No.9 特定非営利活動法人仙台傾聴の会 ( 宮城県 ) 心に寄り添う傾聴を被災各地で実施 支部ごとでの自主的な運営 人材育成 他地域へ のノウハウの展開などにより ネットワークを形成 傾聴活動による被災者支援 支援者ネットワーク形成と人材育成 ( 平成 26 年度 NPO 等の運営力強化を通じた復興支援事業 ) 1 団体の概要 平成 20 年 4 月に高齢者の自殺予防を目的に設立した傾聴ボランティア団体 東日本大震災以降 従来の活動と併行して 被災者に対する傾聴活動を開始し 活動を拡大してきた 平成 25 年 10 月 に NPO 法人化し 仙台市から認証を受けている 平成 24 年度の組織改編で支部制を導入し 仙台 市 (3 支部 ) 名取市 岩沼市の5 支部組織で傾聴活動を実施している 活動開始年度 平成 20 年 NPO 法人設立年度 平成 25 年 主な活動分野 保険 医療 福祉 / 地域安全 / 男女共同参画社会 所在地 宮城県仙台市宮城野区榴ヶ岡 5 番地みやぎ NPO プラザ内 電話 090-6253 5640 FAX 022-343-9705 E-mail moriyam-e@tulip.sannet.ne.jp URL sendaikeicho.web.fc2.com 代表者 森山英子 会員数 230 名 スタッフ数 非常勤 ( 無給 )6 名 事業規模 約 1,250 万円 ( 平成 26 年度 ) 2 活動内容設立以降 高齢者等を中心にした高齢者福祉施設 独居高齢者等での傾聴活動を行ってきた 傾聴とは 相手の話をありのままに受け止めて 聴く こと 相手の話を否定せず 自分の意見を押し付けたり 自分の価値観で判断せずに 相手を尊重し 言葉の奥にある悩みや 不安 寂しさなど 相手の心に寄り添い 話を聞くことである 高齢者の傾聴活動は 高齢者の孤独や不安に向き合い寄り添うことで 高齢者の自殺防止にも貢献している 東日本大震災以降 宮城県医師会の要請を受けて各避難所での傾聴活動を開始した その後仙台市社会福祉協議会や名取市社会福祉協議会 行政などからの要請に基づき仮設住宅集会所や仮設住宅個人宅での傾聴活動 個別相談を受ける電話相談 被災者の悩みや不安に専門家が個別相談を行う 傾聴サロン 等を実施している 県内各地の市町村 社会福祉協議会の要請に基づいて被災者への傾聴活動を行っていくためには 傾聴に関わる地域の支援人材を育成し 支援のすそ野を拡大する必要がある そのため 傾聴ボランティア養成講座を行い 各地域でのボランティア活動の充実に寄与できる人材を育成している また 新規会員向けの傾聴ボランティア養成講座や会員のスキルアップのための実践的な講座を実施し 会員活動の充実 新規会員の参画による活動の持続性の保持に努めている また 一般市民や支援者にこれらの活動を知ってもらい 傾聴活動の普及啓発を図るため 公開講座 会報作成 WEB 広報を実施している 63
更に 県内各地に誕生した傾聴ボランティア団体の活動がより活発になるようネットワーク形成 に向けて 当団体が中心となってとりまとめを行っている 3 活動の特徴 (1) 活動の中で見られた工夫や活動が上手く進んだポイント 電話相談 傾聴茶話会 傾聴サロンまで 被災者のニーズに応じた対応が可能な仕組みの構築仮設住宅居住者やみなし仮設居住者を対象とした傾聴においては 仮設住宅集会所に集って参加者全員で話をしたり個別に悩みを聞く 傾聴茶話会 研修を積んだカウンセラーが個別に話を聴く 傾聴サロン など 気軽に相談できる 電話相談 から段階的なサービスの提供により 被災者が求める多様なニーズに対応することのできる仕組みを構築している 傾聴茶話会 戸別訪問の募集パンフレット ボランティアのレベルに応じた人材育成を展開県内各地の行政から被災者に対する傾聴支援を実施してほしいとの要請を受け 各地域で傾聴ボランティア養成講座を開催 ( 平成 26 年度は仙台市 2 回 高砂 七ヶ浜町 2 回 山元町 白石市 登米市 富谷町の7 箇所で開催 ) し 会員となる傾聴ボランティアを育成した また 会員のスキルアップを図るためのリーダー研修やフォローアップ研修等を行うスキルアップ講座を開催し ボランティアのレベルに応じた人材育成を展開している 傾聴ボランティア養成講座の様子更に これらの活動を知ってもらうため 広く市民を対象とした公開講座の開催等により普及啓発に努めており 公開講座を受講し関心を持った方が養成講座を受講し 会員となり活動を行うという一連の流れが構築されている このことにより ボランティアに参加する側にとっても実際の活動を見据えた実践的な内容が提供される仕組みとなっている 支部ごとの運営による組織マネジメントを実施活動の範囲が広がるにつれ本部の負担が多くなってきたことから 各地域で活動を行う支部制を平成 24 年度から導入し 支部ごとでの運営を行っている 各支部の支部長 役員によりそれぞれの活動をとりまとめるとともに 各支部が扱う施設や仮設ごとにリーダー サブリーダーを配置し 新入会員の面倒をみる仕組みとしている また 各施設 仮設での活動後にふりかえりを行いその内容を活動報告書としてとりまとめ 毎月の支部会で報告することにより 支部内での情報共有 スキルアップを図っている 加えて 前述した講座の企画については 各支部より選出した1~2 名を研修部として組織し スキルアップ講座やリーダー育成講座 外部からの依頼に対する講座等についての企画 対応を担うなど 支部 本部での連携したマネジメントが実施されている これらの連携を円滑に行うため 4 半期毎に全体会を開催している 64
実施前(~平成25 年度)実施中(平成26 年度)(2) 成長プロセスにおける特徴 事業実施前 事業実施中 平成 20 年 4 月 ~ 平成 23 年 3 月 平成 23 年度 ~ 平成 25 年度 平成 26 年度 仙台傾聴の会を立ち上げ 自殺予防を目的に 高齢者施設に出向き 傾聴活動を行う 東日本大震災後 宮城県医師会や社会福祉協議会などの要請を受け 3 月 23 日より避難所に入り 被災者に対する傾聴活動を開始 高齢者と被災者に対する傾聴活動を併行して継続 人材育成のため 傾聴ボランティア講座 フォローアップ講座等を開始 傾聴活動 人材育成 支部ごとの運営を継続して展開 県内の傾聴ボランティア団体のネットワーク形成に取り組む 支部ごとの運営を開始 (3) 事業実施の各段階における関係主体との関連関係主体との関連 宮城県医師会 仙台市社会福祉協議会 名取市社会福祉協議会 宮城県医師会 仙台市 社会福祉協議会 名取市 社会福祉協議会 ネットワーク化 要請 協力 要請 協力 県内市町村 社会福祉協議会 特定非営利活動法人仙台傾聴の会 傾聴ボランティア講座の実施 参加 特定非営利活動法人 仙台傾聴の会 傾聴ボランティア講座の実施 県内市町村 社会福祉協議会 県内の傾聴ボラ ンティア団体 参加 公開講座のアドバイザー ボランティアとして参加 地元住民 公開講座のアドバイザー ボランティアとして参加 地元住民 講座開催後 各地域でボランティア団体設立 東北大学東北福祉大学東北工業大学尚絅学院大学 東北大学東北福祉大学東北工業大学尚絅学院大学 65
4 活動の成果 傾聴による変化を実感ある男性は 被災後賃貸住宅で独居生活を送る中 まったく話すことがなく 言葉を忘れてしまいそうな状態であったが 何度かの傾聴の機会を経て家族のことなどを話すようになり だんだんと映画や料理教室など出かける機会が多くなったそうである また 傾聴茶話会に参加した女性は 傾聴を受けて妹のためにセーターを編む気になったと話し 実際に編んだセーターを茶話会に持ってきてくれたそうである このような被災者の経過から 傾聴により心境に変化があることを実感している < 受益者の声 > ( 冊子 聴き書き 震災から 3 年 及び あなたの心によりそう ( 仙台傾聴の会作成より抜粋 ) 66
< 取組に係る報道 > ボランティア養成講座開催後に県内各地で設立された傾聴ボランティア団体をネットワーク化県内各地で実施してきたボランティア養成講座の参加者が 各地域でボランティア団体を設立し 活動を行っている ( 全 9 団体 ) 今年度の事業では 仙台傾聴の会が中心となりその団体のネットワーク化に取り組み 団体を紹介するパンフレットの作成と 傾聴を望む方へのネットワーク内での紹介 公開講座開催の案内などを行うに至っている < 事業を通じて得た定量的な成果 > 事業を通じた成果個別相談実施件数電話相談実施件数ボランティア養成講座人数茶話会ボランティア人数傾聴活動支援者 平成 23 年度平成 24 年度平成 25 年度 平成 26 年度 (12 月末時点 ) 累計 49 件 57 件 56 件 70 件 232 件 180 件 190 件 206 件 263 件 839 件 115 人育成 120 人育成 151 人育成 179 人育成 565 人育成 552 人 645 人 732 人 666 人 2,595 人 - - - - 述べ15,000 人以上 ( 平成 25 年度実績 ) 67
5 活動の継続に向けた課題と今後の展望 (1) 活動の継続に向けた課題 安定した活動に向けた行政との協働傾聴というサービスの性質上 受益者に費用負担を強いるものではないことから 行政からの補助金 助成金を主な収入としている 多様なニーズを抱える被災者等へのより積極的なサービスの提供も含め 安定した活動の継続に向けて 行政からの要請にとどまらず 行政との協働による事業の実施が必要と考えている 収入の拡大傾聴講座等の受講費及び傾聴活動を含めた交通費がボランティアの自己負担となっており 寄附を含めた収入の拡大を図る必要がある マネジメント人材の育成傾聴ボランティア希望者はいるが 会のマネジメントに参加してくれるボランティアが不足しており 今後もニーズに応じた活動を行っていくためには マネジメント人材の育成が必要である (2) 今後の展望 継続した活動に向けた独自事業の展開と認定 NPO の取得今年度事業で行った認知症をテーマとしたスキルアップ講座で講師の協力を得た東北福祉大学認知介護研究症 研修センターとの協力により 認知症カフェへの傾聴ボランティア派遣を検討するなど 独自事業の新たな展開を図る また 認定 NPO の取得に向けて 必要な要件を満たすよう準備を進めていく 68