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2 図微小要素の流体の流入出 方向の断面の流体の流入出の収支断面 Ⅰ から微小要素に流入出する流体の流量 Q 断面 Ⅰ は 以下のように定式化できる Q 断面 Ⅰ 流量 密度 流速 断面 Ⅰ の面積 微小要素の断面 Ⅰ から だけ移動した断面 Ⅱ を流入出する流体の流量 Q 断面 Ⅱ は以下のように

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新製品 新技術特集技術論文 82 遺伝的アルゴリズムとニューラルネットワークを用いたターボチャージャ用遠心圧縮機の最適空力設計 Aerodynamic Design Optimization of a Centrifugal Compressor Impeller Based on an Artificial Neural Network and Genetic Algorithm *1 茨木誠一 *2 冨田勲 Seiichi Ibaraki Isao Tomita 杉本浩一 *3 Koichi Sugimoto 自動車用ターボチャージャの遠心圧縮機には, 高圧力比, 高効率に加え, 特に広い作動範囲が要求される これまでにも, 数値流動解析や実験を活用した高性能化が進められ, 従来の設計手法による性能革新は益々難しくなっており, 空力設計にも多大な時間を要する そこで, 従来に代わる新たな設計手法として, 遺伝的アルゴリズムとニューラルネットワークを用いたコンピュータ援用の最適設計手法を開発した 本手法を遠心圧縮機羽根車の設計に適用し, 設計した2 種類の羽根車の性能試験の結果, 従来に対して高効率化と大幅な作動範囲の拡大を達成した 1. はじめに 今やターボチャージャの搭載による自動車用エンジンのダウンサイジング化は, 燃費改善の確実な手段として認知され, その適用が拡大している ターボチャージャの遠心圧縮機には自動車の運転に応じた広い作動範囲と高効率, 高圧力比が求められ, これまでにも数値流動解析や性能 内部流動計測などの実験を活用した高性能化が進められてきた (1) 遠心圧縮機の羽根車は複雑な3 次元形状であり, これに起因して内部流れも非常に複雑な3 次元渦流れ場を呈し, 損失発生のメカニズムも多様である また, 設計変数も多く, 従来の人の手による設計手法では高効率化が困難になっており, 設計にも多大な時間を要するという課題がある そこで, 新たな先進的設計手法として, コンピュータ援用を進めた遺伝的アルゴリズムとニューラルネットワークからなる最適設計手法を開発した この手法をターボチャージャ用遠心圧縮機羽根車の設計に適用し,2 種類の羽根車を創出した 性能試験の結果, それぞれの羽根車において, 従来型に対して,1% 以上の高効率化と,2 倍以上の作動範囲拡大を達成し, 本最適設計手法の有効性を確認した 本報では最適設計手法と, それを用いた遠心圧縮機羽根車の設計及び性能試験結果を紹介し, 数値流動解析による内部流動現象の把握と高性能化のメカニズムについて概説する 2. 最適設計手法 図 1に遺伝的アルゴリズム (GA:Genetic Algorithm) とニューラルネットワーク (ANN:Artificial Neural Network) から構成される最適設計のプロセスを示す 遺伝的アルゴリズムは生物の進化を模擬した最適化アルゴリズムであり, ニューラルネットワークは人間の脳の機能を模擬したものである GA では図 2に示す翼形状座標などの設計変数を遺伝子と見なし, 各世代毎に翼形状同士を掛け合わせて新しい翼形状を生成する ANN では, 翼形状と性能のデータベースを基に, *1 技術統括本部長崎研究所主席研究員工博, 技術士 ( 機械部門 ) *2 技術統括本部長崎研究所技術士 ( 機械部門 ) *3 技術統括本部長崎研究所工博

詳細な流動解析を行うことなく, 翼形状からその性能を推定する ANN で評価された高性能な翼形状については, 図 1の左の詳細な3 次元流動解析で評価され, その結果は形状データと共にデータベースに保存される データベースの拡充に伴い,ANN の学習機能により,ANN の性能推定精度が向上する 本手法を用いた遠心圧縮機羽根車の最適設計では,GA により 200 世代,1 世代当たり 10 個体 ( 翼形状 ) を生成し, これを約 70 回繰り返した 翼形状を定義する設計変数は翼枚数, 翼の子午面座標, 翼角度など 27 個である ANN で性能を評価するための評価関数として, 効率, 流量, 翼負荷, 最高翼面マッハ数, マッハ数の加速率 減速率など9 個の関数を定義した (2) 83 図 1 最適設計のプロセス 図 2 羽根車の形状定義方法 3. 遠心圧縮機羽根車の最適設計結果 遠心圧縮機羽根車は中間羽根付き後方湾曲翼型とし, 設計圧力比は 1.53 とした 2 回の最適設計で得られた羽根車 (OPT1,OPT2) と従来型羽根車の主要諸元と外観をそれぞれ表 1と図 3 に示す 表 1 従来型羽根車と最適設計羽根車の主要諸元比較 OPT1 OPT2 従来型 出口外径 (mm) 50.0 49.6 49.0 出口幅 (mm) 4.14 3.75 4.20 入口外径 (mm) 39.5 37.1 37.8 入口内径 (mm) 13.9 12.6 12.6 翼枚数 5+5 4+4 6+6 図 3 従来型羽根車と最適設計羽根車の比較 また, 図 4に子午面形状を比較する 2 回の最適設計では, 設計変数の1つである翼枚数の下限値のみ異なり,1 回目が主羽根と中間羽根をそれぞれ5 枚とし,2 回目は4 枚とした 後述のように,OPT1 は従来型より 0.5~1.0% 高効率であり,OPT2 は最高効率こそ従来型より1% 低いものの, 作動範囲が2 倍以上拡大した OPT1 の最適設計における性能評価関数の履歴を図 5に示す OPT1 は 17 回目の最適化で得られた羽根車であり, 効率は全体の中でも上位 10 位内に入る しかしながら, 最適設計では効率だけでなく, 他の性能評価指標も総合的に考慮して最適な羽根車を選定する 図 6に ANN 及び 3 次元流動解析で得られた OPT1 の翼端部入口から出口までのマッハ数分布を示す これより, ANN の推定値と3 次元流動解析結果が良好に一致していることが分かる OPT1 のマッハ数分布は局所的な増減も小さく, 非常にスムースであるとともに, 主羽根と中間羽根のマッハ数がほぼ一致しており, 翼負荷が均等である この結果を踏まえて, 最適な羽根車として,OPT1 を選定した

また,OPT1 は図 4より, 中間羽根前縁の前傾が小さく, 強度や製作性も優位と判断した 2 回目の最適設計で選定した OPT2 も,OPT1と同様の基準で選定した 同様に全体で3 番目に効率が高く, 図 7に示す翼端部のマッハ数分布も OPT1 と同様にスムースであり, 主羽根と中間羽根の翼負荷も均等である OPT2 は表 1, 図 3のように翼枚数が主羽根 4 枚, 中間羽根 4 枚と少なく, その結果, 図 4で示す羽根車入口径は小さい また, 軸方向長さが短く, 中間羽根前縁が前傾しているのが特徴的である 84 図 4 子午面形状の比較 図 5 最適設計における評価指標の履歴 図 6 OPT1 の翼端部のマッハ数分布 図 7 OPT2 の翼端部のマッハ数分布 4. 性能試験結果 最適設計で得られた2 種類の羽根車 OPT1,OPT2 の性能試験結果を従来型と比較する 図 8 に圧縮機の圧力 - 流量特性と圧縮機効率, 図 9に圧縮機効率, 図 10 に作動範囲の比較を示す 図 8より,OPT1 は従来型に比べて効率が高く,OPT2 は最高効率は1% 低いものの, 作動範囲が広いことが分かる 図 9より,OPT1 は従来型に対して, 圧力比 1.8 近傍で最高効率が 0.5% 高く, 圧力比 2.2 以上で効率が1% 以上高い 一方,OPT2 は全圧力比域で約 1% 低い 図 10 は作動範囲の無次元値 (( 最大流量 -サージ流量)/ サージ流量 ) を示したものであり, これより, 従来型が圧力比 1.9 以上で急激に作動範囲が減少するのに対して,OPT1 は作動範囲の減少が緩やかである OPT2 はさらに作動範囲が広く, 圧力比 2.2 以上では従来型の2 倍以上の作動範囲を有する また, 図 8に示す圧力特性においても,OPT2 は, 圧縮機が不安定になる右上がり勾配を持たず, 安定した作動範囲が広く, 広い作動範囲が要求されるターボチャージャ用遠心圧縮機には最適な特性である

85 図 8 圧縮機特性の比較 図 9 圧縮機効率の比較 図 10 作動範囲の比較 5. 内部流れの考察 3 次元流動解析により,OPT1,OPT2 の高性能化のメカニズム解明を試みた 解析コードは ANSYS CFX ver.12 であり, 乱流モデルに k-εモデルを用い, 羽根車, ディフューザ, スクロールの一体定常解析を行った 格子数は羽根車が 247 万点, ディフューザが 41 万点, スクロールが 25 万点である 図 8に示す回転数 0.89( 最高回転数 1.0) の効率ピーク点流量で計算を行った 図 11(a)~(c) に それぞれ従来型,OPT1,OPT2の流動解析結果を示す これは羽根車内部の渦構造を可視化したもので, 翼面限界流線, 流線, 損失分布をあわせて示す 図 11(a) の従来型では翼入口部にハブから翼端に駆け上がる強い2 次流れが生じている これにより, 翼面境界層などの低エネルギー流体が翼端に集積し, 翼端漏れ渦を巻き込みながら下流に移動するため, 出口近傍で中間羽根の右側に損失の大きな領域を生成する また, 前縁近傍の翼端漏れ渦は前縁の直ぐ下流から巻き上がり, 中間羽根の左側流路に移流して, 損失の大きな領域を形成する 一方, 11(b) の OPT1 では, 翼入口部に2 次流れはなく, 翼端部での低エネルギー流体の集積が抑制されている また, 前縁近傍の翼端漏れ渦は従来型と異なり, 更に下流で形成される 翼枚数が少ないため, 翼負荷が高く, 漏れ渦は強いものの, 漏れ渦は中間羽根の右側流路に移流する この結果, 中間羽根出口の右側の最大損失は従来型より高いものの,2 次流れが抑制されたことで, 全体として損失が低減されている これより,OPT1 の効率が高いのは,2 次流れの抑制が原因であり, 最適設計において得られた流れ方向, 翼高さ方向の翼負荷分布の効果によるものと考えられる 図 11(c) に OPT2 の流動解析結果を示す OPT2 の流動構造と損失生成メカニズムは OPT1 とほぼ同様である OPT1 と比較して, 従来型ほど顕著ではないものの, 同様に翼入口部の2 次流れが生じ, 低エネルギー流体の集積が大きく, 効率低下に繋がったと考えられる また,OPT2で作動範囲が大幅に拡大した原因は, 漏れ渦の渦崩壊が寄与しており, 詳細は別報に譲る (3)

三菱重工技報 Vol.52 No.1 (2015) 86 図 11 内部流れの比較 6. まとめ 性能革新と設計時間の短縮を目的に 遺伝的アルゴリズムとニューラルネットワークからなる先 進的な最適設計手法を開発し ターボチャージャ用遠心圧縮機羽根車の設計に適用した この 設計手法で創出された2種類の羽根車の性能試験の結果 それぞれ高効率化と作動範囲拡大 を達成し 本手法の有効性を確認した また 得られた羽根車を3次元流動解析で逆解析するこ とにより 流動構造と高効率化のメカニズムを把握した 益々難易度が高まる高性能化と 開発速度の加速にとって コンピュータ援用を最大限促進し た最適設計手法は強力なツールとなる 今後は 複数の作動点や構成部品の同時最適化 空力 性能と信頼性の同時最適化 最適化アルゴリズムの改良など 最適設計手法の高度化を推進す る また 得られた最適設計解を流動解析や実験に活用して逆解析することで 新たな高性能化 コンセプトを創出し 高性能化設計の指針構築に役立てたい 尚 本最適設計手法はフォンカルマン研究所 ベルギー と共同開発したものであり 同所の Van den Braembussche 名誉教授 Verstraete 助教 Alsalihi 博士に謝意を表す 参考文献 (1) 茨木誠一 低炭素社会に貢献する自動車用ターボチャージャの進化 日本機械学会誌 Vol.117 No.1144(2014) p.140 141 (2) 茨木誠一ほか 自動車用過給機のワイドレンジ遠心圧縮機の開発 三菱重工技報 Vol.49 No.1 (2012) p.69 74 (3) Ibaraki, S. et al., Aerodynamic Design Optimization of a Centrifugal Compressor Impeller Based on an Artificial Neural Network and Genetic Algorithm, IMechE Paper, C1384/0589 2014