因 ( 内科疾患 ) で最も多い疾患は 腸疾患であり いわゆる 変位疝 といわれるような腸管が機械的に捻転 纏絡 絞扼などを起こし激烈な疝痛症状を呈する急性腹症は 外科手術によってのみ救命が可能な疾患です 馬の 命 がかかる手術だけに やりがい はありますが さまざまな事情で大変な手術でもあります 今回は 約 400 例の症例の中から 代表的な実際の症例の写真を供覧し それぞれについて説明したいと思います ハイスピードトレッドミル内視鏡検査 Treadmill Endoscopy 馬用のトレッドミル上で高速走行 ( 時速 50Km/ 上り勾配 : 実際のレース時の負荷に近い ) を行い その時に咽喉頭で起きる様々な変化をリアルタイムに内視鏡で観察するもので 高い運動パフォーマンスを要求されるサラブレッドの上部気道疾患の精査に非常に有用です Pharyngeal Collapse の症例報告 ( 動画 ) をもとに解説したいと思います 腹腔鏡手術 Diagnostic & Surgical Laparoscopy 馬に対する腹腔鏡手術は 欧米では広く普及し様々な症例に対して実施されていますが わが国では諸事情によりほとんど実施されていないのが現状です

過去 4 年間に 26 頭の馬の腹腔鏡手術を行ったので その概要を説明します 臨床獣医師の仕事に対する一考察 私は来年で 馬の臨床獣医師としてのキャリアが ちょうど 30 年になります これから獣医師になろうとする皆さんに 臨床獣医師という仕事についての私的なコメントを一言述べたいと思います 3. 乳牛の代謝性疾患と獣医臨床栄養学 あかばね動物クリニック 鈴木保宣 はじめに 乳牛は牛乳を生産すること そのために分娩し 繁殖を繰り返さなければならないことが宿命である ゆえに乳房炎 周産期病 ( 主に代謝性疾患 ) 繁殖障害は避けて通ることが出来ない 3 大疾病である 最近は乳牛をつながないで離して飼う ( フリーストールやフリーバーン ) 形態がおおくなり蹄病がこれに加わって 4 大疾病となってきた 乳牛の栄養学会では 最近の約 15 年間にわたって乳牛の代謝性疾患を防ぎ生産性を高めるために盛んに研究がされてきた しかし 代謝性疾患はいまだに 4 大疾病から外れず 乳牛の臨床獣医師の主な仕事対象となっている 動物の健康と生産性の向上 治療の精度をあげること 予防が出来るために栄養を理解すること ( 獣医臨床栄養学の習得 ) は獣医師にとって重要なことであると思われる 以下に 最近の乳牛の栄養学の成果を紹介する 乾乳後期の検討 周産期の疾病と障害は 分娩後のエネルギーマイナスと強い相関がある 健康問題を最小にして高産乳を得るために 乾乳後期と分娩直前の期間にエネルギー摂取を最大化し 分娩後の栄養にルーメン微生物叢とルーメン絨毛を慣らし 体脂肪動員の減少と脂肪肝を予防することが検討された 残念ながら乾乳後期の栄養の検討では再現性の高い方法が見つからず悩まされた 乾乳前期の検討 そこで 乾乳前期からの検討がなされた 乾乳牛はエネルギー過剰になりやすく それが長く続くと良くないことがわかった 人間医学で内臓脂肪型肥満 ( メタボリックシンドローム ) として問題になっているⅡ 型糖尿病 インスリン抵抗性とよく似ていることがわかった 代謝性疾患を防ぐには乾乳前期の栄養濃度を高すぎないようにすることが大切である 群の移動 周産期病の予防のためには栄養だけで解決できない問題がある 分娩前後はエピネフリンに感受性が鋭敏なため 移動ストレスやオーバークラウドがあるとNEFAが動員され代謝性疾患の引き金になることがわかってきた 新しい方法 乾乳牛のエネルギー摂取をコントロールする方法として1 群管理 ハイストロー & ローエネルギーの有利性が認められつつある 1 群管理は移動がない分社会的ストレスが少なくてすむ有利性がある 産乳ピークはやや低く遅くなり 持続性に向上がある 健康問題は減少 繁殖もよくなると報告されている 繁殖や免疫への影響 乾乳期の栄養管理により繁殖や免疫に影響することがわかってきた 必須脂肪酸の影響につい

て報告されている おわりに 乾乳牛はエネルギー過剰になりやすい特徴がある これを防ぐことが代謝性疾患の予防のための栄養のキーポイントとなる さらに 分娩前後はストレスに鋭敏であることを理解すれば臨床獣医師として精度の高い治療や予防を通じて役に立つことが出来はずである 獣医臨床栄養学の習得は臨床獣医師にとって必須アイテムと考えられる 4. 牛乳房炎の現状と対策 NOSAI えひめ大洲家畜診療所杉山美恵子 はじめに 家畜共済統計によれば乳房炎で死亡 廃用になった乳牛は 平成 19 年度で 16,904 頭であり 死亡 廃用原因の第 3 位で 15.7% を占めている また 生命にかかわらなくとも 炎症による乳量の減少 抗生物質の投与による乳の廃棄および治療費などの損失は大きく 乳房炎は単独で最も経済的損失の大きい病気であるといわれている 一方で 牛乳は 食品であり 生乳の取引基準 ( ペナルティー ) の中に乳房炎の目安である体細胞数が加えられていることが多く 食品衛生の面でも 品質上非常に問題となる病気である にもかかわらず 発症は 後を絶たず 獣医師にとっても 酪農家にとっても重大な疾病である 乳房炎の現状 乳房炎の診断は CMT 変法であるPLテスターによる検査が最も一般的である その症状から 甚急性 急性 慢性 潜在性に分類できる 甚急性乳房炎は 著しく急性の経過をとり 発熱 食欲低下などの重篤な全身症状を伴い 死亡に至ったり 泌乳能力を喪失させたりする 急性乳房炎は 全身症状は軽いが 乳房の腫脹 硬結を認める 慢性乳房炎は 全身 乳房ともに症状は軽いが 乳汁に異常を認める 再発を繰り返すことも多く 長期にわたって牛乳の出荷ができない原因となる 潜在性乳房炎は 全身 乳房 乳汁とも肉眼的な所見は認められず 検査を実施しなければ診断できない このために 酪農家は 乳房炎であることに気づかず 体細胞数の高い乳汁を出荷し続け 結果としてバルク乳の体細胞数が高く推移する いずれにしても 大きな経済的損失につながるのである また 乳房炎の起因菌の性質により 伝染性乳房炎と環境性乳房炎に分類できる 伝染性乳房炎の起因菌には S.aureus ( 黄色ブドウ球菌 ),Str.agalactiae ( 無乳レンサ球菌 ), Corynebacterium bovis などがあり 搾乳時に手指やミルカーを介して伝染する 環境性乳房炎の起因菌は Coliform ( 腸内細菌群 ),CNS ( コアグラーゼ陰性ブドウ球菌 ),Yeast like fungi ( 酵母様真菌 ),Pseudomonas aeruginosa ( 緑膿菌 ) などがあり これらの起因菌は 乳牛がいる環境に常在しており 常に感染の機会に曝されている これらのすでに発症した乳房炎に対する治療効果は 必ずしも高くなく 特に慢性乳房炎の治癒率は低い 乳房炎対策 これらの乳房炎に対して 治療よりも予防に重点を置くべきであるとの考え方が 現在全国的

に行われている 乳房炎コントロール である 乳房炎の予防は 牛群としての取り組みで 搾乳方法および搾乳システム点検が大きな2つの柱となっている 乳房炎は 乳腺の炎症の総称であり その炎症の原因となる微生物は 搾乳作業の不備によって損傷してしまった乳頭口から侵入し 健康な乳頭口から搾乳作業以外のタイミングで微生物が侵入することは少ない このため 搾乳環境をできるだけ清潔に保ち 感染源となる微生物を減らすことはもちろん 乳頭口を傷めない搾乳がまず何より重要である 乳頭口を傷める最も大きな原因は 過搾乳である 過搾乳は 文字通り 搾りすぎること である しかし 現実には ただ長く搾っていることだけを指す言葉ではなく 乳頭口に負担のかかる作業すべてを指している ( 絶対的過搾乳と相対的過搾乳がある ) 搾乳は 真空圧を利用した搾乳システムによって行われており 乳頭口に直接かかる圧力のために乳頭口は常に傷みやすい状況にある 搾乳システムの真空圧の変動をきたす作業はすべてしてはならない また 乳牛の泌乳は オキシトシンというホルモンの分泌と関連している オキシトシンの分泌は 乳頭の刺激からわずか5 分間である オキシトシンの分泌が始まる前にミルカーを装着しても乳は搾れず 乳頭に無駄な圧力がかかるだけである また オキシトシンの分泌が終わっているのにいつまでも搾乳していても すでに泌乳は終了しており これも乳頭を傷めるだけである オキシトシンの分泌を無視した搾乳作業は 過搾乳と同じことになる 搾乳という作業は 毎日 通常朝夕 2 回行われる その毎日の作業のちょっとした不備が積み重なると 乳頭口に大きな損傷を与える結果となる しかし 意外にも酪農家は 搾乳作業や乳頭の毎日の少しずつの変化に気づきにくい そして 乳房炎のきっかけとなる搾乳作業に関する問題は 酪農家ごとに異なる このため 第三者が搾乳時に立ち会うこと ( 搾乳立会 ) により 搾乳作業 搾乳システムの見直しがスムーズになり 乳房炎の減少に役立つのである 終わりに 乳房炎コントロールのマニュアルは 各地で作成され 酪農家の指導が行われているが 特に 高温多湿の西日本では 夏場を中心に乳房炎は未だに多発傾向にある また 生乳取引時の体細胞数に対するペナルティーは 年々厳しくなってきており ペナルティーによる損失は酪農経営を直接圧迫している さらに 昨今の消費者の 安心 安全 の意識向上により 酪農家には より良質な牛乳の生産が求められている 1 頭でも多く乳房炎で命を落とす牛が減ること 1kg でも多くの牛乳を酪農家が出荷できるようにすることが乳房炎のコントロールの目標である