糖尿病の病態について 中石医院院長大阪糖尿病協会理事中石滋雄
本日の内容 1. 糖尿病とインスリン 2. 生活習慣と体質 3. 糖尿病の予防と治療のための食事 4. 糖尿病の医療連携 5. 世界糖尿病デー
1. 糖尿病とインスリン 糖尿病とはどんな病気なのか? 本日は メタボでなく高血糖のお話と思ってください
栄養素 とくに エネルギーの供給 空腹時 蓄えてあるエネルギーを取り崩して 必要とするところに配る 食後 食事として摂取したエネルギーを 適切に蓄える エネルギーを蓄えているところはどこですか? エネルギーの出し入れの調節をしているのは何ですか?
エネルギーを蓄えるところは? たべたものはどう通過しますか? 栄養素が吸収されるところはどこですか? エネルギーを蓄えるところはどこですか? 肝臓 胃 大腸 小腸
貯蔵エネルギーとインスリン 短い時間のエネルギーの貯え 肝臓がグリコゲンとして蓄える 長い時間のエネルギーの貯え 脂肪組織が中性脂肪として蓄える インスリンがエネルギーの調節をしている 膵臓がインスリンを分泌している 肝臓 膵臓
ブドウ糖代謝における肝臓の重要性 身体活動のエネルギー源となる代表的な栄養素はブドウ糖である 空腹時には 肝臓がブドウ糖を出す 食後には 肝臓がブドウ糖を取り込む 空腹時と食後では肝臓は反対の仕事をしています! 肝臓 膵臓
食後の小腸と膵臓と肝臓の協力 小腸が栄養素を吸収する 膵臓がインスリンを分泌する 肝臓がブドウ糖を取り込む 肝臓 膵臓
ブドウ糖とインスリンの肝臓への流入 門脈 ( インスリンと栄養素が合流するところ ) 脾静脈 ( インスリンが流れ込むところ ) 上腸管膜静脈 ( 糖やタンパク質などの栄養素が流れ込むところ )
食後 肝臓にブドウ糖が蓄えられる インスリンが手助けする インスリンが足りないとブドウ糖が肝臓を通り抜け食後血糖が上昇する ブドウ糖をとりこむ ブドウ糖 いんすり sin インスリン
空腹時 肝臓がブドウ糖を出す ブドウ糖を放出する ブドウ糖 インスリン インスリンはブドウ糖が出すぎないように働く ( ブレーキの役割 ) インスリンが足りないとブドウ糖が肝臓からですぎて 空腹時血糖が上昇する
エネルギー調節におけるインスリンの 役割 食事として摂取した栄養素を蓄えること 空腹時 蓄えられた栄養素を 必要なだけ取り崩すように調節すること その結果 血糖が正常に保たれる インスリンの役割は 栄養素を身体が利用することを手助けすることであって 血糖を下げることではない!
糖尿病とは インスリンが足りない病気 身体が栄養素を適切に利用できない 栄養素が血液中によどんで 押し合いへしあいする それが合併症をひきおこす
糖尿病はブドウ糖代謝の異常だけ? インスリンは炭水化物だけでなく 脂質 たんぱく質の代謝にもかかわる 糖尿病は栄養素の代謝 ( 同化 ) 全般が具合悪くなる病気である ふつう ブドウ糖の代謝が一番はじめにそこなわれ 影響がもっとも強くでるので 糖尿病 と呼ばれている
2. 生活習慣と体質 糖尿病は生活習慣が悪いから発症するのか?
正常な糖代謝状態 血糖を正常に調節するために必要な インスリンが足りていると 糖尿病にはならない
正常な糖代謝状態
糖尿病のときの糖代謝状態 血糖を正常に調節するために必要な インスリンが足りないと 糖尿病になる
2 型糖尿病における糖代謝状態
インスリン赤字と抵抗性矢印
やせ型 2 型糖尿病の発症経過
肥満型 ( メタボリックシンドローム型 )2 型糖尿病の発症経過
発症経過の比較
多くの糖尿病はインスリン分泌不全と インスリン抵抗性があいまっておこる
この説明法の特徴 インスリン抵抗性 : インスリンが効きくいので たくさんいる 運動療法や減量はインスリンが少なくてすむ身体をつくる インスリン抵抗性の原因考えてください
インスリン抵抗性をおこすもの 肥満 運動不足 精神的ストレス 身体的ストレス ( 過労 不眠 他の病気とくに感染症 ) ステロイド薬などの内服 妊娠 加齢? 遺伝素因 ( 体質 )? 平成 21 年 2 月 28 日講演 顧問栄養士会
インスリン分泌不全 インスリンがでにくくなるのは体質の要因が大きい 薬物治療も重要である インスリン分泌不全の原因を考えてください
インスリン分泌不全をおこすもの 遺伝素因 ( 体質 ) 加齢 一部のお薬の長期使用? 血糖コントロールが悪いこと 自己免疫 (1 型 ) もこの分類にあたる 平成 21 年 2 月 28 日講演 顧問栄養士会
インスリン分泌促進剤の効果 糖尿病と生活習慣病治療研究会
インスリン抵抗性改善剤の効果 糖尿病と生活習慣病治療研究会
注射されたインスリンの効果 ( やせ型 ) 糖尿病と生活習慣病治療研究会
注射されたインスリンの効果 ( 肥満型 ) 糖尿病と生活習慣病治療研究会
演者の糖尿病の理解 1 糖尿病は体質と環境があいまっておこる 特に インスリンを出す力が弱いといわれている日本人では欧米人にくらべても体質の影響が大きい インスリンを出す力は年齢とともに低下する 高齢化にともない糖尿病が増加することはある意味では当然である
演者の糖尿病の理解 2 体質が原因である場合 積極的に薬物治療をすすめてよいと考える 運動もそこそこしている ふとってもいない 糖尿病の治療のために これ以上 どうすればいいの? という患者がいたら 適切な薬をつかってみてはとすすめるのがよいと答えます
3. 糖尿病の予防と治療のため の食事について 糖尿病における食事の考え方
糖尿病における食事療法の意味 インスリン抵抗性の原因として 肥満と運動不足をあげ 食べすぎをあげませんでした
インスリン抵抗性をおこすもの 肥満 運動不足 精神的ストレス 身体的ストレス ( 過労 不眠 他の病気とくに感染症 ) ステロイド薬などの内服 妊娠 加齢? 遺伝素因 ( 体質 )? 平成 21 年 2 月 28 日講演 顧問栄養士会
糖尿病における食事療法の意味 インスリン抵抗性の原因として 肥満と運動不足をあげ 食べすぎをあげませんでした 食べすぎが糖尿病にどのように悪いかを考えてみましょう
インスリン量からみた食後高血糖の病態 糖尿病でない場合に分泌されるインスリン量 糖尿病ではインスリン初期分泌はかならず低下している
糖尿病における食後のインスリン赤字 このインスリン赤字こそが 食後高血糖をもたらす 糖尿病と生活習慣病治療研究会
糖尿病において食後のインスリン赤字が 増大する理由 インスリン抵抗性の増大多量の食事摂取急速な食事摂取 インスリン追加分泌の低下 消失 糖尿病と生活習慣病治療研究会
食事をゆっくりとることの効果 減少したインスリン必要量
α グルコシダーゼ阻害薬の効果 ~ 健康茶などの効果も同じ ~ 減少したインスリン必要量 糖尿病と生活習慣病治療研究会
速効型インスリン分泌促進薬の効果 増加したインスリン分泌量 糖尿病と生活習慣病治療研究会
α グルコシダーゼ阻害剤と 速効型インスリン分泌促進剤の併用 糖尿病と生活習慣病治療研究会
超速効型インスリン 糖尿病と生活習慣病治療研究会
α グルコシダーゼ阻害薬と 超速効型インスリンの併用 減少したインスリン必要量 α グルコシダーゼ阻害薬の併用は注射で補うインスリンを減量することができる 糖尿病と生活習慣病治療研究会
糖尿病薬の分類 インスリンを増やす 補う薬 ( 追加分泌のみ ) 速効型インスリン分泌刺激薬 ( グリニド ) ( 超 ) 速効型インスリン ( 基礎分泌 追加分泌とも ) SU 剤 混合型インスリン ( 基礎分泌のみ ) 持効型インスリン インスリン必要量を減らす薬 ( 追加分泌のみ ) α グルコシダーゼ阻害薬 ( 基礎分泌 追加分泌とも ) インスリン抵抗性改善薬 ビグアナイド薬 チアゾリジン薬 糖尿病と生活習慣病治療研究会
食べすぎの影響 食事の量 とくに糖質が多いと その一回の食事に含まれる栄養素を代謝するためにたくさんのインスリンを必要とする 糖尿病なら 食後血糖が上昇する エネルギー過剰で体重が増加すると インスリン抵抗性が強くなり ( 食後も空腹時も ) たくさんのインスリンを必要とする また 悪玉因子の増加をもたらし動脈硬化をすすめる 糖尿病なら 空腹時も食後も血糖を上昇させる
食事療法に関する最近の話題 カーボカウントやグリセミックインデックスをどのように考えるとよいのか? 糖質制限療法をすすめてもいいのか? アルコール摂取をどのように考えるか? 指示エネルギーの設定という治療方針はほんとうに正しいのか?
食事ごとに必要なインスリンを計算して注射する方法 インスリン必要量は食事ごとに変化するので 補うインスリンも食事ごとに変化させるという考え方は合理的である 脂質 たんぱく質などの影響をどのように評価するか? 体重管理 ( インスリン抵抗性の予防 ) をどうするか? カーボカウント
糖質制限食 主食をぬくと糖尿病はよくなるのか? よくなる 理由は 食後のインスリン必要量を減少させ 減量によりインスリン抵抗性を改善させるから ただし 健康は糖尿病のみで決まるものではない 活力の減退 免疫力の低下などの影響を総合的に判断する必要がある 実現可能かどうかの判断も必要である どこまで糖質を抜いても大丈夫なのか? 誰もわかっていない?
アルコール摂取 演者はアルコールの摂取制限は行いません 飲酒後の高血糖予防という点からは しょうちゅうやウィスキーなど蒸留酒が ( 糖質を含まないので ) 日本酒やビールよりよいと考えています 体重を増加させることがインスリン抵抗性につながるため アルコール単独で考えるのではなく アルコールも摂取エネルギーの一部と考え 体重を増加させないという点から考えることが必要であると考えています 肝臓障害 ( とくに C 型肝炎 ) のある場合にもアルコールを制限しないということではもちろんありません
指示エネルギーの設定 演者は身長 体重 活動強度のみを用いて指示エネルギーを設定することには疑問をもっています その一番の理由は 同じ生活であっても個人ごとに消費エネルギーが違う からです その患者が実行できない指示エネルギーの設定は机上の空論になってしまいます 食後血糖の管理という意味では エネルギー総量の管理では不十分です
演者の食事療法に対する考え 身体に必要な栄養素 ( 素材 エネルギー ) をきちんと供給する そのために薬が必要なのであれば 躊躇せずに使用する 食後に必要な時間あたりのインスリン量を少なくする 糖質の制限と分散 せんい質を先にとる ( 糖質の吸収遅延 ) ゆっくりたべる 体重をふやさない
4. 糖尿病の医療連携 ( キーワード ) ディジーズマネジメント地域連携クリティカルパス
医療連携について 保険者と医療機関の連携 ディジーズマネジメント特定健診制度 医療施設どうしの連携 病院 : 診療所専門診療と日常診療 地域連携クリティカルパス ふたり主治医制 診療所 : 診療所 合併症の診察 専門診療所の情報共有
ディジーズマネジメント 日本語で 疾病管理 といいます 慢性疾患は 健診により発症を予防したり 重症化を予防することが可能であり そのためには患者の把握 病気の進展予測が大切になります 特定健診制度はこの考え方に基づいています
A 社の管理する情報 境界型指摘 A 社 住民健診 C 診療所 退職 独立開業 D 病院 40 歳 50 歳 60 歳 70 歳 75 歳
行政の管理する住民健診情報 A 社 糖尿病指摘 住民健診 C 診療所 同じ組織が管理しているが データの検索はほとんど不可能 D 病院 40 歳 50 歳 60 歳 70 歳 75 歳
C 診療所の管理する情報 A 社 住民健診 C 診療所? D 病院 カルテ保存義務はふつう 5 年間 40 歳 50 歳 60 歳 70 歳 75 歳
D 病院の管理する情報 A 社 住民健診 C 診療所 D 病院 40 歳 50 歳 60 歳 70 歳 75 歳
企業 行政 医療機関が別々に管理 する情報 A 社 空白期間 住民健診 C 診療所 D 病院 40 歳 50 歳 60 歳 70 歳 75 歳
健診情報と医療機関受診情報を一元 的に管理するとどうなるか? A 社 耐糖能異常を指摘 住民健診 C 診療所 受診開始が早くなる C 診療所で受療 中断期間が短くなる D 病院 糖尿病指摘 D 診療所で受療受診勧奨が早くなる 治療中断を警告 40 歳 50 歳 60 歳 70 歳 75 歳
保健指導の効果があるとどうなるか? A 社 住民健診 耐糖能異常を指摘 糖尿病の発症が遅くなる? 保健指導 C 診療所 C 診療所で受療 D 病院 D 病院で受療 40 歳 50 歳 60 歳 70 歳 75 歳
天王寺区地域連携クリティカルパス
紹介フォーム 診療所 病院 病院 診療所
地域連携クリティカルパスとは何か? ルールのこと ( 手帳や紹介用紙のことではない ) 例年に1 回眼底検査をする 半年に1 回尿アルブミンを測定する
糖尿病の分野におけるコメディカルの連携 大阪糖尿病協会主催の行事 DMウォークラリー 会員総大会栄養展示 (11 月 ) 糖尿病料理教室 (10 月 ) コメディカル1 泊研修会 (1 月 )
大阪 DM ウォークラリー (10 月 )
大阪糖尿病協会会員総大会 栄養展示 (11 月 )
スタッフ 1 泊研修会 (1 月 ) 淡路島ウエスティンホテル
5. 世界糖尿病デー
11 月 14 日 インスリンを発見した科学者の誕生日
通天閣
ブルーサークル ( シンボルマーク ) 健康生命 青空 ( 世界をつなぐ ) 国連
姫路城 鎌倉大仏
2008 年ライトアップ実施施設
講演内容の HP 公開
ご静聴ありがとうございました