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熱化学 thermochemistry ものを燃やすと暑くなる エタノール消毒をすると手がヒヤリとするといった化学変化により出入りするエネルギーを考えていきます 熱というのはエネルギーの一種です 下図をエネルギー図といい 上に行くほどエネルギーが高くなり熱的に不安定な状態になります 反応の前後で物質のエネルギーが異なれば そのエネルギー差が熱として吸収 放出されます エネルギーの単位は J( ジュール ) を用います ( 1000 J = 1 kj ) E C 3 H 8 ( 気 )+5O 2 反応物 反応物が熱を放出 E 発熱反応 反応物が熱を吸収 吸熱反応 C 2 H 5 OH( 気 ) 生成物 2219 kj 39 kj 3CO 2 +4H 2 O( 液 ) 生成物 C 3 H 8 ( 気 ) + 5O 2 = 3CO 2 + 4H 2 O( 液 ) + 2219 kj C 2 H 5 OH( 液 ) 反応物 C 2 H 5 OH ( 液 ) = C 2 H 5 OH ( 気 ) ー 39 kj のような反応式を熱化学方程式といい この分野だけ特殊な書き方をします 熱化学方程式はエネルギー図を式として表したものです 化学反応式 Q. 水素と酸素が反応し水ができる化学反応式を書け 2 H 2 + O 2 2 H 2 O 係数は簡単な整数で表す (1 は省略 ) や で表す 熱化学方程式 Q. 水素の燃焼熱 (286 kj/mol) を示す熱化学方程式を書け H 2 + 1 2 O 2 = H 2 O( 液 ) + 286 kj 着目する物質の係数を 1 にする 常温 常圧で気体以外の物質はその状態を括弧内に書く 2 反応熱を一番右に書く発熱なら + 吸熱ならー

@ 覚える ~ 熱シリーズ 燃焼熱 : 物質 1 molが完全燃焼する時に放出する熱量 kj/mol 発熱 生成熱 : 物質 1molが成分元素の単体から生成する時の熱量 kj/mol 発熱 or 吸熱 溶解熱 : 物質 1molを水に溶かした時に出入りする熱量 kj/mol 発熱 or 吸熱 中和熱 : 中和によって水 1molが生成する時に放出する熱量 kj/mol 発熱 融解熱 蒸発熱 : 物質 1molが融解 蒸発するのに吸収する熱量 kj/mol 吸熱 凝固熱 凝縮熱 : 物質 1molが凝固 凝縮するのに放出する熱量 kj/mol 発熱 1 燃焼熱 : 物質 1 molが完全燃焼する時に放出する熱量 kj/mol 着目する物質は燃えるもの ( 反応物 ) です 酸素 O 2 と反応させ 完全燃焼 ( 二酸化炭素 CO 2 や水 H 2 Oなどが生成 ) させたときの反応を示します 必ず発熱するので+になります < 例 > 炭素 ( 黒鉛 ) の燃焼熱は394 kj/mol C( 黒鉛 ) + O 2 = CO 2 + 394 kj E C( 黒鉛 ) O 2 反応物 炭素はダイヤモンドもありうるので ( 黒鉛 ) と表記 着目する物質が 1mol のときを考えているので /mol はいらない 394 kj CO 2 生成物 2 生成熱 : 物質 1mol が成分元素の単体から生成する時の熱量 kj/mol 着目する物質はできたもの ( 生成物 ) です 成分元素の単体から ( 普通では起こらない反応だけ ど ) 生成したと仮定したときの反応を示します 発熱か吸熱かは物質によって違います 二 重結合や三重結合をもつものは吸熱になることが多いです < 例 > エタノール C 2 H 5 OH( 液 ) の生成熱は 280 kj/mol E 2C( 黒鉛 ) 3H 2 反応物 1 2 O 2 2C( 黒鉛 )+3H 2 + 1 2 O 2 = C 2 H 5 OH( 液 ) + 280 kj 280 kj C 2 H 5 OH 生成物 3

3 溶解熱 : 物質 1mol を水に溶かした時に出入りする熱量 kj/mol 着目する物質は溶かすもの ( 反応物 ) です 発熱か吸熱かは物質によって違います < 例 > 塩化ナトリウム ( 固 ) の溶解熱は -3.88 kj/mol NaCl( 固 )+ aq = NaClaq - 3.88 kj 大量の水 (aqua) という意味 NaCl 水溶液という意味 E NaClaq 生成物 3.88 kj NaCl( 固 ) aq 反応物 4 中和熱 : 中和によって水 1mol が生成する時に放出する熱量 kj/mol 着目する物質は水です H + と OH - から H 2 O ができるときの熱で発熱です < 例 > 希硫酸 H 2 SO 4 aq と水酸化ナトリウム水溶液 NaOHaq の中和熱は 56 kj/mol E 1 2 H 2SO 4 aq NaOHaq 反応物 1 2 H 2SO 4 aq + NaOHaq = H 2 O( 液 ) + 1 2 Na 2SO 4 aq+ 56 kj 56 kj H 2 O( 液 ) 1 2 Na 2SO 4 aq 生成物 5 状態変化の熱固体 液体 気体において 熱を吸収するか放出するかは常識であるので値に+もーも書いてありません 気 > 液 > 固でエネルギーが高くなることから考えて書きましょう < 例 > 水の蒸発熱は41 kj/mol H 2 O( 液 ) = H 2 O( 気 ) - 41 kj E H 2 O( 気 ) < 例 > 水の凝固熱は 6 kj/mol H 2 O( 液 ) = H 2 O( 固 ) + 6 kj H 2 O( 液 ) 6 kj 41 kj 4 H 2 O( 固 )

( 例題 ) 次の変化を熱化学方程式で表せ ただし H = 1.0, C = 12, O = 16 とし 標準状態の気体は 22.4 L/mol とする (1) 水素 H 2 ( 気 ) の燃焼熱は 242 kj/mol (2) アセチレン C 2 H 2 ( 気 ) 燃焼熱は 1300 kj/mol (3) プロパン C 3 H 8 ( 気 ) の生成熱は 106 kj/mol (4) アセチレン C 2 H 2 ( 気 ) の生成熱はー 227kJ/mol (5) 塩化水素 HCl( 気 ) の溶解熱は 74.9 kj/mol (6) 塩化アンモニウム NH 4 Cl( 固 ) の溶解熱はー 15 kj/mol (7) 水 H 2 O( 固 ) の融解熱は 6.0 kj/mol (8) 水 H 2 O( 気 ) の凝縮熱は 41 kj/mol (9) メタン CH 4 ( 気 ) 2 mol を完全燃焼させると 1780 kj の熱が発生する (10) メタン CH 4 ( 気 ) 3.2g を完全燃焼すると 178 kj の熱が発生する (11) 標準状態で 5.60 L のエタン C 2 H 6 ( 気 ) を完全燃焼させると 390 kj の熱が発生する (12) 6.0 g の固体の水が液体の水になるとき 2.0 kj の熱が必要である 5

ヘスの法則 Hess's law 自転車で急な坂道を登るとき 重いギアで漕ぐ回数を減らして走るのと 軽いギアでたくさん漕ぐのではどっちが楽かというと 理論的にはどちらも同じです これをエネルギー保存則といいますが これは熱化学にも似た法則があります 物質が変化するときに出入りする熱量( 反応熱 ) は はじめの状態と終わりの状態だけで決まり 変化の過程 ( 経路 ) には関係ない これを ヘスの法則 といいます 例えばC( 黒鉛 ) を燃焼したときに 完全燃焼して二酸化炭素 CO 2 を生成するときの反応熱をQ kj とおき 不完全燃焼で一酸化炭素 COを生成し さらにCOを完全燃焼させたときの反応熱をx kj, y kjとおくと ヘスの法則から Q = x + y となります Qは熱量 (quantity of heat) の意味です E C( 黒鉛 )+O 2 ( 気 ) x = 111 kj C( 黒鉛 ) & O 2 のエネルギー Q = 394 kj CO+ 1 2 O 2 CO & 1 2 O 2 のエネルギー CO 2 ( 気 ) y = 283 kj CO 2 のエネルギー C( 黒鉛 ) + O 2 = CO 2 + 394 kj * C( 黒鉛 ) + O 2 = CO + 1 2 O 2 + 111 kj 1 CO+ 1 2 O 2 = CO 2 + 283 kj 2 ( 1 式はエネルギー図を説明するための表記で正しくは C( 黒鉛 ) + 1 2 O 2 = CO + 111 kj です ) この法則から熱化学方程式は数式のように足し算や C( 黒鉛 ) + 1 O 2 2 = CO + 111 kj 1 引き算が可能となります + CO+ 1 O 2 2 = CO 2 + 283 kj 2 1+2をして途中にでてくるCOを消すと * 式になります C( 黒鉛 ) + O 2 = CO 2 + 394 kj * 6

反応熱計算を解くときのポイント 1 熱化学方程式を使う方法 与えられた式から求める式を作る 面倒 確実 2 エネルギー図を書く方法 エネルギー図を書いて求める 3 公式化して使う方法 公式を覚えて使う 楽 ミスる いろんな方法がありますが 基本 1 または 2 で解いていきましょう 1 だと楽な問題や 2 じゃないと難しい問題もありますので どちらもできるようにしましょう ( 例題 ) 次の熱化学方程式からエチレン C 2 H 4 の燃焼熱を答えよ エチレンの生成熱:-52 kj/mol 2C( 黒鉛 ) + 2H 2 = C 2 H 4 ー 52 kj 1 二酸化炭素の生成熱:394 kj/mol C( 黒鉛 ) + O 2 = CO 2 + 394 kj 2 水の生成熱:286 kj/mol H 2 + 1 O 2 2 = H 2 O( 液 ) + 286 kj 3 1 熱化学方程式を使う方法 手順 1: 求められている熱化学方程式を書く 熱はわからないのでQ kjとおく C 2 H 4 + 3O 2 = 2CO 2 + 2H 2 O + Q kj * 手順 2: の熱化学方程式を作るために与えられた式を足すのか引くのかを考える C 2 H 4 について :1の右辺にあり * の左辺にある -1 1 O 2 について :2と3と* の計 3 回出てきている 無視 CO 2 について :2の右辺にあり * の右辺に係数 2 2 2 H 2 Oについて :3の右辺にあり * の右辺に係数 2 2 3 求められている式に無い化学式 (CとH 2 ) を消すように考えてもよい 手順 3: 式の計算を行い 求められている熱化学方程式と一致させる (-1 1)+(2 2)+(2 3) ー 2C ー 2H 2 = ー C 2 H 4 + 52 kj -1 1 2C + 2O 2 = 2CO 2 + 394 2 kj 2 2 + 2H 2 + 1O 2 = 2H 2 O + 286 2 kj 2 3 2O 2 + 1O 2 = ー C 2 H 4 + 52 kj+ 2CO 2 + 394 2 kj +2H 2 O + 286 2 kj C 2 H 4 + 3O 2 = 2CO 2 + 2H 2 O + 1412 kj * と同じ形 1412 kj/mol 7

( 例題 ) 次の熱化学方程式からエチレンC 2 H 4 の燃焼熱を答えよ エチレンの生成熱:-52 kj/mol 2C( 黒鉛 ) + 2H 2 = C 2 H 4 ー 52 kj 1 二酸化炭素の生成熱:394 kj/mol C( 黒鉛 ) + O 2 = CO 2 + 394 kj 2 水の生成熱:286 kj/mol H 2 + 1 O 2 2 = H 2 O( 液 ) + 286 kj 3 2 エネルギー図を書く方法 手順 1: 求められている熱化学方程式を書く 熱はわからないので Q kj とおく C 2 H 4 + 3O 2 = 2CO 2 + 2H 2 O + Q kj * 手順 2: 以下の図に即してエネルギー図を書き これに与えられた情報を当てはめ る 単体のエネルギーは 0kJ( 定義 ) で プラス マイナスは深く考えない @ 覚える E バラバライオン ( 気 ) 原子 ( 気 ) 2C+3O 2 +2H 2 ー 52 kj 0 単体化合物 +α 完全燃焼化合物 (CO 2 &H 2 O) 水和イオン結合 C 2 H 4 +3O 2 Q kj 2CO 2 +2H 2 O 2 394 kj + 2 286 kj エネルギー図よりQ+(-52)=2 394+2 286 Q=1412 1412 kj/mol この時 熱化学方程式の係数に気をつけないとミスをします 例えば 二酸化炭素の生成熱はCO 2 を係数 1としたときの熱量です 上図の場合は2CO 2 を作っているので 2が必要 となります 3 公式化して使う方法 ( おすすめしない ) a 生成熱 + 仲間はずれ (Q) のとき Q=( 右辺の生成熱の和 ) ( 左辺の生成熱の和 ) b 燃焼熱 + 仲間はずれ (Q) のとき Q=( 左辺の燃焼熱の和 ) ( 右辺の燃焼熱の和 ) c 結合エネルギー + 仲間はずれ のとき 仲間はずれの熱化学方程式へ 結合エネルギーにマイナスをつけて代入 8

< 練習 > (1) 次の熱化学方程式から一酸化炭素 COの生成熱を答えよ 二酸化炭素の生成熱:394 kj/mol C( 黒鉛 ) + O 2 = CO 2 + 394 kj 1 一酸化炭素の燃焼熱:283 kj/mol CO + 1 O 2 2 = CO 2 + 283 kj 2 (2) 次の熱化学方程式からメタン CH 4 の燃焼熱を答えよ 二酸化炭素の生成熱 :394 kj/mol C( 黒鉛 ) + O 2 = CO 2 + 394 kj 1 水( 液 ) の生成熱 :286 kj/mol H 2 + 1 O 2 2 = H 2 O( 液 ) + 286 kj 2 メタンの生成熱:75 kj/mol C( 黒鉛 ) + 2H 2 = CH 4 + 75 kj 3 メタンの燃焼熱を Q kj とおくと CH 4 + 2O 2 = CO 2 + 2H 2 O + Q kj となる 9

(3) 二酸化炭素 CO 2, 水 H 2 O( 液 ), メタノール CH 3 OH( 液 ) の生成熱は 394, 286, 239 kj/mol である これらからメタノール CH 3 OH( 液 ) の燃焼熱を求めよ (4) 二酸化炭素 CO 2, 水 H 2 O( 液 ) の生成熱は 394, 286 kj/mol, エタノール C 2 H 5 OH( 液 ) の燃焼熱は 1368 kj/mol である これらからエタノール ( 液 ) の生成熱を求めよ 10

@ 覚える ~ エネルギーシリーズ 結合エネルギー : 気体分子中の原子間結合 1 mol を切って原子 ( 気 ) の状態にするのに必要なエネルギー イオン化エネルギー : 原子 1 mol から電子を取り去って陽イオン ( 気 ) に変えるために 必要なエネルギー 電子親和力 : 原子 1 mol が電子を受け取って陰イオン ( 気 ) に変化するときに 放出するエネルギー くっついているものをバラバラの粒子にするのに必要なエネルギーについて学んでいきます 想像しにくいですが バラバラにされた原子やイオンは他の粒子とくっついていないので気体になっていると考えていきます 熱化学方程式を書けるようにするよりも エネルギー図を書けるようにしましょう 1 結合エネルギー : 気体分子中の原子間結合 1 molを切って原子 ( 気 ) の状態にするのに必要なエネルギー kj/mol 分子は原子同士が共有結合でくっついていますが その結合を切るのに必要なエネルギーのこ とを結合エネルギーといいます 必ず吸熱です < 例 > 水素の結合エネルギーは 436 kj/mol H 2 ( 気 ) = 2H( 気 ) ー 436 kj E 2H( 気 ) 原子 表. おもな結合エネルギー (kj/mol) 結合結合 E 結合結合 E 結合結合 E H-H Cl-Cl O=O N N 436 243 494 942 H-Cl C-H N-H O-H 432 413 390 463 C-C C=C C-Cl C=O 368 719 325 799 H 2 ( 気 ) 気体分子 436 kj ~ 結合エネルギーの仲間 ~ 解離エネルギー : 気体分子中の原子間結合 1 mol を全て切って原子 ( 気 ) の状態にするのに必要なエネルギー ( 分子中の結合エネルギーの総和 ) 格子エネルギー : 結晶 1 mol 中の結合を切って構成粒子 ( 気 ) の状態にするのに必要なエネルギー 11

< 練習 > 右表を用いて 次の問いに答えよ ただし 有効数字は考えないものとする (1) O 2 ( 気 ) の結合を全て切って 2O( 気 ) にするのに必要なエネルギーはいくらか 結合エネルギー kj/mol 結合結合 E 結合結合 E (2) 水 H 2 O( 気 ) の結合を全て切って 2H( 気 )+O( 気 ) にするのに必要なエネルギーはいくらか O=O C-C C=O 494 368 798 C-H O-H 413 463 (3) 二酸化炭素 CO 2 ( 気 ) の結合を全て切って C( 気 )+2O( 気 ) にするのに必要なエネルギーはいくらか (4) メタン CH 4 ( 気 ) の結合を全て切って C( 気 )+4H( 気 ) にするのに必要なエネルギーはいくらか (5) プロパン C 3 H 8 ( 気 ) の結合を全て切って 3C( 気 )+8H( 気 ) にするのに必要なエネルギーはいくらか プロパンの構造式 H H H H-C -C-C ー H H H H (6) メタン CH 4 ( 気 ) の燃焼熱 Q を求めよ C, 4H, 4O CH 4 +2O 2 (7) プロパン C 3 H 8 ( 気 ) の燃焼熱 Q を求めよ Q kj CO 2 +2H 2 O 3C, 8H, 10O C 3 H 8 +5O 2 12 Q kj 3CO 2 +4H 2 O

2 イオン化エネルギー : 原子 1 molから電子を取り去って陽イオン ( 気 ) に変えるために必要なエネルギー kj/mol 原子は陽子と同じ数の電子を持っていますが その電子 1 個を取り去って1 価の陽イオンにするのに要するエネルギーを ( 第 1) イオン化エネルギーと言います 原子にとって電子 e ーは大切なものなので 電子が取られたら不安定な状態になります < 例 > ナトリウムのイオン化エネルギーは 496 kj/mol Na( 気 ) = Na + ( 気 )+e - ー 496 kj E Na + ( 気 )+e - 陽イオン 元素によって値が違い 周期表の右上ほど値が大きくなります 最大は ヘリウム He です Na( 気 ) 気体分子 496 kj Li~Ne で値が上昇している理由 ( 周期で比べる ) 陽子数 (+ の電荷 ) が多いと e ーが強く引きつけられる イオン化エネルギー大 + e ー原子核電子 ( 陽子 + 中性子 ) K L M N イオン化エネルギ l He Li Ne r He~r で値が減少している理由 ( 族で比べる ) Na 原子半径が大きいと e ーを引きつける力が弱まる イオン化エネルギー小 1 2 3 ~ 10 11 ~ 18 原子番号 = 陽子数 3 電子親和力 : 原子 1 molが電子を受け取って陰イオン ( 気 ) に変化するときに放出するエネルギー kj/mol 原子にとって電子 e ーは大切なものなので 電子を貰ったら安定な状態になります < 例 > 塩素の電子親和力は 356 kj/mol Cl( 気 ) + e ー = Cl ー ( 気 ) + 356 kj 元素によって値が違い 周期表の右上ほど値が大きくなりますがイオン化エネルギーほど規則性はありません 最大は塩素ですが覚えなくても良いです 13 E Cl( 気 )+e - 原子 356 kj Cl - ( 気 ) 陰イオン

< 練習 > 1. 原子から ( a )1 個を取り去り 1 価の 陽イオンにするのに必要なエネルギーをその 原子の ( b ) といい この値が ( c ) ほど 陽イオンになりにくい 原子のこのエネルギーを原子番号順に示すと 上の図のようになり 周期的に変化すること がわかる 元素, 元素 C, 元素 Eを見ると右肩下がりに なっており (2) 元素 B~ 元素 C 間を見ると右肩 上がり (3) のグラフとなっている 折れ線グラフの最も高いところ ( 元素,C, E) が ( d ) の原子群で, 最も低いところ ( 元素 B, D, E) が ( e ) の原子群である 族周期 1 2 3 4 1 2 13 14 15 16 17 18 (1) 上の文の ( ) には適する語句を, 図の には適する元素記号を入れよ (a) (b) (c) (d) (e) : B: C: D: E: F: (2) 下線部 (2) のようになる理由を書け (3) 下線部 (3) のようになる理由を書け 2. 水素原子のイオン化エネルギーは1312 kj/mol 塩素原子の電子親和力は349 kj/molとする 次の反応熱 Qを求めよ H( 気 )+Cl( 気 ) = H + +Cl ー ( 気 ) +Q kj/mol H + ( 気 )+Cl( 気 )+e - kj H + ( 気 )+Cl - ( 気 ) kj H( 気 )+Cl( 気 ) Q kj 14

<チャレンジ問題 > ~ボルン ハーバーサイクル~ イオン結晶 1 molを分解して それを構成するイオンの気体にするのに必要なエネルギーを格子エネルギーという しかし 格子エネルギーを直接測定することは困難なので ヘスの法則を用いて間接的に求められることが多い NaCl( 固 ) の場合 関連する熱化学方程式は表の通りである 熱化学方程式 Na( 固 )=Na( 気 ) ー 89 kj Na( 気 )=Na+( 気 )+e ー ( ア ) 496kJ Cl 2 ( 気 )=2Cl( 気 ) ( イ ) 244kJ Cl( 気 )+e ー =Cl ー ( 気 ) ( ウ ) 349kJ Na( 固 ) + 1 Cl 2 2( 気 )=NaCl( 固 )+413kJ ( 3 ) 反応熱の名称 昇華熱 ( ) 結合エネルギー ( B ) 1 生成熱 2 格子エネルギー (1) ( ア )~( ウ ) に適合する符号を +またはーで書け (2) (), (B) に最も適合する反応熱の名称を書け (3) NaCl( 固 ) の格子エネルギーをQ kj/mol(q>0) として 熱化学方程式を書け (4) Qの値を求めよ ( 早稲田 )

<チャレンジ問題 > ~ヘスの法則の難問 ~ 水 H 2 O( 液 ) および2-プロパノールC 3 H 8 O( 液 ) の生成熱はそれぞれ286,320 kjであり プロピレン C 3 H 6 ( 気 ) および炭素 C( 黒鉛 ) の燃焼熱はそれぞれ2060, 394 kjである 以下のX, Y, Zに当てはまる熱量を答えよ (1)2-プロパノールC 3 H 8 O( 液 ) の燃焼熱 :X kj/mol (2) プロピレンC 3 H 6 ( 気 ) と水 H 2 O( 液 ) の反応熱 :C 3 H 6 ( 気 ) + H 2 O( 液 ) = C 3 H 8 O( 液 ) + Y kj (3) プロピレンC 3 H 6 ( 気 ) の生成熱 : Z kj/mol ( 広島大改 )

熱量計算 昔の人は 熱い や 温度が高い などの理由を この熱量という得体の知れないものが移動とし ていると説明しました 実際には仕事 ( エネルギー ) だったわけです 物体によっては同じ熱量を加えても温度変化が違うものがあります 単位質量の物質の温度を 1 K だけ上昇させるのに必要な熱量を その物質の 比熱 といい単位では J/(g K) と表します すなわち 1 g を 1 C 上げるために必要なエネルギーで 水なら 4.2 J/(g K) です 熱量 kj = 反応熱 Q kj/mol 物質量 n mol = 比熱 c J/(g K) 質量 m g 温度変化 ΔT K 10-3 kj/j 種々のパラメータは上に示した関係がありますが 覚えなくても単位が書いてあるので導くこ とが可能です 比熱は J/(g K) なのに対し 反応熱は kj/mol なので換算に注意 発熱反応させたときの温度と時間の関係を右に示します B 点で発熱反応が起きると 温度が上昇しC 点まで緩やかに温度が上がります これは反応が一瞬で終わらないので じわじわと温度が上がっていくからです また 完全に断熱することができないので時間が過ぎると冷めていきます 瞬時に反応が終わり 反応途中で周りへ熱が逃げないと仮定すると実際の温度変化はB-の温度になります 温度 B C D E 反応終了 反応開始 時間 なお 複数の反応が起きる場合の熱量は各の熱量の和になります 例えば 9 g(0.5 mol) で -15 C の氷を 130 C の水蒸気にする場合に 必要な熱量は 氷, 水, 水蒸気の比熱が 1.9, 4.2, 2.1 J/(g K) 融解熱を 6.0 kj/mol 蒸発熱を 40.7 kj/mol なので 温度 B C D E 時間 15 1.9 10-3 + 0.5 6.0 + 100 4.2 10-3 + 0.5 40.7 + 30 2.1 10-3 =50.8 kj となります -30 Cの氷 B 0 Cの氷 C 0 Cの水 D 100 Cの水 E 100 Cの水蒸気 0 Cの氷 0 Cの水 100 Cの水 100 Cの水蒸気 130 Cの水蒸気 固体を溶解して中和反応させる場合は溶解熱と中和熱の和となります 17

< 練習 > 断熱容器を用いて次のような実験 1 2 を行った ここで, 水と水溶液の密度はすべて 1.0 g/cm 3, 水溶液の比熱はすべて 4.2 J/(g K) 発生した熱はすべて水溶液の温度上昇に使われるものとして以下の各問いに答えよ なお NaOH の式量を 40 とする 実験 1 純粋な水 96 gに水酸化ナトリウム4.0 gを加え 断熱容器の中でかきまぜて混合しながら溶液の温度を測定したところ 右図のような結果が得られた この図で, 点線 ( 補助線 ) が混合時間 0 分の縦線と交差する点の温度が補正した溶液の温度の最高値である 実験 2 20 Cにて1.0 mol/lの塩酸 100 ml に水酸化ナトリウム4.0 gを加え, 断熱容器の中で実験 1と同様に温度を測定し 作図によって補正した溶液の温度の最高値を求めたところ,43 Cであった (1) 実験 1 の結果をもとに 水酸化ナトリウムが水へ溶解する時の溶解熱 (kj/mol) を有効数字 2 桁で記せ (2) 実験 2 の結果をもとに 塩酸と水酸化ナトリウム水溶液の中和熱 (kj/mol) を有効数字 2 桁で記せ (3) 実験 2 と同様の操作で, 水酸化ナトリウムを 8.0 g 加えた場合 実験 1 と同様に作図によって補正した溶液の温度の最高値は何 C と予想できるか これまでの解答で求めた数値を用いて計算し 有効数字 2 桁で記せ 18

反応速度 chemical kinetics 身の回りにはいろいろな化学反応が起こっていますが 早い反応もあれば遅い反応もあります 反応の速さというものは何で決まっていくのかを学んでいきます まず初めに 反応がどのように起きているかをミクロな視点から見ていきます 物質を構成する粒子は熱運動をしており あるとき他の反応物の粒子と衝突します そのとき元の結合が弱くなり 原子の組み替えのおこるエネルギーの高い状態になります この状態を 活性化状態 ( 遷移状態 ) といい 反応物質を活性化状態にするのに必要なエネルギーを 活性化エネルギー E a といいます そのエネルギーを乗り越えた複合体は 新しい結合を作り分裂して生成物が生まれます E 反応経路 反応物 2 +B 2 B B 活性化状態 ( この複合体のことを活性錯体という ) B B E a 生成物 2B 反応熱 B B @image 化学反応は粒子同士の衝突で起こる ( ことが多い ) 促進するには 勢いよくぶつかる or たくさんぶつかる or ハードルを低くする 反応の速さは以下の3つに起因しています 1 温度 T 温度を上げると熱運動が激しくなり 活性化エネルギーを超える粒子の割合が増えます なので高温になるほど活性化状態になる確率が高くなり反応は早くなります 10 C 上がると反応速度は約 2~3 倍になると言われてます 19 E a

2 濃度反応物の濃度を上げると両者が衝突する確率が高くなるので反応は早くなります 気体の場合は分圧が濃度と考えて大丈夫です 衝突回数多 少 なお固体の場合は塊状より粉末状の方が表面積が大きくなるので反応は早くなります 3 触媒 反応前後で自らは変化しないが 反応の速さに影響を与える物質を 触媒 といい 具体的 にいうと活性化エネルギーを低くしたり高くしたりします E 反応経路 反応物 2 +B 2 B B B B E a 生成物 2B B B E a 活性化エネルギーを低くし 反応を早くする触媒を 正触媒 といい 逆に活性化エネルギーを高くし 反応を遅くする触媒を 負触媒 もしくは阻害剤といいます ( 負触媒という言葉は最近死語となっています ) 例えば 過酸化水素水に正触媒である二酸化マンガンを加えると勢いよく酸素を発生し分解します (2H 2 O 2 O 2 +2H 2 O) この分解反応は放っておいても進むため 過酸化水素水を保存するときには負触媒であるリン酸を加えておく必要があります 二酸化マンガンのように固体表面で触媒作用を示すものを 不均一触媒 といい リン酸や 他イオンのように反応物と均一に混ざり合う触媒を 均一触媒 といいます 20

@ 覚える 反応速度 v : 単位時間あたりの濃度変化 mol/(l s) 濃度変化量 mol/l = 時間変化量 s >0 速度式 v=k[] x [B] y =k [ 反応物の平均濃度 mol/l] x (k は速度定数 ) 単位時間あたりの変化した濃度を 反応速度 といい 多くは 1 秒当たりのモル濃度変化を 扱います +B C の化学変化があり 反応物 の濃度 [] と時間 t の関係を下に示します この時の接線の傾きが瞬間の反応速度となり ますが グラフの関数が与えられないと求め られないので 実験では 2 点間の平均の速さ で表します [] 0 接線の傾き t v = d[] dt =-d[] dt 出せない [] Δ[] 平均の速さ 0 Δt t _ v = Δ[] Δt =-Δ[] Δt 厳密な値は出ないが大体の値が導出できる 前述したように 反応速度は濃度が濃くなると衝突回数が増えて増加します 濃度と反応速度の関係は v=k[] x [B] y となります 11 秒間に と B がどの向きに動いていても必ず 1 回衝突するとする 1 2 の濃度を 3 倍にすると と B は計 3 回衝突することになる 3 さらに B の濃度を 2 倍にすると と B は計 6 回衝突することになる B 以上をまとめると衝突する回数は [] [B] に比例することになります 衝突回数と反応速度は比例するので 反応速度は v=k[][b] と表すことができ これを速度式といいます kは速度定数と呼ばれ 値が大きいほど早い反応となります 速度定数 kは温度 Tと活性化エネ 2 B ルギー E a に依存し 反応がどれだけ早いのかを示す指標となります 21 3 B B

問題では 反応物の減少量 or 生成物の増加量 を測定し 平均の速さと平均の濃度を導出 することで反応次数や速度定数の値を求めることとなります [] [] 1 [] 2 平均の速さ t 1 ~t 2 の間の _ 平均の速さv =- 2 1 t 2 t 1 v = k[] x _ 平均の濃度 []= + 1 2 2 0 t 1 t 2 t @Tips 反応次数と素反応と律速段階 v=k[] x [B] y のときのx+yの値を反応次数といい 次数に対し反応の種類を分類すると以下の4 種 類になります 一次反応 :1つの粒子が何らかの影響で分解する反応 Bのときv=k[] 例 ) 放射性核種の壊変 ( 放射性同位体を使った元素年代測定 ) 二次反応 :2つの粒子が衝突することで起きる反応 +B Cのときv=k[][B] 例 )H 2 +I 2 2HI, 2HI H 2 +I 2 2 Bのときv=k[] 2 三次反応 :3つの粒子が衝突することで起きる反応 +2B Cのときv=k[][B] 2 など 零次反応 : 反応物の濃度に関係なく進む反応 Bのときv=k 外を歩いていて 電柱にぶつかることや人にぶつかることはありますが 同時に前後から他人に挟まれることはめったにありません 化学物質も同じで四次反応以上の反応は確率的に起こりえません 上記の例を見ると a+bb ccという反応があった時に v=k[] a [B] b と書きたくなりますが 絶対にやってはいけません 多くの反応は上記に示した反応 ( 素反応という ) の複雑な組み合わせによりできています 例えば 4NH 3 +5O 2 4NO+6H 2 Oの反応速度をv = k[nh 3 ] 4 [O 2 ] 5 なんて書いたら一度に9 個の分子が衝突して起こる反応になります 確率的に起こりえません では反応を知るにはどうするのか? 実験を行うしかないのです 多段階で起こるうち一番遅い反応 ( 律速段階という ) がその反応速度を決めることになるので 律速段階での素反応が反応全体の速度式となります ( 例外も多い ) 22

< 練習 > 1. 化学反応には反応の途中で ( ア ) とよばれるエネルギーの高い状態がある 反応物が ( ア ) になるのに必要なエネルギーを ( イ ) という ( イ ) は反応の種類によって異なり 大きいほど反応は ( ウ ) なる 反応物の分子は加熱により熱運動は ( エ ) なる 反応物同士の一部が ( ア ) を通過できるエネルギーを与えると生成物が生じる 一般に反応速度は温度が 10 C 高くなるごとに ( オ ) 倍になると言われている (1)( ア )~( オ ) に当てはまる語句を記せ ( ア ) ( イ ) ( ウ ) ( エ ) ( オ ). (2) 下線部について 高温になるほど反応速度が大きい理由を右図に高温時の運動エネルギー分布を記し 40 字以内で説明せよ 分子数の割合 低温時 2. 右図は気体分子 XY 2 が分子 X 2 と分子 Y 2 に分解する不可逆反応についてエネルギーの関係を示したものである 下の各問いに答えよ ただし逆反応は考えないものとする (1) 反応経路アは触媒を用いないときのものである このときの活性化エネルギーと反応熱を a~d の記号を用いて示せ 0 運動エネルギー (2) この系に触媒を加えると, 反応経路イを通る このときの活性化エネルギーと反応熱を a~d の記号を用いて示せ (3) (2) の反応速度はどのようになるか 理由とともに説明せよ (4) この反応の反応速度は温度が 10 K 上昇するごとに 2 倍になるとすると温度を 30 K 上昇させたときの反応速度は何倍になるか (5) まわりを断熱性のシートで完全に包んだ反応容器の中で反応を開始すると 反応速度はどのようになると考えられるか 理由とともに述べよ 23

3. 物質 と物質 B から物質 C が生成する化学反応において ある温度で と B の初期濃度を変えて 反応初期の C の生成速度を求める実験 1,2,3 を行った の初期濃度 mol/l B の初期濃度 mol/l C の生成速度 mol/(l s) 実験 1 実験 2 実験 3 0.30 0.30 0.60 1.00 0.50 0.50 1.8 x 10-2 9.0 x 10-3 3.6 x 10-2 C の生成速度 v は, B のモル濃度を [], [B] とし 反応速度定数を k とすると v=k[] x [B] y と表すことができる (1) 実験 1,2,3 の結果をもとに x, y にあてはまる適切な値を求めよ (2) 反応速度定数を有効数字 2 桁で求め 単位とともに記せ (3) の初期濃度を 0.20 mol/l B の初期濃度を 0.50 mol/l としたとき 反応初期の C の生成速度を有効数字 2 桁で答えよ 4. 0.25 mol/l の過酸化水素水溶液 10 ml を分解し (2H 2 O 2 2 H 2 O+O 2 ) 発生した酸素を水上置換によって捕集する実験を行った 反応速度を一定に保ち 捕集した酸素の体積を 20 秒ごとに測定した 酸素の水への溶解と過酸化水素水溶液の体積変化は無視する 時間 s [H 2 O 2 ] mol/l 時間間隔 s [H 2 O 2 ] mol/l v mol/(l s) v/[h 2 O 2 ] 0 20 40 60 80 0.250 0.150 0.090 0.0540 0.0324 0~20 20~40 40~60 60~80 (1) 反応開始 40 秒までに反応した過酸化水素の物質量と発生した酸素の物質量をそれぞれ有効数字 2 桁で求めよ (2) 表に当てはまる平均の過酸化水素濃度 [H 2 O 2 ] 平均の分解速度 v v/[h 2 O 2 ] 完成させよ (3) 反応開始後 t 秒での分解速度 v mol/(l s) と過酸化水素濃度 [H 2 O 2 ] の関係を反応速度定数 k を用いて数式で表し 速度定数 kを単位とともに有効数字 2 桁で求めよ (4) t = 80 s における H 2 O 2 の分解速度と O 2 の生成速度をそれぞれ求めよ 24

@Tips ~ アレニウス プロット ~ その昔 反応速度を決める速度定数 kは絶対温度の関数であることはわかっていたが どんな関数であるかははっきりとわかっていませんでした 等間隔の目盛りでk vs Tのグラフで書いても すぐ発散してしまいグラフの意味がありません kの対数をとってもまだ発散してしまう k???!!! log e k log e k logk=-b 1 T +a T T 1/T アレニウスは 横軸に絶対温度の逆数 1/T を 縦軸に log e k を取ると さまざまな温度での速 度定数が直線に載ることを示しました これがアレニウス プロットです このプロットの傾きを b 切片を a とすると log e k=-b 1 T +a k = e b T +a k = e a e b T e a を とおくと k=e b T となる b は反応に固有の値です 指数の中は無次元であるべきなので T と b は同じ単位である なので b は 活性化温度 とい うべきであるが そう言われてもピンときません そこで b= E a R とし k=e E a RT とおき E a を活性化エネルギーと呼ぶことにしました k=e E a RT この式をアレニウスの式といいます e E a RTはエネルギー的な面で活性錯体に至ることができる確率と解釈すればよいでしょう E a =0 なら山がなければ その確率は e -0 =1 であり T=0 なら粒子は熱運動できないのでその 確率は e - =0 となります なお 圧力 体積は N/m 2 m 3 =N m=j であり PV が表す次元はエネルギーとなります そうすると nrt もエネルギーであるので 気体定数 R は 1 mol の粒子が 1 K 上げるために必要な エネルギーということができます ようするに気体定数 R は比熱の一種ということができます E a RT は 活性錯体 1 mol のエネルギー / 絶対温度 T における粒子のエネルギー と言えます 25

< チャレンジ問題 > ~ 素反応と律速段階 ~ 次の反応 について考える NO 2 +CO NO+CO 2 反応 は 400K では次の 2 段階の素反応 B C によって進むことが知られている NO 2 +NO 2 NO 3 +NO B NO 3 +CO NO 2 +CO 2 C 400K において 反応 の反応速度を CO と NO 2 の濃度を変化させて測定したところ 右のような結果が得られた この表の濃度および反応速度は実験番号 1 を基準にした倍率で表している 実験番号 CO 濃度 NO 2 濃度反応速度 No.1 No.2 No.3 No.4 反応 の律速段階は B と C のどちらの反応と考えられるか B C の記号で答えよ またその判断の根拠を反応 の反応速度式を速度定数 k を用いて記し 簡潔に述べよ 1 2 2 4 1 2 4 2 1 4 16 4 < チャレンジ問題 > ~ アレニウスの式 ~ アレニウスは化学反応の反応速度定数 k が温度の関数として示されることを発見した E a log 10 k= 2.3RT +log 10 R は気体定数 T は絶対温度 E a は活性化エネルギーであり は頻度因子とよばれる定数である ある反応を 300K から 400K に上げて反応速度を測定したところ反応速度定数は 1000 倍に増加した 1 さらにある触媒を用いてこの反応を行ったところ 反応速度定数は ( ア ) した このとき 活性化エネルギーは触媒のないときの半分になり 頻度因子は増大することが分かった 2 (1)( ア ) に当てはまる語句を記せ (2) 下線 1 のとき この反応の活性化エネルギーを有効数字 2 桁で求め 単位とともに記せ ただし R = 8.3 x 10 3 J/(mol K) とする (3) 下線 2 の反応について触媒を用いない場合とともに 横軸を 1/T 縦軸を log 10 k としたグラフを作成した このグラフの概形としてももっとも適切なものを選べ ( 名古屋大 ) logk 触媒あり logk 触媒なし 1/T 触媒なし logk 触媒あり 1/T 触媒あり logk 触媒なし 1/T 触媒なし触媒あり 1/T 触媒あり 触媒なし 触媒あり 触媒なし logk logk 触媒なし logk 触媒あり logk 触媒なし 触媒あり 1/T 26 1/T 1/T 1/T

化学平衡 chemical equilibrium 化学反応には一方通行で反応したら元に戻ってこれない反応である 不可逆反応 とどちらにも行き来できる 可逆反応 の2つに分類できます 物を燃やせば物がなくなるまで燃えるけれど 閉まったペットボトルの水は水がなくなるまで蒸発せず 途中で蒸発が止まります この後者の現象について学習していきます HCl H + + Cl - CH 3 COOH H + + CH 3 COO - 前 100 個 前 100 個 後 0 個 100 個 100 個 後 99 個 1 個 1 個 可逆反応は 反応物がなくならなくても正反応と逆反応の速さが釣り合うと終点を迎えます この状態を 平衡状態 といいます このとき両反応は起こっていますが 反応速度が釣り合っているので 見かけ上反応が止まったように見えます なお見かけの反応速度はv 正ー v 逆となり この値が0になると平衡状態になります v v 正 =k 1 [] x [B] y v 正 a[]+b[b] c[c] v 逆 v 正 =v 逆 0 平衡状態 0 v 逆 =k 2 [C] z t 見かけ上反応停止状態 ( 濃度が変化しない ) エネルギーの面から考えると平衡状態の 不安定 不安定 ときが最も熱力学的に安定な状態です 2 Bのときが100% の状態が始めても Bが100% の状態から始めても 行き着く先は同じであり 最も安定な エ全ネ体ルのギ B B 平衡状態に達します 途中のどこかから出発しても同じ組成 左辺の濃度右辺の濃度 100% 0 % 平衡点 0 % 100% となるのがポイントです 安定 B 27 平衡状態

@ 覚える a + bb cc + ddのとき 平衡定数 K= C c D d a B b (K は温度のみに依存する関数 ) すべての分子はエネルギーを持っており そのエネルギーを減らすために化学反応をします 温度 一定で a + bb cc + dd の可逆反応があるとき ( 平衡反応なんて言葉は無い ) K = C c D d a B b が必ず成り立ち 一定の値をとります この K を平衡定数といい 速度式と異なり 化学反応と係数で定めることができます 平衡定数 K は温度のみに依存し 高温だと大きい値を取りますが 詳しく大学受験で訊かれること は滅多にありませんので つまるところ化学反応は濃度で議論できる ということです @Tips 平衡定数を書くときのルール 溶質 : モル濃度を用いる ( 濃度平衡定数 K c ) 気体 : 分圧を用いる ( 圧平衡定数 K p ) 溶媒 :[H 2 O]=1とする 固体 :[ 固体 ]=1とする PV=nRT より []=n/v=p /RT と変形できそれぞれを代入すると K c =K p (RT) a+b-c-d と相互変換することができます 他の溶質と比べると多量に存在するので濃度変化量が無視できます 細かいことは大学で勉強しましょう 平衡定数の導き方? ~ H 2 +I 2 2HI の反応がほとんど~ 速度式から平衡定数を導くことがよく出題されます ただし 速度式の濃度項の次数が化学反応式の係数と一致するときだけ ( 正反応も逆反応も素反応 ) のときだけ証明できます あくまでも 特殊なケースのときのみであり 大体の問題がH 2 +I 2 2HIの反応です H 2 +I 2 2HI の反応では右方向の反応速度 v 1 =k 1 [H 2 ][I 2 ] 左方向の反応速度 v 2 =k 2 [HI] 2 と表すことが できる 平衡状態では v 1 =v 2 なので k 1 [H 2 ][I 2 ]=k 2 [HI] 2 K = k 1 k 2 = 2 HI となる H 2 I 2 28

< 練習 > 1. 密閉した容器にN 2 O 4 を入れて温度を一定に保ったとき 図 1に示すように時間とともにN 2 O 4 は減少し NO 2 は増加する 時間 t e 以後は 各濃度は変化していない この状態を ( ア ) という この反応はN 2 O 4 2NO 2 で表すことができる 反応式における右向きの反応を ( イ ) といい 左向きの反応を ( ウ ) と呼ぶ 式 (1) は ( イ ) も ( ウ ) もある反応なので ( エ ) である 濃度 NO 2 N 2 O 4 反応の速さ B C 0 t e t 時間 t 0 e 時間 t 図 1 図 2 (1) ( ア )~( エ ) に当てはまる適切な語句を記せ ( ア ) ( イ ) ( ウ ) ( エ ). (2) 図 2 はこの反応の速さの時間変化である 右向きの反応の速さを v 1 左向きの反応の速さを v 2 とし B C を v 1 v 2 を用いて記せ (3) 時間 t e 以降の v 1 と v 2 の関係を表せ 2. 次の反応の平衡定数を表す式を記せ なお ( 水 ) は水溶液中の溶質を表す (1) H 2 ( 気 )+I 2 ( 気 ) 2HI( 気 ) (2)2NO 2 ( 気 ) N 2 O 4 ( 気 ) (3)N 2 ( 気 ) +3H 2 ( 気 ) 2NH 3 ( 気 ) (4) CO 2 ( 気 )+C( 固 ) 2CO( 気 ) (5) H 2 O( 液 ) H + +OH - (6) H 2 O( 液 ) H 2 O( 気 (7) CO 2 ( 気 ) CO 2 ( 水 ) (8) gcl( 固 ) g + +Cl - (9)NH 3 ( 気 )+H 2 O( 液 ) NH 4+ +OH - (10)CH 3 COO - ( 水 )+H 2 O( 液 ) CH 3 COOH( 水 )+OH - 29

2. ある一定の反応容器に 2.0 mol の水素と 1.5 mol のヨウ素を入れ 一定温度に保つと 次 の反応が平衡状態に達した このとき ヨウ化水素が 2.0 mol 生成していた H 2 +I 2 2HI 2=1.4, 3=1.7, 5=2.2 とする (1) この反応の平衡定数を求めよ (2) 別の同じ容積の容器に水素 1.0 mol とヨウ素 1.0 mol を入れて 同じ温度に保つと 平衡 に達した このとき生成しているヨウ化水素は何 mol か (3) (2) の平衡混合物にさらに水素 1.0 mol を加えて放置した 平衡に達したとき ヨウ化水 素は何 mol 存在しているか 有効数字 2 桁で記せ 30

@image ルシャトリエの原理 可逆反応が平衡状態にあるとき 外から条件を変化させると変化の影響を和らげる向きに反応が進む 例えば B という可逆反応が平衡状態にあるとします ここに を加えて の濃度を増やすと 右向 きの速度が増加し 平衡状態が崩れます 反応が右に進む ( 平衡移動 ) といずれ新たな平衡状態にな ります B の濃度を増加 B B 平衡が右に移動 B B B 平衡状態 K= [B] [] = 1 2 非平衡状態 K = [B] [] = 1 8 K (New) 平衡状態 K= [B] [] = 3 6 = 1 2 条件を変化させたときの K の値が平衡定数 K の値になるように反応が進行します K >K なら 生成物が過多となっているので減らす方向 ( 左 ) に進行 K <K なら 反応物が過多となっているので減らす方向 ( 右 ) に進行 これを簡単な言葉にすると 濃度が増えたら減らす方向へ移動 変化の影響を和らげる向きに進む ということになります これをフランスの学者の名前を借りて ルシャトリエの原理 といいます 濃度以外にも 圧力や温度変化でも平衡は移動します 以下の表にまとめます 濃度 ( 成分濃度 ) 圧力 ( 全圧 ) 温度 触媒 高くする低くする 高くする 低くする 高くする 低くする 加える その濃度が減少する方向へその濃度が増加する方向へ 気体分子の総数が減少する方向へ 気体分子の総数が増加する方向へ 吸熱反応の方向へ 発熱反応の方向へ 平衡は移動しない ( 平衡に至るまでの時間は短くなる ) 31

@Tips ~ ルシャトリエの原理の簡単な考察 ~ (1) 濃度 ( 分圧 ) を上げる 2NO 2 ( 気 ) N 2 O 4 ( 気 )+57.5kJ K= N 2O 4 NO 2 を例にして考えましょう 平衡状態から外部からN 2 O 4 を加えて濃度を2 倍にします その時 K = 2 N 2O 4 NO 2 =2Kとなり N 2 O 4 が 過多ということになります K が K になるためには N 2 O 4 が減る方向である左 に平衡が移動しないと いけません (2) 圧力 ( 全圧 ) を上げる or 全農度を上げる 全圧が上がるということはそれぞれの濃度が増加 するということです 圧力 2 倍 平衡状態から外部から圧縮して圧力 2 倍にします するとそれぞれの濃度が 2 倍になります K = 2 N 2O 4 4 NO 2 = 1 2 K となり NO が過多ということになります K が K になるためには NO が減る方向で ある右 に平衡が移動しないといけません これをまとめると 化学反応式に書かれている気体の数の総量を左辺と右辺を比べ 粒子数が減る方 向に移動するということになります 固体は数えません (3) 温度を上げる 温度が変わると K の値が変わり 新しい温度での平衡定数 K に近づこうとします が 詳しい原理は難 しいです 簡単に温度が加わるとエネルギーが与えられる 吸熱方向に進むという風に覚えてしまえばいいんじゃない かなと思います 2NO 2 ( 気 ) N 2 O 4 ( 気 )+57.5kJ 熱を加えると左に進む (4) 触媒を加える 活性化エネルギー E a を減らすのが触媒でしたが 右に進む反応の山が小さくなれば左に進む反応の E 山も小さくなるので 平衡の移動は起こらないと 覚えてしまえばいいんじゃないかと思います これも原理は少し難しいです ( アレニウスの式を使います ) 反応物 E a 生成物 32

< 練習 > 1. 次の平衡状態に括弧内の条件変化を与えると平湖はどちらに移動するor 移動しないか (1) NH 3 +H 2 O NH 4+ +OH - (NaOHを加える) (2) 2SO 2 +O 2 2SO 3 ( 加圧する ) (3) H 2 +I 2 2HI ( 減圧する ) (4) N 2 +3H 2 2NH 3 +92kJ ( 加熱する ) (5) 3O 2 2O 3-285kJ ( 冷却する ) (6) N 2 +3H 2 2NH 3 ( 触媒を加える ) (7) C( 固 )+H 2 O( 気 ) CO+H 2 ( 加圧する ) (8) N 2 +3H 2 2NH 3 ( 容器の体積を小さくする ) (9) N 2 +3H 2 2NH 3 ( 温度 体積一定でアルゴンを加える ) (10) N 2 +3H 2 2NH 3 ( 温度 全圧一定でアルゴンを加える ) (11) CH 3 COOH CH 3 COO - +H + ( 水を加える ) (12) ZnS( 固 ) - Zn 2+ +S 2- (phを下げる) 2. 次の可逆反応について 生成物の生成量と温度 圧力の関係を正しく表したグラフを 下から記号で選べ ただしT 1 <T 2 とする (1) N 2 ( 気 )+O 2 ( 気 )=2NO( 気 )-181 kj (2) N 2 ( 気 )+3H 2 ( 気 )=2NH 3 ( 気 )+92 kj (3) C( 固 )+CO 2 ( 気 )=2CO( 気 )-172 kj 生成量 T 1 T 2 生成量 T 2 T 1 生成量 T 1 生成量 T 2 T 2 T 1 全圧 全圧 全圧 全圧 ( ア ) ( イ ) ( ウ ) ( エ ) 生成量 T 1 T 2 生成量 T 2 T 1 生成量 T 1 T 2 生成量 T 2 T 1 全圧 全圧 全圧 全圧 ( オ ) ( カ ) 33 ( キ ) ( ク )

3. 図は 水素と窒素を 3:1 の物質量比で混合して平衡に達したとき (3H 2 +N 2 2NH 3 ) の 各温度における気体中に含まれるアンモニアの物質量百分率を表している 曲線 は触媒を加えて圧力を 3.0 10 7 Pa に保った場合の結果である 次の問いに答えよ (1) アンモニアが生成する反応は発熱反応か, 吸熱反応か 発熱 吸熱 判断できない のいずれかで答えよ (2) 工業的なアンモニア合成の反応温度は 500 C 付近である 図からわかるように低温でアンモニアの物質量百分率がより高くなるにもかかわらず 500 C 付近で反応させるのはなぜか 理由を簡潔に記せ (3) 触媒を加えて圧力を 6.0 10 7 Pa に保った場合の平衡におけるアンモニアの物質量百分率の温度変化は, 図の曲線,, のうちいずれか, 記号で記せ (4) 触媒を加えず圧力を 3.0 10 7 Pa に保った場合の平衡におけるアンモニアの物質量百分率の温度変化は, 図の曲線,, のうちいずれか, 記号で記せ (5) 右のグラフは触媒を加えず圧力 3.0x10 7 Pa 500 C で保った場合の時間とアンモニア生成量の関係を示している 圧力一定で以下の条件にしたときのグラフをそれぞれ記せ (a) 300 C (b) 700 C (c) 500 C( 触媒あり ) NH 3 生成量 4. 常温ではNO 2 はこの2 分子が結合したN 2 O 4 と次式で示すような平衡状態にある 2NO 2 ( 赤褐色 ) N 2 O 4 ( 無色 ) この混合溶液を用いて次の実験を行った 実験 1 混合気体を 2 本の試験管に入れ 図 1 のように連結した この試験管をそれぞれ氷水および熱湯に浸して色の変化を観察したところ 高温側の色が濃くなった 実験 2: 図 2 のように混合気体を注射器に入れ筒の先をゴム栓で押さえ 注射器を強く圧縮し矢印の方向から気体の色を観察した 時間 (1) 実験 1 より N 2 O 4 の生成反応は発熱反応 吸熱反応のどちらか 図 1 (2) 実験 2 で注射器を圧縮すると混合気体の色はどのように変化するか 正しい記述を次の ( ア )~( エ ) から選べ ア : 圧縮した直後に赤褐色が濃くなるイ : 圧縮した直後に赤褐色が薄くなるウ : 圧縮した直後は赤褐色が濃くなり その後赤褐色は薄くなるエ : 圧縮した直後は赤褐色が薄くなり その後赤褐色は濃くなる 図 2 34

近似の考え方 例題 (100+1) (1-0.01) (0.01+0.0001) を計算せよ 数学的な答え :101 0.99 0.0101 = 1.009899 圧倒的に面倒くさい 化学での答え :100+1 100 1-0.01 1 0.01+0.0001 0.01 と近似できる 100 1 0.01=1 化学では測定値を扱うため 意味のない数字を足したり引いたりすることは避けようとします でも 100+1 で無視した 1 は 1-0.01 では無視されないし 1-0.01 で無視した 0.01 は 0.01-0.0001 では 無視できません 近似とは x+y のような和 or 差の計算で相対的に小さいものを無視するということです 積や商 には使えません 具体的には 1% 以下の数値を足し引きするとき 無視しても構いません 酢酸の ph 問題 3 種類 よくでる酢酸の ph は大体の値を知っておこう 酢酸のみ ph=3 酢酸と酢酸イオンが混在 ( 緩衝溶液 ) ph=5 酢酸イオンのみ ( 中和点 ) ph=9 各イオンの物質量 9 ph n max CH 3 COOH CH 3 COO ー 5 OH ー 3 NaOHaq 滴定量 ml 0 NaOHaq 滴定量 ml 35

滴定量 v = 0 酢酸のみのpH CH 3 COOH H + + CH 3 COO ー K a = H+ [CH 3 COO ー ] = c2 α 2 ( α<<1より1-α 1) [CH 3 COOH] c(1 α) 前 c 0 0 後 c(1-α) cα cα cα 2 α= K a c より [H+ ] = cα = ck a だいたい ph=3 になる 滴定量 0< v< 中和点 酢酸と酢酸イオンが混在 緩衝液の ph NaOH を加えた分だけ CH 3 COO ーができて CH 3 COOH は減る K a = H+ [CH 3 COO ー ] [CH 3 COOH] [H + ] = K a [CH 3 COOH] [CH 3 COO ー ] だいたい ph=5 になる もし 10 ml 加えたところで中和点となる溶液を使う場合 NaOHaq を 5 ml 加えた時 [CH 3 COOH]:[CH 3 COO ー ]=1:1 となるので K a =[H + ] となる 2.5 ml 加えたとき [CH 3 COOH]:[CH 3 COO ー ]=3:1 となるので K a =[H + ]/3 となる < 緩衝液について > CH 3 COONa Na + + CH 3 COO ー ( C s ) C s C s 多 CH 3 COOH H + + CH 3 COO ー ( C a ) 微微 C s, C a は電離前の塩と酸の濃度とすると [CH 3 COO ー ]=C s + 微 C s [CH 3 COOH]=C a - 微 C a となる 少し酸を加えると H + + CH 3 COO ー CH 3 COOH 少し塩基を加えると CH 3 COOH +OH - H 2 O + CH 3 COO ー どちらを加えても増える [CH 3 COOH],[CH 3 COO ー ] の変化は小さいため [H + ] の値は変わらない 滴定量 v = 中和点 酢酸イオンのみの ph CH 3 COO ーだけになると水の電離 (H 2 O H + +OH ー ) が無視できなくなる CH 3 COO ー + H 2 O OH ー + CH 3 COOH 前 c 0 0 後 c(1-α) cα cα K w K h = OH ー [CH 3 COOH] [CH 3 COO ー ] また K h = CH 3COOH [OH ] [CH 3 COO ー [H+ ] ] [H + ] = K wとなるので 1に代入すると K a = c2 α 2 c(1 α) cα2 α= K h c より [OH ー ] = cα = ckh K w = [H + ][OH - ] より [H + ] = K w ck h 1 [H + ] = K w ck h = K w c K = w K a K a K w c ここの c は酢酸イオンの濃度を入れることに注意 だいたい ph=9 になる 36

< 練習 >25 C で酢酸の電離定数 K a = 2.8 x 10-5 mol/l 水のイオン積 K w = 1.0x10-14 (mol/l) 2 2=1.4, 3=1.7, 5=2.2 7=2.6, log 10 2=0.30, log 10 3=0.47, log 10 5=0.70, log 10 7=0.85.1. 弱酸である酢酸は水溶液中で一部が電離し 次式のような電離平衡が成立する CH 3 COOH CH 3 COO - +H + (1) 0.010 mol/l の酢酸の電離度 α を求めよ ただし電離度は 1 より十分に小さいとする (2) 0.010 mol/l の酢酸の ph を小数点以下第一位まで求めよ 2. 酢酸ナトリウム CH 3 COONa の水溶液では電離によって生じた酢酸イオンの一部が次の ように加水分解して弱塩基性を示す CH 3 COO - +H 2 O CH 3 COOH+OH - 0.010 mol/l の酢酸ナトリウムの ph を求めよ 37

3. 酢酸は水中でわずかに電離し 次のような電離平衡が成立する 1 式 酢酸ナトリウムは水中でほとんど完全に電離している 2 式 酢酸の水溶液に酢酸ナトリウムの結晶を加えると共通イオン効果により 1 式の平衡が ( ア ) へ移動し 水溶液の ph は酢酸のだけのときよりも ( イ ) くなる いまこの混合水溶液に少量の強酸を加えると 加えた H + が多量にある ( ウ ) と結合するため 1 式の平衡は ( エ ) へ移動し 混合水溶液中の [H + ] はほとんど変化しない また 少量の強塩基を加えると 加えた OH - が水溶液中の H + と ( オ ) 反応し 混合水溶液中の H + が減少するので 1 式の平衡が ( カ ) へ移動し 混合水溶液中の [H + ] はほとんど変化しない このような水溶液を ( キ ) という (1)( ア )~( キ ) に当てはまる語句や化学式 上記の に当てはまるイオン反応式を記せ ( ア ) ( イ ) ( ウ ) ( エ ). ( オ ) ( カ ) ( キ ). (2) 0.30 mol/l の酢酸水溶液 10 ml に 0.20 mol/l の酢酸ナトリウム水溶液 10 ml を加えた この混合水溶液の水素イオン濃度を小数点第 1 位まで求めよ (3) 0.40 mol/l の酢酸水溶液 30 ml に 0.40 mol/l の酢酸ナトリウム水溶液 10 ml を加えた この混合水溶液の水素イオン濃度を小数点第 1 位まで求めよ (4) (2) に 0.10 mol/l の塩酸 5.0 ml 加えた時の水素イオン濃度を小数点第 1 位まで求めよ 38

2=1.4, 3=1.7, 5=2.2 7=2.6, log 10 2=0.30, log 10 3=0.47, log 10 5=0.70, log 10 7=0.85 4. 右図は 0.10 mol/l 酢酸水溶液 10 ml に 0.10 mol/l 水酸化ナトリウム水溶液を滴下し ph を測定した結果である 全て小数点第二位まで答えよ ただし酢酸の電離定数 K a = 2.8 x 10-5 mol/l 水のイオン積 K w = 1.0x10-14 (mol/l) 2 とする (1) 点 (0.10 mol/l 酢酸水溶液 ) のpHを答えよ ただしこのとき の酢酸の電離度は1に比べて非常に小さいものとする (2) 点 B のpHを答えよ (3) 点 C のpHを答えよ (4) 点 DのpHを答えよ 39

5. 2 価の弱酸である硫化水素は水溶液中で次のように二段階電離する このとき 第二電 離定数 K a2 は第一電離定数 K a1 と比べ遥かに小さいので 第 2 段階目の電離は無視することが できる ある量の硫化水素が溶けて溶解平衡および電離平衡に達し [H 2 S] = 0.10 mol/l と なった硫化水素水について ph と [S 2- ] を求めよ 第 1 段階 H 2 S H + +HS ー K a1 = H+ [HS ー ] =1.0 x10 [H 2 S] mol/l 第 2 段階 HS - H + +S 2 ー K a2 = H+ [S 2 ー ] [HS ー =1.2 x10 ] mol/l 40

<チャレンジ問題 > ~なぜ酸を薄めてもpH=7を超えない?~ 塩酸や硝酸のような1 価の ( ア ) 酸の場合 0.1 mol/l 以下のような濃度の水溶液では その酸は完全に ( イ ) していると見なすことができる この場合 塩酸の濃度を mol/lとするとき その水溶液のpHは通常は ph = ー log (i) の式で求めることができる しかし 塩酸をだんだんと薄めていき 例えば10 ー 8 mol/lになったとき (1) 式からはpH=8となるが 実際のpHは6.98 程度であり どのように希薄しても7より大きくなることはない このように酸の濃度が低くなると (1) 式から得られるpHと実際のpHが異なる理由として ( ウ ) の電離による水素イオンも無視できないことがあげられる ( ウ ) の電離によって生じる水素イオン濃度をB mol/lとすると 希薄な塩酸中の全水素イオン濃度は ( エ )mol/lとなる 一方 そのときの ( オ ) イオン濃度はB mol/lである, Bいずれも正の数値であるので どんな希薄な塩酸中でも [H + ] >( カ ) となり phが7を超えないことを説明できる このような希薄な塩酸のpHを求めたいときには水の ( キ ) 積についての関係式 ( ク )=( ケ )(mol/l) 2 (ii) を用いてBの値を求め (i) 式の代わりに ph = -log 10 ( {1+ 1 + (2 2 10 7 /) 2 } ) (iii) の式にの値を代入すればよい (1) 文中の ( ア )~( ケ ) に最も適した語句 記号あるいは数値を記せ (2) (iii) 式が得られる過程を示せ ( 富山大 ) 41

<チャレンジ問題 > ~ 電離平衡の正確な取扱い~ 0.10 mol/lの塩化アンモニウム水溶液の25 CにおけるpHの値は以下のような考察によって求めることができる アンモニウムイオンと水との反応 ( ア ) の25 Cにおける平衡定数 Kの値は近似的に式 1で与えられる ただし [H + ] はH 3 O + のモル濃度を表す K = NH 3 [H + ] = 5.0 x 10 [NH 4+ ] -10 mol/l 式 2 溶液中では式 2 の電気的中性条件が成り立つ さらに式 3 が成り立つ ( イ ) [H + ]+[NH 4+ ]=[OH - ]+[Cl - ] 式 2 [NH 3 ]+[NH 4+ ]=[Cl - ]=0.10 mol/l 式 3 [H + ] の値を求めるために式 1 2 3から [NH 3 ], [NH 4+ ], [Cl - ] を消去すると式 4が得られる [H + ] 2 +5.0 x 10-10 [H + ] 5.0 x 10-11 5.0 x 10-10 [OH - ]-[H + ][OH - ]= 0 式 4 式 4の各項の単位は (mol/l) 2 である 式 4の左辺の第 5 項は第 3 項に比べて無視できる ( ウ ) さらにこの水溶液は (a) なので 式 4の左辺の第 4 項も第 3 項に比べて無視できる したがって次のような近似式が得られる 式 5より phの値を計算することができる ( エ ) [H + ] 2 +5.0 x 10-10 [H + ] 5.0 x 10-11 = 0 式 5 (1) アンモニウムイオンと水の反応 ( 下線部 ( ア )) の反応式を記せ (2) 下線部 ( イ ) の理由を記せ (3) 下線部 ( ウ ) の理由を記せ (4) (a) に入る語句を次の中から選び その記号を記せ 1 酸性 2 中性 3 塩基性 (5) 下線部 ( エ ) の計算を行い ph の値を小数点以下第 1 位まで記せ log 10 2=0.30 (6) この塩化アンモニウムの水溶液にアンモニアを吸収させて ph 7.0 とした 得られた水溶液の体積を 1.0 L として 新たに吸収させたアンモニアの物質量を記せ ( 大阪大 ) 42

溶解度積 solubility product NaClのようなイオン結合からなる塩の結晶は 水の中に入れると水和が起こり溶解します これはイオンの周りに水分子が集まり 溶質 + 溶媒の全体のエネルギーが最も安定となるからです しかし 水和するよりもイオン結合をしている方が安定なイオンの組み合わせがあり 溶けずに容器の下に沈殿します 後者のような難溶性の塩について考えていきます 例えば赤褐色のクロム酸銀 g 2 CrO 4 の固体を水の中に入れると一見完全に沈殿したように見えますが うっすらと溶液が CrO 2 4 ーの橙色っぽい色に変化します 何も変化してないように見える沈殿も常に溶け出して常に戻ってきており その速さが一致しているから止まっているように見えているだけなのです これを 溶解平衡 といいます g + CrO 2-4 g + g 2 CrO 4 @image 難溶性の塩 g 2 CrO 4 ( 固 ) 2g + + CrO 4 2- において 溶解度積 K sp =[g + ] 2 [CrO 4 2- ] 限界となる濃度 g 2 CrO 4 ( 固 ) 2g + + CrO 4 2- の平衡定数を 今までと同じように書くと [ 固体 ] は 1 と表すため K sp =[g + ] 2 [CrO 4 2- ] となります + + + B - B( 固 ) + +B - K sp =[ + ][B - ]=6(mol/L) 2 とする このときのK sp のことを 溶解度積 といい 沈殿が生じている場合 各イオン濃度が溶解度積の値を取るように平衡が移動します 言い換えると沈殿を生じる時は必ず溶解度積の値は一定になり 逆に沈殿を生じるための限界の濃度ということになります [ + ]=3 mol/l [B ー ]=1 mol/l + + + B - B - B - B - [ + ]=3 mol/l [B ー ]=4 mol/l [ + ][B - ]=3<K sp 限界値を超えていない溶解したまま [ + ][B - ]=12>K sp 限界値を超えた 沈殿生成方向へ平衡移動 + + B B - B - B - [+]=2 mol/l [B ー ]=3 mol/l [ + ][B - ]=6=K sp 43

沈殿の有無判定 溶液に沈殿を作るイオンを加えると ある濃度で沈殿が生じるようになります グラフにすると右のようになり 以下のことがいえます [ + ][B ー ] > Ksp 沈殿なし [ + ][B ー ] = Ksp 飽和水溶液 ( 沈殿が生成する瞬間 ) [ + ][B ー ] > Ksp 沈殿 + 飽和水溶液 [Cl ー ] 沈殿を生じない領域 沈殿を生じる領域 共通イオン効果ある塩化物の沈殿 + 飽和水溶液があり 溶解平衡が成立しているとします この飽和水溶液に塩化水素を加えると 水溶液中の [Cl ー ] が増加し ルシャトリエの原理から沈殿生成方向に平衡が移動し 更に固体が析出する現象が起こります このように 水溶液中に含まれるイオンと同じイオンを生じる別の電解質を加えることで 平衡の移動が起こり溶解や電離が抑えられる現象を 共通イオン効果 といいます 0 [g + ] H 2 O XCl X + + Cl - s s 0.1 mol/l HCl aq HCl H + + Cl ー多 0.1 0.1 XCl X + + Cl - s s この効果は難溶性ほど大きくなります NaClの溶解度積の値は10 2 (mol/l) 2 gclの溶解度積の値は10-10 (mol/l) 2 として計算すると以下のようになり 易溶性のNaClの場合は塩酸中であっても溶解している濃度は水のときとほぼ変わらないことがわかります なので どんな水溶液中であっても平衡を考えなくてもよいので 溶解度 (g/100g 水 ) を使って計算します 対して難溶性のgClの場合は置かれた環境によって平衡がどんどん移動するので 平衡 ( 溶解度積 ) で考えないといけません K(=[X + ][Cl - ]) = s s = s (0.1+s ) NaCl ( 易溶性 ) 共通イオン効果小 gcl ( 難溶性 ) 共通イオン効果大 100 (mol/l) 2 s=10 mol/l s =9.95 mol/l s s 溶解度はほぼ変化しない 溶解度を用いて計算 10-10 (mol/l) 2 s=10-5 mol/l s =10-9 mol/l s > s 溶解度は劇的に変わる 溶解度積を用いて計算 44

例題 塩化銀は水溶液中で以下のように溶解平衡となるとして 下の問いに答えよ ただ し溶解による溶液の体積変化は無視できるとする gcl( 固 ) g + + Cl - K sp = 2.0 x 10-10 (mol/l) 2 (1) 2.0 x 10-3 mol/lの硝酸銀水溶液 100 mlに2.0 x 10-5 mol/lの塩酸 100 mlを加えた gclの沈殿は生じるか (2) 純水 1 Lに塩化銀は何 mol 溶解するか (3) 0.10 mol/l 塩酸 1 Lに塩化銀は何 mol 溶解するか (1) 溶液を混合したということは体積が増える 濃度は薄くなることに注意しましょう 今回は 100 ml と 100 ml を混ぜたので濃度はそれぞれ 1/2 に薄まります 各イオンが沈殿せずに溶解していたとすると [g + ]=2.0 x 10-3 mol/l 1 2 =1.0 x 10-3 mol/l [Cl - ]=2.0 x 10-5 mol/l 1 2 =1.0 x 10-5 mol/l となる [g + ][Cl - ]=1.0x10-8 > 2.0 x10-10 より 限界を超えている 沈殿を生じる (2) 1 L に x mol の gcl が溶解したとすると gcl g + + Cl - 前 x mol/l 0 0 後 0 x mol/l x mol/l となるので [g + ][Cl - ]=x 2 となる これがK sp と同値より x 2 =2.0 x 10-10 x =1.4 x 10-5 mol/l (3) 1 L に y mol の gcl が溶解したとすると, もともと Cl - は 0.10 mol/l 存在するので gcl g + + Cl - 前 y mol/l 0 0.10 mol/l 後 0 y mol/l y+0.10 mol/l となるので [g + ][Cl - ]=y(y+0.10) となる これが K sp と同値より y(y+0.10)=2.0x10-10 ここで 共通イオン効果を考えると y は (3) の x より遥かに小さいのは明らかなので 0.10+y 0.10 と近似して 大丈夫です ゆえに [g + ][Cl - ] y 0.10=2.0 x 10-10 y (y+0.10)=2.0x10-10 これは 10-9 オーダーじゃないとなりたたない y 10-9 <<<0.1 y = 2.0 x 10-9 mol/l 45

2=1.4, 3=1.7, 5=2.2 7=2.6, log 10 2=0.30, log 10 3=0.47, log 10 5=0.70, log 10 7=0.85 1. 以下の問いに答えよ 原子量 :g=108, Cl=35.5 (1) 飽和食塩水に次の気体を吹き込んだ 最も多くの沈殿が生じるのはどれか ( ア ) 酸素 ( イ ) 二酸化炭素 ( ウ ) 塩化水素 ( エ ) 硫化水素 (2) 水 100g に塩化銀は 0.19 mg 溶解する 溶解度積 K sp を有効数字 2 桁で求めよ 原子量 :g=108, Cl=35.5 水の密度 :1.0 g/ml (3) Fe 2+, Pb 2+, Cu 2+, Zn 2+ をそれぞれ0.10 mol/l 含む水溶液がある これに硫化水素を通じたとき沈殿するのはどれか ただし硫化水素の [S 2- ] は1.0 x 10-22 mol/lであり 硫化物の溶解度積は表のように記す 硫化物 K sp (mol/l) 2 FeS PbS CuS ZnS 5.0 x 10-18 3.6 x 10-28 6.5 x 10-30 2.1 x 10-18 2. 硫化水素は水中でH 2 S 2H + +S 2- のように電離している この式から硫化物イオンの濃度 [S 2- ] は 水溶液中の水素イオン濃度 [H + ] の影響を受けてることがわかる 例えば [H + ] が大きくなるほど [S 2- ] は ( ア ) くなる このことを利用して水溶液中のCu 2+ とFe 2+ を分離することができる すなわちCu 2+ とFe 2+ を含む酸性の水溶液にH 2 Sを通じると ( イ ) の比較的小さい硫化銅 (II)CuSが沈殿する この沈殿を除いた後 水溶液のpHを ( ウ ) してH 2 Sを通じると 水溶液中の ( エ ) の濃度が大きくなる すると 水溶液中の [Fe 2+ ] と [S 2- ] の積がFeSの ( イ ) の値を超え FeSが沈殿し始める ( ア ) ( イ ) ( ウ ) ( エ ). 46

3. 塩化鉛 (II) は水溶液中で以下のように溶解平衡となり 15 C で塩化鉛 (II) は 1 L の水に 3.0 x10-3 mol 溶解するとする PbCl 2 ( 固 ) Pb 2+ + 2Cl - (1) 15 C における塩化鉛 (II) の溶解度積 K sp を求めよ (2) 15 C の 0.10 mol/l の塩酸 1L 中には塩化鉛 (II) は何 mol 溶解するか ただし 溶解による溶液の体積変化は無視できるとする (2) 15 C において 3.0 x 10-3 mol/l の酢酸鉛 (CH 3 COO) 2 Pb 水溶液 10 ml に 0.10 mol/l の塩酸を少量ずつ加え続けた 何 ml の塩酸を加えたときちょうど塩化鉛 (II) の沈殿が精製し始めるか 加える塩酸は少量なので溶液の混合による体積変化は無視できるものとする 4. 銅 (II) イオンと亜鉛イオンを共に 1.0 x 10-3 mol/l の濃度で含む水溶液がある この水溶液中の硫化物イオンの濃度と沈殿生成について答えよ 次の値は硫化銅 (II) と硫化亜鉛の溶解度積である K sp (CuS)=6.0 x 10-36 (mol/l) 2 K sp (ZnS)=3.0 x 10-22 (mol/l) 2 (1) 一方の硫化物の沈殿だけが生じるようにするには [S 2- ] をどの範囲にすればよいか (2) [S 2- ] を 3.0 x 10-20 mol/l に保ったとすれば [Cu 2+ ] と [Zn 2+ ] はそれぞれいくらになるか 47

<チャレンジ問題 > ~チキチキ沈殿我慢大会 ~ 難溶性のハロゲン化銀 (gx:x はハロゲン原子を表す ) を水に入れ よくかきまぜて飽和 水溶液を調整すると 得られた飽和水溶液中の溶解度積 (K sp =[g + ][X - ]) は 温度が変 わらなければ一定の値である 表は ある温度における3 種類のハロゲン化銀の溶解度積である この温度に保って以下の (1)~(3) に示す実験を行った gx K sp (mol/l) 2 gcl gbr gi 1.8 x 10-10 5.2 x 10-13 2.1 x 10-14 (1) 塩化銀の飽和水溶液に塩酸を加えていったところ この飽和水溶液中の塩化物イオン濃度 [Cl - ] が 0.10 mol/l になった このときの飽和水溶液の銀イオン濃度は何 mol/l か (2) 塩化カリウム1.0 10-2 mol と臭化カリウム1.0 10-4 mol を含む混合水溶液が 100 mlあり この水溶液に硝酸銀水溶液を少しずつ加えた このときの沈殿生成の状況と して適切な記述を ( ア )~( エ ) の中から一つ選び, 記号で答えなさい ( ア ) 塩化銀が先に沈殿し始め, その後, 塩化銀と臭化銀の沈殿がともに生成する ( イ ) 臭化銀が先に沈殿し始め, その後, 塩化銀と臭化銀の沈殿がともに生成する ( ウ ) 塩化銀の沈殿の生成が終了後, 臭化銀が沈殿し始める ( エ ) 臭化銀の沈殿の生成が終了後, 塩化銀が沈殿し始める (3) ヨウ化カリウムと臭化カリウムを混合した水溶液が 100 ml あり, この水溶液中にはヨウ化カリウムが 4.0 10-4 mol 含まれている この水溶液に硝酸銀水溶液を少しずつ加えたところ, ヨウ化銀と臭化銀がほぼ同時に沈殿し始めた この水溶液 100 ml 中に含まれる臭化カリウムの物質量は何 mol か 48

@Tips ~ モール法 ~ 例えばCl ーの濃度を知りたいときに この方法を用います 知りたいCl ーを含む水溶液にクロム酸イオンCrO 2-4 を少量加えます これにg + の水溶液を滴定していくと まず塩化銀 gclの白色沈殿が析出します 滴定を続けていくとやがてクロム酸銀 g 2 CrO 4 の赤褐色沈殿が生成し始めます g 2 CrO 4 が沈殿したときに 最初からあったCl ーはほとんどすべてgClとして沈殿してしまったので 加えたg + の数 = 最初のCl ー の関係が言えるので Cl ー濃度を算出できます 溶解度積の値だけ見るとgClの方が数値が小さいので沈殿しやすそうですが g 2 CrO 4 は三次式なので圧倒的にg 2 CrO 4 の方が沈殿しにくいです < 条件 > gcl( 固 ) g + + Cl - K sp =[g + ][Cl - ]=1.0 x 10-10 (mol/l) 2 g 2 CrO 4 ( 固 ) 2g + + CrO 2-4 K sp =[g + ] 2 [CrO 2-4 ] =1.0 x 10-12 (mol/l) 3 [Cl - ] = 1.0 x 10-1 mol/l[cro 4 2- ] = 1.0 x 10-4 mol/l の水溶液に g + を滴下する 1 水 1 L に 1.0 x 10-10 mol の g + を滴下 2 水 1 L に 1.0 x 10-9 mol の g + を滴下 g + [g + ] = 1.0 x 10-10 mol/l [Cl - ] = 1.0 x 10-1 mol/l [CrO 2-4 ] = 1.0 x 10-4 mol/l Cl - Cl - Cl - g + CrO 2-4 CrO 2-4 [g + ][Cl - ] = 1.0 x 10-11 <K sp 沈殿しない [g + ] 2 [CrO 2-4 ] = 1.0 x 10-24 <K sp Cl - Cl - Cl - g + CrO 2-4 CrO 2-4 沈殿しない gcl 沈殿 g + [g + ] = 1.0 x 10-9 mol/l [Cl - ] = 1.0 x 10-1 mol/l [CrO 2-4 ] = 1.0 x 10-4 mol/l [g + ][Cl - ] = 1.0 x 10-10 =K sp 沈殿開始 [g + ] 2 [CrO 4 2- ] = 1.0 x 10-22 <K sp 沈殿しない 3 水 1 L に約 0.50 x 10-1 mol の g + を滴下 4 水 1 L に約 1.0 x 10-1 mol の g + を滴下 g + g + Cl - g + Cl - gcl CrO 2-4 CrO 2-4 [g + ] = 2.0 x 10-9 mol/l [Cl - ] = 0.50 x 10-1 mol/l [CrO 2-4 ] = 1.0 x 10-4 mol/l [g + ][Cl - ] = 1.0 x 10-10 =K sp 沈殿中 [g + ] 2 [CrO 4 2- ] = 4.0 x 10-22 <K sp 沈殿しない g + Cl - gcl gcl g + g+ g + CrO 4 2- [g + ] = 1.0 x 10-4 mol/l [Cl - ] = 1.0 x 10-6 mol/l [CrO 2-4 ] = 1.0 x 10-4 mol/l [g + ][Cl - ] = 1.0 x 10-10 =K sp 沈殿開始 [g + ] 2 [CrO 4 2- ] = 1.0 x 10-12 =K sp 沈殿開始 沈殿ができるにつれ Cl - は消費され薄くなっていくので 溶解度積を保つために g + は濃くなるしかない 滴定終了 最初の Cl - の数 入れた g + の数 入れたg + = 溶液中のg + + gcl 中のg + の関係がありまたgCl 中はg + :Cl - =1:1なので gcl 中のg+ = 最初のCl - - 溶液中のCl - なので4の 入れたg + = 溶液中のg + + 最初のCl - - 溶液中のCl - =1.0 x10-4 +1.0 x 10-1 -1.0 x 10-6 =0.100099 molとなる これは 99.9% の精度で 入れた g + = 最初の Cl - と言ってもよいことになります 49

<チャレンジ問題 > ~モール法 ~ 固体の塩化銀 gclとクロム酸銀 g 2 CrO 4 は水溶液中で次のような溶解平衡が成り立つ gcl( 固 ) g + + Cl - K sp =[g + ][Cl - ]=1.0 x 10-10 (mol/l) 2 g 2 CrO 4 ( 固 ) 2g + + CrO 4 2- K sp =[g + ] 2 [CrO 4 2- ] =1.1 x 10-12 (mol/l) 3 なお溶解度積は 25 C の値である 塩化銀とクロム酸銀の溶解度の違いを利用し以下の手順で食塩水の濃度を決定することができる 25 C で未知濃度の食塩水の一定量をホールピペットを用いてコニカルビーカーに正確に量りとり 指示薬としてクロム酸カリウム K 2 CrO 4 水溶液を 1.1 x 10-4 mol/l となるように加えた 濃度既知の硝酸銀水溶液をビュレットから滴下すると, 試料中の塩化物イオンと反応して 白色の塩化銀の沈殿が生成する さらに硝酸銀水溶液を滴下していくと, 塩化銀の沈殿が増加するとともに食塩水中の塩化物イオンの濃度が減少する 銀イオン濃度が増加するとクロム酸銀の溶解度積に達し クロム酸銀の赤褐色の沈殿が生成する ( ア ) このとき 試料中の塩化物イオンはほとんど塩化銀となっているので, 終点とみなすことができる ( イ ) 滴定による体積変化は無視しないとして以下の問いに答えよ (1) 終点における溶液中の銀イオンの濃度 (mol/l) はいくらか (2) 未知濃度の食塩水 10.0 ml を 0.100 mol/l の標準硝酸銀水溶液を用いて滴定すると, 終点までに 12.3 ml を要した 食塩水の濃度 (mol/l) はいくらか 有効数字 3 桁で答えよ (3) 実験後の計算を楽にするために 食塩水に含まれていた塩化ナトリウムとちょうど等しい物質量の硝酸銀が滴下されたときに滴定を終了したい この実験を行うには試薬のクロム酸カリウムは何 mol/l に調整しておけばいいか (4) 下線部 ( イ ) について 終点の溶液中に存在する Cl - の物質量はもともと溶液試料中に存在していた塩化物イオンの濃度の何 % か 有効数字 2 桁で答えよ 50