調査研究「教科等で考える異校種間の連携の工夫」〔理科〕

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理科学習指導案

Word Pro - matome_7_酸と塩基.lwp

理科科学習指導案

授業では, 課題を解決するための情報を集める前に, どのような方法だと必要な情報を集めることができるのかを考えています 58.8% 41.2% 授業では, 調べたことなどを, 図, グラフ, 表などにまとめています 73.5% 26.5% 授業では, 情報を比べたり ( 比較 ), 仲間分けしたり

Microsoft Word - 酸塩基

指導計画 評価の具体例 単元の目標 単元 1 化学変化とイオン 化学変化についての観察, 実験を通して, 水溶液の電気伝導性や中和反応について理解するとともに, これらの事物 現象をイオンのモデルと関連づけて見る見方や考え方を養い, 物質や化学変化に対する興味 関心を高め, 身のまわりの物質や事象を

2011年度 化学1(物理学科)

( 高等部 )( 自立活動 )学習指導案

英語科学習指導案

がお互いの性質を打ち消しあう また, その際, その他のイオンから塩が生じる パフォーマンス課題 硫酸に電極をさし, 電源装置で電圧を加えると電流が流れ, 電球が点灯する これに水酸化バリウム水溶液を少しずつ加えていくと水溶液は白く濁り, 電球は次第に暗くなり, やがて消える しかし, さらに加え続

木村の理論化学小ネタ 緩衝液 緩衝液とは, 酸や塩基を加えても,pH が変化しにくい性質をもつ溶液のことである A. 共役酸と共役塩基 弱酸 HA の水溶液中での電離平衡と共役酸 共役塩基 弱酸 HA の電離平衡 HA + H 3 A にお

2 単元の評価規準関心 意欲 態度 科学的な思考 表現 観察 実験の技能 知識 理解 酸 アルカリ, 中和と塩に関する事物 現象に興味 関心を持ち, それを科学的に探究しようとするとともに, 事象を日常生活との関わりで捉えようとする 酸 アルカリ, 中和と塩に関する事象 現象の中に問題を見いだし,

(2) 本単元に関わる生徒の実態及び指導方針 1 既習の学習内容 水溶液には酸性 中性 アルカリ性のものがあること 金属を変化させる水溶液があること( 小 6) 気体の発生と性質 物質への水への溶解について( 第 1 学年 ) 物質が原子や分子でできていること( 第 2 学年 ) 電流が電子の流れで

< イオン 電離練習問題 > No. 1 次のイオンの名称を書きなさい (1) H + ( ) (2) Na + ( ) (3) K + ( ) (4) Mg 2+ ( ) (5) Cu 2+ ( ) (6) Zn 2+ ( ) (7) NH4 + ( ) (8) Cl - ( ) (9) OH -

高 1 化学冬期課題試験 1 月 11 日 ( 水 ) 実施 [1] 以下の問題に答えよ 1)200g 溶液中に溶質が20g 溶けている この溶液の質量 % はいくらか ( 整数 ) 2)200g 溶媒中に溶質が20g 溶けている この溶液の質量 % はいくらか ( 有効数字 2 桁 ) 3) 同じ

(Microsoft Word - 201\214\366\212J\216\366\213\3061\224N\211\271.docx)

Taro-化学3 酸塩基 最新版

第 2 学年 理科学習指導案 平成 29 年 1 月 1 7 日 ( 火 ) 場所理科室 1 単元名電流とその利用 イ電流と磁界 ( イ ) 磁界中の電流が受ける力 2 単元について ( 1 ) 生徒観略 ( 2 ) 単元観生徒は 小学校第 3 学年で 磁石の性質 第 4 学年で 電気の働き 第 5

群教セ G04-03 平 集 理科 - 中 生徒が解決の見通しを持って実験方法を立案する理科授業 モデル図やグラフを使った予想の共有と タブレット端末の活用を通して 特別研修員奈良達也 Ⅰ 研究テーマ設定の理由 平成 29 年 3 月公示の新学習指導要領では 内容のイとして思考 判断

7 3. 単元の指導計画 (7 時間扱い ) 時 学習内容 授業のねらい 物質の溶解と水溶液の均一性 コーヒーシュガーが水に溶ける様子を観察し, 色の様子からコーヒーシュガーの拡散と水溶液の均一性を理解する ( 観 実 ) コーヒーシュガーと食塩の溶解 物質の溶解と水溶液の均一性 2 物質が目に見え

Taro-(HP)指導案(改訂).jtd

<連載講座>アルマイト従事者のためのやさしい化学(XVII)--まとめと問題 (1)

とである そこで, 紫キャベツを使った料理にレモンをかけると色が変わることを取り上げたり, 湖沼の水質の中和やあくとりなどの例を用いたりして, 興味 関心を高めるようにしたい なお,1 学年の いろいろな気体の性質,2 学年の 化学変化と原子 分子 ( 化学式と化学反応式 ),3 学年の 酸 アルカ

学年第 3 学年 2 単元名 ( 科目 ) いろいろな関数の導関数 ( 数学 Ⅲ) 3 単元の目標 三角関数 対数関数 指数関数の導関数を求めることができる 第 次導関数の意味を理解し 求めることができる 放物線 楕円 双曲線などの曲線の方程式を微分することができる 4 単元の学習計画 三角関数 対

事例 2-2

決するための学習の見通しをもたせ, 単元を貫く課題を意識させ, 目的意識をもたせた授業を展開していきたい 本単元では, 理科での学習内容が日常生活で見られる事象に関連することに気付かせたい 日常生活の事象から酸とアルカリの性質を粒子で考え中和反応をイオンのモデルと関連付けて理解させたい それを通して

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FdData理科3年

FdData理科3年

▲ 電離平衡

木村の理論化学小ネタ 熱化学方程式と反応熱の分類発熱反応と吸熱反応化学反応は, 反応の前後の物質のエネルギーが異なるため, エネルギーの出入りを伴い, それが, 熱 光 電気などのエネルギーの形で現れる とくに, 化学変化と熱エネルギーの関

SO の場合 Leis の酸塩基説 ( 非プロトン性溶媒までも摘要可 一般化 ) B + B の化学反応の酸と塩基 SO + + SO SO + + SO 酸 塩基 酸 塩基 SO は酸にも塩基にもなっている 酸の強さ 酸が強い = 塩基へプロトンを供与する能力が大きい 強酸 ( 優れたプロトン供与

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単元の系統 粒子 学年 粒子の存在 粒子の結合 粒子の保存性 粒子のもつエネルギー 小学校ものの重さ 年 形と重さ 体積と重さ 4 年 空気と水の性質 空気の圧縮 水の圧縮 金属 水 空気と温度 温度と体積の変化 温まり方の違い 水の三態変化 5 年 ものの溶け方 物が水に溶ける量の限度 物が水に溶

Microsoft Word - 社会科

Taro-22 No19 大網中(中和と塩

理科学習指導案指導者海田町立海田西中学校教諭石川幸宏 1 日時平成 30 年 2 月 21 日 ( 水 ) 第 4 校時 2 学年第 1 学年 2 組 ( 男子 19 名女子 18 名 37 名 ) 3 場所海田西中学校第 2 理科室 4 単元名身のまわりの現象 ~ 力の世界 ~ 5 単元について

Microsoft PowerPoint - H29小学校理科

123

Ⅰ 評価の基本的な考え方 1 学力のとらえ方 学力については 知識や技能だけでなく 自ら学ぶ意欲や思考力 判断力 表現力などの資質や能力などを含めて基礎 基本ととらえ その基礎 基本の確実な定着を前提に 自ら学び 自ら考える力などの 生きる力 がはぐくまれているかどうかを含めて学力ととらえる必要があ

2004 年度センター化学 ⅠB p1 第 1 問問 1 a 水素結合 X HLY X,Y= F,O,N ( ) この形をもつ分子は 5 NH 3 である 1 5 b 昇華性の物質 ドライアイス CO 2, ヨウ素 I 2, ナフタレン 2 3 c 総電子数 = ( 原子番号 ) d CH 4 :6

けて考察し, 自分の考えを表現している 3 電磁石の極の変化と電流の向きとを関係付けて考え, 自分の考えを表現している 指導計画 ( 全 10 時間 ) 第 1 次 電磁石のはたらき (2 時間 ) 知 1, 思 1 第 2 次 電磁石の強さが変わる条件 (4 時間 ) 思 2, 技 1, 知 2

フォルハルト法 NH SCN の標準液または KSCN の標準液を用い,Ag または Hg を直接沈殿滴定する方法 および Cl, Br, I, CN, 試料溶液に Fe SCN, S 2 を指示薬として加える 例 : Cl の逆滴定による定量 などを逆滴定する方法をいう Fe を加えた試料液に硝酸

補足 中学校では塩基性ではなくアルカリ性という表現を使って学習する アルカリはアラビア語 (al qily) で, アル (al) は定冠詞, カリ (qily) はオカヒジキ属の植物を焼いた灰の意味 植物の灰には Na,K,Ca などの金属元素が含まれており, それに水を加えて溶かすと, NaOH

Microsoft Word - 数学指導案(郡市教科部会)

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PowerPoint プレゼンテーション

7 本時の指導構想 (1) 本時のねらい本時は, 前時までの活動を受けて, 単元テーマ なぜ働くのだろう について, さらに考えを深めるための自己課題を設定させる () 論理の意識化を図る学習活動 に関わって 考えがいのある課題設定 学習課題を 職業調べの自己課題を設定する と設定する ( 学習課題

3 単元の目標 (1) 電流と電圧との関係及び電流の働きに関する事物 現象に進んでかかわり それらを科学的に探究するとともに 事象を日常生活とのかかわりでみようとする 自然事象への関心 意欲 態度 (2) 電流と電圧との関係及び電流の働きに関する事物 現象の中に問題を見いだし 目的意識をもって観察

数学科学習指導案 1 次方程式 ( 中学校第 1 学年 ) 神奈川県立総合教育センター < 中学校 高等学校 > 数学 理科授業づくりガイドブック 平成 22 年 3 月 問題つくりを題材として取り上げ 身近な生活の中にある数量関係を見いだし それを基に文章題を作らせる指導によって 自ら具体的な事象

能を習得したり活用したりすることの必要性について確認する グラフをかく力やグラフを読み取る力を身に付けさせるとともに, 一次関数を学ぶことに対する意欲を高めたい 小単元全体を通して主体的に学ぶ意欲を高め, 自分の考えを説明したいという気持ちにさせた上で, 目的や方法等を明確にした意図のあるペアやグル

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第 2 学年 5 組理科学習指導案 日時平成 26 年 12 月 12 日 ( 金 ) 場所城北中学校授業者酒井佑太 1 単元名電気の世界 2 単元について (1) 教材観今日の私たちの日常生活において 電気製品はなくてはならないものであり 電気についての基礎的な知識は必要不可欠である しかし 実際

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DVIOUT-酸と塩

(1) 体育・保健体育の授業を改善するために

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Microsoft Word - dainityu.doc

いきたいと考えるはずである 水溶液を区別する ためには, 水溶液のどんな性質やはたらきに着目していったらよいか, 子どもたちの考えを大切にしながら学習を進めていきたい 本単元の問題を解決するためには, いくつかの実験結果から, 総合的に判断することが必要である そこで,5つの水溶液を区別するという意

見いださせる 3 章 化学変化と電池 本章では電解質水溶液と2 種類の金属を用いて電池をつくる実験を行い 電流が取り出せることを見いださせる このとき化学エネルギーが電気エネルギーに変換されていることを理解させる また 電極での電子の授受をイオンのモデルで表し 電池のしくみを微視的視点でとらえさせる

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Ⅲ-2 酸 塩基の電離と水素イオン濃度 Ⅲ-2-1 弱酸 Ex. 酢酸 CH 3 COOH 希薄水溶液 (0.1mol/L 以下 ) 中では 一部が解離し 大部分は分子状で存在 CH 3 COOH CH 3 COO +H + 化学平衡の法則より [CH 3 COO ][H + ] = K [CH 3

○数学科 2年 連立方程式

彩の国埼玉県 埼玉県のマスコット コバトン 科学的な見方や考え方を養う理科の授業 小学校理科の観察 実験で大切なことは? 県立総合教育センターでの 学校間の接続に関する調査研究 の意識調査では 埼玉県内の児童生徒の多くは 理科が好きな理由として 観察 実験などの活動があること を一番にあげています

17 石川県 事業計画書

留意点 指導面 物質量について物質を扱うとき, 体積や質量で表すことが多い しかし, 化学変化は, 物質の構成粒子が切り離されたり, 結合したりすることによっておこるため, 粒子の個数で表した方が都合がよい 一方, 物質の構成粒子は非常に小さく,1 個ずつ数えることはできない また, 私たちが日常取

Microsoft PowerPoint - presentation2007_03_acid-base.ppt

3 題材の目標 (1) (2) 4 題材の評価規準 ( 指導要録の四つの観点 ( 生活や技術への関心 意欲 態度 ) から題材の学習を通して目指す生徒の姿を示します ) 文章の語尾は 評価規準の作成, 評価方法の工夫改善のための参考資料 ( 中学校技術 家庭 ) 平成 23 年 11 月 ( 国立教

25math3

Microsoft Word - basic_15.doc

5 単元の評価規準と学習活動における具体の評価規準 単元の評価規準 学習活動における具体の評価規準 ア関心 意欲 態度イ読む能力ウ知識 理解 本文の読解を通じて 科学 について改めて問い直し 新たな視点で考えようとすることができる 学習指導要領 国語総合 3- (6)- ウ -( オ ) 1 科学

知識・技能を活用して、考えさせる授業モデルの研究

他の単元との連関 子どもが獲得する見方や考え方 教師の持つ指導ポイント 評価規準 小学 4 年生 もののあたたまり方 小学 6 年生 電気の利用 ~ エネルギーの工場と変身と銀行 ~ 中学 1 年生 光と音 ( 光のエネルギーを利用しよう ) 中学 2 年生 電流 ( 電気とそのエネルギー ) 電流

Microsoft Word - ④「図形の拡大と縮小」指導案

FdText理科1年

(2) -2,4,1 3 y=-x-2 をかいた ( 人 ) 4 (1) y=2x-9,y=2x,y=3x+3 (2) y=x+11 (3) 指導観校内の研究テーマが 考える力を引き出す授業のあり方 ということで, 数学科では考える力とは何かを分析し,11 項目に整理した 1 帰納的に考える力 2

Microsoft Word - 全国調査分析(H30算数)

Microsoft Word - 201hyouka-tangen-1.doc

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Microsoft Word - H30sirabasu-rika

子葉と本葉に注目すると植物の成長の変化を見ることができるという見方や, 植物は 葉 茎 根 からできていて, それらからできているものが植物であるという見方ができるようにしていく また, 学んだことを生かして科学的なものの見方を育てるために, 生活の中で口にしている野菜も取り上げて観察する活動を取り

(Microsoft Word - \207U\202P.doc)

6年 ゆで卵を取り出そう

の 問を提示して定着度を確認していく 1 分けて計算するやり方 70 = =216 2 =6 2 筆算で計算する方法 題材の指導計画 ( 全 10 時間扱い ) ⑴ ⑵ ⑶ 何十 何百 1 位数の計算 1 時間 2 位数 1 位数

Microsoft PowerPoint - D.酸塩基(2)

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平成15年度 家庭科 年間指導・評価計画

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質問 2 1イオンには大きさがあると思いますか あると思う人は どれくらいの大きさだと思いますか ある 35 人 ない 5 人 すごく小さい 12 人 原子サイズ 6 人 目に見えない大きさ 5 人 原子より小さい 2 人 種類によってちがう 2 人 分子サイズ 1 人 分子の 10 分の1 1 人

H30全国HP

student chemistry (2019), 1, 多価酸 1 価塩基滴定曲線と酸塩基滴定における学術用語についての考察 西野光太郎, 山口悟 * 茨城県立水戸第一高等学校化学部 茨城県水戸市三の丸 (2019 年 3 月 1 日受付 ;2019 年

知識・技能を活用して、考えさせる授業モデルの研究

Microsoft Word - 学習指導案(公民的分野 ②).doc

平成 28 年度埼玉県学力 学習状況調査各学年の結果概要について 1 小学校 4 年生の結果概要 ( 平均正答率 ) 1 教科区分による結果 (%) 調査科目 羽生市 埼玉県 国語 算数 分類 区分別による結果 < 国語 > (%) 分類 区分 羽生市 埼

2 原子やイオンのつ 3 原子が電気的に中性 3 原子の構造について くりに関心をもっ になる理由を 原子 説明している て説明を聞こうと の構造から指摘して 4 陽イオンや陰イオン する いる の違いを説明でき 4 イオンは原子が電子 イオンをイオン式で を失ったり 受け取っ 表している たりして

1 単元名 分数 ( 全 10 時間 ) 教材名 分数をくわしく調べよう ( 東京書籍 4 年下 ) 第 4 学年算数科学習指導案平成 26 年 11 月 26 日 ( 水 ) 5 校時 4 年 1 組 ( 男子 13 名 女子 10 名計 23 名 ) 指導者上田稚子 ( 学習指導要領 ) A 数

2014 年度大学入試センター試験解説 化学 Ⅰ 第 1 問物質の構成 1 問 1 a 1 g に含まれる分子 ( 分子量 M) の数は, アボガドロ定数を N A /mol とすると M N A 個 と表すことができる よって, 分子量 M が最も小さい分子の分子数が最も多い 分 子量は, 1 H

エコポリスセンターとの打合せ内容 2007

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事例 6 高等学校 化学 Ⅰ 学習指導案 平成 年 月 日 () 第 校時指導者教諭 学年第 1 学年生徒数 名 ( 男子 名女子 名 ) 1 単元名酸と塩基の反応 2 単元について (1) 単元観生徒は教科書の第 1 章で, 原子の構造が物質の性質を理解するうえで重要であること, さらに, 原子の電子配置モデルを用いたイオンを学習している また, 第 2 章では, 物質の量を表す概念として物質量とその単位のモルを, さらに, 化学変化を起こす物質と物質の量には一定の関係があることを学習している 今回の単元である 酸と塩基の反応 では, イオンの概念をもとに, 酸と水素イオン, 塩基と水酸化物イオンを結び付けて認識させ, 酸 塩基の定義をとらえなおす また, 水素イオンや水酸化物イオンを定量的に扱い, 酸 塩基を分類し, 強弱を説明できるようにする 中和においても同じく定量的に扱うことで, 化学反応を起こす物質の量の間に一定の関係があるという概念形成を深めたい さらに, 酸 塩基の反応にかかわる探究活動を通して, 論理的に疑問点を解決する能力や判断力等を育成することも重要である そして, 自然界のさまざまな事象を科学的に探究する喜びを体験させ, 人間生活とのかかわりの深い身の回りの物質に対する興味 関心を高めていくことも図りたい (2) 生徒観本校は総合選択制をとっており, 生徒は自身の進路に合わせて系統的な科目選択ができるようになっている それぞれ, 自らの進路にあう 学系 を選ぶ 学系には人文 理数 語学 体育 芸術 生活科学 情報経営の 7 種類がある 化学 Ⅰ は 1 年次必修科目であり, すべての学系で共通して学習するが, クラスは学系混成であるため得意とする分野が生徒個人によって異なる 生徒の多くは真面目で, 授業への取組もよい ただ, 最近の傾向として分数, 小数や比の計算を苦手とする生徒が増えているように感じる 比の計算については, 中学校で扱われることが少なくなったため, 生徒が苦手にしていると推測される また, 化学では 1.0 10-23 のような指数を最初の頃から使う 指数は高校 1 年の数学の学習内容であるが, その学習時期は化学で必要とする時期よりも後になっている 結果的に化学の授業のなかで指数計算の学習をしなければならないが, 定着させるためには授業時間数が不足している そのため, 物質量など計算を必要とする分野に入ると, 複雑 難解な印象をもつ生徒が多い 小学校 中学校までは化学をおもしろいと感じていた生徒も, 高校に入り急に難しく感じ, 理科離れ の要因になっていると感じる そこで, 必要な計算力を育成することももちろんであるが, 小学校 中学校の内容を折り込みながら, 生徒が やったことがある 知っている という実感をもたせつつ, 高等学校の学習を重ねていく授業づくりを心がけている - 1 -

(3) 指導観酸 塩基の定義および中和反応について, 小 中 高等学校での既習事項と系統性を踏まえて指導し, 理解させたい また,pH 測定実験を行い, 指標としての ph の便利さ, 実用性を理解させたい さらに, 実験器具の基本的な操作方法, 実験の過程や結果をレポートに的確に表現する力を身に付けさせたい そして, 探究活動を通して身近な物質やさまざまな事象について興味 関心を高め, 科学的な思考力や表現力を育成したい 3 小 中学校での学習内容とのかかわり小学校では 5 年生で もののとけかた を学習し水溶液における粒子概念を形成する 6 年生では 水よう液の性質とはたらき において, 水溶液は酸性 中性 アルカリ性に分けられること, 金属を変化させる水溶液があることを学習する 中学校では原子や分子を扱い, 水溶液における粒子概念を深めたうえで, 酸性 アルカリ性について学習を進める 金属との反応性や酸 塩基の強弱について, さらに中和によってお互いに打ち消しあうことを学習する 中和の考え方から, 酸性, 中性, アルカリ性の連続的な変化の概念の素地が形成される 高等学校では原子の内部構造を扱うので, 電子配置の概念が形成される 電子の数が物質の性質を決めることや, 化学変化を電子の移動で説明できるようになる さらに水溶液中の粒子について分子に引き続き, イオンを学習する 小 中 高の以上の学習を踏まえ, 今回の単元では, 酸と水素イオン, 塩基と水酸化物イオンを結びつけて考えさせ, 水素イオンや水酸化物イオンの量から酸 塩基の性質を定量的に扱うようになる 電離度や価数を学び, 酸 塩基の強弱や中和反応の量的関係を考えられるように展開させていく 4 単元目標酸 塩基の概念, 反応に関係する物質の特性, 反応物と生成物との量的関係を理解させる また, 酸 塩基の強弱については定性的に扱い,pH については測定を中心に扱い, 酸 塩基の理解を深める 5 単元の評価規準 関心 意欲 態度 思考 判断 観察 実験の技能 表現 知識 理解 酸 塩基や中和反応に関心をもち, それらを日常生活と関連付けて, 意欲的に探究しようとする 身近な物質の ph を測定する中で, 身近な現象と酸 塩基反応を関連付けて意欲的に探究しようとする 酸 塩基の観察, 実験などを行い, 共通性を見いだし, 酸 塩基の定義を理解し, 日常生活と関連付けて酸 塩基反応を考察する 酸 塩基の強弱と p H の関係について観察, 実験などを行い, 科学的に考察する メスフラスコ, ヒ ュレット, ホールヒ ヘ ットなどの実験器具の取り扱いができ, 中和滴定の技能を習得し, 未知の酸 塩基の濃度を的確に表現する 身近な物質の ph の測定方法を習得し, 観察, 実験の過程や結果を的確に表現する 酸 塩基の定義を理解し, 日常生活と関連付けて酸 塩基反応をとらえ, さらに中和滴定の量的関係を理解し, 知識を身に付けている ph の測定実験などを通して,pH の指標としての便利さ及び実用性を理解している - 2 -

6 単元 ( 酸と塩基の反応 ) の指導と評価の計画 (9 時間扱い ) (1 ) 酸と塩基 (1 時間 ) (2 ) 酸 塩基の強弱 (1 時間 ) (3 ) ph (2 時間 ) (4 ) 酸と塩基の反応 (2 時間 ) 本時 1/2 (5 ) 中和滴定 (3 時間 ) 時間 学習内容 1 いくつかの酸を化学式で表し, そこから H + の存在に気付く 水溶液中のH + が酸性を示す要因になっていることを理解する 酸の分子中に含まれるH 原子のうち, H + になることができるH 原子の数が酸の価数であることを理解する いくつかの塩基を化学式で表し, そこからOH - の存在に気付く 水溶液中の OH - が塩基性を示す要因になっていることを理解する 塩基の分子中に含まれるOH - 原子の数を塩基の価数ということを理解する 2 強い酸 塩基, 弱い酸 塩基を挙げる 水溶液中における粒子の状態を表した図を見て, 強い酸, 弱い酸における違いに気付く 溶けている酸 ( 塩基 ) の物質量に対する, 電離している酸 ( 塩基 ) の物質量の割合が電離度であることを理解する 電離度が1に近い酸 塩基を強酸 強塩基といい, 電離度が小さい酸 塩基を弱酸 弱塩基ということを理解する 3 4 水も電離していることを理解する 溶液中の H + の量を示した水素イオン指数の式を理解する 水素イオン指数の値により酸性 塩基性の強さを比較すると扱いやすくなることを理解する ph の値と酸 塩基の強さについて理解する さまざまな物質について ph メーターや ph 試験紙を用いて ph を調べる - 3 - 関 心 評価の観点 思 考 技 能 知 理 評価の視点と方法 酸 塩基の化学式の共通性について感心をもち,H +, OH - の存在に気付くことができる ( 発言 ) 化学式から価数を求めることができる ( 練習問題 小テスト ) 強い酸 塩基をいくつか挙げることができる ( 発言 ) 電離度と酸 塩基の強弱を理解している ( 練習問題 ) 物質によって酸 塩基の粒子の電離の状態が異なることに気付き, それと酸 塩基の強弱を関連付けて考えることができる ( 発言 ) 水でも一部が電離しているということに興味を示す ( 発言 ) 中性をpH7としたとき,pH が小さいほど酸性が強く,pH が大きいほど塩基性が強いことに気付く ( 発言 ) 水中のH + の濃度を

5 6 7 8 9 酸 塩基の指示薬について理解し, 指示薬の色の変化によりpH の変化の様子を知ることができることを理解する 中和反応をH + と OH - の反応から理解する 酸が出すH + と塩基が出すOH - の物質量が等しいとき, 酸と塩基はちょうど中和することを理解する ちょうど中和しているときの酸の H + の物質量と OH - の物質量の関係を式で表す 上記の関係式から, 濃度のわからない酸または塩基の水溶液に, 標準液を加えて, ちょうど中和したときの量を求め, 計算によってその濃度を求めることができることを理解する 中和滴定のときの ph の変化のデータを示し, グラフ化する グラフから中和点付近では溶液の ph が急激に変化することを理解する 滴定曲線から, 酸 塩基の組み合わせによって指示薬を選ぶ必要があることを理解する 中和滴定実験を行い, 濃度がわからない水酸化ナトリウム水溶液の濃度を求める p H で表す方法を理解している ( 練習問題 ) 酸 塩基の強弱によらず中和反応が起こることに興味をもち, 中和反応と電離度がどのように関係するかを知ろうとする ( 発言 ) 酸 塩基の価数は, 中和する際の量的関係に重要な要素をしめることに気付く ( 発言 記録 ) 中和の量的関係を数値計算により求めることができる ( 練習問題 ) データから正確にグラフ化できる ( 記録 ) 中和滴定により, 未知の酸や塩基の濃度を既知の塩基や酸を用いて測定することができるようになる またメスフラスコ, ビュレット, ホールピペットなどの実験器具の取り扱いができるようになる ( 実験操作 レポート ) * 定期考査 印 : 評価規準に照らして 十分に満足できると判断される 状況 (A) か, おおむね満足できると判断される 状況 (B) か, 努力を要すると判断される 状況 (C) を把握し, 単元の総括の資料とする 印 : 評価規準に照らして おおむね満足できると判断される 状 (B) であるかどうかだけを把握する 努力を要すると判断される 状況 (C) になりそうな生徒に対して, 適切な働きかけや指導の手だてを行うことをとくに重視したもので, 単元の総括の資料とはしない 7 本時の学習活動 (1) 題材酸と塩基の反応 ( 別紙 化学 Ⅰ プリント 24 酸と塩基の反応 を用いる ) (2) 目標酸と塩基の反応について, 水素イオンと水酸化物イオンの物質量の関係を用いて反応物と生成物の量的関係を説明できる - 4 -

(3) 展開 過程 導入 5 分 展開 40 分 学習指導事項 (* は生徒の学習活動 ) 塩酸と水酸化ナトリウムの中和反応反応式を書かせ, 中和により水と塩ができることを確認する ( 中学時の復習 ) 1 塩酸と水酸化ナトリウムの中和反応 酸の水素イオン, 塩基の水酸化物イオンに注目し, 中和反応の生成物である水は, この二つが 1:1 で反応したことによってできたものであることを確認する 指導上の留意点 * 異校種との関わ り * 中和反応の復習 * 中和反応における水の生成 H + + OH - H 2 O この反応の結果, 酸の性質のもとである水素イオンや塩基の性質のもとである水酸化物イオンが消費され, 酸や塩基の性質が消える ( 打ち消しあった ) ということを確認する * 水溶液の液性の変化 ( 酸性 中性 塩基性 ) まとめ 5 分 2 硫酸と水酸化ナトリウムの中和反応 塩酸と水酸化ナトリウムのときと同様に 1mol の硫酸と 1mol の水酸化ナトリウムで反応させた場合を考えさせ, その場合 H + があまることを気付かせる 溶液中に H + や OH があるとき, その溶液は酸性もしくは塩基性となることを思い出し, それらがすべて反応し水となったときが完全に中和された状態であることを確認する 硫酸と水酸化ナトリウムを完全に中和させるためには, それぞれ何モルずつあればよいのかを考える それを化学反応式にまとめる 塩のつくり方を知る 3 塩酸と水酸化バリウムの中和反応 酸が出す H + と塩基が出す OH - の物質量が等しいとき, 酸と塩基はちょうど中和することをふまえて, 塩酸と水酸化バリウムのちょうど中和するときのモル比を考える 化学反応式にまとめる m 価の酸と n 価の塩基がちょうど過不足なく中和するときの酸と塩基の物質量の比は,n : m になることを確認する 演習問題で定着を図る 硫酸は 2 価, 水酸化ナトリウムは 1 価であることを復習する イオン結晶の作り方を復習する - 5 -

8 成果と課題今回の研究により, 各校種の学校における学習内容と押さえるべき視点が明らかになったと感じる 私たちが担当した理科の化学分野 酸と塩基 においては, 水溶液の酸性 アルカリ性という性質を認識し, 続いてリトマス紙,BTB 溶液などを用いてどう視覚化するかを, 小学校におけるポイントとした よって, 小学校では酸性とアルカリ性の性質の違いをしっかりと押さえるとともに,BTB 溶液における色の変化から, 酸性 中性 アルカリ性の連続性に意識を向けられるよう, 素地をつくる学習内容が組まれた 中学校では中和を学習する 酸性の溶液にアルカリ性の溶液を加えていくと, 酸性が弱くなり中性に近づいていく そしてさらにアルカリ性の溶液を加え続けると, 中性から徐々にアルカリ性へと変化していく という学習から, 連続性 ( 酸性とアルカリ性の性質の関連性 ) をいっそう明確化するところがポイントである 中学校では液性の変化を粒子 ( イオン ) という視点で考えることはしないため, 中和は現象の確認のみにとどまり, 要因にはふれない また, 酸性の強さやアルカリ性の強さを定量化しない 小 中学校の学習を踏まえたうえで, 高校の学習におけるポイントは, 酸性とアルカリ性の性質 現象を具体的な物質によるものとして捉えなおすとともに, 定量的な扱い ができるようになることであると考えた この点は, 酸と塩基以外の分野でもいえることである 今回の研究で見えた課題は, いかに計算力の向上を異校種間で図っていくか ということである 高校において, 小数や比の計算ができない生徒が多い よって, 高等学校で化学を学習するために必要な計算力を中学校までに身に付けさせる, あるいはその基礎を十分に培っていく必要があると感じた その点は, 数学科との教科横断的な連携も含め, 異校種で連携して考えていく必要があるだろう 最後に課題ではなく展望になるが, 今回の研究を通して高等学校における理科 ( 化学 ) 離れを防ぐために, 小 中学校時代に体験したことがある実験 ( 見たことがある演示実験 ) を高等学校の学習に導入していくことが有効であると感じた そのため, 異校種でお互いにどのような授業の取組をしているのか情報交換を密にすることが, 理科離れを防ぐ授業づくりに大変有効であると考える - 6 -

化学 Ⅰ プリント 24 酸と塩基の反応 別紙 中和反応塩酸と水酸化ナトリウムの中和反応を考える ( 化学式 ) ( イオン式 ) (1) 塩酸と水酸化カリウムの中和反応 (2) 硫酸と水酸化ナトリウムの中和反応 (3) 塩酸と水酸化バリウムの中和反応 練習 1 次の中和反応の化学反応式を書きなさい (1) 硫酸と水酸化アルミニウム (2) 酢酸と水酸化バリウム 中和反応の量的関係 酸が出す ( ) と塩基が出す ( ) の物質量が ( ) とき 酸と塩基は ( ) する 練習 2 (1) 1molのHClを中和させるのに必要なKOHは ( )mol (2) 1molの H 2 SO 4 を中和させるのに必要なKOHは ( )mol (3) 2molのBa(OH) 2 を中和させるのに必要なHNO 3 は ( )mol クラス ( ) 番号 ( ) 氏名 ( ) - 7 -