国土技術政策総合研究所 研究資料

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国土技術政策総合研究所 研究資料

搾乳関連排水 ( パーラー排水 ) 処理施設管理のポイント 栃木県農政部畜産振興課 環境飼料担当技師加藤大幾 掲載されている情報は平成 30 年 7 月 19 日現在のものです

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水質

田辺市役所環境白書 < 平成 9 年度版 > より抜粋 背戸川水質検査結果まとめ 背戸川排水路水質浄化対策事業水質検査結果を平成 3 年 10 月より平成 8 年 7 月まで の水質検査結果をまとめた (1) 背戸川排水路の水質結果 BOD 除去率 61% BOD の除去率を単純に平均してみると 浄

水質

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反応槽 1m 3 あたりの余剰汚泥発生量 (kg/m 3 / 日 ) 2-(3)-2 高負荷運転による水質改善および省エネルギー効果について 流域下水道本部技術部北多摩二号水再生センター葛西孝司 須川伊津代 渡瀬誠司 松下勝一 1. はじめに 21 年度の制限曝気 A2O 法の調査 1 ) の過程で

国土技術政策総合研究所 研究資料

水 ) 融雪用水 植樹帯散水用水 道路等の清掃 散水用水 農業用水 工業用水への供給 事業場等への直接供給などがある 下水汚泥については バイオマス ニッポン総合戦略や京都議定書目標達成計画など 地球温暖化対策を推進することが求められている その有効利用量は平成 22 年度に約 78% に達したが

( 様式 1) 1. 対象地区の概要 1 本市の地勢 習志野市は, 千葉県北西部に位置し, 首都東京と県庁所在地の千葉市のほぼ中間付近に位置する 対象区域内の高低差は 12m~30m あり, 比較的高低差の激しい区域である 2 対象地区 習志野市の下水道計画区域は, 津田沼, 高瀬, 印旛の 3 処

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平成28年度家畜ふん尿処理利用研究会資料

活性汚泥の固液分離を促進するバクテリアの分離とその利用 宇都宮大学院工学研究科  物質環境化学専攻  教授  柿井 一男

下水道計画に用いる諸元は 原則として計画策定時点の諸元とする 計画人口については 近年の人口減少傾向を踏まえ適切に考慮する なお 確定した開発計画等がある場合は それを考慮する (4) 小規模下水道の特性や地域特性 一般に流入水の水量 水質の年間変動 日間変動が大きい 維持管理が大中規模の処理場に比

形状 処理状況 表 1 各系列の反応タンクの形状と処理状況 ( 平成 27 年度 ) 深槽東系 深槽西系 浅槽系 西系 東系 有効容積 (m 3 ) 寸法 ( 長さ 幅 水深 : m)

淀川水系流域委員会第 71 回委員会 (H20.1 審議参考資料 1-2 河川管理者提供資料

No. QCVN 08: 2008/BTNMT 地表水質基準に関する国家技術基準 No. QCVN 08: 2008/BTNMT National Technical Regulation on Surface Water Quality 1. 総則 1.1 規定範囲 本規定は 地表水質

地下水の水質及び水位地下水の水質及び水位について 工事の実施による影響 ( 工事の実施に伴う地下水位の変化 地下水位流動方向に対する影響 並びに土地の造成工事による降雨時の濁水の影響及びコンクリート打設工事及び地盤改良によるアルカリ排水の影響 ) を把握するために調査を実施した また

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2. 水管理に関連する障害 Q 軟化装置管理上の留意点ついて, 具体的な管理方法を教えてください イオン交換樹脂は球状で粒径は mm 程度, 複雑な網目状の三次元骨格構造を呈しており, 軟水採水量はイオン交換樹脂量と原水の硬度によって決まります イオン交換樹脂は一般的に1 年

質問1

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第26号 技術報告集

資料5 汚濁負荷量の状況

参考資料

畜産環境情報 < 第 63 号 > 1. 畜産の汚水から窒素を除去するということはどういうことか 2. 家畜排せつ物のエネルギー高度利用 南国興産を例に 3. 岡山県の畜産と畜産環境対策 4. 兵庫県の畜産と畜産環境対策について

[ 廃棄物の最終処分場 ( 管理型 )] 平成 29(2017) 年度 1 施設名称 1 号管理型処分場 (1) 埋立てた廃棄物の各月ごとの種類及び数量 規則第 12 条の 7 の 2 第 8 項イ 種類汚泥燃え殻紙くずばいじん 合計 単位 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月

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大栄環境 ( 株 ) 和泉リサイクルセンター平井 5 工区管理型最終処分場 / 処理実績平成 26 年度契約処理 : 管理型埋立区分品目 平成 26 年 平成 27 年 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月 1 月 2 月 3 月 燃え殻

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記載例[成果情報名]○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○[要約]・・・・・・・・・・・・・・・・

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施設名施設住所項目一般埋め立てた廃棄物廃棄物 (ton) 擁壁の点検 遮水効果低下するおそれが認められた場合の措置 遮水工の点検 遮水効果低下するおそれが認められた場合の措置 周縁地下水の水質検査結果 斜里町清掃センター最終処分場斜里町以久科北 破砕ごみ 内容 生ごみ残差 合計 点検を行った年月日

第1編 春日井市下水道事業の現状と課題

公共下水道 私たちは 日常の生活や社会生活の活動のなかで たくさんの水を使っています ここで使われた水をそのまま自然に流し続けると 川や海は汚れを増していくこととなり やがて生活に必要なきれいな水が欲しいときに 手に入れることがむずかしくなってしまうようになります 必要な水を いつまでもきれいなまま

7. 点検等の概要 (1) 点検等にあたっては ポートビルについては別紙により実施するものとする 千歳事務所及び千歳庁舎については国土交通省官房官庁営繕部監修 建築保全業務共通仕様書 平成 25 年度第 2 編第 4 章第 8 節浄化槽に従い実施するものとする (2) 小修繕点検等の結果 甲乙協議に

消化汚泥 ( 脱水機棟汚泥貯留タンクへ ) φ150 DCIP DCIP VP φ150 φ150 φ150 DCIP 重力濃縮汚泥 (No.1 消化タンク ( 既設 ) へ ) 消化汚泥 ( 脱水機棟汚泥貯留タンクへ ) φ150 DCIP( 将来 ) φ150 φ150 φ150 DCIP( 将

資料4 検討対象水域の水質予測結果について

ビジネスグリッドコンピューティングプロジェクト 事後評価の概要について

塩分 大岡分水路 表層 底層 図 1-2 塩分の水平分布 ( 左図 : 表層 右図 : 底層 ) 調査の結果 表層の塩分は 東京湾西岸で低く 東岸に向かうにしたがって高くなる傾向が確認されました 特に 隅田川や荒川 鶴見川, 大岡分水路の河口付近では 塩分が低くなっており これは調査日の3 日前に降

排水の処理方法と日常の維持管理(1)

た回分試験の開始から終了までの間 N 2 O 連続測定計 (FT-IR) を用いてガス態 N 2 O 濃度の連続測定を行った また 条件 1 3( 表 1) について 東京工業大学との共同研究により アイソトポマー技術を用いて N 2 O の生成機構の解明も合わせて行った (4) 活性汚泥採取場所本

4

目 次 桂川本川 桂川 ( 上 ) 雑水川 七谷川 犬飼川 法貴谷川 千々川 東所川 園部川 天神川 陣田川

平成 24 年度維持管理記録 ( 更新日平成 25 年 4 月 26 日 ) 1. ごみ焼却処理施設 (1) 可燃ごみ焼却量項目単位年度合計 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月 1 月 2 月 3 月 A B 炉合計焼却量 t 33, ,972

ト ( 酢酸 ) を用いた ( 図 1) 各試薬がすでに調合されており操作性が良い また この分析方法は有害な試薬は使用しないため食品工場などでの採用が多く ISO などの国際機関も公定法として採用している F-キット ( 酢酸 ) での測定は 図 1の試薬類と試料を 1cm 角石英セル に添加し

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2. 大和川について が 難波津 現在の大阪 から船で大和川をさか 奈良県には奈良盆地のほぼ全域を流域とし 大阪 のぼり 初瀬川から三輪山麓の海石榴市 つばい 平野を西に横切って大阪湾に注ぐ全長68kmの一級 ち に上陸 飛鳥の宮に至ってから1400年となる 河川である大和川が流れている 記念すべき

(1) 久慈川水系の水質概況 久慈川は 茨城県 福島県 栃木県の県境に位置する八溝山地 ( 標高 1,022m) に源を発する全長 124km 流域面積 1,490km 2 を有する一級河川である 里川 山田川 浅川など多くの支川が合流し 日立市と東海村の境を経て太平洋に注いでいる 久慈川流域は 上

平成 29 年度 一般廃棄物最終処分場の維持管理記録 施設の名称 : 弘前市埋立処分場第 2 次 ( 第 1 区画 第 2 区画 ) 施設の位置 : 弘前市大字十腰内字猿沢 埋立廃棄物の種類及び数量 ( 単位 :kg) 区分 種類 平成 29 年平成 30 年 4 月 5 月 6 月

図 -1 汚泥減量設備外観 4. 技術の概要 4.1 原理本技術は, 酸化力を持つ薬剤 ( 酸化剤 ) を用いて, 余剰汚泥中の微生物の細胞を破壊し, 微生物の可溶化処理を行う この時の可溶化率 ( 可溶化による汚泥の固形物 (SS) の減少率 (%)) は, 処理前汚泥の固形物に対して 25% を

土地利用計画 土地利用計画面積表 土地利用の区分区分面積 ( m2 ) 比率 (%) 備考 発電施設用地パネル 19, パワーコンディショナー 緑地 5, 計画地面積 24, 太陽光パネル配置図 発電施設計画 発電施設の概要 発電設備規格

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汚水処理施設管理マニュアル 編2j

国土技術政策総合研究所 研究資料

Microsoft Word _【案】66-3記載例(旅館業(住宅宿泊事業限り))

4 予測結果では 海側で少し環境目標値を超えているのですけれども 対岸の東海市のところは 新日鐵住金の工場等でしょうか 東海市側も臨港地区になりまして ご指摘の通り新日鐵住金等があるエリアです なお 対岸までの距離は約 1km ですが 住宅地までは約 3.5km です 5 煙源が地面に近く 施工区域

Q3 現在の川幅で 源泉に影響を与えないように河床を掘削し さらに堤防を幅の小さいパラペット ( 胸壁 ) で嵩上げするなどの河道改修を行えないのですか? A3 河床掘削やパラペット ( 胸壁 ) による堤防嵩上げは技術的 制度的に困難です [ 河床掘削について ] 県では 温泉旅館の廃業補償を行っ

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八王子市雨水浸透施設設置基準 1. 目的この設置基準は 八王子市雨水浸透施設設置補助金交付要綱 ( 以下 要綱 という ) の雨水浸透施設の設置にあたり 必要な事項を定めることを目的とする 2. 用語の定義雨水浸透施設とは 屋根に降った雨水を浸透させる構造をもった次に掲げる施設をいう (1) 雨水浸

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(2) 現況水質等 A ポンプ場から圧送される汚水の水質分析及び硫化水素濃度測定結果を表 -2 図 -2 に示す 表 -2 水質分析 計量項目 単位 計量場所ピット吐出口 BOD mg/l CODcr mg/l 硫酸イオン濃度 mg/l 全硫化物 mg/l

[ 法第十五条の二の三 法第十五条の二の四 ] 会社名株式会社倉敷環境 産業廃棄物処理施設維持管理記録簿 ( 管理型埋立区域 2) 平成 26 年度 対象期間 : 平成 26 年 4 月 1 日 ~ 平成 27 年 3 月 31 日 1. 埋め立てた産業廃棄物の種類及び数量 [ 規十二条の七の二八イ


附帯調査

近畿地方整備局 資料配付 配布日時 平成 23 年 9 月 8 日 17 時 30 分 件名土砂災害防止法に基づく土砂災害緊急情報について 概 要 土砂災害防止法に基づく 土砂災害緊急情報をお知らせします 本日 夕方から雨が予想されており 今後の降雨の状況により 河道閉塞部分での越流が始まり 土石流

埋立てた一般廃棄物の種類及び数量の記録 ( 平成 30 年度 ) 最終処分場名 : 第二処分場 単位 : トン 種 類 数量 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 搬入量一般廃棄物焼却灰 1, , , 合計

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埋立てた一般廃棄物の種類及び数量の記録 ( 平成 30 年度 ) 最終処分場名 : 第二処分場 単位 : トン 種 類 数量 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 搬入量一般廃棄物焼却灰 1, , , 合計

目 次 1 基本事項について 汚水処理施設整備構想とは 構想見直しの必要性 汚水処理施設の概要 山陽小野田市の現状と課題 整備状況 主な汚水処理施設 汚水処理における課題...

第26号 技術報告集

資料 -5 第 5 回岩木川魚がすみやすい川づくり検討委員会現地説明資料 平成 28 年 12 月 2 日 東北地方整備局青森河川国道事務所

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Taro-12)年報5章貯留汚泥からリン

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立川市雨水浸透施設設置基準 1. 目的この設置基準は 立川市雨水浸透施設設置補助金交付要綱 ( 以下 要綱 という ) の雨水浸透施設の設置にあたり 必要な事項を定めることを目的とする 2. 用語の定義補助対象の雨水浸透施設とは 雨水浸透ます 及び 雨水浸透管 とし 雨水浸透施設の設置に伴い発生する


(1) 生活排水について 地域の実状に応じ 下水道 浄化槽 農業集落排水施設 コミュニティ プラント等の生活排水処理施設の整備及び高度処理化 適正な施設維持管理等の対策を計画的に推進すること 加えて 合流式下水道の改善の取組を推進すること (2) 指定地域内事業場について これまで行われてきた汚濁負

ダムの運用改善の対応状況 資料 5-1 近畿地方整備局 平成 24 年度の取り組み 風屋ダム 池原ダム 電源開発 ( 株 ) は 学識者及び河川管理者からなる ダム操作に関する技術検討会 を設置し ダム運用の改善策を検討 平成 9 年に設定した目安水位 ( 自主運用 ) の低下を図り ダムの空き容量

浸透側溝長尺 U 字溝 [KUSDC KURDC] 茨城県規格の長尺 U 字溝 [KUS KUR] の側壁部及び底版部に排水孔 ( 開口 ) を設けた浸透用側溝です 近年 都市化の進展により建物や道路などの不浸透域が拡大して ゲリラ豪雨による河川増水やその流域の浸水被害等 集中豪雨による都市の排水機

新技術 新工法部門 :No. 効率的に水中に酸素を供給出来る. また, 浮上速度が小さいことは気泡が長距離を移動拡散でき, 底泥を巻き上げることもないという利点もあり, 環境分野では主に小規模水域 ( ため池など ) の水質改善に利用されている. 写真 - 水路からの白濁水 六軒家川水路吐出樋門 (

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Microsoft Word - P20~P21 処理施設

第 4 章特定産業廃棄物に起因する支障除去等の内容に関する事項 4.1 特定支障除去等事業の実施に関する計画 (1) 廃棄物の飛散流出防止ア廃棄物の飛散流出防止対策当該地内への雨水浸透を抑制し 処分場からの汚染地下水の拡散防止を図るとともに 露出廃棄物の飛散流出防止を図るため 覆土工対策を実施する

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条例施行規則様式第 26 号 ( 第 46 条関係 ) ( 第 1 面 ) 産業廃棄物処理計画書 平成 30 年 6 月日 長野県知事 様 提出者 住 所 東御市下之城畔 ( 法人にあっては 主たる事業所の所在地 ) 氏 名 川西保健衛生施設組合長花岡利夫 ( 法人にあっては 名称及び代

2) 管理数量 下水道 終末処理場には汚水と雨水用の施設があります 管理数量は次のとおりで す 表 2-26 下水道 終末処理場の管理数量 施設名種別数量備考 下水道 ( 汚水 ) 下水道 ( 雨水 ) 汚水管きょ下水道終末処理場中継ポンプ場汚水低地排水ポンプ雨水管きょ雨水低地排水ポンプ雨水ゲート

建築用途別中型浄化槽の処理性能について

1. 湖内堆砂対策施設の見直し 1.2 ストックヤード施設計画 ストックヤードの平面配置は 既往模型実験結果による分派堰内の流速分布より 死水域となる左岸トラップ堰の上流に配置し 貯砂ダムから取水した洪水流を放流水路でストックヤード内に導水する方式とした ストックヤード底面標高は 土木研究所の実験結

平成 27 年度水質検査計画 はじめに三条市は 3 箇所の浄水場や管路延長 780 kmの配水管などの水道施設と三条地域水道用水供給企業団 ( 以下 企業団 という ) からの受水で 市内へ水道水を供給しています 浄水場は 信濃川 五十嵐川及び守門の湧水をそれぞれ水源としていますが その水質状況の把

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4. 現地調査ヒヤリング調査により判明した現地の問題点の現状 その後の対応 さらに現状の下水道施設 住民の生活様式等の現状把握のため 熱帯 亜熱帯地域である東南アジアのタイへの現地調査を研究期間中に行った また 調査時には 現状の負荷量 処理能力の確認のため 水質分析を行った 表 -1 に水質分析方法を示す 表 -1 各水質項目の分析方法 調査項目 分析方法 T-BOD 5 日間培養法 SS ガラス繊維ろ紙法 T-COD 二クロム酸カリウム法 T-N 中和滴定法 KJN ケルダール法 NH 4 -N ネスラー試薬法 NO 2 -N N-エチレンジアミン吸光光度法 NO 3 -N カドミウム還元 -ナフチルエチレンジアミン吸光光度法 T-P モリブデン青 ( アスコルビン酸還元 ) 吸光光度法 PO 4 -P モリブデン青 ( アスコルビン酸還元 ) 吸光光度法 一般細菌 最確数法 大腸菌群数 最確数法 クロロフィルa 吸光光度法 4

4.1 タイの概要タイは 人口 6 千万人 面積 51 万 km 2 東南アジアの中心に位置し ミャンマー ラオス カンボジア マレーシアと接している 5,6) 首都はバンコクである 気候は熱帯性気候であり 最も気温の高い 4 月のバンコクの平均気温が 30.5 低い 12 月が 26.2 である 乾季は 11 月から 2 月にあり その後暑期が 3 月から 5 月 雨季が 6 月から 10 月まである 年間降水量は 1,530 mm である タイの経済発展は 80 年代後半から始まり 一時悪化したが主要援助国の助けを借りる形でその後順調に経済発展し 2004 年で一人当たりの GDP が 2,722 ドルとなった 7) しかし 現地の担当者の話によると 急激な都市化に排水施設の整備が追いつかず 河川水質の悪化が進み さらに短時間で集中的に多量の雨を降らせるスコールにより タイ中心部を流れるチャオプラヤ川が頻繁に氾濫し 住民の水辺衛生環境が悪化している現状がある 4.2 タイの下水道現地の担当者によると 下水道の整備は 基本的に地方自治体ベースで行われている 管路施設は 現在主要幹線道路沿線への U 字溝やコンクリート管の埋設整備のみであるため カバーできていない地域の方が多く 雨水流出量に対しても十分な設備ではない さらに 維持管理を十分に行っていない 周辺住民の排水垂れ流しや廃棄物の不法投棄があることから 管内閉塞が頻発し 管内での腐敗 臭気発生などにより衛生環境の悪化が問題となっている さらに 管渠は基本的に合流式であるため 洪水時には管渠に溜まった下水 堆積物等が道路や家屋に逆流し 衛生的な問題が深刻化している 家庭等から出されるし尿 もしくはし尿を含む生活排水については 腐敗槽または個別下水処理施設のいずれかの処理が義務付けられている ( 表 -2 参照 ) 通常 戸建て住宅には腐敗槽 ( 地下水が高いため 地下浸透式ではないもの図 -2 参照 ) が設置されており 処理水は道路脇の側溝を経由 もしくは直接 河川に放流される 最も一般的なものは 表 -2 の 戸建て 事務所 Ⅰ である 団地用の個別下水処理施設の処理水は河川に直接放流される しかし 都市部では河川水質悪化の問題から 河川横に河川に沿って管渠を設置することで 側溝排水を河川放流目前で収集するシステムであるインターセプター方式の管渠 ( 図 -3 参照 ) を整備することで対応を進めている ただし インターセプター方式では 水量に限界があるため降雨時に対応できない 施工不良のため河川の水が逆流する ゴミ等により閉塞するなどの問題がある なお 現地住民はトイレ利用後にトイレットペーパーを使う習慣がなく 便器横の水桶の水で洗い流すため し尿にトイレットペーパーが含まれないため 日本よりも SS 濃度が低くなると考えられる 処理場施設 ( 個別用含まず ) は 33 の自治体に 38 ヶ所の下水処理場があるが そのほとんど (80 % 以上 ) はラグーンや曝気式安定化池等の処理法を採用しており 日本のような活性汚泥法での処理を行っている処理場は 敷地面積の制約を受ける首都バンコクなどの大都市のみである しかも 活性汚泥法の処理場でも 予算が少ないため 曝気時間を減 5

らす 十分な修理を行わない等の状況にあり さらに十分な技術力を持った管理者が少ないため 適切な管理がなされていない処理場が多く 十分な維持管理が行われていない処理場が多々ある 表 -2 家庭等から排出される下水の処理方式 住居戸建て 事務所 Ⅰ し尿 腐敗槽 処理方法道路脇の側溝 もしくは 河川へ放流 雑排水戸建て 事務所 Ⅱ し尿 腐敗槽 道路脇の側溝 もしくは 河川へ放流 雑排水 団地 Ⅰ し尿 腐敗槽 下水処理施設 河川へ放流 雑排水 団地 Ⅱ し尿 下水処理施設 河川へ放流 雑排水 地下浸透する腐敗槽 地下浸透しない腐敗槽 換気管 便器 糞尿 コンクリート等で全面を固める コンクリート等で側面を固める 排水 仕切板 砂層 地下浸透 図 -2 腐敗槽の概要図 河 水路 排水 都市用水取水口 ( 水質保全 ) 川 インターセプター ( 衛生環境改善 水域の水質保全 ) 下水処理場 処理水 ( 水環境改善 ) 図 -3 インターセプター方式の下水集約システム 6

4.3 現地調査の詳細現地調査では 腐敗槽 インターセプター方式の管渠 ラグーン 曝気式安定化池 活性汚泥法の現地視察 ヒヤリング 水質分析を行った 4.3.1 腐敗槽一般家庭と事務所の 2 タイプの腐敗槽を調査した ( 写真 -1~6 参照 ) どちらも地下浸透しないタイプであった 家庭用のものはトイレ下に設置され 処理対象の排水はし尿のみであった 事務所用は し尿のみではなくその他の雑排水も含めて処理するタイプであった 通常腐敗槽は 底に汚泥が溜まり 時間とともに増えていくことから 定期的に汚泥の引抜きを行い 処理レベルを一定に維持する しかし 視察対象の腐敗槽は どちらも汚泥の引抜きはまったく行っておらず 一般的にもほとんど行わないとのことであった そのため 溜まった汚泥が何らかの原因で定期的に処理水とともに排出されている可能性があり 正常な処理を維持しているとは考えにくいものであった 腐敗槽での処理状況を把握するため 家庭用腐敗槽では汚泥引抜用の穴から上澄水を 事務所用腐敗槽では屋外の側溝に入る前の上澄水を採取し 水質分析を行った 結果を表 -3 に示す 一般家庭用腐敗槽の上澄水は SS が高く 事務所用腐敗槽では K-N や NH4-N の窒素分が高い値を示した 家庭用に関しては サンプル採取時に底の汚泥を巻き込んだ可能性がある 事務所用についてははっきりした理由はないものの 上澄水が黄色みがかっていたため サンプリングに近い時間にトイレを使用し 尿が通常より多く入ってしまった可能性がある どちらも沈殿処理のみであるため すべての項目が高く 河川にそのまま放流すれば 水質汚染の大きな要因となると考えられた 表 -3 腐敗槽処理水の水質分析結果 項目 単位 水質事務所家庭 BOD mg/l 147.3 84.6 SS mg/l 46 521.7 CODcr mg/l 217.1 127.5 T-N mg/l 70.4 19.68 KJN mg/l 70.26 19.42 NH 4 -N mg/l 62.55 4.57 NO 3 -N mg/l 0.14 0.23 NO 2 -N mg/l ND 0.03 T-P mg/l 4.9 1.11 PO 4 -P mg/l 4.42 0.74 一般細菌 MPN/100 ml 160,000 160,000 大腸菌群数 MPN/100 ml 350 220 7

4.3.2 インターセプター方式の管渠バンコクにおいて 全長 3 km のインターセプター方式の管渠の調査を行った 調査対象の管渠は 写真 -7 のように 歩道の下に埋設されており 側溝を大きくしたような印象を受けた 運河 ( 都市部に人工的に作られた支流 ) に沿って施工されており 途中数ヶ所の運河側にゲート ( 写真 -8 参照 ) があり 洪水時 排水が下流の処理場の許容量以上の水量の場合 このゲートから運河に直接排水が放流される仕組みになっていた 通常は ゲートに衝立があり運河からの逆流を防いでいる しかし 施工状態が悪く 管渠への逆流を確認した 視察時はちょうど雨季の最後 (11 月下旬 ) にあたり 通常より運河の水量が多いとの説明を受けたが バンコクでは常時地下水位が高いことから 乾季に逆流していないとは考えにくかった 下水の性状を把握するため 管渠の上流 中流 下流 ( 図 -4 参照 ) でサンプルを採取し 水質分析を行った 結果を図 -5 表-4 に示す どの項目に関しても値が高いものの 日本の下水に比べると比較的低い値であった 上 中 下流間での関係もなく 一貫性の無い値であった 運河水の逆流を確認していること サンプルの色が運河と同じ焦げ茶色をしていることから 運河水の混入状況の違いにより差が生じていたものと考えられる 運河の汚濁に関しては インターセプター方式を使って排水を収集しているのがバンコク周辺だけであることから バンコクより上流域の集落の排水が運河へ垂れ流されている状態にある そのため 運河の水質は非常に悪く 若干の悪臭があった 乾季には水量が減ることから さらに水質が悪化するものと考えられる インターセプター管 サンプリング ポイント ( 上流 ) 運河 サンプリング ポイント ( 中流 ) サンプリング ポイント ( 下流 ) 図 -4 インターセプター管のサンプリングポイント 8

100 80 mg/l 60 40 20 上流中流下流 0 BOD SS CODcr T-N KJN 測定項目 NH4-N NO3-N NO2-N T-P PO4-P 下流中流上流 図 -5 インターセプター方式管渠の一般水質項目 表 -4 インターセプター方式の管渠での水質分析 項目 単位 水質 上流中流下流 BOD mg/l 47.4 14.9 60.6 SS mg/l 31.5 31.2 31 CODcr mg/l 63.7 81.7 95.6 T-N mg/l 23.49 25.21 18.9 KJN mg/l 23.42 25.13 18.85 NH 4 -N mg/l 21.13 22.28 14.28 NO 3 -N mg/l 0.05 0.05 0.04 NO 2 -N mg/l 0.02 0.03 0.01 T-P mg/l 3.05 2.75 2.48 PO 4 -P mg/l 2.56 2.36 1.96 一般細菌 MPN/100 ml 160,000 160,000 160,000 大腸菌群数 MPN/100 ml 50 280 33 クロロフィルa mg/m 3 21.169 2.711 9

4.3.3 ラグーン : ナコンパトム処理場バンコクの南に位置するナコンパトムにおいて ラグーン処理施設の調査を行った ナコンパトム処理区は 腐敗槽の排水のみをインターセプター方式で集約する分流の処理区であり 処理場手前に 2 つのポンプ場がある 処理施設は大きなため池のようなものであり 3 池で構成されていた ( 写真 -9~12 参照 ) 池の側面はコンクリートで固められているものの底は土であり 地下浸透形式のラグーンであった 処理水は近くの河川に放流していた ( 表 -5 参照 ) 広大な土地がある地方部において 特に採用されることが多い一般的な処理法である ラグーンの状態としては 水が緑色をしているため 多くの藻類が繁殖しており 良い状態であると考えられた 池の周りでは 周辺住民が魚の養殖や果物畑を営んでおり 直接ラグーンの水を引き入れてはいないものの 地下浸透した水で養殖 栽培を行っていた 場所によっては 流入水の影響を受けている可能性がある等の衛生的な問題があるように感じられた 処理状況を把握するため ラグーン流入水と 1 池末端 2 池末端 処理水の 4 ヶ所 ( 図 -6 参照 ) のサンプルを採取し 水質分析を行った 結果を表 -6 に示す 日本における通常の生下水 またはし尿の負荷に比べ ナコンパトム処理場の流入下水は極めて低い負荷であった これは 3. 技術援助専門家の経験者からのヒヤリング のⅰ 項目の 腐敗槽での浄化 管渠内での浄化 地下水浸入等が原因で 流入下水の水質が計画値に比べかなり低い場合がある と同様な状態であると考えられるが 処理場関係者に確認したところ 原因は不明であるとの回答であった 次に流下方向に関して BOD COD はほぼ横ばい SS は流入で低く ラグーン内で高い値であった これは 一見 処理状態が良くないように見えるが クロロフィル a を確認するとラグーン内 処理水の値が非常に高いことから 流入下水は下水中の有機物 浮遊物を ラグーン内 処理水は藻類をカウントしているものと考えられる 3. 技術援助専門家の経験者からのヒヤリング のⅱ 項目の 処理水中の藻類が負荷として現れ 流入水と処理水の BOD がほぼ同じ程度になってしまう状態 が現地処理施設で実際に起こっていたことになる 窒素に関しては NH4-N が 1 池末端でほとんどないため 1 池内で硝化反応が終了し さらに 1 池末端で NO3-N もほとんどないことから 1 池内で脱窒反応もほぼ完了しており 窒素の処理状態は良好であった 表 -5 項目排除方式現況処理区域計画人口流入水量処理能力処理方式第 1 池容量第 2 池容量第 3 池容量合計供用開始年 ナコンパトム処理場の概要 緒元分流式 528 ha 93,317 人 17,500 m 3 /d 60,000 m 3 /d 安定化池 (3 池 ) 352,658 m 3 152,589 m 3 151,574 m 3 656,821 m 3 1994 年 10

ラグーン流入水 2 池末端 1 池末端 処理水 図 -6 ナコンパトム処理場の概略図 表 -6 ナコンパトム処理場の水質分析 水質 項目単位ラグーン流入水 1 池末端 2 池末端 処理水 BOD mg/l 14.4 17.9 11.7 11.3 SS mg/l 16 52.5 29 48 CODcr mg/l 39.8 40 32 37.8 T-N mg/l 6.32 4.53 2.75 2 KJN mg/l 6.28 3.72 1.71 1.43 NH 4 -N mg/l 5.14 0.86 ND ND NO 3 -N mg/l 0.03 0.53 0.96 0.44 NO 2 -N mg/l 0.01 0.28 0.08 0.13 T-P mg/l 1.08 0.4 0.19 0.2 PO 4 -P mg/l 0.89 0.3 0.02 0.02 一般細菌 MPN/100 ml 160,000 1600 240 160,000 大腸菌群数 MPN/100 ml 500 2 2 33 クロロフィルa mg/m 3 6.378 288.802 172.193 206.837 11

4.3.4 曝気式安定化池 : ファマーク処理場バンコク郊外にあるファマーク処理場の曝気式安定化池において調査を行った この処理場は当初 住宅団地公社が建設し その後バンコクに所有権が移行したものである そのため 住宅団地のみの排水を処理しており 腐敗槽経由のし尿のみを暗渠のヒューム管で集めている 処理工程は 調整池 + 曝気式安定化池 +ラグーンの形式であり 調整池の水深が 3 m その他が 3.5 m である ( 写真 -13~16 参照 ) 通常のラグーンより水深が深いが これは曝気式安定化池の曝気により巻き上がった砂などの沈殿にラグーンを兼用しているためとのことであった 池の構造は 側面をコンクリートで固めているものの 底は土であり 地下浸透形式のラグーンであった 処理水は近くの河川に放流していた ( 表 -7 参照 ) 池の状態としては 調整池は水が黒く 嫌気的な状態のように見受けられた 曝気式安定化池では 池の中央より若干下流側に 池の水面を攪拌する形式で曝気する曝気装置が稼動しており 池全体を十分に曝気攪拌していた ラグーンは 上で記載したとおり沈殿池としても機能しており 底が目視できるほど水質の状態が良く さらに池の水が若干緑色がかっているため 藻類の繁殖も十分であると考えられた ラグーンの底泥の除去は 2 年前に行われ 以前の状態に戻したものの定期的には行われず 予算がついたときにのみ行うとのことであった処理状況を把握するため 流入水と処理水 ( 図 -7 参照 ) のサンプルを採取し 水質分析を行った 結果を表 -8 に示す 流入水の水質は 日本の下水に比べ若干低いように思われるが 食生活やトイレの使用方法 腐敗槽設置の有無等の影響が水質に現れていると考えられる 処理水に関して BOD SS COD の値は比較的高い結果であった これは クロロフィル a の値が非常に高いことから 藻類の流出の影響が考えられる 窒素に関しては 処理水中の NH4-N 濃度が高いため 硝化反応が十分に行われていない状況であった 十分な窒素除去を行う場合 池内の滞留時間 曝気強度等を検討する必要があると考えられる 表 -7 ファマーク処理場の概要 項目供用開始年排除方式計画人口 緒元 1968 年分流式 10,000 人 (3,000 世帯 ) 処理場能力 480m 3 /d 流入水量 1,200 ~1,500m 3 /d 流入水 BOD 78mg/L 放流水 BOD 10mg/L 12

流入水 処理水 調整池曝気式安定化池ラグーン 図 -7 ファマーク処理場の概略図 表 -8 ファマーク処理場の水質 水質 項目 単位 流入水 処理水 BOD mg/l 45.3 13.3 SS mg/l 18.8 18.4 CODcr mg/l 89.1 47.5 T-N mg/l 18.92 16.33 KJN mg/l 18.85 14.57 NH 4 -N mg/l 16.56 12.57 NO 3 -N mg/l 0.04 1.13 NO 2 -N mg/l 0.03 0.63 T-P mg/l 2.95 2.65 PO 4 -P mg/l 2.38 2.43 一般細菌 MPN/100 ml 160,000 160,000 大腸菌群数 MPN/100 ml 900 2800 クロロフィルa mg/m 3 1.938 138.691 13

4.3.5 活性汚泥法活性汚泥法として バンコクにおいて複数の処理場の調査を行った 基本的に これまでバンコクでは 敷地面積の確保の問題から小型の処理場を建設することが多かったが 近年 インターセプター方式の下水収集システムの採用が多くなり かなり広い流域から下水を収集し 埋立地等の敷地確保しやすい場所に大型の処理場を建設することが多くなっている 小型の標準的な処理場としてホイクアン処理場 変則的な処理法としてシーパヤ処理場 大型の処理場としてヤナワ処理場で調査を行った 1ホイクアン処理場ホイクアン処理場は バンコク市内の集合住宅密集地域にある 周辺の集合住宅の排水を受けており 腐敗槽を経由しないし尿 雑排水のすべてを分流で収集している 流入水の BOD は 200 mg/l 程度であり 日本の都市部の処理場とほぼ同程度であるとのことであった 処理工程としては 日本の標準活性汚泥法と同様 スクリーン+ 沈砂池 + 最初沈殿池 + 曝気槽 + 最終沈殿池であり 処理水量 1,500 m 3 /d と規模は小さい ( 表 -9 参照 ) 特徴としては 生下水の引上げにスクリューポンプ ( 写真 -17,18 参照 ) を使用しており これは日本ではほとんど見かけない その他 最終沈殿池の汚泥の全量を曝気槽に返送しており 槽内の MLSS が高くなると曝気槽の汚泥の一部を最初沈殿池に流入させ 生汚泥と余剰汚泥をまとめて引き抜くシステムを有している ( 写真 -19,20 参照 ) 処理状況を把握するため 流入水と処理水を測定した ( 表 -10 参照 ) 流入水は これまでの説明の中で最も濃度が高く 日本の生下水とほぼ同程度の値であったが 窒素 りんに関しては日本の値に比べ若干高い傾向にあった 処理水の BOD SS の値が低いため 有機物の除去は十分である しかし 硝化反応としては 流入水に比べ処理水の NH4-N 濃度が若干低くなる程度の反応しか進んでいなかった 表 -9 ホイクアン処理場の概要 項目 排除方式計画人口 緒元 分流式 16,800 人 (3,000 世帯 ) 処理場能力 2,400m 3 /d 流入水量 1,500m 3 /d 流入水 BOD 200mg/L 流入水 SS 180mg/L 放流水 BOD 10mg/L 以下 放流水 SS 8~10mg/L 以下 14

表 -10 ホイクアン処理場の水質 水質 項目 単位 流入水 処理水 BOD mg/l 187.2 5.7 SS mg/l 115.5 2.8 CODcr mg/l 332.6 23.8 T-N mg/l 72.16 27.82 KJN mg/l 71.97 24.85 NH 4 -N mg/l 40.23 27.75 NO 3 -N mg/l 0.19 2.37 NO 2 -N mg/l ND 0.6 T-P mg/l 8.44 5.21 PO 4 -P mg/l 7.65 5.08 一般細菌 MPN/100 ml 160,000 160,000 大腸菌群数 MPN/100 ml 2,400 35,000 15

2シーパヤ処理場シーパヤ処理場は 先に説明した 4.3.2 インターセプター方式の管渠 の末端の処理場である 敷地面積が限られていることから コンタクト スタビリゼーション法を使用し 施設のコンパクト化を図っている 処理工程としては まず流入下水をスクリーン+ 流量調整槽 + 最初沈殿池で一次処理を行い 反応槽に流入させる さらに返送汚泥として 最終沈殿池から引き抜いた汚泥を 4 時間曝気して活性化させた汚泥を反応槽に投入し混合する その後 反応槽で 30 分間滞留させ 最終沈殿池へ送り 処理水を河川へ放流する ( 図 -8 参照 ) 処理場管理者の話では 流入 BOD 50 mg/l 程度の下水を 10 mg/l 程度の処理水にして河川へ放流しているとのことであった 計画人口 120,000 人 処理能力 30,000 m 3 /d とのことであった 調整池 反応槽 最終沈殿池 最初沈殿池 粗 細スクリーン 返送汚泥曝気槽 図 -8 シーパヤ処理場の概略図 16

3ヤナワ処理場ヤナワ処理場は バンコク市内で稼動する処理場の中ではかなり大規模であり チャオプラヤ川沿いにある 大規模ではあるものの 敷地面積上の制約から 処理場は 8 階建ての構造をしている インターセプター方式で下水を集約しており 合流式である ( 表 -11 参照 ) 流入下水の BOD は 年間ほぼ 50 mg/l 程度と低く 処理工程はダイナミックろ過 ( 渦を作って 大きなゴミを除去する スワール分水槽とほぼ同じ ) スクリーン 沈砂池 最初沈殿池で一次処理を行い その後 回分式活性汚泥法で処理し 河川へ放流するというものであった 反応槽では 流入水投入後 曝気を 75 分行い 60 分間の沈殿 反応槽の2 /3を処理水として排水するのに 45 分の計 180 分サイクルで運転を行う 1 フロアーに反応槽が 6 池あり 反応槽フロアーが 4 階あることから 処理場には合計 24 池の反応槽がある これらの池の処理サイクル時間をずらすことで 一定量の流入水を常時処理できる仕組みになっていた ( 写真 -21~24 参照 ) 処理状況を把握するため 流入水と処理水を測定した 結果を表 -12 に示す 流入水は BOD SS COD の濃度が低く ヒヤリングでの指摘 ⅰのとおりの結果となった 理由としては 河川水 地下水の混入 ゴミ等の詰まりによる下水の管内滞留により管路内での浄化 沈降作用などが考えられるが 詳細は不明である 窒素 りんに関しては 流入水と処理水での濃度の差から 処理過程で NH4-N 濃度が下がっているため 硝化反応が進んでいるものの 完全硝化までには至っていなかった T-N も低くなっているため 脱窒反応が進んでいるものの NO3-N が残留しているため 完全脱窒まで至っていない状態であった 処理水の BOD SS COD 濃度は十分に低いため 有機物の処理としては良好であった 17

表 -11 項目排除方式計画区域インターセフ ター管延長計画人口現況人口処理場能力流入水量 ( 乾季 ) 流入水量 ( 雨季 ) ヤナワ処理場の概要 緒元合流式 285ha 51km 580,000 人 (2015 年 ) 1,000,000 人 (2020 年 ) 482,310 人 200,000m 3 /d 180,000m 3 /d 300,000m 3 /d 設計計画水質 流入 (mg/l) 放流 (mg/l) BOD 150 20 SS 150 30 T-N 30 10 T-P 8 2 流入水 BOD 放流水 BOD 45mg/L 4.5mg/L 以下 表 -12 ヤナワ処理場の水質分析 項目 単位 流入 水質 流出 BOD mg/l 30.2 4.3 SS mg/l 28.4 6.4 CODcr mg/l 57.4 17.8 T-N mg/l 11.81 5.07 KJN mg/l 11.42 1.71 NH 4 -N mg/l 9.14 1.14 NO 3 -N mg/l 0.25 3.28 NO 2 -N mg/l 0.14 0.08 T-P mg/l 1.93 1.63 PO 4 -P mg/l 1.52 1.56 一般細菌 MPN/100 ml 160,000 160,000 大腸菌群数 MPN/100 ml 300,000 350 18

4.4 現地調査のまとめタイでの現地調査により 3. 技術援助専門家の経験者からのヒヤリング で得られた現地の情報が 現在も引続き発生していることを確認した 流入負荷の低下に関しては 処理場の設置の場所や周囲の民家の状況 下水の種類 ( 糞尿のみ 雑排水を含む 腐敗槽の設置の有無等 ) が処理場ごとに違い 一概に結論づけることは困難であるが 一般的に 流入水質が低いことがうかがわれた 特にインターセプター方式により下水を収集している下水処理場でこの傾向が見られ BOD で 50 mg/l 程度の下水が流入してくることがあった 低負荷の流入水の理由としては 以下の 2 点が原因として考えられる インターセプター方式の場合 河川水の逆流や地下水の浸入などにより下水が希釈される ゴミなどで管路内が閉塞して長時間下水が管路内に滞留する 気温が高いため水温が上がり生物の活性が増す等により 管路内での沈降効果と生物による処理が進み 下水がある程度処理される 処理水中の藻類の影響に関しては ラグーン処理場の調査時に BOD 等の項目が流入水と処理水でほぼ同じ値を示したことを確認した 同時に測定したクロロフィル a の値が非常に高い値を示したことから 処理水中の藻類の影響により各水質項目の値が高くなったと考えられる 以上のことから 技術援助経験者ヒヤリングで挙がったラグーン処理法等に関する問題点を 現地において確認することができた その他 インターセプター方式の下水収集の問題として 施工不良による下水への河川水混入 不法投棄のゴミが管渠に及ぼす影響 ラグーン槽内水の地下浸透による周辺住民の衛生環境の不安 処理水再利用の住民の認識などの様々な問題があり さらに住民の生活様式 トイレの使用方法 下水に対する認識 タイの下水処理場の現状等の情報の収集を行なうことができた 19

写真 -1 事務所全体写真 -2 一般家庭全体 写真 -3 事務所での腐敗槽サンプリング写真 -4 一般家庭のトイレ 写真 -5 腐敗槽の上澄水 ( 事務所 ) 写真 -6 汚泥引抜用の穴 ( 家庭 ) 写真 -7 インターセプター管の蓋開け写真 -8 洪水時の下水排出ゲート 20

写真 -9 ラグーンへの流入口付近写真 -10 ラグーン 写真 -11 ラグーンの末端付近写真 -12 ラグーン流入水 写真 -13 曝気式安定化池の調整池写真 -14 曝気式安定化池 写真 -15 水面攪拌式の曝気装置写真 -16 ラグーン ( 沈砂池 ) 21

写真 -17 スクリューポンプ写真 -18 流入水の引上げ 写真 -19 ホイクアン処理場の曝気槽写真 -20 ホイクアン処理場の最終沈殿池 写真 -21 ヤナワ処理場写真 -22 曝気状態の反応槽 写真 -23 反応槽の底の状態写真 -24 河川への放流 22