中学校社会科公民的分野における 「総合的問題解決能力」を育成する 時事問題学習の授業開発

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Transcription:

総合的問題解決能力 を育成する 中学校社会科時事問題学習の授業開発 指導教員 附属 迫 眞也 指導教員 大学 小原 友行 スーパーバイザー 大学 草原 和博 科学文化教育学専攻 社会認識教育学専修 M151034 竹内 和也

発表構成 1 総合的問題解決能力 とは何か 2 問題の所在 3 RQ リサーチクエスチョン の設定 4 AR実習Ⅰの概要 5 AR実習Ⅰの仮説と授業の実際 6 AR実習Ⅰの成果と課題 7 AR実習Ⅱへの展望

21世紀に直面している問題とは 価値観 思想 多様な価値観や思想的要因の対立を背景とする問題 対立 Ex. 宗教 エコロジー ジェンダー 人種 ゲイ 多様な地域 社会関係における諸課題 Ex. 地球レベル 環境問題 持続可能な開発 紛争 国家レベル 内戦 人権 国策 個人レベル 家庭内の喧嘩 など

問題解決を目指して 根源的かつ多元的民主主義 意見や理念の相容れない他者に対して 意見の一致を求めたり 同化 を強要したりするわけではなく 中略 自らの理念を擁護する相 手の権利に対しては異を唱えないものとして 紛争を孕んだ合 意 を目指す シャンタル ムフ 石田雅樹 924号2001年 訳 グローバル化と民主主義的シティズンシップ 思想 多様な価値観や思想の複数性の存在を理解し 互いに認め 多様な価 値観の土台の上にたって 意見のすり合わせ 合意 を行う

1 総合的問題解決能力 とは 1 問題解決の主体としての態度 問題における自己の立場 意見 を明確にし 他者の意見から自己の考え 方に他者の価値観や見方を反映させつつ解決に向けて取り組む態度 2 問題に対する多角的な分析 思考力 多様な価値観や視点から問題を分析し それらの価値観をすり合わせるこ とのできる解決策を提示する思考力 判断力 3 問題解決行動における対人的技能 問題解決のアプローチの中で 協働的に 相手の価値観や意見 利害を把 握することのできる豊かなコミュニケーション能力

1 総合的問題解決能力 とは 問題解決過程 1 主体としての態度 2 多角的な分析 思考力 AR実習Ⅰではココに限定 3 対人的技能

2 問題の所在 時事問題学習において 総合的問題解決能力 を育成しうる授業開発 実 践研究がいくつか存在している 1 藤原孝章 戦争と平和 多様な意見による話し合いの下 賛否の判断を行わせているが その後 の価値観のすり合わせや合理的な解決策の提示まで至っていない 2 河原和之 消費税アップ と TPP参加 の是非を問う 多様な立場からの意見の提言により 多角的に問題を分析させている が 合理的な解決策の提示まで至っていない

3 RQの設定 時事問題学習において 問題に包含される多様な価値観や意見 から分析させ 賛否の判断をさせる実践は多いが 価値観のす り合わせや合理的な政策決定には至っていない RQ 中学校社会科公民的分野において 総合的問題解決能 力 を育成するためには時事問題を取り上げた授業を どのように構成すればよいか

4 AR実習Ⅰの概要 実習期間 6月26日 金 7月15日 水 実習校 広島大学附属東雲中学校 実習クラス 3年1組 2組

5 AR実習Ⅰの仮説と授業の実際 仮説 AR実習Ⅰでは 2 多角的な分析 思考力に限定して検証を行い 以下の三つの学習過程を組み込むことが有効である ①時事問題に対する解決策を考えさせるための意見文をロールプ レイさせる ②協同学習の一手法としてのアナロジカル ジグソーメソッドを 取り入れる ➂意見や価値観をマトリックスなどに図化し それらを相対的に 捉えさせる

アナロジカル ジグソーメソッド ②学習者は資料を一つ担当し 同じ 資料を担当したエキスパートグルー プを形成する ①ある課題を達成するために必要な 知識を定義し 資料を分割しておく ④異資料を担当した人同士でジグ ソーグループを形成し 課題に取り 組む ➂エキスパートグループ内で担当以 外の 意見の 具体的な類推を複数 考える

授業構成 単元名 将来のエネルギー政策を考えよう 第1時 エネルギー政策の四つの視点 エネルギー政策の四つの視点 安全 安定 経済 環境適合性 を理解させる 第2時 原発再稼働に賛成か 反対かー 島民 としての判断 住民としての各視点の考え方を基に 供給方法の特徴を理解し 賛否を判断させる 仮説➂ 第3時 政策を実現するには タウンミーティング での判断 各住民の立場から政策を提案し 他者の政策との意見のすり合わせをさせる 第4時 エネルギー政策の四つの視点 レーダーチャートを用いて政策案の評価を行い 社会 の課題を理解する 仮説① 仮説②

第1時 エネルギー政策の四つの視点 ① 原発再稼働問題 についての 新聞に掲載された意見を賛成反対 に分け よく似た視点で述べられ ている意見をグルーピングさせる 4つの視点の理解

第1時 エネルギー政策の四つの視点 ②プレポストでの 原発再稼働問 題 を考えるときに考えた視点の度 合いをレーダーチャートで示させる

第2時 原発再稼働に賛成か反対か ①架空の ビリビリ島 の住民として4人の住民の 意見文を理解し ロールプレイさせ それぞれの立 場で供給方法の優先順位を提示させる ②意見交換ののち 再稼働の賛否を問う住民投票を させる

第3時 政策を実現するには ① 前時の賛否の結果による エネルギー電源構成の政策案を 各住民の立場で選ばせる ②前回の各立場の主張から自分 の立場の政策案への批判を類推 させる ➂10人 各立場2人 ないしは 3人 のミックスグループとな り 各立場の政策 修正案 を 提示し 話し合いの中で全員が 納得できる 合意できる 政策 案を提示させる

第4時 政策を実現するには ①前時でミックスグループで提 示された政策案の視点ごとのメ リット デメリットを分析す る ②分析から政策案がどの視点を 重視したものかレーダーチャー トに表現する ➂チャートの評価を基に 原 発がある ない 社会 の課題 と対策を考える

6 AR実習Ⅰの成果と課題 仮説の検証方法 検証対象 プレ ポストともに 原発再稼働に賛成か 反対か の ②ポストテスト 第4時終了時 賛否と根拠を記述 ①プレテスト 第1時冒頭 ➂レーダーチャート プレ ポストテストに合わせて第2時と第4時で実施 プレ ポストともに 根拠を考えた視点の割合はどれくらいか で 記述 表現

AR実習Ⅰの成果① 仮説① 時事問題に対する解決策を考えさせるための意見文 新聞の投書などを 参考にして をロールプレイさせることによって 総合的問題解決能 力 を育成することができる 検証対象 ポストテストの記述 ロールプレイの各立場に与えた視点や意見の内容が根拠として組み込ま れているか 検証結果 組み込まれている生徒は38 36 人であった ロールプレイの中で多くの立場の意見を理解し 自分の意見に反映させ ている

AR実習Ⅰの成果② 仮説② 協同学習の一手法としてのアナロジカル ジグソーメソッドを取り入れ ることによって 総合的問題解決能力 を育成することができる 検証対象 プレテスト ポストテストの記述 アナロジカル ジグソーメソッドを通して エネルギー政策に対する多 様な視点から分析 思考できているか 検証結果 視点の数が増えていた生徒は25 19 人いた 問題の賛否を判断する際に 授業内で提示した4つの視点から 分析 思 考していることが明らかである

AR実習Ⅰの成果② 視点の数の分布 3-2 視点の数の分布 3-1 25 20 15 10 5 0 視点 0また は1 25 20 15 10 5 0 視点 2 視点 3 視点 4 視点 0また は1 視点 2 視点 3 視点 4 プレテスト 14 22 2 0 プレテスト 23 15 1 1 ポストテスト 9 17 7 5 ポストテスト 9 16 12 3 プレテストとポストテストの根拠の記述に含まれている視 プレテスト ポストテスト プレテスト ポストテスト 点の数によって 分布図を作成すると両クラスともに 多 くの視点から分析 思考し 判断していることがわかる

AR実習Ⅰの成果➂ 仮説➂ 意見や価値観をマトリックスなどに図化し それらを相対的に捉えさせ ることによって 総合的問題解決能力 を育成することができる 検証対象 プレテスト ポストテストにおけるレーダーチャート レーダーチャートに図化することによって 意見のすり合わせが行われ ていることが理解できているか 検証結果 各視点に割り振った点の最大値と最小値の差 点数が偏るかどうか を 算出すると差が小さくなった生徒が30 32 人いた 意識的に4つの視点 から思考し 一面的な根拠の偏りを避けていることがわかる

AR実習Ⅰの課題 ロールプレイにおける意見や内容が抽象度の高いものであったために 抽象 的で具体性に欠ける記述になった 意見のすり合わせをレーダーチャートで表現するにとどまり 実際の記述へ の反映度が薄い 今回はあくまで 多角的な分析 思考力 に限定しての検証であるため 問題解決の主体としての態度 対人的技能 の育成についての評価 検証が必要

7 AR実習Ⅱへの展望 サンドイッチ での授業構成にするなどロールプレイ 教材と現実の時事問題での思考の往復を重視した授業開 発 対人的技能 を向上させる授業過程への仮説の修正 検証過程の検討