小 1 生活科なつのあそび H26 授業のエキスパート養成事業 本単元で重点を置く指導事項 身近にある自然や物を利用しながら遊びをつくり出す中で 自然の面白さや不思議さに気付き 楽しく遊ぶ < 内容 (6)> 評価の工夫 学習過程の様々な場面における児童の姿を 様々な評価方法で見取り 指導に生かす 単元のねらい 夏の自然や土や水などを利用して 楽しく遊ぼうとする 関心 意欲 態度 夏の自然や土や水などの特徴を考え 遊びに取り入れる 思考 表現 夏の自然や土や水などの特徴を生かして工夫すれば 遊びに利用できることに気付く 気付き - 単元の学習活動 - 第 1 次 第 2 次 様々な遊びをしよう 季節の変化を感じながら 夏ならではの様々な遊びをする 工夫して遊ぼう もっとしたいと思った遊びを 工夫しながら繰り返し楽しむ 指導のポイント 1 主体的な活動を促す指導の工夫 児童の主体的な思いを引き出す様々な活動を効果的に取り入れた ( 参考 1) 児童の思いに応じた遊びの場の構成をした ( 参考 2) 2 気付きを促し 質を高めるための指導の工夫 その日の天気に応じた活動を促した ( 参考 3) 物的環境を精選し 用具を提示するタイミングを工夫した ( 参考 4) 情報交換の場や繰り返し試すことのできる場を設定した ( 参考 5) 参考 1 主体的な思いを引き出す活動の設定 < 言葉で思いを表現する活動 > 大枠のみを決める 用具や場所などは活動の様子に合わせて その場で話し合う めあてを提示して 話合いの内容を明確化 話し合いは 15 分以内 終わりの時間を提示 短く 分かりやすい言葉 いろいろな遊びを試して 最後は全部合わせてやりたいという意見 単元導入時の話合いの板書
< 絵や文字で思いを表現する活動の場の設定 > 次はどんな遊びがしたいかを表現する 絵が得意な児童は絵を中心に表現 第 5 時の後にかいたワークシート 書くことが得意な児童は 文字で表現 単元に入る前に どんな遊びがしたいかを学級全体で話し合った 自由に発言し合いながら 児童の思いと教師の願いをすり合わせながら活動の大枠を決めた 話合いを活動の直前に行ったため 児童は興味をもった遊びにすぐに取り掛かることができた また 積極的に発言することができにくい児童のために 文字や絵などを用いて 自由に表現する活動も取り入れた 十分遊ばせた後に 次にやりたいことを表現させることで 児童の個々の思いを引き出すことができ 思いの実現に向けた積極的な活動につながった 参考 2 児童の思いに応じた場の構成 周辺にあるものを利用する いすも作りたいなあ 何か使える物はないかなあ この思いに応じるために 色水コーナーを作ることを提案 これをテーブルにしようよ 色水コーナー ( ジュース屋 ) が完成する 色水遊びを始めてから数時間が過ぎ ビニール袋に花弁を入れてもむという個の遊びが充実してきており 色水遊びに対する様々な思いが膨らんできていた こうした時期に 友達同士で情報交換をしながら活動を広げてほしいと願い 色水コーナーを設置することを提案した どんなコーナーにしたいか相談に乗りながら 周辺にさり気なく用意しておいたものを利用して 自分たちの手でコーナーを作らせた 児童は自分が表現したことが 実現していく喜びを感じ その後 主体的な活動が展開されていった 参考 3 天気に応じた活動の展開 < 雨の日ならではの遊び> 溝を掘って もっと遠くまで流そう 前日から設置のたらい ( 雨水でいっぱいになっている ) 運動場にできた雨の川に草舟を流そう 深く掘ると 水がうまく流れるよ
< 雨のため場所を変えて行った遊び > 雨でも さら粉を集めておいたから泥だんごを磨けるよ 雨に濡れて くしゃっとなっているアサガオは 濃い色が出るよ 雨の日に 天候を生かした活動を展開した これまでの草舟遊びは 草舟をたらいや池の中に浮かべる遊びが中心であったが 雨によって運動場にできた雨水の川に草舟を流す活動を促した これまで 他の遊びに夢中だった児童も 初めて草舟を作ることに挑戦したり 流したりする遊びに意欲的に取り組んだ その結果 雨の日ならではの経験や気付きを促すことができた 参考 4 物的環境の精選や用具を用意するタイミングの工夫 第 1 時 高い山を作ろう 第 2 時 砂の感触が気持ちいいな 第 5 時 ダムも作ろうよ 砂遊びの流れ スコップを手にすると 一斉に山を作り始めた 自分の好きな場所で始める 高い山ができると 一斉にトンネルを掘り始めた 一人一人が思いのままに掘っている 提示したスコップ ( 大 ) バケツ カップ ペットボトル等を使い始める < 単元の導入時に用意した用具 > ビニール袋 スコップ ( 一人に一つずつ ) マヨネーズやケチャップの容器 ( 一人に一つずつ ) たらい ( 水鉄砲用 ) < 単元の途中で追加した用具 > スコップ 花びらをすり潰す物 茶こし ペットボトル 空き缶 カップ トレイ たらい ( 砂遊び用 ) < 単元の終わりごろ追加した用具 > 竹のとい 水を持ち込んでダイナミックに遊びを展開する 竹のといに水を流している様子 活動の終盤は みんなで知恵を出し合いながら遊べる用具を提示
段階を追ってそれぞれの遊びが発展するように その時々の遊びに必要な用具のみを用意した 砂遊びを例に挙げると 活動の始めからバケツや水 カップなどの用具を用意すると 砂遊びの経験の豊富な児童に引っ張られ あっという間に写真の 第 5 時 の遊びに変わってしまう そこで 砂を掘る 砂を高く積む 穴を掘るといった経験を保障するために 活動の始めは 一人に一つずつのスコップのみを用意した そして 児童の活動の変わり目を捉えて 他の用具を追加していった そうすることで これまであまり砂遊びの経験のなかった児童にも 砂の感触を十分味わわせたり その場面でしかできない気付きを促したりすることができた 参考 5 砂山に水をかけて固めると トンネルが崩れないよ 情報交換の場や繰り返し試すことのできる場の設定 ぼくもやってみたいなあ 様々な方法で情報交換する 濃い色を出すには 花をすり潰すんだよ そうだったのか すり潰したアサガオに水を加えると濃さが調節できるよ こんなふうに遊びたいなあ 色水コーナーを常設する 1 単位時間の活動が終わった後で 楽しかったことや次にどんな活動がしたいかなどを発表する情報交換の場を設定した 他の友達がしていることに目を向ける機会になるとともに 意図的に指名をすることで 自覚していない気付きを自覚させる場にもなった 絵が得意な児童は 絵を描いて自分がしたいことを紹介した また 教室に近い場所に繰り返し試すことのできる場を設置することで 10 分間の休み時間にも遊ぶことが可能になった 児童は友達と関わりながら繰り返し遊び どんどん遊び方を工夫していくことができた 評価について なつのあそび ( 全 12 時間 ) 身近な環境や自分についての気付き < 児童 A の見取りと評価 > 活動の様子と見取 第 1~ 3 時 第 4~ 5 時 は 教師の指導を表している 泥団子作り 砂を利用してのケーキ作り ささ舟を池に浮かべての遊びなど 友達といっしょに自分のやりたい遊びを積極的にしていた ビニール袋に水と花弁を入れ 手でもみながら色を出していた 初めは 数人の友達といっしょに行っていたが 友達が他の遊びに移っても ずっと一人でビニール袋をもみ続けていた ぽつんと一人でいたので どうしたの と教師が声を掛けたところ 色が薄い と返してきた 様子を見ると ビニール袋に水を半分以上入れており また 花弁も少なかった 本当だね どうしたらきれいな色が出るかな と児童 A に言葉を掛けた 第 6 時 色水遊びをしている児童が同じ場所で活動できるように 色水コーナーを作ることを提案した 友達といっしょに活動する中で 校庭の様々な場所に花があることを知り 校庭で探した様々な花で 色水遊びを楽しんだ 高い所に咲いている花の中では アサガオは色が出にくいということを 友達と話していた
り 指導 第 7 時 アサガオが咲き始めたので アサガオの花での色水遊びを楽しんでいた 休み時間が終わった後 数人の児童が 作った色水をペットボトルに移して教室まで持ってきた みんなの前で色や濃さが違うと紹介したところ 水や花の量を調整したり花弁をすり潰したりすることによって色水の濃さが違ってくると話してくれた 第 8 時 雨のため 草船を作り 運動場の雨水の川に流して遊んでいた 途中から マヨネーズの容器を使った水鉄砲で 空き缶を倒す遊びを繰り返し楽しんだ 第 9~ 10 時 第 11 ~ 12 時 評価 靴箱の横にいつでも活動できるように色水コーナーを設置し 花弁をすり潰すことのできる用具を用意した 様々な色のアサガオを取ってきては すり潰すことを繰り返した 初めは すり潰した花弁をビニール袋の水の中に入れて色水を作っていたが 繰り返していくうちに 水を少し含ませた花弁をすり潰し それに水を加えることで色の濃さを変えて遊ぶようになっていた 友達といっしょに同系色で濃さが違う色水をペットボトルに入れて並べていた ジュースをください とカップを持って話し掛けると どうぞ と言って カップに色水を入れてくれた その後も数日間に渡って 休み時間に様々な色や濃さの色水を作る遊びを友達といっしょに楽しんだ 評価結果 : 十分満足できる 状況 (A) 判断理由 A 児は 様々な遊びを試した後で色水遊びにこだわり遊び続けた その過程で 友達の行動に流されたり 教師に促されたりすることなく自分のやりたいことを自分で決めて活動している様子が見られた 活動中に 色水が薄いということに気付き その後 繰り返し遊ぶ中で 濃い色水の作り方を発見するとともに 遊び自体もより楽しいものへと発展させた こうした理由から 評価規準に照らし合わせて 指導後の A 児は 十分満足である 状況 (A) であると判断した 授業改善に向けて 生活科における 気付き とは 児童が主体的な活動を展開しているときに 自分自身の内面から生まれるものであると考える しかし その見取りについては 活動ごとの具体的な子どもの姿を想起することができなかったため これまでは十分に行うことができていなかった 本単元の授業を通して 児童の 気付き を促し 適切に見取るためには 次の 3 点が重要であると考えた 単元の活動の流れを子どもの姿で捉え 明確な評価規準を作成しておく 児童を活動に没頭させるため 教師も共に活動する 活動を共にしながら 児童自身の気付きを促す指導を心掛ける この 3 点に留意した指導を行っていても 児童の活動は主体的に様々な場所で展開されているため 気付き の瞬間を見逃すこともある しかし 気付き は 言葉 絵 文字などを用いての振り返りや表現の場でも評価することができる そのため 気付き を適切に評価するためには 学習過程の様々な場面において 児童の行動 つぶやき 具体物などを多様な方法で見取り 記録しておく必要がある これまで評価が難しいとされてきた 気付き の観点であるが 今後も 気付き を促す指導を適切に行った上で 評価していきたい