阿波しらさぎ大橋(東環状大橋)の設計・製作・施工

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論文 報告 阿波しらさぎ大橋 ( 東環状大橋 ) の設計 製作 施工 ~ ケーブルイグレット橋の工事報告 ~ A Design, Fabrication and Construction of AWASHIRASAGIOOHASHI 福嶋貴生 *1 Takao FUKUSHIMA 井上岳大 *2 Takehiro INOUE 岩田幸三 *3 Kozo IWATA 本工事は, 徳島外環状道路の吉野川河口部に位置する阿波しらさぎ大橋のうち, 干潟部である P1-P5 間に架設された ケーブルイグレット橋 の工事である ケーブルイグレット橋は, 斜張橋とケーブルトラス橋の特徴を合わせた世界に類のない構造形式であり,2012 年 3 月に竣工した 本報告では, 設計 ( 耐風対策 ) と工場製作, 現場施工について報告する キーワード : ケーブルイグレット, 耐風対策 1. はじめに阿波しらさぎ大橋は, 徳島外環状道路の東側部分の吉野川河口に位置する, 国道 11 55 号線のバイパス機能を持つ徳島東環状線の中心的役割を担う橋梁であり, 橋長 1291m は, 河川に架かる道路橋としては, 四国最長となる 吉野川河口域は, 希少種が生息する広大な干潟が広がっており, この希少種への影響をできる限り少なくするため,P1~P5 の干潟部の上部工形式にケーブル形式を採用し, 長支間化を図っている また, ケーブル形式は干 潟に生息する鳥類の飛行を妨げることが懸念されることから, 主塔高さを低くでき, ケーブル段数を減らすことが可能な, 世界に類のない ケーブルイグレット形式 を採用した この形式は, 斜張橋とケーブルトラス橋の特徴を合わせた形式であり, ケーブル段数を減らした外観が, 徳島県の鳥である白鷺 ( イグレット ) のはばたきに似ていることから命名された形式である 本稿は, 阿波しらさぎ大橋のケーブルイグレット部の設計 製作 施工について報告する *1 川田工業 橋梁事業部工事部大阪工事部工事課係長 *2 川田工業 生産本部四国工場製造一課 *3 川田工業 橋梁事業部技術提案部大阪提案室課長 論文 報告 9-1

2. 橋梁緒元工事名 : 東環状大橋 ( 仮称 ) 上部工 ( 第 6 分割 ) 工事道路規格 : 第 4 種第 1 級活荷重 :B 活荷重橋梁形式 :4 径間連続ケーブルイグレット橋橋長 :575m 支間長 :139.0+260.0+105.0+69.0m 幅員 :32.604~26.300m 主塔高 :29.6m 主桁形式 :4 主合成鈑桁床版形式 : サンドイッチ型合成床版 (SW 床版 ) (2) 実橋振動実験前項の風洞実験にて確認した桁本体の振動性能の妥当性を確認するために, 実橋において起振機 ( 写真 1) を用いた鉛直たわみ1 次モードおよびねじれ1 次モードを対象とした振動実験を実施した なお, 橋体の加振には, 中央径間の支間中央付近の外桁上に配置した, 重錘移動式の大型起振機を使用した 3. 設計 本橋の主桁はねじり剛性の小さいI 桁構造であること, ケーブルが並列に配置されていることから, 桁とケーブルに対する耐風対策が重要なポイントであった よって, ここでは, 桁本体の振動性状を確認するために行った3 次元風洞実験と実橋振動実験, 並列ケーブルの制振対策を決定するために実施した風洞実験について報告する (1) 模型による3 次元風洞実験本橋は, コンサルタントの設計時に2 次元の風洞実験を実施しており, 以下に示す対策が反映されている ( 図 2) 1 主桁ウェブに抑流板を設置 2 高欄にフラップを設置 3 歩道部鋼床版端部にフェアリングを設置 4P1-P2およびP3-P4 間の一部,P2-P3 間全長に下横構 (H200) を設置フラップ 写真 1 起振機自由振動実験から得られた自由振動波形を図 4に示す 振動実験結果から推定した完成時の振動数と耐風安定性の評価に用いた固有振動数との相違は, 鉛直たわみで約 3%( 解析値 0.410Hz, 実測値 0.423Hz), ねじれで約 9% ( 解析値 0.695Hz, 実測値 0.760Hz) であった また, 対数減衰率の平均値は鉛直たわみで0.052, ねじれで0.032 であり, 風洞実験時の仮定値である0.02を両振動モードとも満足する結果であった フェアリング 抑流板 図 2 制振対策 フェアリング 加速度 (gal) しかし, 実験されている架設系のモデルが桁のみを架設した場合のものであり, 実施工において, 最も揺れると予想される桁にSW 床版を設置したモデルで確認する必要があると判断したため, 上記モデルの2 次元および3 次元の風洞実験を追加実施し, 耐風性能の確認を行った その結果, 桁にSW 床版を設置した場合のモデルにおいて, フラッター発現風速が許容風速 (42.5m/s) を満足しなかったため, 下横構の剛性をアップさせることで対応した ( 図 3) 下横構断面 (H300) 追加下横構断面を H200( 発注時 ) H400 に変更 P1 P2 P3 P4 P5 下横構断面を H200( 発注時 ) H300 に変更図 3 下横構の剛性変更 加速度 (gal) 経過時間 ( 秒 ) a) 鉛直 1 次モード経過時間 ( 秒 ) b) ねじれ 1 次モード図 4 振動実験結果 (3) ケーブルの耐風対策本橋のケーブルは斜ケーブルが3 本, 水平ケーブルが4 本並列に配置されている 並列に配置されたケーブルは, 論文 報告 9-2

風下側のケーブルが上下に振動するウェイクギャロッピング (WG) が問題となる WGは, ケーブル中心間隔 L とケーブル径 Dとの比が1.5~6.0の場合に発生しやすい 1) 本橋のL/Dは斜ケーブルで3.39, 水平ケーブルで4.01であり,WGの発生が懸念された そこで, 実橋ケーブルの制振対策を決定するために, 図 5に示す実物大ケーブルを使用した風洞実験を実施した 2) 風下側ケーブル 写真 3 水平ケーブルの制振対策 ( ヘリカルワイヤ ) 回転により迎角調整 風 風上側ケーブル 図 5 ケーブル風洞実験装置 手であるため, 溶接の縮み量の誤差, 施工誤差を考慮した製作を行う必要があった 想定される誤差量を図 6に示す 架設ステップ -1:P1~J5 架設現場溶接縮み量誤差 ±3mm 想定架設ステップ -2:P2 主塔部 J13~J14 架設 風洞実験の結果, 斜ケーブル, 水平ケーブルとも風速 6m/sでWGが発生することが確認された 斜ケーブルは, 制振ダンパーを設置できることから,WGの対策として写真 2に示す高減衰ゴムダンパーを設置することにした 架設ステップ -3:J5~J11 架設 桁の出入り誤差 ±5mm 想定桁の倒れ誤差 ±3mm 想定 コンクリート打設完了 現場溶接縮み量誤差 ±6mm 想定 架設ステップ -4:J11~J13 架設 養生中 以上の累積誤差 ±3+±5+±3+±6=17mm を想定 ±25mm の誤差に対応できるように製作 写真 2 斜ケーブルの制振対策 ( 高減衰ゴムダンパー ) 水平ケーブルについては, 制振ダンパーを設置する箇所がないことから,WGの対策として, ヘリカルワイヤを設置し,4 本のケーブルを連結する金具を3ヵ所に設置することとした ヘリカルワイヤは, ピッチ660mm, ワイヤ径 12mmを2 本設置することで, 風速 15m/s 以下の範囲で WGを抑制できることを風洞実験で確認した ( 写真 3) 4. 工場製作 (1) 落とし込みブロック部の調整方法当社製作範囲であるP1~P2 間の架設は,P1 側から片押し架設であるが,P2 主塔部手前のJ11~J13ブロックは落とし込み架設となる また, 主桁継手方式は現場溶接継 図 6 想定される誤差 架設ステップ 3 の J5~J11 架設完了後に J11~J13 のスパ ン測量を行い,J11~J13 ブロックを製作すると工程上の 問題があるため,J12~J13 ブロックを調整部材とし, 予 め J13 を +25mm 長く製作する ( 図 7) 測量後にその結果 を反映して,J13 部の仕口を切断する この方法により, スパン測量後約 2.5 週間 ( 主塔基部のコンクリート養生期 間中 ) で調整した桁を現場に搬入することができ, 現場 工程に影響を及ぼすことなく対応できた <+25mm の場合 > ( 工場仮組時 ) 50 <±0mm の場合 > <-25mm の場合 > 25 140 115 90 最大中心間隔は 150mm 以下のため, 問題なし SPL は +25mm の場合で, 外形切断しておく ( 最大縁端距離は問題なし ) 図 7 J13 の調整方法 論文 報告 9-3

(2) 主塔の曲がりの規格値徳島県土木施工管理基準より, 柱の曲がりの規格値は L/1000であり, 本橋の主塔の高さL=34.5mであることから, 規格値は34.5mmとなる 主塔のキャンバー倒れ量は最大で26.2mmであるため, 規格値に収まってしまう よって, より精度良く製作するために, 規格値の 50 % (L/2000) で管理した 5. 現場施工 (1) 架設の概要本橋の架設ステップを図 8に示す まず,P2,P3 主塔基部をクレーン台船にて架設し, コンクリートを打設する その後,P1~P2 径間をトラッククレーンおよびトラベラークレーン + ベント工法にて架設し,P1~P2 径間部と平行して,P3~P5 径間をポンツーンにて架設する 側径間の架設完了後にP2,P3 主塔の架設を平行して行い, 主塔架設完了後にP2~P3 中央径間の架設を行う 中央径間の架設は, 架設用ケーブルを併用したトラベラークレーンによる張出し架設とし,P2 側およびP3 側から同時に行う 主桁閉合後に, 架設用ケーブルの撤去, 本ケーブル の設置を行い, 本ケーブルの調整後に,SW 床版および歩道部鋼床版を設置する (2) 主塔基部の架設桁高 6m, 部材重量が45t 以上ある主塔基部の架設は, 250t 吊りの機重機船を用いて行った ( 写真 4) P2 主塔部は, 干潟部であり, 起重機船の喫水が確保できなかったため, 漁船航路の確保および作業能力から深さ 幅を決定し浚渫を行った また, 起重機船をスパット台船型 ( アンカー別途不要 ) に限定し, 部材を輸送台船から起重機船へ積み替えることで, 省スペースにて作業が行えるように計画した 主塔基部は, 橋脚とコンクリートで剛結される 剛結部のコンクリートはマスコンクリートとなることから, 事前に有限要素法による非線形温度応力解析を実施し, 最適なリフトを検討, 打設に反映することで, ひび割れのないコンクリートの打設が行えた S T E P 1 : P 2, P 3 部ブロック架設 P 1 P 2 P 3 P 4 P 5 S T E P 2 : P 1 ~ P 2 間架設 ( ベント ), P 3 ~ P 4, P 4 ~ P 5 間一括台船架設 S T E P 3 : P 1 ~ P 2 ベント撤去, P 2, P 3 主塔架設, P 3 ~ P 4 間張出架設 P 1 P 2 P 3 P 4 P 4 P 5 P 5 S T E P 4 : 架設ケーブル設置 ( バックステイ, 第 1 ケーブル ) S T E P 5 : 架設ケーブル設置 ( 第 2 ケーブル ), P 2 ~ P 3 張出架設 S T E P 6 : 架設ケーブル設置 ( 第 3 ケーブル ), P 2 ~ P 3 張出架設 S T E P 7 : 架設ケーブル設置 ( 第 4 ケーブル ) S T E P 8 : P 2 ~ P 3 間閉合ブロック架設 S T E P 9 : 第 1 ~ 3 架設ケーブル撤去 S T E P 1 0 : 本ケーブル設置 S T E P 1 1 : 第 4 架設ケーブル撤去, P 1 ~ P 2 間ベント撤去 S T E P 1 2 : S W 床版, 歩道部鋼床版, 橋面工 図 8 架設ステップ 写真 4 主塔基部の架設 (3)P1~P2 側径間の架設 P1~P2 径間部は, 県道 堤防 河川上に架設する 県道上の架設は,3ステップに渡る県道切り回しを行い, 通行止めを行わずに,160t 吊りのトラッククレーン+ベントにて架設した 堤防道路上については, ケーブル定着横桁が取り付いているため, 部材重量が43tと重いことから, 県道上から 500t 吊りのトラッククレーンにて架設を行った 河川上は, クレーンの設置が不可能であることから, 桁上に650t 吊りのトラベラークレーンを配置してP1 側からP2 側へ架設を行った ( 写真 5) (4)P3~P5 側径間の架設 P3~P5 径間部は, 吉野川のほぼ中央部に位置しており, 桟橋やベントの設置ができないことから, ポンツーン架設を行った ポンツーン架設は,P3~P4 間とP4~P5 間の2 回に分けて実施した 特に,P4~P5 間は, 隣接工区の桁とP3~P4 間の桁に挟まれた600mmと狭い空間に台船を差し込むという難易度の高い架設であったが, 無事に架設を完了した ( 写真 6) 論文 報告 9-4

論文 報告 阿波しらさぎ大橋 東環状大橋 の設計 製作 施工 写真5 写真6 P1 P2側径間のトラベラークレーン架設 写真7 P3 P5側径間のポンツーン架設 P2 P3中央径間の架設 写真8 P2 P3中央径間の閉合 写真9 主塔ストラットの架設 5 P2 P3中央径間の架設 P2 P3中央径間部は P2 P3側より並行して650t吊り のトラベラークレーンにて架設を行った 中央径間部は ベントが設置できないため 主塔のストラットから架設 用ケーブルを設置し 張出した桁を支持する方法とした 架設用ケーブルは P2 P3側とも4段に設置した 写真7 本橋は 桁と橋脚が剛結となっているため 閉合時に 架設した桁をセットバックできない よって 閉合ブロ ックの架設前に スパン測量を3日間行い その結果を 閉合ブロックに反映させた その結果 問題なく閉合す ることができた 写真8 6 主塔の架設 側径間の架設完了後に 桁上の650t吊りトラベラーク レーンを使用して主塔の架設を行った 主塔は 基部か ケーブルからなり 図9 最初に水平ケーブル φ7 ら塔頂までを架設し その後 ストラット架設用のベン 349 4本 2 から設置し 中央径間斜ケーブル φ7 トを主桁上に設置して ストラットの架設を行い 左右 499 3本 4 側径間斜ケーブル φ7 499 3本 4 の主塔を一体化させた 写真9 の順で架設した 7 ケーブル工 水平ケーブルは主桁の下側に配置される そのため 本ケーブルは 中央径間の閉合後に架設用ケーブルの1 下サドル間に横取り設備を有した展開設備(写真10)を 段 2段を撤去してから設置した 本ケーブルは 側径間 設置し 橋面上に展開したケーブルをクレーンで展開設 の斜ケーブル 中央径間の斜ケーブル 中央径間の水平 備に仮置きしてからケーブルの設置位置まで横取りした 論文 報告 9-5 川 田 技 報 Vol.32 2013

論文 報告 阿波しらさぎ大橋 東環状大橋 の設計 製作 施工 図9 ケーブル配置図 写真10 水平ケーブル展開設備 中央径間および側径間の斜ケーブルは 主塔の塔頂サ ドルと下サドルおよび定着横桁に定着される間に設置さ れる 斜ケーブルの架設は サグ取り用の25t吊りクレーンを 3台追加して合計5台のクレーンで設置した 写真11 側径間の斜ケーブル バックステイケーブル は 塔 頂サドルと定着横桁間に設置される 3本のケーブル間隔 が狭いため 支圧板を一体構造とした 写真12 写真12 側径間定着横桁部ケーブル定着 6 おわりに ケーブルの調整は 側径間斜ケーブル設置後にまず 本橋は 斜張橋とケーブルトラス橋の特徴を合わせた 側径間の1次調整 その後水平ケーブル 中央径間斜ケー 世界に類のない ケーブルイグレット橋 であり 工程 ブルの1次調整 水平ケーブルの2次調整 中央径間斜め の厳しい工事であったが 2012年3月に無事に工事が完了 ケーブルの2次調整 側径間斜ケーブルの2次調整の順で した 本橋の完成により国道11号線の慢性化した渋滞が 行った 緩和され また 本橋が徳島県の新しいシンボルになる ことを願う次第である 最後に 徳島県職員の皆様 施工管理の皆様 JV構 成員である横河ブリッジ殿 アルス製作所殿に対し 多 大なご指導ご協力をいただきました 紙面をかりて厚く 御礼申し上げます 参考文献 1 建設省土木研究所他 斜張橋並列ケーブルのウェイ クギャロッピング制振対策検討マニュアル 案 共同研究報告書第134号 1995.9. 2 久保義人他 実物大模型を用いた並列ケーブルのウ ェイクギャロッピング特性 構造工学論文集 Vol. 写真11 58A, pp.518 527, 2012.3. 水平ケーブル展開設備 論文 報告 9-6 川 田 技 報 Vol.32 2013