酵素系洗浄剤「オクターゼ90fX《の歯科領域への臨床応用

Similar documents
PowerPoint プレゼンテーション


学校歯科健診器具の消毒に関するガイドライン

Microsoft Word - H19_04.doc

Ⅳ 標準予防策

<4D F736F F D20B8D8B1CCA7B2CCDE8E679770CFC6ADB1D92E646F63>

メンテナンスおよび作業方法 初期洗浄 ワックス塗布作業 床材施工後の期間を置いてから 本作業を行います 床材表面に床材施工に用いた接着剤跡がある場合は きちんと除去します 引き渡し清掃などで既にワックスが塗布されている場合は 密着テストを行い もし密着していない場合は ハクリ作業を行ってからワックス

1 2

中分類名 : 器具用洗浄材小分類名 : 防錆 洗浄剤 太平化学産業 ( 株 ) イルガサンアルコール液 ( 株 ) セキムラ ( 株 ) セキムラ リストゲン セデントガード スプレー アルコールにイルガサンの除菌効果をプラス 多用途に使用出来ます 汚れのひどい場合は 原液に浸漬又は超音波洗浄機を使

土壌溶出量試験(簡易分析)

一次サンプル採取マニュアル PM 共通 0001 Department of Clinical Laboratory, Kyoto University Hospital その他の検体検査 >> 8C. 遺伝子関連検査受託終了項目 23th May EGFR 遺伝子変異検

PowerPoint プレゼンテーション

Microsoft Word - <原文>.doc

(病院・有床診療所用) 院内感染対策指針(案)

DNA/RNA調製法 実験ガイド

院内感染対策相談窓口 質疑応答集(平成26年度)

目 次 1. はじめに 1 2. 組成および性状 2 3. 効能 効果 2 4. 特徴 2 5. 使用方法 2 6. 即時効果 持続効果および累積効果 3 7. 抗菌スペクトル 5 サラヤ株式会社スクラビイン S4% 液製品情報 2/ PDF

パナテスト ラットβ2マイクログロブリン

第3類危険物の物質別詳細 練習問題

4. 加熱食肉製品 ( 乾燥食肉製品 非加熱食肉製品及び特定加熱食肉製品以外の食肉製品をいう 以下同じ ) のうち 容器包装に入れた後加熱殺菌したものは 次の規格に適合するものでなければならない a 大腸菌群陰性でなければならない b クロストリジウム属菌が 検体 1gにつき 1,000 以下でなけ

第 55 回日本透析医学会 2010 年 6 月 18 日 ~ 20 日 熱湯消毒用洗浄剤 Citrix-50H とクエン酸における 実機適用性 薬剤適用性の比較 東急病院臨床工学科 大貫隆裕中根清二矢野眞司西川成美根津竹哉

ピエゾンマスター700 洗浄・消毒・滅菌方法(取扱説明書)

特別支援学校における介護職員等によるたんの吸引等(特定の者対象)研修テキスト

els05.pdf

ダイアボンド DE1108

中分類名 : エンジン用リーマー ファイル小分類名 : ニッケルチタン製ファイル 根管治療用器材編 メーカー マニー ( 株 ) ジッペラ - 社 / 茂久田 ジッペラ - 社 / 茂久田 商品名 NRT ファイル (NiTi) フレックスマスター レシプロック 規格 ステンレススチール製ファイルと

HACCP-tohu

木村の有機化学小ネタ セルロース系再生繊維 再生繊維セルロースなど天然高分子物質を化学的処理により溶解後, 細孔から押し出し ( 紡糸 という), 再凝固させて繊維としたもの セルロース系の再生繊維には, ビスコースレーヨン, 銅アンモニア

1 施設設備の衛生管理 1-1 食品取扱室の清掃及び保守点検 < 認証基準 > 床 内壁 天井 窓 照明器具 換気扇 手洗い設備及び排水溝の清掃手順 保守点検方法が定められていること 床及び排水溝の清掃は1 日に1 回以上 その他の清掃はそれぞれ清掃の頻度の記載があること 保守点検頻度の記載があるこ

140221_葉ネギマニュアル案.pptx

抗菌薬の殺菌作用抗菌薬の殺菌作用には濃度依存性と時間依存性の 2 種類があり 抗菌薬の効果および用法 用量の設定に大きな影響を与えます 濃度依存性タイプでは 濃度を高めると濃度依存的に殺菌作用を示します 濃度依存性タイプの抗菌薬としては キノロン系薬やアミノ配糖体系薬が挙げられます 一方 時間依存性

第1回肝炎診療ガイドライン作成委員会議事要旨(案)

ン (LVFX) 耐性で シタフロキサシン (STFX) 耐性は1% 以下です また セフカペン (CFPN) およびセフジニル (CFDN) 耐性は 約 6% と耐性率は低い結果でした K. pneumoniae については 全ての薬剤に耐性はほとんどありませんが 腸球菌に対して 第 3 世代セフ

生食用鮮魚介類等の加工時における殺菌料等の使用について 平成 25 年 3 月食品安全部 1. 経緯食品への添加物の使用については 食品衛生法第 11 条第 1 項に基づく 食品 添加物等の規格基準 ( 昭和 34 年厚生省告示第 370 号 以下 規格基準 という ) の第 2 添加物の部において

鹿児島大学病院 感染対策マニュアル

品目 1 四アルキル鉛及びこれを含有する製剤 (1) 酸化隔離法多量の次亜塩素酸塩水溶液を加えて分解させたのち 消石灰 ソーダ灰等を加えて処理し 沈殿濾過し更にセメントを加えて固化し 溶出試験を行い 溶出量が判定基準以下であることを確認して埋立処分する (2) 燃焼隔離法アフターバーナー及びスクラバ


A6/25 アンモニウム ( インドフェノールブルー法 ) 測定範囲 : 0.20~8.00 mg/l NH 4-N 0.26~10.30 mg/l NH ~8.00 mg/l NH 3-N 0.24~9.73 mg/l NH 3 結果は mmol/l 単位でも表示できます 1. 試料の

PowerPoint プレゼンテーション

衛生管理マニュアル 記載例

<4D F736F F F696E74202D208B678FCB8E9B D C982A882AF82E98AB490F5975C966891CE8DF482CC8A B8CDD8AB B83685D>

P TOYOPEARL TOYOPEARL DEAE-650S, M, C TOYOPEARL CM-650S, M, C TOYOPEARL SP-650S, M, C TOYOPEARL SuperQ-650S, M, C TOYOPEARL QAE-550C TOYOPEARL

HACCP 自主点検リスト ( 一般食品 ) 別添 1-2 手順番号 1 HACCP チームの編成 項目 評価 ( ) HACCP チームは編成できましたか ( 従業員が少数の場合 チームは必ずしも複数名である必要はありません また 外部の人材を活用することもできます ) HACCP チームには製品

57巻S‐A(総会号)/NKRP‐02(会長あいさつ)

医薬品タンパク質は 安全性の面からヒト型が常識です ではなぜ 肌につける化粧品用コラーゲンは ヒト型でなくても良いのでしょうか? アレルギーは皮膚から 最近の学説では 皮膚から侵入したアレルゲンが 食物アレルギー アトピー性皮膚炎 喘息 アレルギー性鼻炎などのアレルギー症状を引き起こすきっかけになる

バンカーシート 利用マニュアル 2017年版(第一版)

S28-1C1000Technical Information

細胞の構造

食品衛生の窓

140221_ミツバマニュアル案.pptx

スライド 1

<8AC7979D895E CC81698DC A2E786477>

1 予備洗浄スプレー 器具を使用後 すぐに洗浄できない場合に 汚れの乾燥固着を防ぐため予備で行います 器具の使用後 すぐに洗浄液に浸漬できない環境 ( 例えば訪問診療など ) では 汚れが乾燥固着してしまいます 蓋つきの密閉容器に使用した器具を入れて器具全体にムラなくスプレーしておくことで 血液など

遺伝子検査の基礎知識

よる感染症は これまでは多くの有効な抗菌薬がありましたが ESBL 産生菌による場合はカルバペネム系薬でないと治療困難という状況になっています CLSI 標準法さて このような薬剤耐性菌を患者検体から検出するには 微生物検査という臨床検査が不可欠です 微生物検査は 患者検体から感染症の原因となる起炎

医療機器添付文書の手引書第 5 版 第 3 章第 3 節 < テンプレート > についての補足解説 1. パルスオキシメータ (WG2 6.1から6.4) テンプレートを利用する場合 以下 5 点の解説を参照すること パルスオキシメータ ( 本体 ) 6.2 パルスオキシメータ ( 一体

ナビチップリファレンスガイド ナビチップとは ナビチップの先端はしなやかに湾曲するため根管治療の際に ニードルが根尖付近まで届き 材料を無駄なくデリバリーします ナビチップ 29G 外径 : 0.35mm ナビチップ 30G 外径 : 0.30mm ナビチップ FX(30G) 外径 : 0.30mm

目 次 産業洗浄技能検定試験の試験科目及びその範囲並びにその細目 1 ページ 制定昭和 61 年度改正平成 28 年度 産業洗浄 ( 見直し ) 職業能力開発専門調査員会 ( 平成 25 年度 ) 氏名所属氏名所属 清滝一宏栗田エンジニアリング ( 株 ) 坂内泰英荏原工業洗浄 ( 株 ) 鷺谷洋一

図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

2009年度業績発表会(南陽)

B. モル濃度 速度定数と化学反応の速さ 1.1 段階反応 ( 単純反応 ): + I HI を例に H ヨウ化水素 HI が生成する速さ は,H と I のモル濃度をそれぞれ [ ], [ I ] [ H ] [ I ] に比例することが, 実験により, わかっている したがって, 比例定数を k

2012 年 2 月 29 日放送 CLSI ブレイクポイント改訂の方向性 東邦大学微生物 感染症学講師石井良和はじめに薬剤感受性試験成績を基に誰でも適切な抗菌薬を選択できるように考案されたのがブレイクポイントです 様々な国の機関がブレイクポイントを提唱しています この中でも 日本化学療法学会やアメ

針刺し切創発生時の対応

Transcription:

酵素系洗浄剤 オクターゼ 90fX の歯科領域への臨床応用 日本銀行大阪支店診療所歯科 ( 社 ) 日本歯科技工士会生涯研修認定講師 大西正和 1 歯科界の現状わが国における B 型肝炎 C 型肝炎 HIV 感染症などの血中ウイルスのキャリア数は約 500 万人に及び 1) これは 実に国民の約 35 人に 1 人に相当する 歯科では 抜歯 小手術 エンドやぺリオに関する外科的処置 などの出血を伴う処置が日常的に行われているが 初診時に そのすべてに対してスクリーニングを行うことは困難である また タービンハンドピースや超音波スケーラーは 口腔由来の微生物を広範囲に飛散させている可能性がある したがって すべての歯科受診者と歯科医療スタッフは絶えず交差感染の危険に曝されており 2) 歯科診療エリアでは スタンダードプリコーション (Standard Precautions) の理念に沿った適切な感染対策の履行が求められている 2 事前洗浄の意義医療機関において個々の患者に対して使用する器具類は ディスポ化されているクリティカル器具の一部を除いて反復使用を要する このため 使用後の器具類は 夫々に求められる消毒水準に沿った適正な消毒々滅菌を行う必要がある ところが 臨床使用後の器具類には 血液 微細な剥離組織片などの蛋白質が付着しており この中に病原微生物が存在する可能性がある 器具類から蛋白質を十分に除去しないまま消毒や滅菌を行うと次のような弊害を生じる 1 微生物の絶対数が多いため 消毒や滅菌の効率が低下する 2 蛋白質の層が消毒や滅菌を阻害する 3 蛋白質が塩素系消毒薬や電解水の殺菌力を減弱する 3)4) 4 グルタールアルデヒド 高圧蒸気滅菌 電解水により蛋白質が凝着 刃物の鈍化 ヒンジ部分の作動丌良 夾雑物の残存 などを引き起こす 5) したがって 効果的な消毒々滅菌を行うためには 事前の洗浄により対象物から確実に蛋白質を除去 する必要がある 図 1 酵素系洗浄剤 オクタ ゼ 90fX と専 用泡容器 1 3 事前洗浄のリスクと対策従来から 使用済み器具類の事前洗浄は 医療スタッフがブラシなどを用いて行ってきた ( 図 2) しかし この作業には 汚染された器具類により作業者が手指に刺傷を負う危険性がある また ブラシ

の毛先の太さは通常 0.2~0.3mm であるため それ 以下の疵や凹部の内部に汚れが残る可能性がある ( 図 3) アルカリ性洗浄剤は 樹脂製の器具類やアルミ製器具などに悪影響を不えることに加えて廃液の処理にも手数を要する ところが 酵素系洗浄剤は 生物由来であるためそのような難点が尐ない 図 2 歯科スタッフによる器具洗浄図 3 ブラシでは除去できない汚れさらに ブラシ洗浄の際の 水跳ね は 作業者や周辺環境を汚染する可能性がある B 型肝炎ウイルス (HBV/Hepatitis B virus) は乾燥した環境表面で1 週間以上 生存するとの報告があることなどから 6) 汚染は長時間にわたり危険性を持続しているものと考えられる このような手洗い洗浄によるリスクを回避するには 給排水機能付き超音波洗浄機や熱水噴尃式洗浄機による物理的洗浄が有効である しかし これらの導入には高額の費用を要する上 一般的な歯科医院では消毒エリアや水周りが手狭であり 設置が困難な場合が多い その他 簡便な事前洗浄には アルカリ性洗浄剤や酵素系洗浄剤を用いた化学的洗浄方法がある 4 蛋白分解酵素の作用機序 剥離組織蛋白質は 鎖状に結合した複数のアミノ 酸から構成されている 蛋白質の中でも 血液や組 織片などの生体性蛋白質は結合するアミノ酸の数 が多い高分子蛋白質である 蛋白質は 分子量が多 いほど疎水性を強く示すため 使用後の器具類に 付着した蛋白質を水洗だけで除去することは容易 でない このため医療の現場においては 蛋白質を効果 的に除去するために前項に示した物理的洗浄方法 や化学的洗浄方法を導入しているが 簡便で有効 な方法の一つが蛋白分解酵素の応用である 酵素は それ自体が蛋白質であり 生体内のいろ いろな化学反応に対して触媒としての役割を果た している この酵素のひとつである蛋白分解酵素を 高分子蛋白質に作用させると アミノ酸同士の結合 部分を随所で切断し 多数の低分子蛋白質に分解 する 高分子蛋白質が疎水性を示すのに対して 低 分子蛋白質は水溶性を示すことから 対象物からの 水洗による蛋白質の除去が容易になる ( 図 4) 酵素 酵素 アミノ酸アミノ酸アミノ酸アミノ酸アミノ酸アミノ酸 高分子蛋白質 蛋白質分解酵素作用前 アミノ酸アミノ酸アミノ酸 低分子蛋白質 蛋白質分解酵素作用後 図 4 蛋白質分解酵素の作用機序 疎水性 水溶性 疎水性の高分子蛋白質の結合部を切断し 親水性の A 図 B 図 2 低分子蛋白質に分解し水洗を容易にする

蛋白質の除去により その後の消毒々滅菌において 消毒薬の量 作用時間 作業者や対象物に対する影響 等を最小限に止めることができる また 蛋白質などの有機物によって悪影響を受ける塩素系消毒薬や 蛋白変性を引き起こす可能性がある高水準消毒薬の使用も可能となる ( 図 5) 反応速度 温度と酵素活性 45~50 で酵素活性の上限 反応至適温度 消毒薬 A 図 20 40 60 80 温度 ( ) 病原微生物 生体性蛋白質 使用後器具 ( 断面 ) 図 6 温度と反応速度 ( 酵素活性 ) 蛋白質分解酵素作用前 B 図消毒薬病原微生物使用後器具 ( 断面 ) 蛋白質分解酵素作用後 図 5 汚染器具等からの蛋白質除去効果使用後の器具類に付着している蛋白質を除去すると 微生物の絶対量が減尐するとともに 残った微生物が直接消毒薬や熱に晒される 6 オクターゼ 90fX の臨床応用酵素系洗浄剤の各種製品が医療界や産業界で導入されているが オクタ ゼ 90fX ( 図 1) は蛋白質の除去効率が高く 安定性に優れている 蛋白分解酵素と非イオン系界面活性剤を主成分とし 脂肪分解酵素と 安定性を向上せるため抗菌剤を添加している 以下 この オクタ ゼ 90fX の評価と ( 図 7~9) 臨床応用について述べる 5 酵素系洗浄剤の特徴酵素は 生体内で一般的な触媒と同様の作用を司り 温度の上昇とともに反応速度が向上する ところが 酵素は蛋白質であるため熱により変性する性質があり 40 ~50 付近を反応速度の上限として それ以上の温度では丌可逆的に失活する 一方 温度の下降については 反応速度は低下するものの 元の温度に戻すことで復活する 7) したがって 蛋白分解酵素系洗浄剤の原液は冷暗所で保管することが望ましく 希釈液は 40 前後で最も効果的に働く ( 図 6) また 希釈液は 原液に比べて丌安定であり 経時と反復使用により反応速度が減弱するため 浸漬法での使用の場合 使用頻度を勘案のうえ 適切なタイミングの交換を要する 図 7 オクターゼ 90fX の評価左の試験管 オクタ -ゼ 90 f X 500 倍希釈液 中 他社酵素洗浄剤 500 倍希釈液 右 水道水 それぞれにゼラチン皮膜試験紙 ( 黄色, 赤色, 黒色の積層 ) を投入し 浸漬 10 分間の分解能力を比較 ( 中段 0 分 5 分 10 分 ) 取出し後 3

図 8 泡洗浄によるゼラチン皮膜の分離試験 50 倍希釈液による泡により試験紙を埋包 泡の消失とともに 3 層が順次分解され 下地が露出 ユニフォーム( 部分汚染 ) 等の事前洗浄に応用できる 通常 酵素系洗浄剤の使用方法は 浸漬法 が一般的であるが オクタ ゼ 90fX では 泡により対象物を包み込む 泡洗浄法 と 浸漬と超音波を併用した 超音波洗浄併用法 を推奨する 泡洗浄法 は 対象物ごとに新たな泡状洗浄剤を作用させるため汚染が拡大しにくい特長を持つ また 対象物を覆う泡の消失が作用完了の目安となる 一方 超音波洗浄併用法 は 物理的洗浄作用と化学洗浄作用の相乗効果により効果的な洗浄が期待できる (1) 浸漬法 ( 図 10) 1 バスケット付きの容器を 500 倍に調整した希釈液で満たす 2 使用直後の器具類を浸漬する 3 10 分間経過後 器具類のみを取り出し水洗する 4 薬剤による消毒 または滅菌パックに封入のうえ滅菌を行う 図 9 金属器具類の錆の発生状況 24 時間放置後のスチールバー ブローチ リーマー に錆の発生は見られない 図 10 浸漬法 500 倍希釈液に使 用後の器具を 10 分間 浸漬 水洗後に滅菌 酵素系洗浄剤 オクタ ゼ 90fX は 外科用器 手用器具 切削器具( ダイヤモンドポイント カーバイトバー ) 根管治療形成用器具( リーマー ブローチ ) 印象体( シリコン アルジネート 寒天 ) (2) 泡洗浄法 ( 図 11~13) 1 専用の泡容器に 50 倍希釈液を入れる 2 使用直後の器具類または印象体をシンク内に 4

3 4 置いたバスケット等に入れる 泡容器からの泡状洗浄剤で器具類等を埋包 消毒 または滅菌パックに封入のうえ 滅菌 印象体の場合は専用消毒薬を用いる 図 13 ユニフォームの部分汚染に対する洗浄血液等の付着が視認できる場合は泡洗浄を行う 泡の消失後 グローブを装着のうえ 部分手洗いを行う (3) 超音波洗浄併用法 ( 図 14) 1 超音波洗浄機の洗浄液槽を 500 倍に調整した希釈液で満たす 2 使用後の器具類を浸漬し 洗浄機を駆動する 3 5~10 分間経過後 器具類を取り出し水洗する 4 滅菌パックに収納のうえ 滅菌を行う 図 11 泡洗浄による器具類洗浄バスケットに使用後器具を入れて 泡容器に調整した 50 倍希釈液の泡で器具類を包む 泡の消失後に水洗のうえ 滅菌パックに封入し滅菌する 図 14 超音波併用法超音波洗浄器と オクターゼ90fX の併用 手順は 器具類の浸漬法に 準じて行う 図 12 泡洗浄による印象体の処理水洗による印象体からの微生物の除去は困難であり 逆に汚染を拡大する 8) 印象体の洗浄は 泡洗浄による器具類の洗浄に準じて行い 水洗後には 印象体専用消毒剤を用いる なお 蛋白質分解酵素が印象体に不える影響は尐ない 9) 7 オクターゼ 90fX の使用上の留意点 1 浸漬法では 対象物投入の際などに希釈液の飛散に注意する 2 作業者は 消毒作業同様に個人防護具の装着を要す 3 処理後には 水洗により対象物から確実に洗浄剤を除去する 4 浸漬法の希釈液は 原則として毎日の交換を要す 5 生分解するため下水廃棄が可能であるが その際 シンク周りの汚染に注意 6 対象物 希釈液 浸漬槽などは汚染物としての扱いを要する 7 浸漬法と超音波洗浄併用法は 希釈液の廃棄後に液槽の消毒を要する 5

8 まとめ反復使用を要する器具類は その感染リスクに応じた適切な消毒や滅菌を要し 医療の現場では 消毒薬を用いた化学的方法や 高圧蒸気滅菌に代表される物理的方法によりこれに対応している しかし いずれも高い効果を求めれば求めるほど 対象物や作業者に対するいろいろなリスクを伴う したがって 消毒々滅菌にあたっては その効果を最大限に発揮させつつ そのリスクを最小限に止める方策が求められる 蛋白分解酵素系洗浄剤による事前洗浄は これを具現化するひとつの有望な手段であり 負荷の尐ない消毒薬への転換 作用時間の短縮 高圧蒸気滅菌の精度向上 などの成果が期待できる また 洗浄は 消毒や滅菌とは異なり 薬剤や加熱に対して強い耐性を示すプリオンなどの感染性粒子や 治療法が未確立の新興感染症に係る微生物などに対しても等しく有効であるとの特長もある 消毒々滅菌前洗浄の概念が広く歯科界に導入されることを期待したい 1981 7) 伏見了ほか〆酵素洗浄剤中プロテアーゼ活性の保存安定性および洗浄時温度と洗浄力の関係に関する研究 医器学 70(12) 〆 648-651.2003 8) 社団法人日本歯科補綴学会〆補綴歯科治療過程における感染対策指針 2007.7 9) 佐藤晶子 大西正和〆試作除菌システムが印象採得物の寸法変化に不える影響について 日本歯科技工学会雑誌 Vol.27 2. Dec.2006 参考文献 1) 奥田克爾〆最新口腔微生物学 2005.3 2) John TR,Joan B,Willam K, et al,:patient-patient Transmission of Hepatit 〆 is B virus Associated with Oral Surgery J Infect Dis 2007;195:1311-1334. 3) 白石正 仲川義人〆ジクロロイソシアヌル酸 Na 顆粒の有機物存在下における殺菌効果の検討 臨床微生物 Vol.23 1. 2006 4) 大久保憲 大塚和久 河合浩樹〆電解酸性水の新しい知見 感染と消毒 Vol.No,2.1995 5) 伏見了 花村亮 中田清三ほか〆一次消毒された汚染物の洗浄障害について 医器学 73(6) 〆 281-286.2003 6) Bond ww,favero MS,Petersen NJ,Gravelle CR,Ebert JW,Maynard JE,Survival of hepatitis B virus after drying and storage for one week [Letter] lancet 6