(8) 道路構造令等の条例案および技術基準案の検討 株式会社国土開発センター設計事業部設計 1 部高澤雄介氏 94
資料 -1 道路構造令等の条例案および技術基準案の検討 たかさわゆうすけおがわかずやひらぎしじゅん高澤雄介 小川和也 平岸純 ( 株 ) 国土開発センター設計事業部設計 1 部 ( 924-0838 石川県白山市八束穂 3-7) 地域主権一括法案の制定により道路構造や標識の大きさ等については 各自治体で条例を定めて規定することとなり 石川県では現行の道路構造令等が地域の実状に合わない事項について条例案および技術基準案の検討を行った 検討にあたり 現状の道路整備の問題点を抽出して 道路構造令等への適用性について課題を整理した その課題に対する対応策を検討し 石川県の特色を活かしたみちづくりを行うため 道路の区分 路肩 歩道 警戒標識の寸法 について独自の技術基準案を策定し その内容について技術的解釈を整理することで その主旨の理解と適正な運用を図るものとした Key Words : 道路構造令, 標識令, 条例, 技術基準 1. はじめに道路構造令の規定が画一的で 地方においては過大な道路整備が行われているという指摘を受け これまで弾力的な運用が行われてきたが 対応が不十分であったり 運用の解釈が曖昧になる等の問題があった また 平成 23 年 4 月に国会にて可決された 地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律 ( 地域主権一括法案 ) の中に道路法の改正が盛り込まれ 平成 25 年 3 月 31 日までに都道府県および市町村道における道路構造および標識の技術基準を各自治体において条例で定めることとなった 本業務は 現状の道路整備の問題点を描出し 道路構造令や標識令 ( 以下 道路構造令等 と呼ぶ ) の適用性に対する課題の整理と対応策の検討について道路管理者によるワーキングや学識経験者の意見聴取などを行い その結果に基づいて石川県の条例案や技術基準案の作成を行ったものである 条例案 技術基準案の作成にあたっては 以下の点について留意した 石川県の道づくりの基本方針である 新しい石川のみちづくり指針 に留意して検討する 県道の道路整備事業 および関連法令 ( 道路法 道路交通法等 ) や各種条例 ( まちづくり条例 景観条例等 ) との連携を図る上で 道路構造令 等を適用する際の課題を整理し 求められる道路構造を検討する 技術基準案は 道路構造令等を参酌した上で 技術的根拠を明確にして定める 2. 業務の流れ 石川県道路整備方針や関係法令等整理 道路整備の課題の抽出 技術的対策案の検討 道路構造技術基準の適用 運用の検討 条例案の検討 条例案の策定 関係団体 ( 行政 民間 ) への意見聴取としてアンケートを実施 道路整備担当者 市町担当者とワーキングを実施 道路整備担当者 市町担当者への説明会 学識経験者の意見聴取 95
3. 石川の道路の問題点と整備の課題アンケートやワーキングを通して 既存の道路構造令等を適用した道路整備を行うに当たり特に以下の 4 点が課題として抽出された (1) 道路の役割や機能に関する事項石川県は南北に細長く 能登半島は日本海に突出している 特に能登地方は平地が少なく 丘陵や山地が大部分であるため 第 3 次緊急輸送道路指定路線であっても災害に対して脆弱な区間や 観光周遊ルートであっても幅員狭小で低規格な道路が存在し 整備された幹線道路網が限定的でネットワークが十分に機能していないことから 一日も早い適切な道路整備が求められている 道路構造令 3 条では計画交通量に応じて道路の区分を定めているので緊急輸送道路や観光周路道路に指定されていても常時の交通量が少ない道路では道路の規格が低いことから 災害時や緊急時に大型車両が必要な速度で走行できなかったり 観光周遊において円滑 快適な通行が妨げられていても 実状に合った適切な道路整備をすることが難しい 望まれている 標識令第 3 条では 警戒標識の寸法が定められており 安全優先の思想からは標識設置位置の変更も限られることから 標識設置による景観阻害を軽減することが難しい 4. 条例案 技術基準案の策定抽出された道路整備における課題に対応するために 道路構造令等を参酌しつつ条例により独自の技術基準を定めることとした (1) 道路の区分の緩和 a) 概要 : 道路構造令では 道路の種類 地域 地形 および 計画交通量 により道路の区分を決定しているが 道路の連続性確保による走行性の向上や利用者の安全 安心確保を目的として 交通の状況等を考慮し 特に必要がある場合 に限って道路の種級を 1 級上に区分することができるものとした 地域 地形 ( 都市部 / 地方部 ) ( 平地部 / 山地部 ) 自動車交通量 ( 計画交通量 ) 道路の種類 ( 国県市道の区分 ) (2) 路肩に関する事項歩道等がない道路においては歩行者や自転車は路肩を通行しているが 道路構造令で定められる路肩の幅員が狭く 安全 安心な通行空間が確保されていない 一方 道路交通法 では自転車は軽車両であり路肩走行を基本とするが 道路構造令の運用では 道路交通法 に適切に対応していないため 実状に合った自転車走行空間整備ができていない 道路構造令 8 条では路肩の機能として 主要構造部の保護 故障車の退避および車両走行の側方余裕を主眼に路肩幅員を規定しており 第 3 種 2 級以下や第 4 種の停車帯のない道路では 歩行者や自転車が路肩を通行する場合の安全 安心な通行空間の確保が容易ではない (3) 歩道に関する事項金沢市街地には多くの歴史的街並みが残っており 加賀 能登エリアには伝統工芸などの文化や豊かな自然を有する地区が多く存在する このような地区の道路整備では 歴史的文化的資源の保全を優先するため 現道の拡幅が困難な場合がある 道路構造令 11 条では歩道の最少幅員 (2.0m) が規定されていることから 歴史文化等資源の保全地区などにおける道路整備の際にこの規定を適用して拡幅する必要がある場合には 道路整備そのものが困難になることがある (4) 警戒標識の寸法に関する事項重要伝統的建造物群保存地区等の景観が特に重要とされる区域において道路標識が視界を遮り景観が阻害される場合には 交通の安全を担保できる範囲で標識の寸法を縮小して景観阻害を緩和することが 道路区分の決定 図 -1 道路の区分決定フロー 特に必要がある場合 道路の区分を柔軟 (1 級上 下 ) に決定できる b) 適用 : 適用する道路は 主要な幹線道路とし 費用対効果を十分検討する必要がある 対象道路は 観光に資する道路 と 防災に資する道路 である c) 参考 : 計画交通量が同じでも道路管理者が異なると道路の区分も異なり 交通の状況が同様の道路でも幅員が異なる場合がある 第 3 種の道路 20,000 以上 4,000 以上 1,500 以上 500 以上計画交通量 ( 単位 1 日につき台 ) 20,000 未満 4,000 未満 1,500 未満 500 未満一般国道第 1 級第 2 級第 3 級平地部県道第 2 級第 3 級市町道第 2 級第 3 級第 4 級第 5 級一般国道第 2 級第 3 級第 4 級山地部県道第 3 級第 4 級市町道第 3 級第 4 級第 5 級 第 4 種の道路 10,000 以上 4,000 以上 500 以上計画交通量 ( 単位 1 日につき台 ) 10,000 未満 4,000 未満 500 未満 一般国道県道市町道 国道国第 4 種第 1 級 第 1 級 第 2 級 第 1 級第 2 級第 3 級第 1 級第 2 級第 3 級第 4 級 道県道 都市計画道路計画交通量 4,000 台 / 日 第 4 種第 2 級 図 -2 道路の区分の参考図国道と県道の交通状況が同様であるような場合に 県道の道路の区分を 1 級引き上げて 同じ規格 幅員で整備することが可能になる 96
(自転車 歩行者数)概ね1,000 台 /12h d) 条例案 ( 道路の区分 ) 第 3 条 3 前項の規定にかかわらず 次の各号に掲げる場合においては それぞれ当該各号に掲げる区分とすることができる 一地形の状況その他の特別の理由によりやむを得ない場合全項各項の表の該当する級が第一種第四級又は第二種第二級である場合を除き 同表の該当する級の 1 級下の級 ( 第三種第四級にあっては第三種第五級 第四種第三級にあっては第四種第四級 ) 二交通の状況等を考慮し 特に必要がある場合前項各号の表の該当する級が第二種第一級及び第四種第一級である場合を除き 同表の該当する級の一級上の級 ( 第一種第二級にあっては第一種第一級 第三種第二級にあっては第三種第一級 ) (2) 路肩幅員の拡大 a) 概要 : 歩道がない道路 や 路肩に自転車走行空間が確保されていない道路 において 歩行者や自転車の安全確保のために特に必要がある場合には 幅広な路肩 ( 以降 歩道がない場合 あんしん路肩 歩道がある場合 自転車走行空間 と呼ぶ ) を設置することで 歩行者や自転車の通行空間を路肩内に確保することができる基準を定めた 500 路肩 3000 車線 2000 500 3000 歩道 路肩 車線 縁石線等 あんしん路肩 3000 車線 図 -3 歩道がない道路 2000 自転車走行空間 3000 歩道車線 縁石線等 図 -4 自転車走行空間が確保されていない道路 b) 適用 : 歩道がない道路において あんしん路肩 を設置する場合は以下を参考に適用する あんしん路肩 を設ける際には 図-5 及び交通の状況等を考慮すること あんしん路肩 の幅員は 標準路肩幅員 +1.0 mを原則とし 必要に応じて参考図 -6に示す占有幅を考慮し決定すること ( 標準路肩幅員とは 冬期路肩と一次堆雪帯幅を含んだものをいう ) 概ね 100 人 / 日 歩行空間無し 歩道や自転車歩行者道など あんしん路肩 ( 自動車交通量 ) ( あんしん路肩の考え方 ) 路線の自動車交通量が概ね 1,000 台 /12h 以上で 自転車 歩行者交通量が 100 人 / 日未満の路線を あんしん路肩 整備の対象とする 図 -5 歩道等の設置に関する自動車と 1) 自転車歩行者交通量の関係 図 -6 歩道等の占有幅 自転車走行空間が確保されていない道路では 車道を走行する自転車の安全確保のため 特に必要がある場合には 幅広な路肩を設置して 路肩に自転車走行空間を確保することができる 自転車の占有幅を考慮して 路肩の幅員は 1.0m 以上とする 2) その際 路面標示等で通行空間を明示することを検討すること c) 条例案 図 -7 自転車の占有幅と路面標示の事例 ( 路肩 ) 第 7 条 2 車道の左側に設ける路肩の幅員は 道路の区分に応じ 次の表の車道の左側に設ける路肩の幅員の左欄に掲げる値以上とするものとする ( 略 ) 第 1 種 区分 第 1 級及び第 2 級 車道の左側に設ける路肩の幅員 ( 単位メートル ) 普通道路 2.5 1.75 小型道路 1.25 第 3 級及び 普通道路 1.75 1.25 第 4 級 小型道路 1 第 2 種 普通道路 1.25 小型道路 1 第 1 級 普通道 1.25 0.75 小型道路 0.75 第 3 種 第 2 級から 普通道路 0.75 0.5 第 4 級まで 小型道路 0.5 第 5 級 0.5 第 4 種 0.5 4 第三種又は第四種の道路の車道の左側に設ける路肩の幅員については 歩行者や自転車の安全の確保のために特に必要があると認められる場合においては 第二項本文の規定にかかわらず 当該車道の交通の状況等を考慮して定めることができる 97
(3) 歩道の最小幅員の縮小 a) 概要 : これまでの道路構造令における歩道の最小幅員は 小区間改築の場合の特例を除いて 2.0m 以上確保することとなっていた 歴史文化等保全地区などにおいて 歴史的街並み等の保全と道路整備の両立を図ることを目的として 歩道の最小幅員を歩行者がすれ違いできる幅 1.5m まで縮小できることとした 寸法を 30cm 角まで縮小できる基準を定めた 図 -8 警戒標識の寸法の縮小 現計画 2.0 塀の取壊しや移転が必要重要建造物の取壊しや移転が必要 17.0 12.0 2.0 重要建造物 重要建造物 変更計画 1.5 16.0 12.0 1.5 図 -7 歩道幅員の縮小イメージ 歩道幅員を縮小 b) 適用歩道を縮小することにより 歩行者等にとっては通行の利便性が低下することになるので 適用の際には 無電柱化や標識 照明灯等の設置箇所を考慮するなど 歩行者等の空間確保に努めるとともに 沿道地域の状況を踏まえ十分な調整が必要である 歴史的資源の保全等やむを得ない場合 とは 歴史的街並み保全を目的として法律等で指定された地区に限る 対象地区 重要伝統的建造物群保存地区 ( 石川県内 8 箇所 : H25.4.1 現在 ) 伝統的建造物群保存地区 その他条例等により歴史的街並み保全等を目的に定められた地域など c) 条例案 ( 歩道等 ) 第 12 条 3 歩道の幅員は 歩行者の交通量が多い道路にあっては三 五メートル以上 その他の道路にあっては二メートル以上とするものとする ただし 歴史的資源の保全等やむを得ない場合においては 一. 五メートルまで縮小することができる (4) 警戒標識の寸法 a) 概要これまで警戒標識の寸法については 道路標識 区画線及び道路標示に関する命令 の中で示されており 一律に 45cm 角と規定されていた 重要伝統的建造物群保存地区において 歴史的な街並み等の良好な景観への配慮により 警戒標識の 図 -9 整備イメージ b) 適用視認性を検討の上 設置すること 適用箇所については 歴史的街並み保全等を目的として法律等で定められた地区に限る 対象地区 重要伝統的建造物群保存地区 ( 石川県内 8 箇所 : H25.4.1 現在 ) c) 条例案 ( 道路標識の寸法 ) 第 46 条法第 45 条第 3 項の条例で定める道路標識の寸法は 規則で定める 別表備考一本標識 ( 本標識の表示板をいう ) の寸法 ( 略 ) ただし 景観等の配慮により 特別の必要がある場合にあっては 警戒標識の寸法を 3 分の 2 まで縮小することができる 5. まとめ 今後の課題石川県では 全国一律ではなく地域の実状に応じた道路整備を行うため 道路構造等の条例制定に伴う独自の技術基準 4 項目を定めた 条例施行後は この基準を適用する際の考え方を関係技術者へ周知 徹底すること 基準の運用方法の確立などの課題があり 継続してこの課題に取り組む必要がある 参考文献 1) H17.4.1 付石川県道路整備における新たな技術指針について ( 通知 ) 2) 安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン H24.11 3) 道路構造令の運用と解説 H16.2 98
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