Microsoft Word - 新技術シリーズNo20完成版

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新技術シリーズ No.20 あじさい きらきら星 の栽培技術 栃木県農業試験場

あじさい きらきら星 の栽培技術 目 次 はじめに 1 1. 育成経過 2 2. 形態的特性 3 1) 草姿 2) 花序 3) 両性花 4) 装飾花 3. 栽培特性および栽培のポイント 5 1) 花色は赤色系と青色系の発現が可能 2) 花芽分化しやすいため 摘心時期に注意 3) 間延びせずにボリュームを出す草姿改善方法 4. 栽培技術指針 9 1) 親株管理 2) 挿し木 3) 育苗 4) 休眠および休眠打破 5) 定植から開花までの管理 6) 出荷 7) 病害虫防除

はじめに 栃木県では1970 年代から鉢物栽培が増加し シクラメンを経営の柱とした全国有数の産地が形成された シクラメンは12 月を中心に出荷されるが 鉢物農家では生産施設を効率的に利用するため様々な種類の鉢物を組み合わせて栽培を行っている その1つにあじさいがあり 春から初夏にかけての重要な品目になってきた 鉢物農家で栽培されているあじさいは 西洋あじさい ( ハイドランジア ) と呼ばれ 様々な花色や花型のタイプがあり これまでの日本古来のあじさいとは異なる この西洋あじさいは 経済成長とともに需要が伸び 特に母の日の贈り物として急速に人気が高まり 県内でも生産が増え 主力品目となっている 1980 年代に入り 県内生産者が独自にあじさいの品種改良に取り組み 多くのオリジナル品種の作出により 全国的にも有数の産地として発展してきた 2010 年産の栃木県におけるあじさいの年間生産額は約 1 億円で 鉢物としてはシクラメンに次ぐ品目になっている 近年では母の日のギフト商材として カーネーションと並んで消費需要が高く 特徴のある品種は高単価で市場取引が行われている 価格が低迷している鉢物花きの現状において 有利販売が期待できる品目である こうした背景から 本試験場では 既存品種にはない八重咲き性と複色の特性を併せ持ち 鉢物栽培に適した商品性の高いあじさいの品種開発に取り組んできた 2015 年にこれらの特性を有する きらきら星 が品種登録された また 同年にはジャパンフラワーセレクション鉢物部門に入賞するなど高い評価を得ている きらきら星 はこれまでのあじさいの品種に比べ 特有の性質を有する そこで 高品質安定生産を図るため 安定栽培技術の確立試験結果とともに 現地での知見も参考として本栽培マニュアルをとりまとめた 1

1. 育種経過 1999 年に八重咲き 装飾花の色が複色となる品種の育成を目標に スミダノハナビ由来の系統 八重咲き ガクアジサイ型 単色 を母親 フラウヨシコ を父親として交配を行い 6 個体の雑種第 1 世代を得た 2001 年にこれらを開花させたところ いずれの個体も 一重咲き ガクアジサイ型 単色 であった このため 八重咲き性および複色の形質は劣性遺伝である可能性が高いと考え 1 個体について自殖交配を行った その結果 7 個体の雑種第 2 世代が得られ 保存系統として維持した 2009 年にこれらの中から八重咲きで装飾花が覆輪タイプの複色 がく片の縁に深い切れ込みを有する個体を近年の流行に沿う特徴であると判断し 有望系統 あじさい栃木 1 号 と位置づけ 挿し木増殖を行った 2010 年に特性調査を実施した結果 八重の装飾花のがく片数 装飾花の大きさおよび装飾花の覆輪部の発色が安定し 開花形質が優れたことから 同年 10 月に品種登録を出願し 2015 年に品種登録された 1999 年交配 母親 : 八重咲き ガクアジサイ型 単色 父親 : フラウヨシコ 一重咲き アジサイ型 複色 2001 年雑種第 1 代の自殖交配 2003 年雑種第 2 代を系統保存 2009 年系統名 あじさい栃木 1 号 を付与 2010 年 きらきら星 として品種登録出願 2015 年品種登録品種登録番号第 24281 号 図 1. きらきら星 の育成過程 2

2. 形態的特性 1) 草姿植物体は開張性で樹高は新梢長が 46.2cm と 中 枝の斑点の多少は 中 である 葉は葉身全体の形が 卵型 で 葉身に切れ込みがある ( 表 1) 2) 花序 花序の形は 平型 ガクアジサイ型 である ( 表 2) 3) 両性花両性花の明確は 雄ずいががく片化した八重咲きのため 不明瞭 であり ガクアジサイ型の欠点とされる観賞時に花粉の脱落が発生しないメリットがある 両性花の色は 淡紫 である ( 表 3) 4) 装飾花装飾花数は8 輪で 花形は 八重咲き でがく片が重なる がく片数は 14 枚あり 装飾花の直径が 6.5cm と大きく ボリュームがある がく片の縁に深い切れ込みがある ( 表 4) 装飾花は 複色 で 複色のタイプはフラウヨシコと同じ 覆輪 である 花色は装飾花の主色が赤味紫 ( 日本園芸植物標準色票値 8912) で 覆輪外側の複色の値は紫白 ( 同 8301) である ( 表 5) 花色が開花時の色から夏は緑色 さらに秋には赤色へと経時的に変化する移行性がある 写真 2. きらきら星 の花序 写真 1. きらきら星 の草姿 3

表 1. 草姿の特性 品種名 樹形 新梢長 (cm) 樹高 枝の斑点 葉長 (cm) 葉幅 (cm) きらきら星開張性 46.2 中中 118.5 73.1 城ヶ崎開張性 43.5 中やや多い 120.5 70.7 表 2. 花序の特性 品種名花序の形花序の花形 花序の直径 (cm) きらきら星 平型 ガクアジサイ型 17.5 18.4 城ヶ崎 平型 ガクアジサイ型 14.1 14.5 表 3. 両性花の特性 品種名 両性花の明確 両性花の色 きらきら星 不明瞭 淡紫 城ヶ崎 不明瞭 青 表 4. 装飾花の特性 品種名 装飾花数 ( 輪 ) 装飾花の直径 装飾花の花型 装飾花のがく片数 ( 枚 ) がく片の縁の切れ込み (mm) 程度 きらきら星 8 65 66 大 八重咲き 14 有 ( 深い ) 城ヶ崎 8 53 54 中 八重咲き 12.5 無 表 5. 装飾花の花色特性 品種名 装飾花の単色 複色装飾花の色の別 ( 複色のタイプ ) 主色複色 きらきら星 複色 ( 覆輪 ) 87A(8912: 赤味紫 ) 115C(8301: 紫白 ) 城ヶ崎 単色 97A(7603: 浅紫青 ) 注. 装飾花の色は RHS カラーチャート () 内は日本園芸植物標準色票にて表示 写真 3. 城ヶ崎 ( 対照品種 ) 4

3. 栽培特性および栽培のポイント きらきら星 は 栽培条件などにより花色が異なる変化性を有する このため 栽培に用いる用土や肥料を選択することで 花色を赤系色 あるいは青系色のいずれかに発現させることが可能となる 赤系色の発色は ピートモス : クリプトモス : パーライトを2:1:1で配合した培養土で N 100ppm P 2 O 5 200ppm K 2 O 100ppmの液肥を週 2 回施用した場合 花色は a * 値が39.3と高く 赤味の強いピンク色の発色がみられた ( 表 6, 写真 4) これは 青色の原因となるアルミニウムを成分とする赤玉土を含まない用土組成であるため 赤系色の発色が良好であると考えられた しかし この用土組成では 赤玉土を配合した用土と比較すると根張りが劣ったため 現地では赤玉土を含む用土を きらきら星 共通用土として使用することとした (cf. 図 4) この場合は 赤系色の発色に必要と考えられるリンを多く含むリン酸アンモニウム等による追肥により 赤味の強いピンク色の花色を発現することが可能となる 一方青系色の発色は 赤玉土 : ピートモス : 腐葉土を4:1:1の体積比で配合した用土で N 100ppm P 2 O 5 50ppm K 2 O 100ppmの液肥濃度を週 2 回施用した場合 花色はb * 値 -15.2と低く青味を強く発色した( 表 6, 写真 5) 表 6. きらきら星の用土の種類と装飾花の花色の関係 培養土の種類と配合比 用土の ph 装飾花の主色 ( 色差値 ) L * a * b * 赤玉土 : ピートモス : 腐葉土 =4:1:1 6.0 51.5 18.8-15.2 ピートモス : クリプトモス M: パーライト =2:1:1 5.5 66.8 39.3 15.0 注 1. 配合比は体積比を表す 2. 色差値は L * a * b * 表色系による測定値.L * は 0( 黒 )~50( グレー )~100( 白 ) で明度, a * は -60( 緑 )~60( 赤 ),b * は -60( 青 )~60( 黄 ) を表す 写真 4. 赤色発色の きらきら星 写真 5. 青色発色の きらきら星 5

一般にあじさいの花芽分化の適温は 18 以下で 充実した側枝において 9 月 下旬から開始されるため 正常な花芽分化を考慮すると摘心は 8 月中旬までに 行うことが慣行技術となっている このため きらきら星 を含む 8 品種につ いて 7 月中旬に摘心し 9 月上旬から 2 週間ごとに花芽形態形成を観察したと ころ きらきら星 以外の品種は 9 月中旬 ~ 下旬に花芽分化が開始されていた ( ステージ 2) 一方 きらきら星 は 9 月上旬 ~ 中旬には既に二次花房分化期 ( ステージ 5) に達し 花芽分化が早い傾向にあった ( 図 2,3) このことか ら きらきら星 は 18 以上でも花芽分化することが明らかになった そのた め 慣行技術にならい 摘心を 8 月中旬より前に行ってしまうと 早期に花芽分 化が始まり 年内に不時出蕾することがあるので 摘心時期には注意する必要が ある ( 写真 6) ステージ 7 ステージ 6 ステージ 5 ステージ 4 ステージ 3 ステージ 2 ステージ 1. 1 9 月 7 日 9 月 21 日 9 月 28 日 10 月 5 日 10 月 12 日 10 月 19 日 10 月 26 日 11 月 2 日 11 月 9 日 11 月 17 日 11 月 22 日 11 月 30 日 図 2. 品種ごとの花芽形態形成 注. 花芽分化のステージは図 3 のとおり きらきら星 フラウヨシコ フェアリーアイ コサージュ 隅田の花火 十二単 ボーデンゼー ウズアジサイ 図 3. アジサイの花芽分化ステージ ( Hydoranjia Production Bailey,D.A,(1989)) 写真 6. 年内に不時出蕾した株 6

開花時の鉢物あじさいは 高さ 40cm 程度が規格の目安となるが きらきら星 は節間が伸びやすく また保温開始後 4~5 節程度で開花するため 葉数が確保しにくく 間延びした草姿になりやすい 草姿改善には 定植 15 日後と30 日後の2 回 各 4000~8000ppm でダミノジッド水溶剤を散布すると株の高さは無処理のものより5cm 低い40cm 程度に抑制できる ( 表 7) また 育苗期の摘心時期を調整することでも 開花株の高さを抑制できる 摘心時期を慣行の8 月 11 日より20 日遅い8 月 31 日に行うと 開花は慣行より5 日遅れるが 株高が41.7cmに抑制できる ( 表 8, 写真 7,8) ただし 摘心を 9 月 10 日に行うと すべての側枝で開花は見られるが 開花遅延が生じ 株高も慣行より高くなるため 8 月中に最終摘心を行う必要がある ( 表 8, 写真 7, 8) 表 7. 開花枝へのわい化剤処理と開花株の 定植後 15 日 (ppm) 無処理 4,000 8,000 高さの関係 ダミノジッド濃度 定植後 30 日 (ppm) 無処理 45.4 4,000 42.9 8,000 43.0 無処理 44.9 4,000 40.0 8,000 42.7 無処理 42.8 4,000 39.7 8,000 40.6 注. 処理はハンドスプレーで葉面散布とした. 株の高さ (cm) 表 8. 株養成時の最終摘心日と旧枝長および 摘心日旧枝長 1 開花日 2 株の高さ 年 / 月 / 日 (cm) 年 / 月 / 日 (cm) 2012/8/11 7.4 a 4 2013/4/22 45.7 ab 4 3 有意性 開花株の高さ 8/21 5.4 b 4/24 44.7 b 8/31 3.4 c 4/27 41.7 b 9/10 2.5 c 5/10 51.0 a ** ** 注 1. 株養成は 2012 年 5 月 20 日に挿し木,6 月 23 日に 2.5 号 ポット鉢上げ後,1 回目の摘心を 7 月 5 日に行った. 旧枝 長は側枝の伸長が停止した落葉時 (12 月 20 日 ) の側枝長. 2. 開花日は,2013 年 2 月 4 日に 5 号ポットに定植, 夜温 15 で促成栽培した株で, 花色が発色した日とした. 3. 有意性の ** は 1% で有意差あり. 4. 多重比較は Tukey 法により同符号間に 5% 水準で有意差なし. 7

写真 7. 摘心時期の違いによる落葉期の株の様子 ( 左から最終摘心日が 8/11 8/21 8/31 9/10) 写真 8. 摘心時期の違いによる開花株の様子 ( 左から最終摘心日が 8/11 8/21 8/31 9/10) 8

4. 栽培技術指針 栽培暦 ( 母の日出荷用 ) 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月 1 月 2 月 3 月上中下上中下上中下上中下上中下上中下上中下上中下上中下上中下上中下上中下 挿し木ポット上げ摘心 無加温ハウス ( 凍結防止 ) 入室加温 寄せ植え 出荷 1) 親株管理 きらきら星 は 新梢の節数が少なく 4~5 節程度で花芽を持つため 挿し穂を確保しづらい品種である 発根率が良く 育苗期の出芽の揃いが良い充実した挿し穂を得るためには 前年の親株管理を計画的に行うことが重要である 親株は早期出蕾などで出荷できなかった株を利用することもできるが 出荷鉢数以上の挿し穂を確実に確保するためには 挿し穂用親株を準備しておく 挿し木の前年は 露地か雨よけで管理し 肥料不足では良い挿し穂がとれないので 6~9 月までは置き肥等で肥培管理をする 早期出蕾を避けるため 摘心は9 月過ぎに行う 2 月下旬から最低夜温を 10 程度に加温したハウスに入室し 肥培管理を行う 充実した挿し穂をとるために 鉢の間隔を広くとり 十分に光が当たるようにする また 親株からの採穂だけでなく 出荷用の開花株の余剰枝を利用することもできる 保温開始後に新梢が伸び 余剰な開花枝を整理するときに 株元からピンチした枝を挿し穂として利用する 余剰枝からの採穂は4 月中旬に行う 2) 挿し木 挿し木時期最終摘心が8 月下旬頃となるため 挿し木作業は 5 月中旬 ~ 下旬が適期である 挿し穂の調製親株から枝をとり 1 節ずつ管挿しにする 大きい葉は3 分の1 程度に切り落とし 水につけ半日 ~ 一日冷蔵庫で保管し 水揚げする 親株は ハダニ類 うどんこ病 炭疽病などの発生に注意を払い 適時防除を行い挿し穂への感染を防ぐように注意する 9

挿し木用土鹿沼土 : バーミキュライト=3:1 ピートモス : パーライト=1:1 などを用いる 注. 配合割合は体積比を表す 挿し木作業と管理箱挿しまたは 72~128 穴のセルトレイへ挿す 発根を促すため 密閉挿しにするか ミスト繁殖とする 密閉挿しの場合は発根後 密閉資材を取り除く 発根後 N 50ppm 程度の液肥を1~2 回施肥する 写真 9. 調整した挿し穂 写真 10. 挿し木の様子 3) 育苗 ポット上げの時期挿し木後 3 週間から1か月程度で十分に発根が確認できたらポット上げを行うが 挿し木後 2 週間程度の発根初期の状態でも可能で 作業もしやすい 定植時に2 鉢寄せ植えをする場合は 2.5 号ポットに1 本植えを基本とする 定植時に寄せ植えをしない場合は 3.5 号ポットに2 本植えにする ポット上げ用土 赤系色を栽培するための用土として きらきら星 部会で検討した結果 以下の通りに配合したものを共通用土とする 原料名 配合割合 赤玉土 40% 調整ピートモス 27% 調整ベラボン 13% 腐葉土 13% パーライト 7% 注. 配合割合は体積の割合を表す 図 4. きらきら星 共通用土の配合 基肥種類 量 (g/l) 苦土重焼りん (35%) 3 ようりん 2 バットグアノ 1 ケイカル 1 ロング413(70 日タイプ ) 2 ロング413(100 日タイプ ) 2 マグアンプⅡ(M) 1 キレート鉄 0.2 10

養水分管理 水分管理一般的な品種と同様に適湿管理を心がける 8 月下旬に露地ほ場に搬出した場合には 乾かさないように十分かん水する 養分管理共通用土は十分肥料を含んでいるため 過剰施肥とならないように注意する 肥料が多いと側枝の節間伸張を助長し 徒長苗をつくる要因になる 最終摘心を行う8 月下旬までは生育に必要な最小限の肥料にとどめ 葉色は若干淡いくらいでよい 花芽分化が開始される9 月以降も肥料が必要とされるため ロング413(70 日タイプ ) をポット当たり 0.5g 施用するか 液肥の施用量を増やすようにする 摘心一般的な品種は8 月上旬までに摘心を行うが きらきら星 は早期に花芽分化する性質があるため 休眠前に不時出蕾することがないよう 摘心時期を遅らせる必要がある このことから 最終摘心は 8 月 25 日前後を目安に行う きらきら星 は 摘心後に発生する側枝が伸びやすく 徒長苗となりやすいので 摘心は深めに2 節残して行う 写真 11. 摘心後の様子 4) 休眠および休眠打破 10 月 ~11 月に花芽分化した後 自然休眠に入る 高温で管理してしまうと休眠に入らないので 12 月までは自然低温にあてる きらきら星 は低温に弱いので 最低夜温を3 に保つようにし 日中は十分換気する 5 以下が 600 時間以上で休眠が打破される 年によって異なるが 12 月下旬から1 月上旬に休眠打破される 保冷庫により休眠打破する場合は 4 で40 日間が目安である 11

5) 定植から開花までの管理 定植時期および定植作業母の日出荷用に4 月下旬から5 月上旬に開花させるには 1 月下旬から2 月上旬が定植時期となる 定植用土はポット上げと同様の用土を用いる 1 本植えのポットは2ポット寄せ植えし 2 本植えのポットはそのまま5 号鉢に定植する 出荷時の開花輪数が確保できるように 1 鉢当たりの側枝数が7 本以上であることを確認する 温度管理定植後の温度管理は 定植から5 日間程度は夜温 10 で順化し それ以降は萼片着色前までは13 ~15 換気温度を23 程度とする 萼片着色後は夜温 12 程度 換気温度を18 に下げて管理する 萼片着色期の高温管理は花色が悪くなることがあるので注意する 養水分管理鉢上げ後から萼片が展開する頃までは 肥料要求量が多いため 肥料不足にならないように注意する 置き肥の場合は ロング413(70 日タイプ ) および (100 日タイプ ) を各 2g 程度施肥するか 液肥による管理を行う また 花色を赤味の強いピンク色を発現させるために 出蕾後は リン酸が 300ppm 程度の液肥を週 2 回程度追肥する 支柱立て 新葉が展開し 蕾が確認できたら支柱で誘因を行う 支柱は写真のようにク イックタイで留める 写真 12. 支柱の留め方 ( 右の写真のようにクイックタイをねじらないこと ) 12

その他 開花促進のためのジベレリン処理は節間の伸張に加え 花梗も伸張させ 花 序のバランスの悪化につながるので 使用しないこと 写真 13. ジベレリン処理による花梗伸張 写真 14. ジベレリン処理により間延びした節間 6) 出荷花の開きや花色の発色が不十分だと 貧弱にみえるため 若い芽を含んでいてもよいが 十分にがく片が開いて発色しているものを出荷する 消費者から支持される息の長い品種とするために 花色が不鮮明なものや 花序のステージにバラツキがあるものは出荷しない 出荷方法 出荷に当たっては必ずラベルをつける 1 ケースに 1 枚ポップをつける 品質の目安 A 品 : 花色が鮮明で 覆輪がはっきりとしている 茎が伸びすぎず 花序と葉のバランスが良い 花序数は7 輪以上 B 品 : 花色はA 品に準ずるが 覆輪がやや不鮮明なもの 茎が伸びすぎず 花序と葉のバランスが良い 花序数は6 輪以上 C 品 : 花色がやや不鮮明なもの 茎が伸びて 草姿のバランスが悪いもの 花序数は6 輪以上 7) 病害虫防除害虫はハダニ類 アザミウマ類 アブラムシ類に注意する 病気はうどんこ病 炭疽病 斑点細菌病に注意する 親株および育苗期の防除を徹底する 定植後は蕾が見えてからの薬剤散布はがく片への薬害の恐れがあるため 初期防除を心がける 13