新聞を身近なものに ~ 日々の生活と学習に新聞を NIE1 年目の取り組み ~ 新潟明訓中学校 高等学校 1. 学校の概要新潟明訓中学校 高等学校は, 平成 16 年に新潟市中央区川岸町から同市江南区北山に移転した新潟明訓高等学校に, 平成 19 年 4 月に開校した新潟明訓中学校を併せた, 在籍生徒数 1500 名を越える大規模校である 高等学校は, 多くの生徒が大学進学を目指す進学校であるとともに, 7 度の夏の甲子園出場を誇る野球部をはじめ, 部活動も盛んな校風となっている また, 中高一貫コースでは中学校から高等学校までの6 年間を見通した生活 学習指導が行われ, 昨年度卒業の 1 期生からは, 東大 京大など難関大学への合格者も出てきている 平成 25 年度からは中学校 高等学校ともに電子黒板が導入され, 授業改善が図られている 本年度の N IE 実践を行った中学校では, 英語科や社会科をはじめ多くの授業で電子黒板を利用した授業が行われている 2.NIE 実践のねらい (1) 生徒の実態日本社会において 若者の活字離れ がさけばれて久しいが, 本校の生徒についてもそれは例外ではない 本年度の N IE 実践の対象となる新潟明訓中学校の 3 年生 (2 クラス ) に対して, 実践開始前に 1 あなたは新聞を読んでいますか?, 2 あなたの家では新聞をとっていますか? という 2 題のアンケートを実施した その結果,1については 7 割以上の生徒が 読んでいない と回答し, 読んでいる と回答した生徒についても, その半数が番組欄のみであった 2 についても, 両クラスとも数名が とっていない と回答した また, 読書についても, ライトノベルしか読まないという生徒もおり, 平易な文章や話し言葉に近い文章は読めるが新聞や評論文などのような文章を敬遠している生徒も少なくない
(2) 実践のねらい 以上の実態を踏まえ, 本校における本年度の N IE 実践のねらいを以下のように 定めた 1 生徒が新聞に触れる機会を確保する 2 新聞を読むことを通して, 授業の学習内容と生徒の日常の世界をつなげる 3 新聞記事に対する意見を書く活動を通して, 生徒の思考力 判断力 表現力を育成する 1 については, 中学 3 年生の教室に新聞コーナーを設置し, 休み時間や放課後などに生徒が自ら新聞を読む機会を提供することとした 2については, 本年度の実践担当教員が社会科担当の教員であることから, 主に中学 3 年生の社会科公民的分野における学習内容との関連を意識することとした 具体的には, 授業内における教材としての新聞の利用や, 時事問題テストの実施などを通して, 新聞を生徒にとって身近なものとして感じられるように努めることとした 3については, クラスに配置された3 紙の新聞のそれぞれについて, 各週ごとに担当者を決め, それぞれの担当者がその記事に対する意見 考察を書くという 今週のニュース 活動を行うこととした また, 大型連休や長期休暇の際に, 新聞記事のスクラップと記事に関する考察レポートを課題として実施することとした 3. 本年度実践の概要 (1) 新聞に触れる環境の整備本年度は, 中学 3 年生においてN IE の実践を行った A 組 B 組それぞれの教室に写真のような新聞コーナーを設置し, 休み時間や放課後などに生徒がいつでも新聞に触れることができる環境を整備した その際, 設置する新聞を 朝日新聞
新潟日報 産経新聞 と 読売新聞 毎日新聞 日経新聞 とに分け, 両ク ラスに設置し, 1 ヶ月ごとに A 組 B 組に設置する新聞を総入れ替えし, 2 ヶ月間 で 6 紙すべてが両クラスに行き渡るようにした (2) 時事問題テスト の実施 4 月の第 1 回の授業の際に行った教科ガイダンスにおいて, 中学 3 年生の社会科では, 毎週 1 回程度の頻度で 時事問題テスト を実施することをアナウンスした 本年度は, 主に金曜日に 時事問題テスト を実施した その内容は, 時事問題テスト が実施される授業日から一週間以内の新聞記事やニュースの中から, 教員が選んだ出来事や事件を一問一答形式で答えるというものである 時事問題テスト を行うことにより, 生徒が時事問題に関心を持てるようにするだけではなく, 積極的に新聞を読んだりニュースを見たりするよう促していきたいという意図があった (3) 今週のニュース の実施各クラスに配置した新聞を用いて実施した 今週のニュース では, 各新聞ごとに毎週 1 人の担当者を指名し, 選んだ記事に関する考察と意見を書かせ, 教室の後部に掲示した その際, 新聞ごとの主張の違いなどに気付かせるため, 各クラス内では3 人の担当者が同じ出来事を取り上げている記事を選ぶように指導した
(4) 新聞スクラップ レポートの実施本年度は, 長期休暇課題として,GW 夏休み 冬休み 春休みの4 回にわたり, 以下のような計画で新聞のスクラップ レポートを実施しようと計画した G W 新聞を読む習慣をつけるため, とくに条件を設けず気になった記事を選んで考察させ, 意見を書かせる 夏休み 1 学期には政治分野の学習が進んでいることから, 政治に関する記事 という条件のもとで記事を選んで考察させ, 意見を書かせる 冬休み 2 学期には経済分野の学習が進んでいることから, 経済に関する記事 という条件のもとで記事を選んで考察させ, 意見を書かせる 春休み 本年度の学習を踏まえ, 1 年間の学習内容と関連する記事 という条件のもとで記事を選んで考察させ, 意見を書かせる 冬休みについては, 経済分野の学習内容の確認に力を入れていくために問題演習を予定よりも多く課題として課したために, 予定していたスクラップ レポートは中止したが,GWと夏休みについては予定通り実施した レポートに関しては, 生徒の思考力 判断力 表現力を育成するという観点から, 単なる感想となっているものは認めず, 記事を読んでの意見を書かせて, 不十分な場合には再提出という形式をとった 4. 実践例 (1) 社会科公民的分野 ( 中学 3 学年 ) における実践 1 時事問題テスト 時事問題テスト は, 本校においては公民分野を学習する中学 3 学年においてほぼ毎年実施されているものである 生徒に新聞やニュースに対する関心を持たせることがその主たる目的である 本年度も, 年度当初から週 1 回のペースで 時事問題テスト を実施してきたが, NIE 実践校として教室に新聞が配置された 9 月から 1 2 月にかけては, 時事問題テスト に出題する内容もできる限り 6 紙の新聞記事の中から選択することとした 時事問題テスト は授業開始直後の 2~3 分間を利用して実施し, その後に新聞記事を用いた解答 解説の時間を 5 分程度設けるものとした 解答 解説に際しては, 今年度から導入された電子黒板に新聞記事を映し出し, その記事を元に解説を行った
2 新聞のスクラップ レポート G Wと夏休みに実施したスクラップ レポートでは, 各家庭で購読している新聞を読み, 関心を持った記事に関して考察させ, 意見を記述させた この活動の実施目的は, 休業中も新聞に触れさせるとともに, 考察 意見記述を通して生徒の思考力 判断力 表現力の育成を図ることにある 授業における学習内容の進展に応じて, 生徒が選ぶ新聞記事への条件を指定し G W 課題では 関心を持った新聞記事, 夏休み課題では 政治に関する新聞記事のなかで関心を持ったもの とした 日常的に新聞を読んでいる生徒は, 記事の内容を踏まえた考察と意見の記述ができていることが多かったが, 普段はほとんど新聞を読まないという生徒は, 記事の選定段階でつまずいてしまっていたり, 考察が不十分である場合が多かった レポートの内容が単なる感想文とならないように指導していったが, 新聞を読んで意見を書く という活動に不慣れである生徒は, 記事の内容を正確に読み取ることを困難に感じていると見てとれた また, 家庭で新聞を購読していない生徒については, ネット上にあるニュースサイトからニュースを選ぶよう指導した (2) 今週のニュース 期間 : 9 月 ~ 12 月 今週のニュース にいては, 以下の手順で活動を進めた 1 担当者へ用紙を配布 : 週末毎週末, 各クラス3 人の担当者に用紙を配布し, クラス毎に担当者 3 人で話し合い, 取り上げる共通の出来事に関する記事を決定する 2 担当者が考察と意見の記述を行う : 土 日 祝日週末の時間を使って選んだ記事の内容についての考察と意見の記述を行い, 翌週の最初の授業日に NIE 担当の教員に提出する 3 教員によるチェック : 週明け NIE 担当の教員は, 内容を読み, 意見の記述が記事の内容に沿ったものとなっているかを確認し, 沿っていない場合には生徒に返却して書き直しを行わせる また, 単なる感想となっている場合についても同様の対応をした 4 掲示 : 火曜日 ~ 担当者 3 人の考察 意見がすべて教員のチェックを通過した時点で, 各教室の後部にあるN IE コーナーに掲示する 5ファイリング次の担当者の考察 意見が出そろった時点で, NIEコーナーの用紙を入れ替える 前週の用紙はファイルに綴じて教室内の新聞コーナーに保管し, 自由に閲覧できるようにする
5. 本年度の成果と課題 (1) 成果 N IE を推進し, 教室内に新聞を配置することで, 生徒の新聞への興味 関心が高めることができた 年度当初から実施していた 時事問題テスト であるが, 各教室に新聞を配置した 9 月以降は, 生徒の取り組みが格段に向上した 毎日, 新聞コーナーに群がって新聞を読んでいる姿も見受けられ, 都合によって 時事問題テスト が実施できない週などは, 新聞読んで準備したのに! と残念がる生徒も見られた また, 今週のニュース やスクラップ レポートなどで新聞記事に関する意見を記述させる活動は, 新聞を通して社会科の授業と現代の社会を接続することにつながっていた 生徒の間でも, この記事の内容, この前授業で習ったやつだ! という声が挙がることもあった ときには, 生徒が新聞を持って教壇や教務室に来て, 新聞記事の内容と授業内容の関連について質問することもあった (2) 課題と次年度への展望 1NIE 実施教科の偏り本年度は, NIE 担当教員が社会科の担当であることもあり, この報告書に挙げた取り組みも大部分が社会科の授業内や課題において行ったものとなった しかし, NIE は社会科に限定すべきではなく, 多くの教科で横断的に実施していくべきものであると考えられる 次年度以降, NIE を国語や理科など, 他教科へも拡大させていく必要がある 2 今週のニュース の担当者について本年度は, 新聞の購読時期が 9 月 ~12 月の4 ヶ月間であったことから, 全ての生徒に 今週のニュース を担当してもらうことができなかった 担当できなかった後半の生徒からは, なんで回ってこなかったのかと指摘されることも幾度かあり, 次年度以降は全ての生徒に平等に機会を与える必要があると実感した 3 新聞の保管について本年度は, 各教室の新聞コーナーにおいて一週間分の新聞を閲覧可能な状態にし, 毎週月曜日には前週の新聞を撤去し, 教務室内の棚に保管していた しかし, 生徒からは 月 日の新聞が見たい という要望が幾度かあり, 過去の新聞を生徒が閲覧できるようにしていけないかという検討事項が残された また, 本年度の新聞を来年度も何らかの形で活用できないかという点についても, 保管と関連して検討していきたい ( 阿久津源基 )